「何だよ、こんなところに呼(よ)び出して」丸雄(まるお)はカフェの席(せき)につくなり言った。
「遅(おそ)かったじゃないか。何やってたんだよ」親友(しんゆう)の拓也(たくや)はむずむずしながら、「実(じつ)はさ、ネットショッピングですっごいの見つけちゃって。俺(おれ)、買っちゃったんだよ、恋人(こいびと)を」
「恋人?」丸雄は何の話をしているのか分からず、拓也の顔をまじまじと見つめた。
「それがさ、いくらだと思う? 何と、一万円プラス消費税(しょうひぜい)。すっごいだろ」
「何だよそれ」丸雄はあきれて言った。「そんな、恋人が買えるわけないだろ。お前、絶対(ぜったい)だまされてるぞ。まさか、振(ふ)り込んだりしてないだろうな、金(かね)」
「振り込んだよ。決まってるじゃないか。だって、一万プラス消費税だぞ。それで、恋人ができるんだ。俺たち念願(ねんがん)の…。考えてもみろよ、俺たち彼女いない歴(れき)、何年だ?」
「もう、付き合ってらんないよ。俺、帰るな。これから、仕事(しごと)があるんだ」
「ダメだよ。お前がいないでどうするんだよ」
「俺には関係(かんけい)ないだろ」丸雄は席を立とうとするが、拓也は必死(ひっし)に引き止めて、
「来るんだよ、今からここに。その、恋人が…。それでな、お前の写真(しゃしん)を送っといたから、お前がいないと会えないだろ。その、恋人に」
「な、なに考えてんだよ。オ、オレ、どうすればいんだ。急に、そんなこと言われても…」
<つぶやき>男はどうしてこんなに浅(あさ)はかなんでしょう。でも、その恋人は来たのかな?
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