海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「私たちは同じボートに乗っている」と題するイスラム法学者とのインタビュー

2005年05月15日 | 国際政治
『ヴェルト』紙5月14日号に掲載されたカイロのアル・アズハル大学教授アリ・ゴマとのインタービューです。
ベルリン発:アリ・ゴマは、エジプトのイスラム法学者で、全世界の13億人のイスラム教徒の90%が属しているスンニー派イスラム教の法律及び社会政策についての権威である。彼はカイロのアル・アズハル大学で教鞭を執っている。ゴマは、リベラルなイスラムの宗教見解(ファトワ)のゆえに、何度も話題になった。例えば女性の先唱者やヴェール着用についての議論において話題になった。彼と対談したのは、ミヒャエル・シュテュルマー、カール・ホーエンタール、ディートリヒ・アレクサンダーである。
--あなたはイスラム世界との宗教間対話に関して、新しいドイツ人のローマ法皇に何を期待されますか。
アリ・ゴマ:イスラム世界は、ベネディクト16世が彼の前任者の路線を継承するだろうと期待しています。ヨハネ・パウロ2世は、イスラム教との対話を開始し、まさに今日非常に重要な相互の理解に貢献しました。
--ヨハネ・パウロ2世の死と彼の後継者の任命は、キリスト教徒の間に宗教的喜悦のようなものを生みだしました。この宗教心の革新は、イスラム教においても、世界的な現象でしょうか。
ゴマ:ポーランド出身の法皇は、寛容を旗印にしました。だから、宗教的実践の革新について語ることができるのです。このことは、われわれが生きているこの世界ではとても大切です。それは諸宗教が共生するための必要な第一歩です。私ならそれを宗教の革新とか改革とか言わず、本当の宗教の再生と言うでしょう。新しい法皇について私の知っていることは、彼がこの道を続けるだろうという私の意見を裏書きしています。
--それは具体的に言うとどういう意味ですか。私たちは「文化の対立」を望みませんが、それを防ぐのに私たちは何をすべきでしょうか。
ゴマ:イスラム教がドイツの学校でどのように伝達されているかについては、科学的な研究が存在します。その研究が示しているのは、われわれの宗教について間違ったイメージが教えられているということです。われわれが、われわれの青少年のところで他の宗教についてどのような理解を呼び起こすことができるかに多くのことが依存しています。その際、非常に重要なのは、正しい情報であり、正しい教科内容です。自爆があると、メディアは、すぐにイスラム教徒のテロリストの仕業だと言います。しかし、犯人がイスラム教徒でない場合には、彼らは決して犯人の宗教が何であるかを言いません。あなた方は例えばあれこれのテロ行為がカトリック教徒や仏教徒やヒンヅー教徒によってなされたとメディアが報道しているのを一度でも聞いたことがありますか。けれども実際は、テロリストは、われわれの共通の敵だということです。エジプトのアンワル・アル・サダト元大統領の暗殺を思い出せば、あなた方よりも私たちのほうがテロリズムの被害者なのです。あなたがたと私たちは、同じボートに乗っているのです。私はあなたがたにテロリストに対する共同の戦いを呼びかけます。西欧世界は、十把一からげに扱うことを止めるべきです。あなた方は、13億のイスラム教徒を、わずかなイスラム教徒の行為のために、同類扱いすることはできません。自爆テロを禁じているかなり多くのイスラム法学者がいるのです。
--ですが、アル・アズハル大学のモハメッド・サイエド・アル・タンタウイ師は、イスラエル人に対するパレスティナ人のテロ攻撃は許されると言いませんでしたか?
ゴマ:マス・メディアは、私たちにとっては、いつも大きな問題です。それが省略したり、歪めたりするからです。タンタウイ師については、パレスティナ人のテロ攻撃についての具体的な言明や評価は存在しません。なぜなら、すべてのイスラム法学者は、中東紛争を政治的対立と見ていて、宗教的対立とは見なしていないからです。私たちは、パレスティナ人のテロ攻撃にどう反応するか、どう評価するかは政治家達に任せているのです。
--イスラム世界では、民主主義的構造に向かういくつかの展開が見られます。イラクやレバノンの選挙、サウディ・アラビアや他の湾岸諸国の地方選挙がその例です。これは民主化の波なのでしょうか?
ゴマ:私たちは、エジプトでは、150年前から民主主義を実践しており、世界の民主主義的発展と歩調を合わせています。しかし、私たちには、他の優先性を強いるいくつかの内部の問題があります。そういう訳で、私たちは36%の文盲を抱えています。これは、民主主義に最善の形で到達するのに大きな障害です。その上、高い失業率や、高い人口増加率があります。これらのファクターすべては、私たちが手に入れたいと思っている種類の民主主義を定着させるのを妨げています。
--フランスでは、学校でのベールの着用禁止令が発効しました。アル・タンタウイ師は、それに対して、このような禁止を決議することは、フランス政府の権利であると言いました。あなたもそういう意見ですか?
ゴマ:有り難いことにこの件については意見の相違はありません。しかし、大法学者の宗教見解には、その前の歴史があるのです。彼は第一に「ヴェールを被ることは宗教的義務である」と言いました。第二に、政治家は誰もこの義務を疑う権利はないのです。しかし、第三に、「すべての国には、その法的決定に関して主権を持っており、それに介入する権利はわれわれにはない」と彼は付け加えたのです。それは、外国人がわれわれの国内の事柄に介入することが許さないのと同様です。フランスの法律によって、フランスに住むイスラム教徒は、困った状況に追い込まれました。しかし、彼らは、われわれの宗教の規定にしたがって、女性がヴェールを脱ぐことを認めたのです。
[訳者の感想]イスラム教の法学者の間ににもいろいろな意見があることが分かります。ゴマ師などはやはりリベラル派のイスラム教徒と言うべきでしょうか。
コメント (1)
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