みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0578「海賊島12」

2019-06-22 18:18:50 | ブログ短編

 明け方になって、若者(わかもの)たちの作業(さぎょう)は終わりを迎(むか)えようとしていた。かなりいい加減(かげん)なところもなきにしもあらずだが――。そんな時、リーダーの携帯電話(けいたいでんわ)が鳴(な)った。
「はい…。何だ、おばちゃん…。どうしたの?……そ、そんな…。うん、分かった。こっちで何とかするから。大丈夫(だいじょうぶ)だって。おばちゃんのせいじゃないから…。うん、じゃ」
 ただならぬ様子(ようす)を見て、そばにいた若者が声をかけた。「どうした。何かあったのか?」
「民宿(みんしゅく)のおばちゃんからだ。あいつらがいなくなったって。いつの間にか消(き)えたって…」
「どうすんだよ。せっかく準備(じゅんび)したのに。全部無駄(むだ)になっちゃうのか?」
「とにかく、手分(てわ)けして捜(さが)そう。まだ連絡船(れんらくせん)の出る時間じゃないから、どっかにいるはずだ。いいか、あいつらに気づかれないようにするんだぞ」
 若者たちは、山を駈(か)け降(お)りて行った。――伊集院(いじゅういん)たち三人は、暗いうちにこの場を離(はな)れていた。そして三人の姿(すがた)は、あのでこぼこになっている砂浜(すなはま)にあった。
「なあ。何でこんなことしなきゃいけないんだ」
 林田(はやしだ)はスコップで砂山(すなやま)を崩(くず)しながら言った。「こんなことして、宝(たから)が見つかるのかよ」
 伊集院は砂浜を見渡(みわた)して、「そうさ。力仕事(ちからしごと)はお前の担当(たんとう)なんだから、頑張(がんば)ってくれよ」
「ほんとかよ?」林田は伊集院の顔を見て、「絶対(ぜったい)違(ちが)うだろ。もうだまされないぞ」
 林田はやけくそになって、砂浜の穴(あな)にスコップの砂を放(ほう)り込んだ。そのそばには久美子(くみこ)もいて、同じように穴を埋(う)めていた。でも、彼女は何だか楽(たの)しそうだ。
<つぶやき>さてさて、伊集院は何を考えているのでしょう。宝は見つかるのでしょうか。
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