海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「ガンは、知性の代価」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2009年06月25日 | 健康
人間とサルを生物学的に区別するいくつかの事柄のなかに、サルはほとんど決してガンに罹らないという事実がある。類人猿のたかだか、2%だけが、ガンになった。人間の場合、五人に一人はガンが死亡原因である。なぜそうなのか?科学はこの理由をかなり以前から知っている。人間がガンに罹りやすいのは、人間がサルよりも高度に発達したからである。言い換えると、サルより悧巧だからだ。
もっとも、容易に思いつく帰結に対して、米国の生物学者たちは一つの待ったをかけている。つまり、人間におけるガンリスクは、いかなる場合も、悧巧でれあればあるほど、ガンに罹りやすいという規則には従っていないからである。そうではなくて、事態は、人間における非常に発達した細胞構造とつながりがある。
米国の生物学者たちは、人間とチンパンジーにおけるいろいろな遺伝子の働きを比較した結果、人類は彼らの知性に対して高い代価を払っていると考えている。彼らのテーゼによると、身体を構成する細胞の持っている自己破壊のメカニズムが進化の過程で、人間の場合、途中で止まってしまった。その結果、一方では、人間の脳は、これほど遠慮なく発達し、ネットを展開し、それまで生物学的には不可能だった結合を可能にした。しかし、他方で、止め処ない細胞の増殖が可能になった。ある細胞が悪性になった場合、それを止めることは、自然な細胞の自殺プログラムの厳格なコントロールの下では可能であるよりもずっと難しい。このテーゼは、実際、証明することは難しいとアトランタにあるジョージア工科大学のジョン・マクドナルドと彼の同僚たちは、書いている。にも関わらず、そのテーゼが依存している生物学的事実が存在する。
人間とチンパンジーの脳にあるどの遺伝子がそれどほど強力に活動しているかを研究者たちは比較した。その結果次のことが分かった。活動は、特に「アポプトーシス」の操作に責任がある遺伝子領域に違いがあることが分かった。「アポプトーシス」というのは、ギリシャ語に起源のある言葉で、「プログラム化された死」と訳されている。イメージを使って、一つの細胞の自殺について語ることが出来る。それは隣接した細胞にも伝染する。この自己破壊プログラムは古い細胞を片付けるのに役立っている。たとえば、妊娠後の胎胞や病的に増殖する細胞を破壊する場合がそうである。人間においては、この自殺プログラムの機能が、チンパンジーにおけるよりも働いていないことが確認された。大脳だけでなく、他の器官、たとえば睾丸、心臓、腎臓、肝臓でもそうである。
おそらく人間の進化の過程のどこかで、脳細胞において自己破壊プログラムが減退することは、長所であることが分かったのだろう。より少ない細胞が破壊され、大脳の質量はどんどん増えた。だが増えたのは良い細胞だけでなく、悪い細胞も増えた。これに対して、チンパンジーにおいては、細胞の自殺プログラムは常に機能し続けた。そのために、彼らの脳には明らかに限界が置かれたのだ。(後略)
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