徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:清少納言著、『枕草子』(角川ソフィア文庫、ビギナーズ・クラシックス)

2016年01月23日 | 書評―古典

ビギナーズ・クラシックスという角川書店から出ている日本の古典シリーズの一つである清少納言の「枕草子」をつらつらと読みました。

私は「徒然なるままに」という徒然草の冒頭をブログ名に採用している割には、実は古典は苦手です。嫌ってはいませんが、とにかく苦手なのです。どこが苦手かと言えば、主語が省かれ過ぎて文脈がつかみづらいところです。古典に精通した方なら、尊敬語や謙譲語などの敬語体系がしっかりしている古文は主語が明記されてなくてもよく分かる、というのでしょうが、その敬語体系を覚えられなかった私には残念ながら全くちんぷんかんぷんなのです。

とはいえ、枕草子のように有名な古典は現代語訳もたくさんあり、漫画すらあるので、ただ内容を知りたいだけなら、そういうものを手に取る方がいいでしょう。ですが、私のように古文が苦手でも原文に触れたい、しかし今更古文を勉強するのはちょっとという方にはこのビギナーズ・クラシックスシリーズがお勧めです。抜粋ではありますが、まずは現代語訳、次に原文、その後に必要に応じて当時の行事や文物、あるいはその段が書かれた背景などを説明する解説部が続きます。こうして現代語訳と原文を読み比べると、古文の方も「ちんぷんかんぷん」さが緩和されてきて、原文を味わう余裕も少し出て来るようです。

清少納言は本名不詳の一条天皇の中宮定子に仕えた女房という10世紀末―11世紀初頭の人物ですが、華やかな宮廷生活を描き、あくまでも当時の貴族女性という規制の枠内で知り得たこと、感じ得たことを書き留めているという意味で、文化的・時代的な隔たりを感じずにはいられないところも多々あるのですが、こと人情に関してはいつの時代も人間は大して変わらないので1000年の隔たりを超えて共感できる部分も結構あります。たとえば、「ありがたきもの 舅にほめらるる婿。また、姑に思はるる嫁の君。毛のよく抜くる銀の毛抜き。主そしらぬ従者。(めったにないもの 舅のほめられる婿。また、姑にほめられるお嫁さん。毛がよく抜ける銀の毛抜き。主人の悪口を言わない使用人)」(笑)

もし彼女が現代に生きていたとしたら、最低でもブログなどで日々思うこと感じることを発信していたでしょうし、もしかしたらその知性・教養を活かして批評家として日本の情けない有様を一刀両断にしていたかも、と想像するのもまた、いとをかし。


購入はこちら

書評:藤原道綱母著、『蜻蛉日記』(角川ソフィア文庫、ビギナーズ・クラッシクス)

書評:谷知子編、『百人一首』(角川ソフィア文庫)&あんの秀子著、『ちはやと覚える百人一首(早覚え版)』

書評:大友茫人編、『徒然草・方丈記』(ちくま文庫)

書評: 菅原高標女著、『更級日記』(角川ソフィア文庫、ビギナーズ・クラシックス)