海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「ガンに対する戦いの新たな手段を開発」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2008年08月15日 | 健康
 身体に固有のガン防御における困難な点は、免疫組織のもつキラー細胞が、ガン細胞をそれとして認識しないか、あるいは、ガン細胞にとりつかれた組織にまで到達できないことである。そうすると、転移は広がり、腫瘍は更に増殖する。
 それゆえ、ガン研究者達は免疫細胞をガンに対して「鋭敏に」しようと試みている。彼らは、キラー細胞を特に悪化した細胞に対して向かうように、身体に固有の防御を操作しようとしている。科学雑誌『サイエンス』の中で、ヴユルツブルク大学のラルフ・バルゴウを中心とする研究者たちは、リンパ腫瘍患者の治療で大きな成功を収めたと報告している。その治療手段は、特殊な抗体である。
この特殊な抗体は、ミュンヒェン大学の研究者であるゲルト・リートミュラーが10年前に既に実現した夢である。当時、彼は一つではなくて二つの抗体を認識できるように遺伝子技術的に樹状細胞を作成することに成功した。通常、抗体は、その短いY字型の二つの腕で一種のパートナーと結びつく。だが、非対称的分子は、二つの異なるパートナーを結びつけることができる。「こうして、それらは橋を作る。われわれの抗体「ブリナツモマブ」の場合には、非対称的分子は、事実上、その一本の腕でリンパ腫瘍の細胞を固定し、もう一つの腕でキラー細胞を捕まえる。こうして、キラー細胞は、ガン細胞を自分の近くへ引き寄せる。そして、ガン細胞に有毒な内容を直接注入することができるのだ。」これはガン細胞の死を意味する。
少量の抗体で十分だと研究者達は強調する。「在来の抗体治療法よりも、1万分の一の量で足りる」とリートミュラーは言う。重要なことは、これらの抗体があらゆるキラー細胞を活性化できることである。抗体は、一つの一般的なキラー細胞のボタンを押す。「われわれは将来、乳ガンや前立腺ガンに罹っている患者をも助けることができるだろう。」これらのガンは、骨髄に散らばる。そしてここで新しい抗体は効力を発揮する。
ガンに対する戦いにおいて、患者の免疫システムを投入するというアイデアは、それほど新しくはない。この研究の父であるスチーブン・ローゼンバーグは、現在、ベテスダの「国立衛生研究所」で働いている。この腫瘍学者は、治療なしに不治の胃ガンを克服したある患者と知り合いになった40年前にすでにこのアイデアを持っていた。
1990年代に、ローゼンバーグは、致命的な黒色腫に罹った何人かの患者を単純な抗体療法で治療することができた。ドイツでも、卵管ガンの治療の際、幾つかの成功例があった。特殊抗体による成功例は、これまで、38人しかないけれども、それは身体に固有なガン治療にとって新たな時代を導入しつつあるように見える。
[訳者の感想]日本では、免疫療法学会もありますが、ガンの治療法としてはあまり高い評価を受けていないように見えます。これまで、治癒率が高くないせいでしょうか。
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