海外のニュースより

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「刑務所の民営化は、はやりそうだ」と題する『ヴェルト』紙の記事

2006年12月07日 | 犯罪
ベルリン発:囚人第一号は、政治家だった。ヒュンフェルトの法務刑務所(JVA)が2005年12月8日に開所される数日前に、ヘッセン州の法務大臣ユルゲン・バンツァーは、独房の狭くて硬いベッドで一晩を過ごした。自分はすばらしく良く眠ったと翌朝、彼は断言した。ただ窓の前の鉄格子と閉める際に重い独房の扉が反響するのが普段と違った。
法務相のベッドのテストには、政治的な背景があった。というのも、ヒュンフェルトは、普通の監獄ではなく、ドイツで最初の部分的に民営化された刑務所であり、同時にヘッセン州政府の先端的なプロジェクトである。州首相のローラント・コッホにとって、重要な点は、その際、国家主権の使命を根本的に新しく定義することであった。「国家は、それが私的なものよりもよくなしうることだけをするべきだ」とコッホは言う。「食事を調理することを国家が特に良くなしうる使命だと見なすことは、私には行き過ぎているように思われる。」
 それゆえ、ヒュンフェルト刑務所の勤務者のわずか55%が公務員である。彼らは治安を担当している。これに対して、211人の勤務者のうち、95人は民間の会社セルコから派遣されている。彼らは掃除から調理まで、麻薬のカウンセリングから、医師まで、世話サービスを引き受けている。510名の囚人に対する営業費用は、国立の監獄のよりも一年間で66万ユーロ(9,900万円)だけ安い。ヒュンフェルト刑務所の建設費6400万ユーロ(96億円)は、民間のゼネコンに委託されることによって、比較できる国家施設におけるよりも半分以下であった。
 開所後一年経って、バンツァー法務相は、「公と私のパートナーシップ」のモデルは成功したと評価している。「公務員とセルコ社従業員との協力も、摩擦なく行われている」と刑務所長のヴェルナー・ペッケルトは言う。「この構想は私の期待を上回った。」
 ヘッセン州以外の州もヒュンフェルト・モデルを導入すると告知している。ザクセン・アンハルト州では、2007年に最初の民間からの財政援助による、公的私的協力で経営される監獄の建設が始まる。当初の建設予算7億3600万ユーロ(1,104億円)の代わりに、州政府は、予想される650人の囚人に対して5億1200万ユーロ(768億円)の建設費を見込んでいる。法務省広報官のウーテ・アルバースマンによると、そこで重要なことは、ユーロ圏全体にわたる入札手続の際、民間の利害関係者が相互にしのぎを削った点である。「そこで可能であることに皆驚いている。」
 バーデン・ヴュルテンベルク州では、12月1日に、オッフェンブルク刑務所の鍬入れ式が行われた。ウルリッヒ・ゴル法務大臣は、刑務所の部分的民営化に対して、10%から15%の経費節約の可能性を期待していると言っている。ニーダーザクセン州のエリザベート・ハイスター=ノイマン法務相は、「私たちは新しい刑務所を公私共同経営の形で運営するだろう」と告知した。
 ヒュンフェルト・モデルの反対者達は、なかんずく、概念上の問題で気分を害している。そういうわけで、ベルリン市とチューリンゲン州とは、彼らが刑執行の部分的民営化を拒否するという確認に大きな価値を置いている。だが、計画中の新しい刑務所建設では、ソーシャル・ワークや建物の管理が民間によって引き受けられるということは、否定されてない。
 「ドイツ刑務所職員同盟」(BDSB)の異議は、もっと真剣に考えられなければならない。同同盟の議長アントン・バッハルは、「ヒュンフェルトは、まだ全く真剣に評価するわけにはゆかない。なぜなら、プロジェクトを成功させるために、この刑務所には無害な囚人ばかり収容されているからだ」と言っている。「厄介な若者達は、国営の刑務所に残っている。公的に有効な夜間勤務は別として、民営化された刑務所に対する政治家の信頼は、まだそこまで及んでいない。あそこで何かが起こったら、政治家の首が飛ぶだろう」と彼は言っている。
[訳者の感想]民営化の波はついに刑務所にまで及んできたようです。しかし、ドイツでは刑務所建設でヨーロッパ中の建設業者が入札に参加できるというのがすごいと思いました。談合ばやりの日本では考えられませんね。
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