みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0079「もうひとりの自分5」

2017-10-05 19:09:30 | ブログ短編

 次の日のこと。もうひとりの自分の行動(こうどう)は素早(すばや)かった。出社(しゅっしゃ)するなり、後輩(こうはい)の男性社員にメモをはさんだ書類(しょるい)を手渡(てわた)して、「よろしくね」と言って微笑(ほほえ)んだ。もちろん、これはさおりを意(い)のままに操(あやつ)ったもうひとりの自分の仕業(しわざ)なのだが――。
「ねえ、どういうつもりよ」さおりはトイレに駆(か)け込み訴(うった)えた。「昨夜(ゆうべ)も言ったじゃない。吉田(よしだ)君はダメだって。幾(いく)つ歳(とし)が離(はな)れてると思ってるの? 五つよ、五つ!」
「それが何よ。大(たい)した問題(もんだい)じゃないわ。あの子ね、入社(にゅうしゃ)したときからあなたのこと気にしてたのよ。あなたは気づかなかったかもしれないけど」
「あのね。それは、わたしが隣(となり)の席(せき)にいて、いろいろ仕事(しごと)を教えてあげてたからで…」
「もう、いつまでぐちぐち言ってるの。さあ、行くわよ。待たせちゃ悪(わる)いでしょ」
 もうひとりの自分は操り人形(にんぎょう)のようにさおりの身体(からだ)を動かした。さおりにはどうすることもできなかった。手鏡(てかがみ)を取り出そうにも、手すら自由(じゆう)にできないのだ。
 会議室(かいぎしつ)の前でさおりは吉田と鉢合(はちあ)わせした。吉田は身(み)をこわばらせた。
「あの…」彼はしどろもどろになりながら、「今日は良い天気(てんき)ですね。ははは…」
「そうね。ふふ…」さおりもどうすればいいか分からず相槌(あいづち)を打(う)った。それを見かねたもうひとりの自分は、吉田の腕(うで)をつかむと会議室に押(お)し込んでドアを閉めた。
<つぶやき>こらこら、ちょっとやり過ぎじゃないですか? この話の結末(けつまつ)はどうなるの?
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コメント
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