24日(土)~25日(日)の2日間、藤枝市の人と農・自然をつなぐ会(無農薬茶の会)が主催する第34回お茶摘み交流会に参加しました。先日、吟醸王国しずおか映像製作委員会斗瓶会員の地域見学ツアーでお世話になった杵塚さんにお礼がてら、自宅の冷蔵庫にある未開封&飲みかけ酒と寝袋を持参して、斗瓶仲間のオフィストイボックス(デザイナー)高島さん&櫻井さんペアと3人でうかがいました。
24日は小雨が降りしきる寒い日。しかし会場となった杵塚家のそばの集会所には、100人を超える参加者でごったがえしています。県内外から集まった学生、子連れファミリー、サラリーマン、中高年夫婦、女性グループ、外国人等など、「老若男女」ってズバリこういう集団を指すんだとナットクできるほどあらゆる年齢階層の人々がそろっています。
集合時間の13時を過ぎると、集会所の奥の部屋でお茶の手揉み体験が始まりました。手揉み師の作業を取材したことはありますが、自分で揉むのは初めて。揉んだ後は手のひらの内側がつるつるピカピカしていて、緑茶のなんともいえない上品な芳香がただよってきます。お茶が石鹸や化粧品に使われる理由がなんとなく解りました。
14時ぐらいから、集会所中央の大部屋でそば打ち体験がスタート。そば打ちも、体験施設の取材は何度もしていますが、自分で打つのはほとんど初めて。粘土遊び感覚の子どもたちや、何から何まで興味津津という外国人に混じって、こねたり広げたり刻んだりと、ひととおり体験させてもらいました。
そば打ちの経験や趣味があり、一家言ありそうな人が、それぞれ自分の打ち方や時間配分を押しつけようとして、「教えてもらったやり方と違うじゃん…」と内心ムッとしたりして(苦笑)、あぁ、だから手打ちそばってハマる人が多いんだな~とナットクしました。
16時からは、アメリカのお茶専門誌『World Tea News』の主筆・リンジー・グッドウィンさんが、アメリカの緑茶事情について興味深い講演をしてくれました。
『World Tea News』は5年前に創刊し、2年前から週刊発行になった専門誌だそうで、「こういう雑誌が毎週発行され、お茶専門のジャーナリストが執筆する場があるということは、それだけアメリカにお茶ブームが起こっているわけです」とリンジーさん。
アメリカで緑茶が注目され始めたのは90年代以降で、2005年ぐらいから本格的にブームとなり、専門店が次々とオープンしました。ブームの発端は「健康にいい」からだったものの、アメリカでは健康食品は効能表示が厳しく、「健康にいい」をお茶の謳い文句にするのは難しい。かといって、嗜好品として見たら、「苦い」 「体にいいお茶は往々にして美味しくない」というイメージでとらえられます。
サンフランシスコの『サモーバ』というお茶専門カフェで素晴らしい緑茶に出会ったリンジーさんは「お茶が美味しくないという先入観は、間違ったお茶の淹れ方や質の良くないお茶が原因。アメリカ人は日本のお茶のことを正しく知る必要がある」と強く思ったそうです。
アメリカ人が知るべき日本茶の知識としては、
①淹れ方、とくに湯を冷ます・短時間で注ぐなど紅茶との違いを知っておく、
②緑茶のほか、ほうじ茶や玄米茶など幅広い味を試し、日本茶の旨みを体感する。抹茶味のチョコやスイーツはアメリカでも人気があるが日本産以外の抹茶も少なくない。なぜ日本産がいいのかを知る必要がある、
③茶文化を知る。茶の湯や茶室空間の意味や、産地・製茶の技術など。コーヒーのことはよく知られるがお茶の産地や製法はほとんど知られていない。
「アメリカには様々な国の茶文化が混在し、それらが融合してアメリカ独自の茶文化が生まれつつある。茶の湯、わびさび、和菓子の味わいなどもアメリカ人はまったく新しい文化として柔軟に受け入れ、アレンジする。そんな文化的興味と、お茶の味そのものへの理解を深めていきたい」と語るリンジーさん。こういう人が藤枝の山奥まで来てこういう話をしてくれるなんてスゴイ!と単純に感動してしまいました。
夜は、摘みたて山菜の天ぷらや煮物を肴にした大宴会。私も吟醸王国しずおかのPRと、持参酒の紹介をし、県外からの参加者にはとくに「日本酒がこんなに美味しいなんて」と喜んでいただきました。こういう場でいい酒をケチらないのが地酒伝道には必要なんですね(笑)。
宴会の後は、20年前の大学教授の講演ビデオを観賞し、無農薬の茶畑より農薬をかけた茶畑のほうが害虫が多いという科学的説明に一堂ナットクしました。面白かったのは二番茶を紅茶にするとき、害虫の中の害虫といわれるウンカがかじった茶葉が、なぜかものすごい美味しい紅茶になるという話。アジアの紅茶産地でも同じだそうです。ウンカのついた茶葉は、自分で細胞を再生させようとさまざまな酵素を作り出そうとする。その酵素が紅茶製法にプラスに作用するのでは?とのことですが、はっきりした理由はまだ解明されていないそうです。歴史の長い飲み物なのにまだまだ未開拓の部分があるんですね…。杵塚さんには「ウンカの紅茶ってプレミアつけて売れるかも(笑)」と提案しました。
翌25日は快晴で、お茶摘みには絶好の陽気。低温の影響で茶葉の生育が遅れる中、無農薬茶の会のみなさんがいろいろと準備をしてくれて、摘み取り可能な高地の茶園まで案内してくれました。
日焼けを気にしながらお昼前までたっぷり茶摘みをして、お弁当をいただいて終了。まる24時間、お茶の里の暮らしに浸かり、全身が浄化された気分になりました。と同時に、自然と向き合い、生きる糧を育てて供給する仕事の偉大さを改めて学びました。
こんな充実した体験交流会を34年も続けておられる杵塚さんファミリーと、無農薬茶の会のみなさまに心から感謝いたします。灯台もと暗しといいますか、身近でこんなに素晴らしい体験ができることの幸せをかみしめています。ありがとうございました。
なお交流会の様子はこちらもぜひご覧ください!