結城光流の『少年陰陽師』シリーズ第61巻に当たる『いつか命の終わる日が』は、主人公安倍昌浩以外を主人公とした短編集です。収録されている作品同士は関連性はありません。
収録作品は、『ただ、なんとなく』、『あの日、髪を切ったとき』、『この手が、指が』、『約定か、詭弁か』、『いつか命の終わる日が』、『狭間に見よ、夢の軌跡を』の6編です。
『ただ、なんとなく』は、安倍昌浩の誕生の際のエピソード。
『あの日、髪を切ったとき』は、安倍家にわけあって身分を偽って保護されることになった藤原彰子(藤原道長の一の姫)が安倍家で生きていくために髪を切ったときを回想するエピソード。
『この手が、指が』は、十二神将の一柱・玄武と彼に助けられ、視力を得た汐という少女のエピソード。
『約定か、詭弁か』は、昌浩の長兄・成親が因縁のある妖を調伏する話。
『いつか命の終わる日が』は、収録作品中最長のエピソードで、安倍清明の榎木岦斎にまつわる思い出の回想。
最後の『狭間に見よ、夢の軌跡を』は、『そこに、あどなき祈りを』の続編で、藤原敏次を主人公としたスピンオフ的なエピソード。
どの作品も本編または他の短編集を知らないと話が通じないストーリーで、その点ではその前の巻の短編集とは異なっています。少年陰陽師ファン向けのサイドストーリー集という感じですね。
個人的には、なぜか調伏される妖の方にほんのりと同情を感じてしまう『約定か、詭弁か』が気に入ってます。