8月29日(土)開催の第35回しずおか地酒サロン「地酒は地域の元気のミナモト!」は、月末週末選挙前のハードな日程にもかかわらず40名のみなさまにご参加いただきました。まずは、開催にご協力いただいた会員の方々、当日参加の方々、アンケート等にご協力くださったみなさまに心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
「とても興味深いテーマだけど都合がつかず参加できず残念」という声をたくさんいただいたので、このブログできちんとご報告するつもりでしたが、ICレコーダーの操作ミスで前段の大事なトークセッションの録音に失敗してしまいました。 MC役だったのでメモや速記もしておらず、ホントに申し訳ありません・・・! 事前にいただいたアンケートと、記憶を頼りに書き起こした当日の発言をまとめましたので、当日参加のみなさま、とくにスピーカーの方々はぜひともフォローのコメントをお願いしますね!!!。
◆第35回しずおか地酒サロン「地酒は地域の元気のミナモト!~売り手と飲み手の車座本音トーク」
(スピーカー)
①高橋晴美さん(財団法人静岡経済研究所・研究員)
「静岡県の蔵元を数社調査取材して感じたのは、どの蔵元も“伝統に忠実に”“酒質で勝負する”という共通理念を持ち、みなさん同じベクトルで進んでおられるということ。モノづくりの信念が堅固でブレがないと感じました。一方、マーケティングにおいては日本酒の消費低迷が続く中、日本酒と接点のない人に向け、新たな戦略が必要な時期に来ていると思われます。地酒まつり等の販促イベント等で消費拡大に努めておられるようですが、そろそろ次のステップに移る時期ではないでしょうか」
*(財)静岡経済研究所の経済情報誌「マンスリーSERI」10月発行号にて詳細論文を発表予定です。
②塚本英一さん(酒類仲卸・塚本商店/静岡市葵区)
「私が仕事を始めた1978年ころ、静岡県酒造組合には48社加盟し、41社が稼働していました。09年現在、加盟32社・稼働28社にまで減ってしまっています。この春には杜氏後継者がいないという理由で「忠正」の吉屋酒造(静岡市葵区)が廃業し、これまでも笑千両、士魂、翁弁天、東鶴、松若、曽我鶴、入神、樹里といった取扱銘柄が無くなってしまいました。廃業の現場に立ち会うと、自身の力のなさや不甲斐なさにぶつけようのない憤りを感じます。2度とこんな思いはしたくありません。
日本酒との接点がない人へのアピールは今後ますます重要です。酒類マーケティング会社フルネットの直近(08年春)の調査によると、首都圏の一般消費者の日本酒好感度地域は①新潟、②秋田、③山形、④静岡、⑤福島という順位でした。東京の名酒居酒屋店主を対象にした調査では、①山形、②静岡、③新潟、④福島、⑤石川という順位。静岡の酒は、首都圏の酒通の間では、これほどの高評価です。静岡県内の県産酒消費シェアは未だ2割以下。まだまだ地元で地酒の価値を知らない人が多いのです。
先日、清水港の貿易関係者が集まった会合で地酒を紹介する機会に恵まれました。海外のゲストが多いと聞き、静岡県酒造組合のパンフレットを元に自分で英語に翻訳したパンフレット「Shizuoka-pref.is the land of water and a lot of "sake" of high quality is brewed here in shizuoka」を作成し、お配りしました。当社のホームページで閲覧できますので、ぜひご覧ください。海外の方は日本酒に高い関心をお持ちです。これからは「Japanese sake」ではなく、ずばり「sake」が国際語になっていくでしょう。静岡にも空港ができたことですし、新しいマーケットに期待をしているところです。質の高い静岡の酒なら、どこに出しても恥ずかしくありません」
③篠田和雄さん(酒類小売販売・篠田酒店/静岡市清水区)
「若い頃は家業の酒屋を継ぐ意欲が持てなかったのですが、昭和59年ごろ、開運大吟醸と出会い、自分の使命に気付かされた。こういう素晴らしい地酒の存在をお客様に理解していただくには、まずは呑んでもらうしかないと思い、静岡の酒が全国新酒鑑評会で大量入賞した昭和61年から、しのだ酒の会を始めました。最初は少人数でスタートし、蔵元2社に来ていただきました。少しずつ参加者が増え、今では県内のみならず県外の蔵元にもお越しいただき、参加者は200人を超える酒宴に成長しました。今年も9月13日にグランシップで開催予定です。
お客様にはいいお酒をいい状態で呑んで感動していただきたいと思って努力しているつもりですが、たまに「静岡の酒は静岡酵母を使っているから、どれも似たり寄ったりでつまらない」「クセはないが個性もない」と批判されることもあります。確かに共通点もありますが、よく味わっていただければ、香りや味わいはけっこう違うし、日本酒のこういう繊細な世界が楽しいと自分は思うんですが、それが伝えきれず大雑把に判断され、残念な思いをします」
④佐藤隆司さん(東海オリコミ社長・浜松地酒倶楽部主宰/浜松市中区)
「1996年にしずおか地酒研究会が発足した当初からこの会には参加しており、真弓さんが提唱する「造り手・売り手・飲み手の和」を浜松でも実践しようと、5年ぐらい前から愛好会を始めました。そこで改めて、静岡の酒は大吟醸から普通酒まで、どのレベルも美味しいということを実感しました。今年1月の酒の会で喜久醉普通酒しぼりたてを出したところ、他の上級酒をおさえ、圧倒的な人気でした。それだけ静岡の酒はコストパフォーマンスが高いのです。
会ではたまに県外の人気酒も用意しますが、空瓶になるのは静岡の酒ばかりで、「黒龍」「而今」「醸し人九平次」といった人気銘柄が飲み残されたりします。
会を主催するとき不便に思うのは、小売各店で取扱銘柄に偏りがありすぎて、全県の銘柄をそろえるのが大変だということ。なにも銘柄数が何十何百もあるわけではないので、ワンステップで入手できる方法を考えてほしい」
⑤後藤英和さん(酒類小売販売・ときわストア、地酒BARイーハトーヴォ/藤枝市岡部)
「私の店は藤枝市旧岡部町の山合いににあります。近くに大型の郊外ショッピングセンターができたとき、価格競争の対象になる商材は思いきって切ろうと決め、店舗の倉庫を半分にし、そこに地酒バーを開設しました。路線バスが夜7時で終わってしまい、他は交通手段がない不便な場所にもかかわらず、地元よりも遠来のお客様が多く、東京からわざわざ新幹線を使って呑みに来てくださる方もいらっしゃいます。飲食店を始めて、それだけ静岡の酒に牽引力があることを改めて実感しました。本当にありがたいことです。
小さい町の小さな商いですが、近所に初亀醸造さんがあって、水をもらったり造りの現場を見学させてもらったりと、運命共同体のつもりで仕事させてもらっています。私がこの仕事に就いたころ、藤枝市内の酒蔵は7社ありましたが、今は4社に減ってしまいました。酒造の伝統の灯を消さないよう、できる限りの努力をしていきたい。地元の酒蔵との距離の近さを大切に活かしていきます。これからは30代の女性のお客様を増やしたいですね」
⑥神田えり子さん(フリーアナウンサー・駿河地酒や主宰/浜松市東区)
「テレビリポーターとして初亀醸造を訪ねたとき、お会いした杜氏の滝上秀三さんのお言葉に感動し、酒の世界に魅了されました。「酒造り30年といっても、30回しか造っていない。まだまだ修業中です」と。それから誰に頼まれたわけでもなく「駿河地酒や」という会を始めました。毎回テーマは設けず、居酒屋さんを会場に、その店をこの日ひと晩だけ「駿河地酒や」という店にして、自分が女将になって地酒を紹介し、みなさんに楽しんでいただいています。仲間で、〇〇美人と名の付く銘柄を集めた「全国美人酒コンテスト」や、「カップ酒コンテスト」、「誉富士の酒コンテスト」をやったり、仲間で育てた米でオリジナル酒を造ったり、夫の実家の梅林で梅採りをしてそれを志太泉さんで梅酒にしてもらうなど、体験や実践を通して日本酒と親しんでいます。今後は「天浜線でほろよい電車ツアー」や「地酒で婚活」なんて企画も考えています。
会をやるとき不便なのは、佐藤さんと同様、銘柄が一度に集まらないということ。せめて県東部・中部・西部に地酒のアンテナショップ的な場所ができるとありがたいです。また消費者の立場としては、500mlで1000円ぐらいの手ごろなラインナップがあると、ちょっとしたお土産に遣いやすいです。新酒の時期に発砲系の限定酒を出す蔵がありますが、ぜひ全蔵で出していただきたいですね。発泡酒の感覚って今の若い人や女性にウケると思います」
この後、休憩をはさんで、参加者全員のトークセッション、『吟醸王国しずおかパイロット版09バージョン』試写を行いました。その模様は後日つづきで。