海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「ディルバート戦略」と題するポール・クルーグマンの論説。

2008年04月01日 | アメリカの政治・経済・社会
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 大きな組織で働いた人なら誰でも、「組織図」には詳しい。なすべきことについて、自分自身にアイディアが欠けていることを隠すのに、マネージャーは、時に、誰が誰に報告するかを示すボックスやラインを置き換える。
われわれにはブッシュの行政府が形式上は今日公表される予定の金融改革のための新しい提案の背後にある原理が何であるか理解できる。それは実質的なことは何もしないで、現在の危機に対応する外観を作り出すための提案なのだ。
 過去数ヶ月間の金融上の出来事、特に過去数週間の出来事は、米国の金融システムが大きな改革を必要とするということを、すべての人に確信させた。改革がなければ、われわれは次々に危機に陥るだろう。そして、危機は次第に大きくなるだろう。
 ベア・スターンスの救済は、特に、パラダイムを変える出来事だった。伝統的な、預金を預かる銀行が、1930年代から規制されたわけは、世界大恐慌の経験が銀行の失策がどのように経済全体を脅かすかを教えたからだ。しかしながら、ベア・スターンズのような「貯蓄とは無関係な」機関が規制されなかった理由は、「市場の規律」がそれらが責任をもって運営されることを保証するはずだったからだ。
 だが、いざというときになったら、FRBは、あえて市場にその成り行きに進むように規制させなかったのだ。その代わりに、FRBは、ベア・スターンズの救済に向けて突進し、納税者の何十億ドルもの税金を危険に曝した。その理由は、主要な金融機関の崩壊が財政システムを全体として危険に曝すことをFRSが恐れたからなのだ。
 そして、ベア・スターンズのような金融機関が、以前には預金銀行にのみ限られた救済を受けるとすれば、その意味は明白であるように見える。つまり、それらの金融機関も銀行と同様、規制されるべきなのだ。
 しかし、ブッシュ行政府は、政府による金融産業の監督を廃止しようと過去数年を費やした。事実、新しい計画は、もともと、「競争力ある金融サービス分野が世界を指導し、引き続き経済的革新を支持するのを促進するように」構想されたものだ。それは、巨大な金融オペレーターをうんざりさせる規制を取り除くための銀行家の言い分である。
 路線を変更して、拡大した規制を求めるために、行政府は、その「自由市場イデオロギー」を放棄しなければならないだろう。そして、行政府は、このイデオロギーが間違っていたという事実に直面しなければならないだろう。しかし、この政府は自分が間違いをしたということを絶対に認めないだろう。
 そういうわけで、月曜日に行われた演説原稿で、ポールソン財務長官は、「現在の混乱に対するわれわれの規制構造を非難することは、公平でも、正しくもないだろう」と宣言したのだ。(後略)
[訳者の感想]現在、FRBや米国財務省がやっている金融機関への規制強化は、これまでの市場自由主義と矛盾していることを鋭く指摘した論説だといえるでしょう。『ニューヨーク・タイムズ』紙に載った経済評論です。
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