年度替わりの今週は、取材や打ち合わせのない静かな1週間でした。桜の花を撮りに行きたくても、なかなか天気に恵まれず…。
そんな中、『喜久醉』の青島酒造から、先月撮った2週間ぶっとおしの酒袋洗いの最終日だと連絡をもらい、どれだけきれいになったのか興味半分で、MYハンディカメラを持って撮りに行きました。
もともときれいだったので、パッと見は全然違いがわからないけど、パッと見ただけではわからないのに、2週間以上も毎日毎日水洗いしていた職人さんの姿勢が清々しい…!と改めて実感しました。
吟醸酒用の槽(ふね)搾りに使う酒袋は、どの酒蔵でもきれいに管理していますが、青島酒造で特筆すべきは、機械搾りの酒袋もまっしろだということ。酒蔵の内部、上槽の工程を見学したことのある人ならピンとくると思いますが、レギュラークラスの量の多い酒は、ヤブタというでっかいアコーディオンみ たいな機械で搾ります。アコーディオンの襞(ひだ)の部分に袋がかかっていて、もろみをホースで送ると、襞の袋の中を通って、粕だけが袋の中に残るというしくみ。
袋は基本的に、上槽の期間中はずっと機械にかけっぱなしなので、長年使っていると、どうしても着色してしまいます。
具体的にどことは言えませんが、今まで見学したかなり多くの酒蔵で、機械にかかった酒袋の縫い端っこに、カビと思われる着色がありました。醗酵菌が直接触れる場所だけに、カビが生えるのは自然の道理といえば道理なんですが、遠くから見ても、アコーディオンの襞にそって黒い筋がスーッとわかる。ところが初めて青島酒造のヤブタを見た時、真っ先に、「袋が白い!黒筋がない!」と気づき、槽搾りの袋と同じように2週間以上かけて丁寧に水洗いしていると聞いて、単純に感動しました。
「そんなところに気が付いて感動してくれるのは真弓さんぐらい」と笑われましたが、機械搾りの袋のきれいさを伝えるほうが価値があるのかも…と思えてきて、今週行われる最後の機械搾りと、搾り終えた袋から酒粕を取り出す作業 と、すべての作業を終え袋をはずす作業を、延べ3日間かけて撮りに行きました。
「槽搾りだろうと機械搾りだろうと、酒袋というのは酒が通過する最後の大事な要の部分。ここでクセや匂いを付けてしまうと、後の濾過作業によけいな神経を遣うことになる。うちはおかげさまで、搾った直後もさほどにごりがなく、活性炭もほとんど使いません」と青島さん。
杜氏にとって、酒袋というのはどういう道具ですか?と問うと、しばらく考えた後、「・・・神聖なものですね。きわめて」と一言。
吟醸王国しずおかの住人にふさわしい名言だ…!と、自分でカメラを回しているのも忘れて「はぁ~、なるほどぉ」と唸り声をあげてしまいました(苦笑)。
そういえば、SBSテレビの「しずおか吟醸物語」や、吟醸王国しずおかパイロット版で、インタビュー中の私の「へぇ~」「そうかぁ」という相づちが、「見苦しい」「聞き苦しい」「なぜカットしないのか」「テレビのディレクターだったら注意するでしょ」と指摘されたこともありますが、一切の打ち合わせや演出なしのドキュメンタリー現場なんだから、大目に見てほしいです…。でなければ、数々の名言を使えなくなってしまいます。唸り声が入るのは、ホントにビビッとくる名言を聞いたときなのですから(苦笑)。
搾り袋をすべて洗い場に回し、今期の喜久醉の仕込みもひと段落。「やっと日曜に休みがとれる。丸一日寝てます」とホッと肩の力を抜く青島さんでした。
なお喜久醉の酒造りは、吟醸王国しずおかオフィシャルサイトの『フォトギャラリー~ただいま仕込み中』もぜひご覧くださいね!
http://ginjyo-shizuoka.jp/gallery01/gallery01.html