海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「中国は、オリンッピク競技会をコントロールできない」と題する『シュピーゲル』誌の論説。

2008年04月12日 | 中国の政治・経済・社会
サブプライム後に何が起きているのか [宝島社新書] (宝島社新書 270)
春山昇華
宝島社

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 彼女の母ゼン・ジンヤンの腕に抱かれた生後4ヶ月のチアンシのイメージを、念頭から追い払うのは難しい。この少女は大声で泣き叫んでいた。彼女のくしゃくしゃの顔は恐怖そのものだった。もちろん、彼女は、なぜ、カメラのチームが彼女に覆い被さっているのか、フラッシュでまぶしくしているのか、その理由をしらない。彼女が耳にしているのは、政府をののしる母親の声であり、彼女が目にするのは母親が涙をぬぐう様子である。 母親は、彼女を自分たちが住んでいる地区へと連れ帰る。それは、北京の郊外にあるトンズー地区であって、「ボーボー・自由市」と呼ばれている。
 その名前は皮肉のかたまりである。チアンシは少なくとも彼女の幼年期を34才の父親フー・ジアなしでこの「自由市」で過ごすだろう。北京の地方裁判所は、国家権力の転覆を企てたという理由で、反体制派のフーに3年半の禁固刑を宣告した。実際は、彼はインターネットで中国政府に批判的な記事を公表しただけである。
 実際、裁判官がこのコンピューター専門家に有罪の判決を下した理由は、彼が第21回オリンピック競技会に来るお客さんに一種の歓迎のメッセージを公表したからである。中国政府の目から見ると、フーが書いたことは、統治システムを危険に曝すのだ。フーは、昨年9月に、訪問者のための公開状の中で、次のように書いた。「北京へおいで下さい。でも、この巨大なお祝い、花の海、ホステスの微笑、花火の歓迎など共産党によって指令されたモットーの下での「調和の喚起」には、ひどく暗い側面があることを忘れないでください」と書いたのだ。「中国には、選挙はなく、宗教上の自由もなく、独立の裁判所もなく、独立の労働組合もない。中国では、効果的な秘密警察が拷問と弾圧を行い、政府でさえも人権を侵害し、国際的義務を守る準備もない」と書いた。
 もちろん、これらの言葉は、北京でのオリンピック競技会の狂騒の結果としてアパートを失った請願者やエイズの患者のためのキャンペーンを何年も行ってきた人の言葉だ。彼の見解が真実だということは、彼が現在、直接自分の身に経験していることである。これらは、中国にとって、オリンピック競技会にとって、又残りの世界にとって暗い日々である。(以下省略)
[訳者の感想]これは、シュピーゲル誌の6人の極東特派員を総動員して書かれた非常に長い論説の冒頭です。
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「中年は今、現金がほしい」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2008年04月12日 | 社会問題
哲学個人授業-<殺し文句>から入る哲学入門 (木星叢書)
鷲田清一,永江朗
バジリコ

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 経済・社会の研究者であるマインハルト・ミーゲルは、将来、世代間に取り分の戦いが起こると予想している。連邦政府が決定した行過ぎた年金増額は、老齢化している社会の展開にとっての先駆けである。「これらは最初のツバメです」と「経済と社会研究所」(IWG)所長のミーゲルは『ヴェルト・オンライン』との会見で述べた。「われわれは老人共和国に至る途中なのです。」
 ドイツではますます少子化が進むと同時に、老齢化が増大している。将来、老人が選挙権者の多数を占めるだろう。「共和国が既にいま次の選挙をにらんで改革しなければ、このことは、私を悲観的な気分にしますね」とミーゲルは言った。というわけは、彼は年金生活者が自発的に比較的若い世代の負担可能性に配慮し、自分たちの要求を引き下げるとは予想していないからである。「中年の人口集団には時間の余裕はなく、現在、現金をほしがっている」と社会研究者は言う。
 子供を持たない人たちの割合が増えていることも、社会に巨大な影響を与えている。1965年生まれの女性の3分の1には、子供がいない。子供を産むという行動が変化しないと仮定すると、この年齢のグループには、将来も孫はいないだろう。「若年世代が老年世代の年金を支えるというこの世代間構造は、その場合にはもはや存在しません」とミーゲルは言う。「そえゆえ、社会のシステムにおいて、祖母とその孫の間の配分は、問題になりません。」
 ミーゲルの予言によると、現在成長している世代には、どんどん増大する税負担と支払い負担をする覚悟はできてないだろう。「若い世代は、負担を免れる手段や方法を見つけるでしょう。」この過程は、既に始まっている。普通の市民は、今日既に、過大な要求をされていると感じている。17年前から、すでに、市民は、彼らの実質所得が改善されていないと感じている。実質所得は、それ以来平均して約1,500ユーロ(24万円)にとどまっている。
 それゆえ、政治によって想定された年金保険や健康保険や介護保険の増額を国民が文句も言わずに引き受けると信じることは無理である。年金保険だけでも、2030年までに、現在の所得の19.9%から23%に増えると予想されている。その際、長期的予測は、経済的発展が持続的に増大することを前提している。だが、それは、グローバル化と厳しい競争から見て、決して確実ではないのだとミーゲルは言う。「だから、ドイツの社会システムは、非常にあやふやな磯の上に成り立っているのです。」(以下省略)
[訳者の感想]日本でも、年金が果たして貰えるのか、健康保険や介護保険の負担がますます増えるのではないかという漠然たる不安がありますが、ドイツでは元大統領や社会学者までがはっきりものを言っているなという気がします。今の日本政府にとてもこんな予測をする勇気はないでしょう。
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