徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:結城光流著、『少年陰陽師~いつか命の終わる日が』(角川ビーンズ文庫)

2017年08月19日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行

結城光流の『少年陰陽師』シリーズ第61巻に当たる『いつか命の終わる日が』は、主人公安倍昌浩以外を主人公とした短編集です。収録されている作品同士は関連性はありません。

収録作品は、『ただ、なんとなく』、『あの日、髪を切ったとき』、『この手が、指が』、『約定か、詭弁か』、『いつか命の終わる日が』、『狭間に見よ、夢の軌跡を』の6編です。

『ただ、なんとなく』は、安倍昌浩の誕生の際のエピソード。

『あの日、髪を切ったとき』は、安倍家にわけあって身分を偽って保護されることになった藤原彰子(藤原道長の一の姫)が安倍家で生きていくために髪を切ったときを回想するエピソード。

『この手が、指が』は、十二神将の一柱・玄武と彼に助けられ、視力を得た汐という少女のエピソード。

『約定か、詭弁か』は、昌浩の長兄・成親が因縁のある妖を調伏する話。

『いつか命の終わる日が』は、収録作品中最長のエピソードで、安倍清明の榎木岦斎にまつわる思い出の回想。

最後の『狭間に見よ、夢の軌跡を』は、『そこに、あどなき祈りを』の続編で、藤原敏次を主人公としたスピンオフ的なエピソード。

どの作品も本編または他の短編集を知らないと話が通じないストーリーで、その点ではその前の巻の短編集とは異なっています。少年陰陽師ファン向けのサイドストーリー集という感じですね。

個人的には、なぜか調伏される妖の方にほんのりと同情を感じてしまう『約定か、詭弁か』が気に入ってます。

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書評:結城光流著、『少年陰陽師~そこに、あどなき祈りを』(角川ビーンズ文庫)



書評:結城光流著、『少年陰陽師~そこに、あどなき祈りを』(角川ビーンズ文庫)

2017年08月19日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行

結城光流の『少年陰陽師』第60巻に当たる『そこに、あどなき祈りを』は番外短編集で、10年前くらいの「十二刻」という小説を修正加筆したもののようです。

本編の時間軸で言うと、かなり初期のころ、まだ主人公の安倍昌弘(安倍清明の孫)が14歳で、無害な妖たちに慕われ(?)ながら、相棒・物の怪の「もっくん」と共に京の夜回りをしている頃のエピソードです。

個人的にこの時期の話が一番楽しいと思ってます。昌弘のことを絶対に名前で呼ばず、しつこく「清明の孫」と呼び続ける妖や雑鬼たちに対して、性懲りもなく「孫言うな!」と叫ぶ昌弘。「まあまあ」と宥めるかに見えて実はもっと辛辣な一撃を与えたりするもっくんなどのやり取りがのほほんと平和で可笑しい。

『そこに、あどなき祈りを』では、雅楽器・笙の付喪神から神隠しにあった若君を探してほしいという依頼が舞い込んできて、昌弘は図らずもとんでもない陰謀に巻き込まれてしまいます。9年前に頓死した昌弘の陰陽寮の先輩である藤原敏次の兄との関わりやいかに?

ストーリは「子之刻」に始まり、「丑之刻」、「寅之刻」と続いて、「子之刻」に終わります。そこから来た表題が「十二刻」。

何かと真面目でお堅い藤原敏次が、兄を慕う思いという柔らかな面を見せるいい番外編だと思います。

また「じーさま」こと安倍清明がまだまだ好々爺然として嫌味たらしく健在なところが楽しくていい。

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