杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

福祉職の魅力発見ツアー2015

2015-10-04 10:17:30 | NPO

 10月に入り、グッと秋めいてきました。前回記事でご案内したとおり、静岡新聞社から17年ぶりに出版する地酒本【杯が満ちるまで~しずおか地酒手習帳】の刊行日が10月23日に決まりました。・・・ということで先月後半は校正やら何やらでバタバタして、ゆっくりブログを書く時間がとれませんでした。少し遅いご報告ですが、今日は先月参加した静岡県主催【福祉の仕事魅力発見ツアー】について紹介します。

 

 過去記事でも何度か取り上げていますが、広報をお手伝いしているNPO法人活き生きネットワーク(こちらが県から運営委託をされている福祉職人材育成事業の一環。毎月県の東部・中部・西部でセミナー講座&施設見学会を行なっています。単なる講座や見学会というよりも、求職中の人がしっかり就職できるよう、個人面談や見学先の求人情報提供等、より実践的な支援になっています。私は活き生きネットワーク事務局から添乗スタッフ急病というSOSを受け、急遽ツアーに帯同することになりました。

 9月10日の浜松、17日の沼津、29日の静岡の3日間参加し、あらためて介護福祉職へのニーズの高さ、マッチングの難しさ等を実感し、また各施設を運営するリーダーたちの高潔な精神に感動しました。施設訪問したのは以下の3ヶ所です。

 

 ◇デイサービス「ここ倶楽部」/浜松市 HPはこちら *併設の現役っこクラブ(元気な高齢者集いの場)のHPはこちら

 ◇小規模多機能型居宅介護「2人3脚」/富士市 HPはこちら *視察の様子をこちらのブログで紹介してくださっています。

 ◇社会福祉法人牧之原やまばと学園/牧之原市 HPはこちら 

 

 各施設を回るうちに「この分野の取材や事業支援を続けるなら、自分も最低限、介護ヘルパー初任者研修を受けておくべきだな・・・」と漠然と感じ、何気なくそうつぶやいたら、活き生きネットワークの杉本彰子理事長が間髪入れず「ぜひ取りなさい!」と。あっという間に、今月から始まる資格取得講座の受講手続きをしてくれました。現在、自分の身内に要介護の家族がいるわけではありませんが、そう遠くない時期に家族の介護を一手に担うことになります。自分だって要介護になるかもしれないし、このまま独居老人になればいざというとき他人のお世話にならざるをえない。ハードな講座スケジュールですがこれからの時代、必ず役に立つ資格だと思って頑張ります!

 

 なお、福祉職の魅力発見ツアーは来年3月まで毎月開催します。参加費無料で福祉弁当付き。介護の仕事の中身や待遇が座学と施設現場で手に取るように理解できる実践的なツアーです。雇用保険の失業給付を受給されている方は、求職活動として認定されますのでぜひご参加ください!

 

<今後の予定>

 10月6日(火) 9時30分~16時30分  静岡 午前中はアイセル21でセミナー、午後はケアハウス「カリタスみわ」見学

 

 10月13日(火) 9時30分~16時30分 浜松 午前中はクリエイト浜松でセミナー、午後は特別養護老人ホーム「グリーンヒルズ東山」見学

 

 10月20日(火) 11時30分~17時 沼津・三島(施設見学のみ) NPO法人にじのかけ橋「アルシオン」、NPO法人マム「サポートチームマム」見学

 

 10月27日(火) 12時20分~16時30分 袋井(施設見学のみ) 社会福祉法人デンマーク牧場福祉会「ディアコニア」「まきばの家」見学 

 

 10月29日(木) 9時30分~16時30分 沼津 午前中はプラザヴェルデでセミナー、午後はデイサービス「友愛デイサービス」見学

 

 11月5日(火) 9時30分~16時30分 静岡 午前中はアイセル21でセミナー、午後はデイサービス「てるてるエルマーナ」見学

 

 11月12日(木) 9時30分~16時30分 浜松 午前中は浜松市福祉交流センターでセミナー、午後はデイサービス「ここ倶楽部」見学

 

 11月17日(火) 9時30分~16時30分 沼津・富士 午前中はプラザヴェルデでセミナー、午後は小規模多機能型居宅介護「2人3脚」見学

 

 

 すべて事前要申込。活き生きネットワーク 担当/森藤(もりとう)、杉本まで。 

  FAX 054-209-5700 TEL 054-245-4494

 申込用紙は活き生きネットワークのHPからダウンロードできます。こちらを。

 


回遊魚の慈愛

2014-03-14 11:48:39 | NPO

 私がお手伝いしているNPO法人活き生きネットワークが、昨年、発足30周年、法人化15年の節目を迎え、先月2月23日には記念式典が静岡県男女共同参画センターあざれあで執り行われました。耳の聴こえないピアニスト・宮本まどかさんのトーク&コンサートのほか、県内の福祉団体がバザーや交流イベントに集まってくれて、とてもアットホームな式典でした。

 

 私は午後1時から始まったあざれあ大ホールでの式典とまどかさんコンサートの司会進行役を仰せつかっていたので、バタバタしていて取材する時間がありませんでした。当日の詳細は活き生きさんのブログ(こちら)でご確認ください。

 

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 午前10時、あざれあ小ホールで始まった開会式では、理事長杉本彰子さんを長年支えた多くの同志や仲間がそろい、ささやかなクス球割りでスタート。彰子さんの“心友”であるはままつフラワーパーク理事長の塚本こなみさんが代表で祝辞を述べられました。 

 ちなみに開会式の司会進行は、会議ファシリテーターで有名な小野寺郷子さん。進行方法、しっかりパクらせてもらいました!

 

 

 

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 こなみさんDsc03940からの「私はよく、“回遊魚”だといわれます。泳ぎを止めたら死ぬと。彰子ちゃんもまだまだ泳ぎ続けてください」とのお言葉。還暦を過ぎ、一線を退こうとしていた矢先に、赤字で苦しむはままつフラワーパークの経営再建を託され、ふたたび猛烈な勢いで泳ぎ始めたこなみさんらしい力強いメッセージに、「とてもムリムリ」と苦笑いされていた彰子さんですが、来月4月下旬には事務所のある安東1丁目(静岡高校グラウンド横)に、障害児のためのデイケア施設を新設するなど、彰子さんの“泳ぎ”の速度も加速する一方です。

 お2人とは20年以上のおつきあいになりますが、本当に、一度も減速することなく圧倒されっぱなしです。

 

 

 一流大学を出て官公庁や一流企業でキャリアを磨く女性や、女性ならではの知恵やアイディアで起業家として成功する女性はたくさんいますが、彰子さんやこなみさんは、草の根からスタートし、他者が避けてきた社会の負の部分に真正面から向き合って、社会を変えた力の持ち主。・・・なんて書くと、かつてのウーマンリブや左派フェミニストのようなイメージを持たれるかもしれませんが、お2人からは、いつもいつも、底知れない母性や慈愛というものを感じます。

 

 

 

 今、読んでいる『ゆかいな仏教』という本にあった、隣人愛と慈悲を解く一節がフッと、腑に落ちました。

 

 「愛には、限界というか困難があります。愛は、もともと、自分にとって身近であったり、価値があったりするような他者や物に向けられるからです。愛は、本来、自分にとって近い他者にのみ執着し、他を排除する性質をもっている」

 

 

 

 「このような愛は、正義とか公正性ということに反する。気にいった人、身近な人を優遇したのでは、正義とは言えない。愛は、人間の広い共同性とか、人間の複数性・多数性ということを成り立たせることができません。正義は、第三者―というか神の観点からした公平性に関わっているので、身近な人への愛とは対立します。そこで、ユダヤ教では、法を重視する。法は、だから、原初的な愛へのアンチテーゼという側面があったと思います」

 

 

 

 「キリストの隣人愛というのは、その法に対するアンチテーゼです。もともとの素朴な愛に対しては、否定の否定になっています。そういう愛は、もとの愛とは、まったくの裏返しのものになる。つまり、キリストが説く隣人愛は、近い人への愛ではなく、敵のような最も遠い他者への愛になる。あるいは、価値ある他者への愛ではなく、罪人のような最も価値のない者への愛になる」

 

 

 

 「『慈』というのは、ある意味で、最も近い他者への愛です。いや、最も近いというより、距離ゼロの他者への愛といったほうがよい。(中略)ブッダは、すでに、自己も他者もない、自己と他者の区別がないという境地に入っていますから、普通に見れば最も縁遠い他者ですらも、ブッダにとっては、自分自身なのですね。その他者は、実は自分自身なのだから、それに対しては『慈』の感情を抱くのでしょう」

 

 

 

 「『慈』というのは、他者にある『価値』を認めるからこそ感じる愛ではないか、と思いました。その他者にも、ほんとうは仏性があって、覚る可能性を秘めているのに、まだ覚っていない。その意味では、ブッダから見ると、劣位にあるわけですが、『ほんとうは覚りに至りうるはずなのに…』と思うから、『慈』の感情がわいてくるのです。その『覚りうる』というポテンシャルが『価値』ですね」

        『ゆかいな仏教』(橋爪大三郎・大澤真幸著/サンガ新書)P140~142より抜粋

 

 

 

 

 私のような劣位の人間は、こういう解説本にしがみつくしかないのですが、彰子さんやこなみさんは、宗教を学んだり実践しているわけではないのに、慈愛をカタチにしている。活き生き30周年で集った方々や、フラワーパークの改革に汗を流すスタッフの皆さんを見ていると、自然にそう思えてきます。

 

 

 活き生きネットワークでは、福祉職の人材不足という難問に真正面から向き合い、県やハローワークから受託され、求職者を対象とした『福祉・介護職の魅力発見ツアー(参加費無料)』を昨年9月から今月まで、月3回、県東部・中部・西部で開催してきました。いろいろな介護施設の視察ができ、現場スタッフの生の声が聞けるとあって、私は半ば取材者気分で、全ツアーの運営をお手伝いしました。

 

040  昨日(3月13日)で全ツアーが終了しましたが、毎回、20人~40人参加し、年齢層も10代から70代までさまざま。もちろん、ツアー参加の目的もさまざまだと思います。こういう求職支援事業が必要なぐらい人材不足だという現場で働く人の思い、施設を経営しようと思った人の思い、さらには施設の利用者やその家族の思い・・・福祉は、さまざまな人の思いの遭遇・摩擦・融和が積み重なっている分野だと切実に感じました。

 

 

 Imgp1940 数多くの施設を訪問し、代表者の思いをうかがいましたが、とりわけ、心に残ったのは、昨日、訪れた静岡市駿河区丸子の(有)生陽会 の山本茂樹さん、沼津のNPO法人マムの川端恵美さん、富士のインクルふじ(左写真)の小林不二也さん、袋井のデンマーク牧場福祉会の松田正幸さん、浜松のここ倶楽部の見野孝子さん、浜松のNPO法人クリエイティブサポート・レッツの久保田翠さん。・・・静岡県が誇る福祉分野のプロフェショナルたちです。

 

 素晴らしいと思ったのは、この方々のキャリアもさることながら、彼らの元で働いているスタッフが活き活きとしていたことです。厳しい現場でも、しっかり活かされている。彼らの価値が、誰かの支えになっていることを、彼ら自身、実感している=覚っているのではないかと思えました。

 

 

Dsc03932  彰子さんが、30周年記念式典でも、魅力発見ツアーの講座でも繰り返し語り続けてきたのは、「できる・できないか、ではなく、やるか・やらないか」。この原動力は、キリストの隣人愛とブッダの慈悲が融和したような、底知れない慈愛なんだと思います。

 こうして言葉で書くと、どうも自分でも薄っぺらく感じてしまうんですが、うまく表現できないのは、私自身、修業不足というか、慈愛不足に間違いない(苦笑)。

 

 

 

 このところ眼精疲労がひどくて、パソコンに向かう時間を減らしていたのですが、久しぶりにブログでも、と、簡単に活き生きさんの活動報告を書くつもりが、またまた長い駄文になってしまいました。すみません。

 

 


活き生きネットワーク30周年記念イベントのご案内

2014-01-09 20:42:00 | NPO

 前回の記事でご紹介した中日新聞朝刊2014年1月5日付け。偉業を成したわけでも犯罪を犯したわけでもないのに一面トップに写真掲載という、一生に一度の椿事?を経験したのですが、今日(9日)になって、さらに驚くべき事実が判明しました。

 

 今日は、NPO法人活き生きネットワークが県雇用対策課&ハローワークと協働で開催中の『福祉職の魅力発見ツアー』静岡市編があり、同ツアーの運営をお手伝いしている私は、朝から丸一日、講座や施設見学ツアーの添乗員として働いていました。

 

 ちなみにこのツアー、福祉職のプロの体験話が聞けて、県下各地の介護福祉施設の現場視察ができて、アグリロード美和の地産地消手作り弁当つきで参加費無料! 福祉の仕事に興味のある人、入所を検討中の家族がいる人にはもってこいです。3月までにあと6回開催予定です。こちらをぜひ!

 

 

 朝、講座会場のアイセル21で、杉本彰子理事長から、「ねえねえ、この人、真弓ちゃんの友だち?」と見せられた新聞紙面が、中日新聞1月5日の35面(社会面)。喜久酔の青島孝さんの写真でした。「そうだけど、彰子さん、なんでその新聞を持ってるの?」と聞いたら、なんと、21面(生活面)に杉本彰子さん&活き生きネットワークの紹介記事がデカデカ。写真には、活き生きネットワークのデイサービス施設「喜楽庭(きらくてい)」の足湯で談笑する彰子さん&利用者さん&スタッフ。そして、私が遊び心で落書きした足湯の暖簾の絵が・・・!もう、ビックリなんてもんじゃありませんでした。

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 「実はこの新聞の一面に、ほら」と私が自分の写真を見せると、「今朝、この新聞が郵送されてきたんだよ。裏面から順に開いていったから気がつかなかった」と彰子さんもビックリ。「今年最初に一緒に仕事する日、偶然見た新聞に一緒に載ってたなんて、すごいよね~」と、2人して目をパチクリさせてしまいました。

 ・・・私、青島さんと自分が載ってるところしか読んでなくて、自分がお世話になっている人と自分の落書き絵が中面に載っていたなんて、夢にも思わなかったのです(苦笑)。

 

 

 

 

 「携えた手 大きな輪に」の見出しで書かれた記事は、今年30周年を迎える活き生きネットワークを立ち上げた杉本彰子理事長と望月洋子専務が、30年前、シングルマザー同士、苦労を分かち合いながら、自分たちと同じように困った人たちを見過ごせないという思いで、助け合い活動を始めた経緯が丁寧に紹介されていました。

 

 

 35面の青島孝さんを紹介した記事も、彼が、家業を継がずにニューヨークへ渡り、ふたたび家業へ戻る決意をし、河村傳兵衛先生に師事して静岡酵母の酒を究めようとする経緯を、淡々とした文体ながら、非常にこまやかで丁寧につづっていました。

 私が個人的に信頼し、尊敬し、心を寄せる2人のことが、同じ新聞に、このようなかたちで紹介されていたことに、同じモノ書きとして多少の嫉妬心も抱きつつ、さすが百戦錬磨の新聞記者、短期間の取材でも見事な筆力だと感心させられます。

 

 

 

 さて、活き生きネットワークでは、設立30周年記念として、聴覚障害のピアニスト・宮本まどかさんのピアノコンサート&福祉交流フェスティバルを2月23日(日)に開催予定です。

 

 現在、30周年記念誌の編集を、活き生きネットワークの広報物を長年一緒に制作しているデザイナーのオフィス・トイボックスさんと、大車輪で仕上げているところ。2月23日のイベント当日は、不肖私が式典&コンサートの司会進行役も務めさせていただきます。

 

 

 バザーで使える金券付きチケット(大人2000円)を絶賛発売中です。私のほうでも取り扱っていますので、お時間のあるかたはぜひ!

 

 

 

活き生きネットワーク発足30周年・NPO法人認証15周年記念イベント

聴こえないピアニスト宮本まどか トーク&ピアノコンサート

<同時開催 福祉交流フェスティバル&バザー>

 

◇日時 2014年2月23日(日) 12時30分開場、13時開演

 

◇場所 静岡県男女共同参画センターあざれあ 6階大ホール

 

◇料金 大人2000円 子ども(小学生以下)1000円 *バザー会場で使える500円チケット込み

 

◇問合 活き生きネットワーク事務局 電話054-209-0700

 

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中日新聞掲載「富士山に生息する動物」

2011-12-09 09:22:53 | NPO

 12月3日(土)の中日新聞朝刊に富士山特集第9弾『富士山に生息する動物』が掲載されました。世界文化遺産登録の動きでは、今の富士山の動植物の生態にはあまりスポットが当たっていないようですが、世界遺産に登録されたら何が大事って、今のこの富士山をどうやって維持管理していくか。それには、今の富士山がどういう状態かを正しく知っておかなければなりません。

 

 

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 今回の取材では、NPO法人静岡県自然史博物館ネットワークの三宅隆副理事長に、富士山には42種類もの哺乳類が生息していて、日本のバードウォッチング発祥の地だったということを教えてもらいました。

 

 ふだん何気なく、遠目から、見えた見えないで一喜一憂しているけど、富士山は、まぎれもなく野生動物の棲家なんだって認識を忘れていたような気がする。それに、外来種が急増していて、在来種の生息地が危機にさらされているという現実。このことは改めて紹介しようと思います。

 ・・・とりあえず、ネズミやモグラの名前がこんなにあったんだって知るだけでも勉強になりますので(苦笑)、ぜひご一読を。

 

 

 

〈富士山に生息する動物〉 変わりゆく環境の中、命をつなぐ希少種たち<o:p></o:p>

 

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 富士山の世界文化遺産登録推薦書草案がユネスコ世界遺産委員会に提出され、静岡県でも登録への気運醸成に努めている。その一環として、県が10月に開催した『富士山県民講座』は、富士山の文化的価値を県民に広く理解してもらおうと、各分野の専門家を講師にそろえた。第3回目のテーマは「富士山に生息する動物」。獣医師でNPO法人静岡県自然史博物館ネットワークの三宅隆副理事長に解説してもらった。<o:p></o:p>

 

 

富士山の哺乳類は42<o:p></o:p>

  日本には現在、100種類ほどの陸生哺乳類が生息している。静岡県にはこのうち50種類、富士山一帯には42種類が今までに確認されている。<o:p></o:p>

  富士山はおよそ10万年前から形成が始まった比較的若い火山。独立峰で他の山地との往来が難しいため、大型の哺乳類は意外と少ないが、コウモリ、ネズミ、モグラ類は複数種生息する。とくにコウモリ類は、キクガシラコウモリ、テングコウモリ、ヒメホオヒゲコウモリなど溶岩洞や樹洞性のコウモリが多い。富士山の名前が付いたフジホオヒゲコウモリというヒメホオヒゲコウモリの亜種もいる。<o:p></o:p>

  ネズミではヒメネズミ、アカネズミ、スミスネズミ等。モグラでは体長7084ミリという日本最小のヒメヒミズ、富士山固有のフジミズラモグラ、トガリネズミ等の小型種。<o:p></o:p>

  このほか、ニホンリス、タヌキ、アカギツネ、テン、アナグマ等も生息する。ネズミが多ければ、これを餌にするテンやキツネも多いということだ。<o:p></o:p>

 

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 富士山に生きる希少種<o:p></o:p>

  珍しいところでは、天然記念物のヤマネ。標高1250メートル付近から上の混交林に多く生息する。樹洞を利用することが多いが、シジュウカラ用の巣箱に入ることもある。シジュウカラはモグラやネズミ等の獣毛やコケを巣に運ぶ。そのコケの中でヤマネがちゃっかり寝ていることもある。シジュウカラには災難だが、ヤマネにとっては快適な生息地なのだろう。<o:p></o:p>

  ツキノワグマはブナ等の落葉広葉樹林を中心に生息する。木の実や昆虫等を餌にするが、森林伐採や有害駆除等の要因のほか、富士山が独立峰で他山との往来ができないことから遺伝的な問題が加わり、生息数は減少傾向にあると思われる。静岡県レッドデータブックで、絶滅のおそれのある地域個体群にも指定されている。<o:p></o:p>

  また富士山西斜面の滑沢から大沢付近、北斜面の青木ヶ原、東斜面の木の根沢ではニホンカモシカも棲む。標高1300メートル以上の混交林で観察できる。<o:p></o:p>

 

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 日本で初めてバードウォッチングが始まった野鳥の聖地<o:p></o:p>

  富士山は野鳥の生息地としても知られる。富士山東麓の須走は、戦後、日本で初めてバードウォッチングが開催された地でもある。現在までに約220種余の鳥が確認されていて、代表的なところでは、ホシガラス、イワヒバリ、アマツバメ、カヤクグリ等。<o:p></o:p>

  ホシガラスは標高1700~2500メートルのハイマツやブナ林に生息する。体に星のような斑があり、カラスらしくガァーガァーと鳴きながらハイマツの実等を食べる。五合目の食堂の傍でも見られることがある。イワヒバリは標高2700~2900メートル地帯に少数が生息する。11月頃になると標高の低いところに移動し、冬場は数羽から10羽前後の群れで生活する。チョロリロリ…という澄んだ鳴き声が特徴だ。<o:p></o:p>

  一方、夏鳥の代表格がアマツバメ。4月上旬に渡来し、五合目付近の岩の隙間を住処として10羽前後の群れをなし、チリチリチリーと金属的な声を鳴きながら飛んでいる。カヤクグリは3月下旬頃から11月下旬ごろまで亜高山帯で生息する。ミヤマハンノキ等の低い木々にとまって、チィーチィーチリチリと愛らしくさえずる。<o:p></o:p>

 

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 富士山に出現した“シカ道”<o:p></o:p>

  ツキノワグマ等の減少が懸念される一方で、近年、シカやイノシシが増加し、樹木や農作物に被害を与えるようになった。とくにシカは10数年前から激増中で、森林地帯では樹木の皮や根っこがかじられ、さらにササも食い荒らされて枯れ、一部ではシカが食べない種類の野草が群生するようになった。<o:p></o:p>

  今年、三宅さんたちが富士山麓5カ所で行った定点観測でも、いたるところにシカの足跡が見られ、シカ道”が形成されているところも多い。「さまざまな意見があると思うが、森林を守るために適切な管理計画を作成し、個体数調整が必要な時期に来ているのでは」と三宅さんは語る。<o:p></o:p>

 

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 侵略的外来種の増加<o:p></o:p>

  さらに、富士山の動物を取り巻く環境で大きな変化といえば、外来種の増加だ。三宅さんの観測では、富士山本体にはさほど数がいないと思われていたハクビシンが頻繁に記録写真に写っていたという。ハクビシンは県内でも最も数が増えた外来種で、元々は台湾から持ち込まれて来たとされる。<o:p></o:p>

  鳥では中国原産のガビチョウ、ソウシチョウといった外来種が急増している。両種とも日本生態学会により「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されている要注意種である。<o:p></o:p>

  ソウシチョウは富士山で標識調査を実施している人によると、今では最優占種になっているという。生息場所を占領された在来種に負の影響が出るのは時間の問題だろう。<o:p></o:p>

 

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 富士山にアライグマ!?<o:p></o:p>

  富士山麓の富士宮市の旧花鳥山脈では、2003年に県内で初めて、アライグマが確認された。テレビアニメの人気でペットとして飼われたが、成長すると気性が荒くなるため、捨てられたり逃げられたりで、アニメ放送から10年ぐらい経って日本各地で野生化したアライグマが見られるようになった。<o:p></o:p>

  このような外来種の増加は、病原菌の人への感染や日本在来種動物への影響、農業被害や神社仏閣等の歴史的建造物の破損など、さまざまな問題を引き起こす。<o:p></o:p>

 

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  標高差によって動植物が生息する環境が大きく変化する富士山。最近では野焼きをしなくなった影響で山麓の高原地帯も、本来の高原らしさが失われつつあるという。そんな中、富士山という厳しい自然を“我が家”とし、種を残そうと必死に生きる鳥や動物の存在に、我々も心を寄せていかねばならない。彼らも富士山の一部、なのである。(文・鈴木真弓)<o:p></o:p>

 

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参考文献

 ○しずおか自然史(NPO法人静岡県自然史博物館ネットワーク編・静岡新聞社)<o:p></o:p>

 ○恐るべし外来生物(?法人静岡県文化財団)<o:p></o:p>

 ○まもりたい静岡県の野生生物―県版レッドデータブック(静岡県環境森林部自然保護室編・羽衣出版)<o:p></o:p>

 ○富士登山ハンドブック(社団法人富士自然動物園協会編・自由国民社)<o:p></o:p>

 ○富士の鳥(浅見明博・堀田明著・保育社)<o:p></o:p>

 

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指ヨガインストラクター体験

2011-10-04 11:22:42 | NPO

 昨日(3日)は朝からまる一日、富士山周辺の取材で走り回っていましたが、日中はクーラーが必要になるほど暑く、日が陰るといきなり冬かと思うほどの冷気。夕方、西の空には夕陽が見えるのに、日が沈んだと思ったら叩きつけるような通り雨。気象の変化がいつになく極端に感じました。

 

 季節の変わり目は、それでなくても身体の変調が起きるので、いろいろ注意が必要ですね。

 

 

 先週末、日頃お世話になっているNPO法人活き生きネットワークのスタッフ研修会で、なんと、「指ヨガ」の指導をさせてもらいました。不摂生な自分が人さまに健康ケアを指導する日が来るなんて、信じられない心地です(苦笑)。

 

 自分の体調管理のために今年の冬から春にかけて習ったばかりの龍村式「指ヨガ」(こちらを参照)。講座終了後にインストラクターの資格証をいただいたんですが、とてもとても、人さまを指導するなんてレベルじゃありません・・・ それでも、手のひらや指先のケアって、誰でもどこでもカンタンに出来て、これが思いのほか効果があることを、自分自身がここ半年ぐらい実感できた。そのことを、まずは素直にお話しようと思いました。

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 とくに活き生きネットワークのスタッフのみなさんは、日頃から直接、利用者さんの手を取って、生活介助をされている方々です。仕事の上で役に立つのと同時に、何よりご自身が疲れを溜めないように、ちょっとしたセルフケアを習慣づけられたらと思いました。

 家族、隣人、パートナーをちょこちょこっとケアしてあげるのもいいし、やってもらうのもいい。スタッフのみなさん同士、手を取り合って、「ここ痛い?」「もうちょっと強いほうがいい?」な~んて愉しそうにマッサージし合っている姿を見ていたら、言葉以上のコミュニケーションづくりになれるかもって思いました。

 

・・・指導をしながら、自分自身で「指ヨガ」の効果を一つひとつ再認識できた感じです。

 

 私自身は、まだまだ指導者としては未熟ですが、「書く」以外に自分を役だたせる方法があるかも、と感じられただけ、前向きになれました。

 活き生きさんのブログでも紹介していただきましたので、ご覧くださいまし。