徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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化学療法の準備~ドイツの健康保険はかつら代も出す(がん闘病記2)

2017年08月06日 | 健康

今週は、来週から始まる化学療法のための準備に費やしました。7月31日にがん専門クリニックに初面談に行き、治療期間とか副作用とかそういったことを話し合いました。
「抗がん剤は点滴にするけど、静脈はどんな感じ?」と聞かれたので、「細くて隠れてるので、採血も点滴もよほどうまい人でないと一発でうまく針が入らない」と言うと、「ではCVポート(Portsystem)にしましょう」と方針決定。これは中心静脈カテーテル(Zentralvenöser Katheter)の一種で、日本語の正式名称は【皮下埋め込み型ポート】というようで、上の写真のようなものです(詳しくはこちら)。

というわけで、がん専門クリニックからマルテーザー病院に戻り、手術および諸々のリスクについての説明を受けた上で同意書にサインし、翌日8月2日午後に日帰りで手術を受けました。午前11時に病院に来るように言われ、手術待機室に連れて行かれたのが12時過ぎ。手術室に運ばれたのは午後1時半頃でした。救急患者が搬送されてきたりするので、仕方がないと言えば仕方ないのですが、もうちょっとどうにかならないかなと思わずにはいられません。

埋め込み手術が終わり、目覚めルームで目を覚ましたのは午後2時半くらい。ポートが正しく設置されているか確認するためにそのままレントゲンに回されました。

短期間に3度目の手術となりましたが、これは前回2回の手術と比較にならない程、麻酔覚醒後に強烈な痛みを感じました。吐き気などの麻酔の副作用などは一切なく、ただただ痛かった!「こんなに痛いなんて聞いてない!!!」と文句を言いたくなるほど痛かったです

まずイブプロフェンの錠剤をもらいましたが、全然効かなかったので、待機室に戻ってからNovalginの点滴を3本入れてもらって、漸く我慢できるレベルまで下げることができました。そして執刀医および麻酔医の問診を受けて晴れて午後8時に病院を出ることができました。

翌8月4日に、またコントロールのために病院に行き、例によって例のごとく散々待たされた後に短い診察を受けて、絆創膏を交換してもらいました。それだけのことに4時間つぶれ、どっと疲れが出て、帰宅後はふて寝しました。

さて、多くの化学療法同様、私の受けることになる化学療法も頭髪を失うことになるのが確実なので、がん専門クリニックで頭髪喪失証明証兼かつらの処方箋を発行してもらいました。私の方から何か働きかけたわけでなく、全くのルーチンワークのようでした。

このかつらの処方箋を持ってかつらショップに行けば、健康保険にかつら代を出してもらえるわけです。通院のタクシー代とかは知ってましたけど、かつら代にはさすがに驚きました。

がん専門クリニックの看護師さんの話では、髪が落ちる前にかつらショップに行った方がいいとのことだったので、早速金曜日に行ってきました。

何事もポジティブに考えて、楽しもうと心がけているので、もちろんかつらショップでも少々遊ばせてもらいました。

   

金髪も意外に似合うと評判でしたが、選んだのは手入れの簡単な無難なショートカット。

総額は575ユーロで、健康保険は最高404.60ユーロ出してくれます。私は自己負担分の170.40ユーロをその場で払いました。残額はショップと保険の間で直接清算されることになっています。

かつらに出してくれる金額は保険によって違います。404.60ユーロというのは法定健康組合数社の限度額です。


今週はマルテーザー病院から入院費の請求書も来ました。

11日間の入院で、トータル110ユーロです。もちろんこれは自己負担分のみの請求で、実際の入院および手術費用の総額は不明です。民間保険であれば、総額の請求が患者に来ますが、法定健康保険組合の場合は請求が保険の方に直接行ってしまうので、費用に関して患者は蚊帳の外です。この点は、「医療費はタダ」のような誤った感覚を冗長させるという批判もあります。私自身も請求書のコピーくらいは欲しいなとは思います。ただの好奇心からですが。

それでも「医療費はタダ」などと思ったことは一度もありません。なにせ毎月約680ユーロが健康保険料として支払われていますから。私の負担分は361ユーロで、残りは雇用者が払っているわけですけど、年金保険料に次ぐ大きなポジションです。

 

ところで、がん専門クリニックに行った翌日にクリニックから私の主治医宛の手紙のコピーが届きました。CVポート埋め込みの件と8月8日から化学療法が開始される旨を知らせるものでしたが、その後に「稀に臓器損傷、生命の危険または死に至ることがある」とまるで何でもないことのようにさらっと書いてあってびっくりしました( ゚Д゚)

確かに、インフォームドコンセントでそのようなリスク諸々について知らされていましたけど、患者用資料は補足的な説明が多く、不安にはなっても、かえって本質的なリスクを把握しにくい面もなくはないと思います。

しかし医者同士のやり取りではそうした「盛り」が一切削ぎ落とされ、端的な事実が言及されているわけです:臓器損傷、生命の危機または死(Organschäden, Lebensgefahr und Tod)。これはかなりぐっさりと心に刺さりますね。しばらく言葉を失っていました。

しばらくして「稀に」という言葉に一種の希望を見出して、気持ちを立て直した次第です。なかなか心の平静を保つのは難しいですね。

 

退院してから一週間以上になりますが、毎朝の血栓症防止注射 Clexane を自分で注射することにまだ慣れずに試行錯誤を繰り返してます。

刺す場所や角度によって痛みが強かったり、青あざが大きくなったりするので、難しいです。

太腿はもう注射跡だらけ。あと5週間がまん。

 

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書評:Kelly A. Turner著、『9 Wege in ein krebsfreies Leben(がんが自然に治る生き方)』(Irisiana)