goo blog サービス終了のお知らせ 

みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1498「謎の穴」

2025-05-28 15:47:53 | ブログ短編

 彼(かれ)が道(みち)を歩(ある)いていると、目(め)の前(まえ)の地面(じめん)が突然(とつぜん)くずれ始(はじ)めた。そして、そこに大(おお)きな穴(あな)が出現(しゅつげん)した。彼(かれ)はその穴(あな)に近(ちか)づいて恐(おそ)る恐(おそ)る中(なか)を覗(のぞ)いてみた。そこにはなぜか地下(ちか)へ続(つづ)いている階段(かいだん)があった。穴(あな)の底(そこ)の方(ほう)は真(ま)っ暗(くら)で何(なに)も見(み)えない。
 彼(かれ)はちょっとためらった。中(なか)へ入(はい)ってみるべきか、止(や)めるべきか…。階段(かいだん)はどこまで続(つづ)いているのか分(わ)からない。よほど深(ふか)いのか? 彼(かれ)はどちらかというと冒険(ぼうけん)を好(この)まない。平穏(へいおん)が一番(いちばん)だと思(おも)っている人間(にんげん)だ。そんな彼(かれ)なのだが、どういう訳(わけ)かこの先(さき)に何(なに)があるのか知(し)りたくなってしまった。幸(さいわ)いなことに、今日(きょう)の予定(よてい)は何(なに)もない。ここは、行(い)っちゃってもいいかも…。
 でも、彼(かれ)は思(おも)い止(とど)まった。何(なん)の装備(そうび)もなく入(はい)って行(い)くのはあまりにも無謀(むぼう)だ。ここは、ちゃんと準備(じゅんび)をしてからでないとダメだ。彼(かれ)は、堅実(けんじつ)なのだ。彼(かれ)の行動(こうどう)は素早(すばや)かった。ネットで必要(ひつよう)な物(もの)を調(しら)べ上(あ)げ、買(か)いそろえることができた。この出費(しゅっぴ)はちょっといたいが、致(いた)し方(かた)ないだろう。好奇心(こうきしん)を満(み)たすためだ。
 三日後(みっかご)、準備(じゅんび)を調(ととの)えた彼(かれ)はあの穴(あな)に向(む)かった。おかしなことに、あの穴(あな)についてなんのニュースも流(なが)れない。いったいどうなっているのか? 誰(だれ)も気(き)づかないなんて変(へん)だ。
 穴(あな)の場所(ばしょ)にたどり着(つ)いた彼(かれ)は呆然(ぼうぜん)と立(た)ちつくした。そこに穴(あな)はなかった。何(なん)の痕跡(こんせき)もない。あれは何(なん)だったんだ。もし、あのとき入(はい)っていたら、彼(かれ)は戻(もど)れなくなったかもしれない。彼(かれ)はホッと胸(むね)をなで下(お)ろした。
<つぶやき>地底人(ちていじん)が間違(まちが)えて開(あ)けちゃったのかも。あのとき行(い)っちゃえばよかったのに。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1497「吉永さん」

2025-05-19 16:15:38 | ブログ短編

 それは、ある日突然(とつぜん)起こった。朝、彼女との待(ま)ち合わせ場所(ばしよ)へ行くと、いつもいるはずの彼女は来ていなかった。病気(びようき)にでもなったのか? 僕(ぼく)は彼女と連絡(れんらく)をとろうとスマホを取り出した。でも、どういうわけか彼女の名前(なまえ)が見当(みあ)たらない。これじゃ電話(でんわ)もできない。
 僕は学校(がつこう)へ急(いそ)いだ。なんか変(へん)な胸騒(むなさわ)ぎがした。教室(きようしつ)に入ると彼女を探(さが)した。でも、どこにもいない。彼女の席(せき)には他(ほか)の生徒(せいと)が座(すわ)っていた。僕はその生徒に駆(か)け寄(よ)って言った。
「どうしてここに座ってるんだ。ここは吉永(よしなが)さんの席だろ」
 その生徒は答(こた)えて、「吉永ってだれ? ここは、あたしの席ですけど」
 僕は何を言っているのか理解(りかい)できなかった。その生徒はさらに続(つづ)けた。
「ねぇ、昨夜(ゆうべ)はどうして連絡くれなかったの? 待ってたんだからね」
「えっ、なんのことだよ。どうして僕が…」
「ほんとむかつくわね。あなたが、あたしと付(つ)き合いたいって言ったんでしょ」
 僕は言葉(ことば)が出なかった。どうしてそんなことになってるんだ? 僕がこいつと付き合うって…。あり得(え)ないだろ。だって、全然(ぜんぜん)、まったく、僕のタイプじゃない!
「ああ…、そういうことね。その、吉永って娘(こ)と付き合うことにしたんだ」
「それは…。そもそも僕は、吉永さんと付き合ってたんで…。なんで君(きみ)と…」
「二股(ふたまた)かよ。じゃあ、放課後(ほうかご)、吉永って娘(こ)、連(つ)れてきな。話(はな)しをつけようじゃない」
<つぶやき>吉永さん、本当(ほんとう)にいたのか? 夢(ゆめ)を見ていただけだったのかもしれません。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1496「恋愛戦士」

2025-05-10 15:23:52 | ブログ短編

 あたし、恋(こい)に落(お)ちてしまったみたい。まさか、このあたしが…。今まで、男のことなんかまったく目に入らなかったのに…。恋愛(れんあい)なんか時間(じかん)のムダで必要(ひつよう)ないと思ってたはずなのに。どうして…、あの人のことが頭(あたま)から離(はな)れないのよ。
 時間を巻(ま)き戻(もど)したい。あの人と出会(であ)う前に…。そしたらきっと、こんなことにならなかったはずよ。でも…、ほんとにそれでいいの? もう分からなくなってしまったわ。頭の中がぐちゃぐちゃで、気づけばあの人のことを考(かんが)えてしまう。
 いくら考えてもムダ…。恋愛経験(けいけん)のないこのあたしに答(こた)えが出せるはずがない。こうなったら、決着(けっちゃく)をつけるしかないわ。この状況(じょうきょう)をあの人に打(う)ち明(あ)けて…。でも、それって…、告白(こくはく)ってこと!? いやいやいやいや、おかしいわよ、そんなの…。
 だって…。ほんとに…これは恋なの? あたし、あの人のこと…ほんとに好(す)きなのかなぁ? もし、もしもよ…。これが恋だとして…、あの人はどう思ってるのかなぁ? あたしのこと恋愛対象(たいしょう)として見てる? いやいや、分かんないよ。あの人が何を考えてるのかなんて…。もし、あたしだけだったら…。これ、めちゃくちゃ恥(は)ずかしいやつじゃない。
 ああ、ダメだ~ぁ。こんなのムダよ。このままじゃおかしくなっちゃう。こうなったら、やっぱりあの人に打ち明けよう。もし振(ふ)られたら、会(あ)わなければいいんだから…。
<つぶやき>ほんとうにそれでいいんですか? 恋愛とは欲望(よくぼう)のままに突(つ)き進(すす)むものです。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1495「つきまとう不安」

2025-05-01 17:13:26 | ブログ短編

 私(わたし)は犯罪(はんざい)を犯(おか)してしまった。でも後悔(こうかい)はしていない。あんなヤツは死(し)んだ方(ほう)が世(よ)のためなのだ。思(おも)わずやってしまったので、いろいろと犯行(はんこう)の痕跡(こんせき)を消(け)すのに時間(じかん)がかかってしまった。
 これでも、私(わたし)は二時間(にじかん)ドラマの愛好家(あいこうか)だ。あらゆる犯罪(はんざい)についての知識(ちしき)と、警察(けいさつ)の捜査(そうさ)に精通(せいつう)している。何(なに)が起(お)きても対処(たいしょ)できるはずだ。何(なん)の心配(しんぱい)もない。……だが、本当(ほんとう)に大丈夫(だいじょうぶ)なのか? 小(ちい)さなミスが命取(いのちと)りになることもある。
 それから数日後(すうじつご)。とんでもないニュースが飛(と)び込(こ)んできた。死体(したい)が、発見(はっけん)されてしまったのだ。だが…、問題(もんだい)ない。これも想定済(そうていずみ)だ。あいつの身許(みもと)が分(わ)かっても、私(わたし)につながるものは何(なに)もない。誰(だれ)も知(し)らないはずだ。だが、何(なん)だ、この不安(ふあん)は…。
 それからまた数日後(すうじつご)。私(わたし)の不安(ふあん)が消(き)えることはなかった。そして、ついに刑事(けいじ)が私(わたし)の前(まえ)に現(あらわ)れた。私(わたし)は完璧(かんぺき)に演(えん)じきった。私(わたし)は無関係(むかんけい)で、そんな人間(にんげん)に会(あ)ったこともないと…。刑事(けいじ)たちはあっさりと引(ひ)き下(さ)がった。これで、私(わたし)が容疑者(ようぎしゃ)になることはないだろう。
 そして、事件(じけん)が報道(ほうどう)されることもなくなり、週刊誌(しゅうかんし)も他(ほか)のゴシップに変(か)わっていた。誰(だれ)も、あの事件(じけん)について話題(わだい)にすることもなくなったようだ。私(わたし)は完全犯罪(かんぜんはんざい)を成(な)しとげたのだ。もう、何(なん)の心配(しんぱい)も……。本当(ほんとう)にそうなのか? また、不安(ふあん)がよぎる。何(なに)か忘(わす)れているような…。なんなんだ! 何(なに)かミスをしたのか…?
 その時(とき)、玄関(げんかん)の呼(よ)び鈴(りん)が鳴(な)った。…まさか、警察(けいさつ)が…きたのか!?
<つぶやき>この不安(ふあん)ってずっとなくならないんじゃない。ちゃんと罪(つみ)を償(つぐな)いましょうね。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1494「しびと」

2025-04-22 16:21:28 | ブログ短編

 あたしの前に突然(とつぜん)現(あらわ)れた友人(ゆうじん)…。あたしは、その彼を見て凍(こお)りついた。だって…彼、死(し)んだはずよ。三日前にお葬式(そうしき)に行ったんだから…。それが、どうしてここに? なんであたしの前に現れたのよ!
 死んだはずの彼は、あたしに向(む)かって言ったわ。
「わるいんだけどさぁ。君(きみ)にちょっと頼(たの)みたいことがあって…」
 ちょ、ちょっと待(ま)ってよ。何なのよ。あたしは背筋(せすじ)に悪寒(おかん)が走(はし)った。あたしはいったん落(お)ち着(つ)こうと目を閉(と)じた。そして心の中で呟(つぶや)いた。これは、きっと夢(ゆめ)よ。悪(わる)い夢を見てるんだわ。だって、あたし…、彼とはそんなに親(した)しくないし…。むしろ、ただの顔見知(かおみし)りていどなんだから。頼みごとされるような関係(かんけい)じゃないはずよ。
 あたしは呼吸(こきゅう)を整(ととの)えて目を開(あ)ける。そして…、ギャーッ!と悲鳴(ひめい)をあげてしまった。
「なんでいんのよ。あたしに付(つ)きまとわないで!」
「ごめんっ…」彼は優(やさ)しそうな笑顔(えがお)で言った。「君だけなんだ。僕(ぼく)が見えてるのは…」
 そんな…。あたしは後悔(こうかい)した。最初(さいしょ)から見えないことにすればよかったのよ。あたしはため息(いき)をついた。あたしっていつもこうなんだ。面倒(めんどう)なことに巻(ま)き込(こ)まれて…。
「もう、落ち着いた? あのね、僕の彼女に伝(つた)えてもらいたいんだ。彼女、僕がこんなことになってるの知らなくて。きっと、僕のこと待ってると思うんだ」
「えーっ? それは…、重(おも)すぎるよ。それに、あなたの彼女なんて知らないし…」
<つぶやき>ここは一肌脱(ひとはだぬ)いであげましょうよ。あなたしかいないんだから。がんばって。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする