徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ドイツ:傷病手当と会社からの補助金(がん闘病記6)

2017年08月26日 | 健康

会社を病欠して、早いもので6週間経ちました。最初の抗がん剤投与から2週間で髪が抜け始めました。脱毛が始まってから4日目で、もう傍目にも分かるほど髪が薄くなってます。正確には毛根近くで「切れる」だけなので、いわゆる脱毛症のような不可逆性のものではなく、抗がん剤投与が終了すればまた普通に生えて来るそうなので、この点に関してはそうショックを受けてません。前述のようにかつらはすでに用意してありますし。

さて、私は6月26日から7月3日まで最初の子宮掻爬術で会社を休んで、次の7月17日の大手術までは普通に働き、7月17日から今に至るまで病欠しているのですが、「病欠初日」がこの場合6月26日になるのか7月17日になるのか定かではなかったのですが、昨日会社から分厚い手紙が来て、6月26日~7月3日の病欠もいわゆる「病欠時の賃金継続支給(Lohnfortzahlung im Krankheitsfall)」期間である6週間のうちにカウントされ、8月19日をもって給与支払いが停止するとのことでした。そのお知らせの他8ページに及ぶ長期病欠にまつわる決まりごとの情報が添付されてました。

前に「ドイツにおけるがん患者のための社会保障」でも書きましたが、病欠6週間を経て、43日目以降は健康保険組合の方からそれまでの税込み給料の70%が傷病手当として病欠初日から数えて最長78週間支給されます。ただし、健康保険料の計算ベースとなる給料が傷病手当の計算ベースとなります。通常健康保険料は、税込み月収の約15.5%(労使総額)と定められていますが、52,200ユーロ(2017年度)を超える分の月収には保険料が控除されます。このため、限度額を超える月収がある場合、傷病手当は税込み月収の70%ではなく、限度額52,200ユーロの70%、月額3,045ユーロまでしか支給されないことになります。この額から更に年金保険料、失業保険料、介護保険料が差し引かれることになります。


健康保険組合からは8月19日に分厚い手紙が届き、傷病手当申請書が添付されてありました。申請手続きがオンラインでもできるようにコード番号とパスワードが記載されていたので、オンラインで手続きを済ませました。あまりのスムーズさにびっくりです。

その健康保険の手紙の中に、会社によっては固定給与と傷病手当の差額を補助金として出すこともあるので会社に問い合わせるように書いてありました。私の会社は、私が問い合わせるまでもなく、給与停止の知らせと共に補助金に関することも知らせてくれ、私の方から特に手続きをする必要がなく、自動的に給付される旨が書かれてありました。なんというか、手厚いですね。

ちなみにその補助金給付の期間は、うちの会社では勤続年数によって変わります。

  • 勤続年数4年以上:病欠初日から数えて12週間
  • 勤続年数8年以上:病欠初日から数えて18週間
  • 勤続年数12年以上:病欠初日から数えて26週間

私の勤続年数は12年以上なので、現在進行中の化学療法が終了した後に職場復帰すると仮定すれば、補助金支給期間26週間でカバーされるため、がん治療による減収がかなり少なくて済みます。実際どうなるかは分かりませんけど、取り敢えずこの半年間は働かずして給料全額が保障されることは確かなので、経済的には安心です。変動給与分(15%)は諦めなくてはなりませんが。この会社からの補助金がなくなると、変動給与分どころか、保険料算出限度額を超える分全額と限度額の30%が欠けることになるので、かなり厳しい状況になりますね。。。

こうした傷病手当に対する補助金給付は業種別労働組合と会社側で締結する労働協約によって規定されているため、労働協約に参加している会社ならば給付期間や条件に多少の差はあるものの、補助金自体は給付することになります。労働協約に不参加の会社は大抵が労働協約の定める給料を払う余裕のない零細企業ですが、比較的大きな企業でも労働協約不参加のところはあるにはあります。そういうところでは補助金のような温情的な人件費はまず拠出しないと考えて良さそうです。

ただ6週間の賃金継続支給は賃金継続支給法(Entgeltfortzahlungsgesetz)に定められた雇用者の義務なので、労働協約に不参加でもこれは免れられません。払わないのは違法行為です。

がん闘病記7


唐突ながん宣告~ドイツの病院体験・がん患者のための社会保障(がん闘病記1)

化学療法の準備~ドイツの健康保険はかつら代も出す(がん闘病記2)

化学療法スタート(がん闘病記3)

抗がん剤の副作用(がん闘病記4)

え、緑茶は膀胱がんのもと?(がん闘病記5)

書評:Kelly A. Turner著、『9 Wege in ein krebsfreies Leben(がんが自然に治る生き方)』(Irisiana)


書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』(ビーズログ文庫)

2017年08月26日 | 書評ー小説:作者ア行

『おこぼれ姫と円卓の騎士』第17巻と同時発売された『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』ですが、こちらは中華風ファンタジー。白楼国の後宮で女官をしている皓茉莉花(こう・まつりか)16歳が、ある日ひょんなことから若き皇帝に出会い、その常人離れした記憶力を買われて官吏になるよう仕向けられるというお話。当人は自分を「ちょっと物覚えがいい」だけの人間で、下働きの宮女から女官に抜擢されただけでも恐れ多いと思っていたので、皇帝・珀陽(はくよう)の「科挙試験を受けて官吏になれ」という要求など「とんでもない」と逃げを打つばかりですが、珀陽は折角の才能を逃すまじとかなり強引に彼女を科挙試験準備のための太学に編入させてしまいます。

最初のうち茉莉花は「覚えることができるだけ」で成績が芳しくありませんでしたが、珀陽の執拗な説得に根負け(?)して本気を出し、自ら師を求めて本気で頑張りだし、最終的に文官になる決心をするというところまでが本編の内容です。後日談・エピローグで彼女の官吏としての活躍を綴った『茉莉花官吏伝』が国中に広まったみたいなことが書かれてますが、これは新シリーズの始まりなのかなと思わせる節もありますね。

サブタイトルの『皇帝の恋心、花知らず』が暗示するように、珀陽が茉莉花の才能だけでなく、彼女自身に惹かれているっぽいことは描写されていますが、茉莉花の方はそんなこと露ほどにも知らず、本当に片思いで終わってます。だからこそ、この二人のその後の物語が綴られるのかも知れないと思ってしまうのですが。

中華風なだけに『彩雲国物語』とイメージがかなり被ってしまうような感じがします。それなりに面白いし、危機的な状況もあり、またちょっとほろっとするところもあるんですが、なんとなく上滑りしているような気がしないでもないです。全体的に「いまいち」ですかね。

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書評:石田リンネ著、『おこぼれ姫と円卓の騎士』全17巻(ビーズログ文庫)