今日公表されたベルテルスマン財団の税負担に関する調査結果が衝撃的です。
調査は、ベルテルスマン財団の委託により欧州経済研究センター(ZEW)が、より多く働くことがどのくらいの手取り収入増加に繋がるかを各年収クラス、家計形態ごとに調べたものです。
結果を要約すれば「低収入の人ほど、より多く働いても家計の収入増につながらない」という理不尽なものです。
まずは限界収入1ユーロ、つまり通常収入を超えて得た1ユーロにどのような課税などの負担があるかを表す指標が【実効限界負担】(Effektive Grenzbelastung)です。
上のグラフを見ると、福祉分野の支援(住宅支援、児童手当など)減額・打ち切り、所得税、社会保険保険料で1ユーロのうちの半分強を占めています。
ただこれはあくまでも平均的な負担を示すもので、元の収入及び家計形態によってその割合は違ってきます。
シングル家計で年収が1万7千ユーロ(約219万円)であれば、1ユーロ余計に稼いでも手取り額は増えません。それに対して年収が7万5千ユーロ(約966万円)であれば、余計に稼いだ1ユーロのうち56セントが手元に残ることになります。
夫婦で子供が二人の家系においては、家計年収が4万ユーロ(約515万円)であれば、余計に稼いだ1ユーロのうち56セント、家計年収が9万ユーロ(約1,160万円)であれば、66セント手元に残ることになります。
場合によっては限界負担が120%、すなわち余計に稼いだ1ユーロに対して税等の負担が1ユーロ20セントになり、20セントのマイナス収入になることもあります。これはドイツで就労能力のある失業者に給付される生活保護である第二種失業手当(俗に「ハルツ4」)が、労働収入に応じて減額される場合などに起こるようです。
シングルマザー家計でも状況は厳しく、年収23,800ユーロ(約306万7千円)までは限界負担が一貫して60%で、年収4万千ユーロ(約528万円)あたりから漸く限界負担が下がり始めます。
この調査からの提言は、児童手当、住宅手当、失業手当などの社会保障的給付金の相互調整を行い、より多く働こうとするモチベーションを上げるべきだということです。
やはりそこが一番喫緊に改善されるべきところでしょうね。
累進課税自体にももちろん改善の余地があるので、9月の連邦議会選挙を目前に控えた選挙活動の中でも様々な提案がなされてますが、連立政府は4年も時間があったにもかかわらず、その問題を放置し、なんで選挙前になって今更のようにそこに改善の余地があることに気付いたのか疑問に思う限りです。
調査報告はこちら。
参照記事:
Zeit Online, "Mehrarbeit lohnt sich häufig nicht", 17. August 2017
Bertelsmann Stiftung - Aktuelle Meldung, "Wer wenig hat, wird am stärksten belastet: Steuer- und Sozialsystem benachteiligt Geringverdiener", 17. August 2017