海外のニュースより

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「米中関係に冷水」と題する『ガーディアン』紙の論説。

2007年06月15日 | 中国の政治・経済・社会
 米国がロシアとの関係が凍結されるのを止めようともがいているときに、中国の軍事的増強についての国防省の新し報告書に従うと、はっきりした冷気が北京の扱い方に降りてきた。リチャード・ニクソンのほうが、両方の超大国と対抗することをよく心得ていた。このような智恵は、ジョージ・ブッシュを悩ませている。
 グローバルな野心をもった中国の地域的経済的な権力としての急速な台頭に注目して、国防省は、その拡大する軍事力と、それがどのように行使されるかをめぐる不確実について苦情を述べた。中国の短期的焦点は、「台湾海峡の軍事的緊急事態である」と報告書は述べている。しかし、中国は、資源や領土を巡る可能な紛争に備えて、軍事力をアジア・太平洋地域を離れてもっと遠くに投影しようと計画している。
 国防省は、中国の強化された長距離ミサイルの能力をもった五隻のジン級潜水艦という新しい艦隊の展開に対して異議を唱えた。一月に実施された、人工衛星破壊ロケットのテストの成功は、すべての宇宙空間利用国の資産を危険に曝し、人類の宇宙飛行に対して危険を引き起こした。そして、米国のいわゆる戦場や宇宙、サイバースペースにおける技術に対抗する中国の能力に対して異議を唱えた。
 中国共産党指導層の「平和的台頭」のスローガンに挑戦して、米国の国防計画立案者達は、「中国の行動は、ある領域でその宣言された政策と矛盾しており、防衛費は、公開された数字を遥かに超えている」と主張した。そして彼らは二つの問題にハイライトを当てた。
 日本との緊張関係は、昨年11月の北京サミットの後いくらか収まったが、「東シナ海における領土の争いと国連安保理の議席を得ようとする日本の要求をブロックする中国の努力は、依然として摩擦の源泉である。」報告書はまた、北京によって裏切り者の領土と見なされているが、その独立が、事実上、米国によって暗黙の内に支持されている台湾は、依然もっともありそうな発火点であると警告した。
 「中国の軍事力近代化と対岸の島に対する戦闘能力の増強とは、和らげられていない。力の均衡は本土に有利になりつつある」と報告書は述べている。台湾は、防衛費を増額しているが、来年3月に台北で行われる大統領選挙は、更に米中両国の緊張を悪化させるだろう。台湾政府の役人は、最近、自分たちが中距離弾道弾や大量破壊兵器の獲得を計画しているということを否定したが、国際政治部局は、どうすれば中国を思いとどまらせることができるか、引き続き検討している。
 国防省の批判に対する中国の反応は、頑強で巧妙だった。外務省は、中国の内政に対する「乱暴な干渉」を遺憾であるとした。公式の『中国日報』は、報告書が米中関係を混乱させようとする米国タカ派による露骨な試みであると示唆した。「事実を無視し、いわゆる中国の軍事的脅威を宣伝することによって、報告書は長持ちする足を持っていない」と述べた。
 シンガポールの「国際戦略研究所」の講演で、人民軍参謀本部の補佐官であるジャン・チンセン陸軍中将は、「米国の恐れは誇張されている。中国は、平和的発展の道を選んだのだから、歴史における台頭する国家とは違っている。中国は、本性防衛的な防衛政策にずっと固執してきた。中国は決して先に発砲しないだろう」と述べた。ジャン中将は、中国の防衛予算の数字は、「真実で、本当だ」と主張した。「われわれが直面している多様な治安を見れば、支出総額は、米国と比べてかなり少ない。」
 西欧と台湾のアナリストは、中国の台湾戦略は、将来の紛争の際、米国の航空母艦を寄せ付けないことによって、米国の軍事的介入を止めさせることである。それは主にミサイル発射潜水艦の使用によって可能になる。しかし、中国は、ワシントンの圧倒的な核優位を含む米国の能力についても関心を持っている。米国が1万発の核弾頭を持っているのに対して、中国は、400発しか持っていない。
 増大する国際的利害と傷つきやすい中近東の石油供給路を持ったグローバルな貿易国として、中国の軍事力拡張計画は、殆ど例外的だとは見られなかった。むしろ、中国は既成の西欧的伝統に従っている。ブッシュのグローバルなミサイル防衛計画は、ロシアとの摩擦の種であるが、それれは東アジアの軍事的平衡を更に複雑にした。
 ミサイル防御に関する日本との協力は、公式には北朝鮮を思いとどまらせようとしているが、モスクワと同様、北京に、ブッシュ政府が、透明性を強調しているものの、話の全体を述べているかどうか、疑いの目を向けさせている。
[訳者の感想]『ガーディアン』紙の論説委員であるサイモン・ティスダルの論説です。かなり中国寄りと言えるでしょうか。
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1 コメント

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覇権国家 (yosi29)
2007-06-20 06:49:00
覇権を維持しようとする国家と覇権を獲得しようとする国家の茶番。
その茶番のとばっちりを受けるのが怖い。
イラクに侵攻するアメリカ。
ベトナムへ懲罰侵攻した中国。
アメリカの懸念に1票。
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