杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

浜松フラワーパーク&箱根ジオパーク

2013-06-29 20:43:51 | 日記・エッセイ・コラム

 今年も早くも半分が終わろうとしています。元日に家族で富士山を愛でた三保松原。・・・半年後に世界遺産登録で盛り上がろうとは予想できませんでした。しかも、7月1日の中日新聞富士山特集で、元日に三保松原を散策する家族の写真を使っちゃうという、まさかの荒業(笑)。昨日(28日)UPした日刊いーしずの【杯は眠らない】で先取り紹介しちゃいましたので、ぜひご覧ください。

 

 

 先週は、塚本こなみさんのご案内で浜松フラワーパークを取材してきました。そして昨日28日は箱根パークボランティアさんのご案内で箱根の自然観察ツアーを取材しました。ふだん、自宅に閉じこもってパソコンに向き合う以外、映画館か居酒屋ぐらいしか行動範囲のないネグラな私には、これだけ自然に満ち満ちた場所は異次元気分。仕事を忘れてカメラのシャッターを夢中で切っていました。

 

 

 

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 まず浜松フラワーパーク。エントランスに稲が植えてあって、日本らしい雰囲気。最近増えてきた外国人のツアー客を出迎える演出として、目を引きます。

 

 

 

 

 

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 今まで意識しなかったのですが、フラワーパークには著名な作庭家による素晴らしい日本庭園と、その奥に見事な花しょうぶ園があります。花しょうぶはそろそろ見納めですが、取材した20日は雨がしとしと降って、これがまた情緒を盛り上げてくれました。コンセプトは“森の中の花しょうぶ園”。色のコントラストが素敵です。

 

 

 

 

 紫陽花はまだつぼみもありましたから、もう少し楽しめそうです。

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 ここにはフジ棚が作られる予定。Dsc02517_2浜松フラワーパークは、3月末から4月にかけて、桜とチューリップでドーンと華やぎ、5月中旬からバラ、6月上旬から紫陽花、花ショウブと身頃を迎えますが、観客動員が見込める4月下旬から5月初旬のGW時に見せるものがなかったんですね。

 この時期、ぴったりあてはまるのがフジ。塚本こなみ=フジですから、もう、これは、中途半端な規模ではなく、存分に見せる準備を着々と進めているようです。

 

 

 

 

 

 

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 噴水池の東側には、新たに建てられた木下恵介生誕百年碑と、映画『二十四の瞳』の舞台・小豆島から寄贈されたオリーブの木が目を引きました。そうだ、公開中の『はじまりのみち』も観に行かなきゃ・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 こなみさんは、以前にも増してエネルギッシュで、理想の観光植物園づくりに邁進されていました。行政のしばりを受けつつ、任期3年で成果を出さなければならないプレッシャーは、余人が想像できないほど大きいと思いますが、求められ、発揮できる能力と機会を持っている人は、プレッシャーを栄養にしちゃうんですね、きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 28日の箱根は、曇り空で涼しく、実に快適な自然観察が楽しめました。環境省所管の箱根ビジターセンターを基点にした約2時間のコース。箱根パークボランティア解説員の方が、毎月第2・第4金曜日に無料で開く観察会で、当番の解説員が自分の得意分野や興味のあるテーマでコースを組み、案内してくれるのです。

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 この日は担当の解説員塩見さんによる「イワガラミ」と「ツルアジサイ」の探検ツアー。イワガラミとは、その名のとおり、岩にからみつくガクアジサイに似た花。ツルアジサイは、見た目はイワガラミに似ていて、高い木にからみつき、気根を上へ上へとはわせ、木をまるごと飲み込むように咲くんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 これが岩にからみついたイワガラミ。ちょっと分かりづらいかもしれませんが、ここ、かなり高い岩なんです。岩壁に網の目のようにツルがはっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 こちらがツルアジサイに“征服”されてしまった木。パッと見たら、もとからこういう形状の木かと思っちゃいますね。

 

 

 

 

 

 

 

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 箱根はヒメシャラの北限の地だそうです。幹の肌がこんなふうに剥けているところに触ったり抱きついたりすると、ひんやり気持ちがいいんですね。水が流れる導管が表皮に近いところにあるからで、「熱中症が心配になったらヒメシャラの木に抱きついてください」と教えてもらいました。

 

 

 

 

 

 

 この無料自然観察ツアー、ガイド役の解説員さん自身が、趣味の延長で、自分が楽しんでやっているって感じ。当番じゃない解説員さん仲間も積極的に参加し、互いにフォローし合ったりで和気あいあい。野草料理に詳しい参加者から調理方法なんか聞いたりして、とてもいい雰囲気でした。

 毎月第2・第4金曜日、10時までに箱根ビジターセンターに行けば、申込不要で誰でも気軽に参加できます。

 

 

 

 

 

 

 

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 今回の取材のメインテーマは“箱根ジオパーク探訪”。お目当ては大涌谷でしたが、この時期は、森の中の草花を観察するほうが楽しいですね。大涌谷は、アジアからの観光ツアー客でごったがえしてました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 逆に、客がほとんどいなくて?ゆっくりできたのが、入生田駅前にある『神奈川県立生命の星・地球博物館』。お子さんのいる方ならご存知だったかもしれませんが、私は初めて。公立施設とは思えない迫力満点の展示にビックリしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 一番ビックリしたのは、去年、アリゾナを旅行したとき、ナバホ族居留地でお宝探しをした珪化木(こちらを)。木が炭化して石になっちゃったやつですね。私が拾ったのは手のひらサイズですが、ここには木の幹がまるごと石になっちゃったのが!!

 

 

 

 

 

 そういえば、アリゾナから持ち帰った珪化木を、「何よりのお土産!」と喜んでくださったのが、こなみさんでした。

 

 樹木医の仕事とは、何百年、何千年と地球に刻まれる植物のいのちをつなぐこと。化石となった植物のいのちの重みが、誰より理解できる方なんでしょう。

 

 

 

 

 46億年の地球の歴史の中で、自分はどうしてこの時代に、この国で生まれ、こういう仕事をしているんだろう・・・ついつい、そんな哲学的な思惟にふけってしまいました。

 

 

 ついつい視野が狭くなる日常生活の中で、ほんのひとときでも、こういう場に身をおいて目線を変えてみるって、いいリフレッシュだなあと思いました。


富士山、世界遺産への道のり

2013-06-24 16:36:38 | アート・文化

 富士山の世界文化遺産登録が決定した翌23日、24日と、中日新聞朝刊広告特集で記事をDsc_0189
書きました。

 

 富士山の世界遺産に関する取材も、かれこれ10年ぐらいになります。

 これまでゴミの問題や山麓が開発され過ぎていて世界遺産になれなかったと思われているようですが、最初から文化遺産を目指す、つまり自然環境ではなく、信仰や芸術の源泉としてプレゼンしていけば、すんなり登録されたのかもしれません。

 

 そもそも自然遺産の国内候補にもなれなかった理由は、ゴミや開発ばかりでなく、火山としての特徴がキリマンジャロやハワイ活火山など他の世界自然遺産と比べて乏しく、絶滅危惧種の生育地でもなかったから。つまり、山そのものの魅力はワールドクラスじゃないって“そもそも論”だったんですね。

 

 しかし、信仰や芸術の源泉という観点で見たら、唯一無二の存在だし、西洋美術にも多大な影響を与えている。取材の過程でも、戦略を間違えなければ、もっと早くすんなり登録されたのでは、という声をよく聞きました。

 

 

 そうはいっても文化遺産は候補が多く、登録の基準も年々厳しくなっています。構成資産候補の富士山周辺の各浅間神社は、ふだんは地元の氏子さんたちが細々守っているという感じで、世界から参拝客を受け入るという体制にはほど遠い感じがしたし、三保の松原はテトラポットと風景に似つかわしくない観光土産店&ゴミの散乱がネック。

 昨年、イコモスの調査員が現地にやってきたとき、どんなふうに思ったのか、やっぱり気になりました。イコモスというのは遺跡調査や保存に関する専門機関ですから、対象となる資産が、地元で、価値ある遺産としてちゃんと認識され、保存されているかどうか厳しくチェックされると思ったからです。

 

 

 

 

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 今年の1月1日元日は、家族で三保の松原と久能山東照宮をお参りしました。三保の松原を家族で歩くのは、私が小学校へ上がる前以来。海岸のゴミやテトラポットは相変わらず気になりましたが、晴天の海原と松林の向こうに広がる富士山は、歓声を上げてしまうほど美しかった。素直に、「世界遺産になってほしい」と心から湧き上がってくるのを感じました。

 

 

 

 

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 22日登録決定の日は、朝から富士~富士宮周辺の富士山関連グッズを取材してまわり、12時から富士宮市役所の登録記念イベントに参加。市内4蔵の地酒(高砂、富士正、白糸、富士錦)をぜいたくにブレンドした樽酒で乾杯~!の瞬間を写真撮り。

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 夕方から静岡のFM-Hi スタジオで上川陽子さんの番組収録があったため、登録決定の瞬間には立ち会えませんでしたが、陽子さんにはトイレットペーパーのお土産をしっかり持ち帰りました(笑)。

 

 

 

 

 

 

 紆余曲折の登録までの道のりを、今日(23日)の中日新聞朝刊で紹介しました。新聞をご覧になれない方は以下をお読みくださいませ。

 

 

 

 

祝!富士山、世界文化遺産登録。<o:p></o:p>

 

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 ROAD TO THE WORLD HERITAGE<o:p></o:p>

 世界遺産への道のりを振り返る<o:p></o:p>

 

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  日本の象徴・富士山が、ようやく世界文化遺産に登録された。日本がユネスコ世界遺産条約の締結国となった平成4年(1992)から始まった登録への動き。20年余の道のりを、登山風に振り返ってみよう。(取材協力・写真提供/静岡県世界遺産推進課)<o:p></o:p>

 

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0合目/民間で署名活動スタート<o:p></o:p>

 

平成4年(1992)、日本が世界遺産条約の締結国になったこの年から、自然保護団体等を中心に、登録を目指す動きが始まる。民間主導で「富士山を世界遺産とする連絡協議会」が発足し、大規模な署名運動を実施。<o:p></o:p>

 

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1合目/国に推薦を請願<o:p></o:p>

 

平成6年(1994)、「富士山を世界遺産とする連絡協議会」が240万人余の署名を添えて衆参両院議長へ推薦を請願。陳情を目的とした静岡・山梨両県の文化・自然保護団体による「富士山を考える会」が発足し、続けて衆参両院議長へ誓願。両院において「世界遺産リストへの登録を目指し、富士山の保全対策を検討するなど積極的な取り組みを行うこと」が採択された。<o:p></o:p>

 

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1・5合目/環境省の取り組みスタート<o:p></o:p>

 

平成7年(1995)、環境省は国会採択を受け、富士山地域の自然環境保護と適正な利用を推進する具体策を協議するため、「富士箱根伊豆国立公園富士山地域環境保全対策協議会」を設置。<o:p></o:p>

 

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2合目/世界文化遺産の可能性<o:p></o:p>

 

平成12年(2000)、国は「文化財保護審議会世界遺産条約特別委員会」を設置。世界文化遺産候補として暫定リストへ登載する国内候補地を審議し、『平泉』『石見銀山遺跡』『紀伊山地の霊場と参詣道』を選出。富士山は「顕著な価値を有する文化的景観として評価できると考えられる。今後、多角的・総合的な調査研究を深め、その価値を守るための国民の理解と協力が高まることを期待し、できるだけ早期に推薦できるよう強く要望する」とのコメントを受けた。<o:p></o:p>

 

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3合目/世界自然遺産候補から外れる<o:p></o:p>

 

平成15年(2003)、環境省と林野庁が共同で「世界自然遺産候補に関する検討会」を実施。富士山を含む国内19ヶ所について詳細な検討を行い、『知床』『小笠原諸島』『トカラ・奄美・琉球列島』の暫定リストへの推薦が決まった。<o:p></o:p>

 

富士山が選ばれなかった理由は以下の通り。<o:p></o:p>

 

 3千mを超える単独の成層火山だが、多様な火山タイプ(特徴)がなく、絶滅危惧種の生息域でもなく、世界遺産基準の条件に欠ける。<o:p></o:p>

 

 すでに世界遺産に登録されているキリマンジャロ、ハワイ火山と比較すると見劣りする。<o:p></o:p>

 

 利用されすぎていることにより、改変が進んでいる。<o:p></o:p>

 

 ゴミ・し尿処理対策など管理体制の確立が必要。<o:p></o:p>

 

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3・5合目/『富士山を世界遺産にする国民会議』発足<o:p></o:p>

 

平成17年(2005)、中曽根康弘元首相を会長に、静岡・山梨両県知事を特別顧問としたNPO「富士山を世界遺産にする国民会議」が発足。両県連名で文科省・文化庁に対し、要望書を提出。文化財としての保護管理の指針を示す「特別名勝富士山保存管理計画」がスタート。県と地元市町に「静岡県世界文化遺産登録推進協議会」設置。静岡・山梨両県で「両県合同会議」発足。<o:p></o:p>

 

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4合目/県庁内に担当室設置、官民足並み揃う<o:p></o:p>

 


酒で運を使い果たす風来坊

2013-06-17 12:32:38 | 地酒

 3本重なった原稿の締め切り。コンフェデ杯を見ようと早起きした甲斐もあって、サクサクっと片付いて、久しぶりにゆっくりコーヒーを飲んでいます。日本代表の試合じゃなければ、余裕で、ながら鑑賞できますね(笑)。さっすがスペインは素人目に見ても強えぇ・・・!

 

 

 今月に入り、仕事の量が少しずつ回復してきて、なんとか今年もこの稼業を続けられるとホッとしています。不安定極まりない働き方なのに、25年以上も続けていられるって幸せなんだろうか・・・。「職場」とか「家庭」といった、“所属先”を持たないあやふやなスタイルも、これはこれでアリなのかなあ。こんな風来坊が無事、生きていける社会って、とりあえず平和なんだと思います。

 

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 このところ、いくつかの酒宴に参加しながら報告できなかった会をまとめて紹介します。まず5月21日~22日の全国新酒鑑評会。21日の酒類総合研究所講演会では「清酒酵母がストレスに弱い」「酒粕の新たな効能」「熟成香と老香の違い」など興味深いお話をうかがいました。日刊いーしずの地酒コラム【杯は眠らない】で紹介しましたのでこちらをご覧ください。

 

 23日東広島で全国新酒鑑評会製造技術研究会(こちらを)に参加した後、広島市街へ。前日、偶然入った珈琲豆専門店の女将さんと会話している中で、近くに行きつけの地酒立ち飲みバーがあると教えてもらったのです。立町にある『善吉』というお店。小さなお店だったけど、品揃えはかなりの通好み。ご主人はこちらが何も言わずとも、おススメを次々と出してくれます。Imgp1392

 

 つまみは広島はんぺんや冷やしおでん。昼間はお弁当やお惣菜を販売しているようで、家庭的な酒肴が充実していました。

 この店を紹介してくれた珈琲豆専門店の女将さんもわざわざ駆けつけてくれて、初対面とは思えないほど話し込んでしまいました。

 

 気がつくと、全国新酒鑑評会に来たと思われる各地の蔵元さんや杜氏さんがご来店。ご主人から○○酒造の杜氏さんだよ、と紹介されて、またまた思わぬ酒談議。旅先の酒場気分を満喫できました!

 

 

 

 

  5月26日にはホテルセンチュリー静岡で開かれた『ヴィノスやまざき・2013地酒フェスティバル蔵会』に行ってきました。今年で創業100周年なんですね。すごい店です。

 

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 20年前、この店の80周年記念の年に静岡新聞で全面広告を作らせてもらったのが、コピーライターとしての大きな自信になりました。

 

 皇太子殿下ご成婚を祝して『雅ひめ』というやまざきオリジナルの酒銘を付けさせてもらったこと、その後、シリーズで何本か広告を作らせてもらい、『蔵直便』というキャッチコピーが商標登録にまでなったこと、そして折につけ、亡き山崎巽会長のお話をうかがいながら、“造り手と売り手と飲み手をつなぐ”という活動テーマを自然に授けていただいたこと。・・・いろいろな意味で自分を育ててくれた酒販店でもあります。

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 日本を代表するワイン専門店として発展される中、ローカルな地酒にこだわる自分には手の届かない店になったという思いがありましたが、久しぶりに奥様や祐子さんにお会いし、会長から受けたご恩に対するお礼を伝えることができ、清々しい気持ちで一杯になりました。「また、まゆみさんに小粋な酒銘を考えていただきたいわ!」と笑顔を返してくださった祐子さんに、これからも、真正面から返しができるクリエイターでありたい、と思いました。

 

 

 試飲した酒の中では、待望の國香の誉富士使用酒。まだ搾りたての若々しさがありましたが、最高の静岡吟醸を醸す松尾晃一さんが、誉富士をどのように使いこなしたのか、若干の熟成期間をおいて、再度確認してみたいと思いました。こんなふうにワクワクさせる酒、本当に貴重です。Imgp1430

 

 

 喜久醉純米大吟醸のやまざきPB酒である『雅ひめ』、久しぶりに飲めると思ったら、人気殺到であっという間になくなってしまいました。しゃぁないけど、松尾さんの弟弟子であり、今年の静岡県知事賞を受賞した青島孝さんの手腕・クオリティには全幅の信頼を置いています。入手された方は、大切に味わってくださいね。

 

 

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 会場には誉富士の専用ブースもあって、開発者の宮田祐二先生方が出張PRをしていました。ブースに張り付いて他の酒を試飲できない方々が気の毒になり、私が各ブースを回ってグラスでせっせと運んであげているうちに、『雅ひめ』を飲み損なった次第です(苦笑)。ちなみに、この日飲んだ誉富士の酒の中では、初亀の『岡部丸』がワタシ的にジャストフィットでした。

 

 

 

 

 

 

 6月3日には、東京赤坂で開かれた山同敦子さんの『極上の酒を生む土と人~大地を醸Dsc_0182
す』出版祝賀会
に参加しました。

 全国の名だたる酒蔵やマスコミの方々が集まっていて、私のようなローカルライターが出張るような場所ではない気もしましたが、同書で取り上げられた青島孝さんと松下明弘さんが真っ先に壇上で紹介され、なんだか我が事のように誇らしく思いました。

 

 

 ニュージーランドでワインを造る楠田弘之さんは存在感がありました。初めて飲んだ『クスダ・ピノワール』、静岡吟醸が最上の酒と思っている自分にも、引っかかりなくすんなり飲めました。

 

 

 

 

 

 

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 6月7日は恒例の志太平野美酒物語2013。今年も静岡駅前のグランディエールブケトーカイの一番でかい宴会場で、450人を集めた大盛会でした。

 

 

 

 私は今年、日頃お世話になっている静岡県ニュービジネス協議会の会員さんをお誘いしました。茶道研究会の望月静雄先生にも来ていただき、酒杯の作法などご教授いただこうかと思ったのですが、蔵元ブースで試飲酒を飲み漁るのに夢中で、先生をホッタラカシ(苦笑)。初参加の皆さんは地酒ファンの熱気に目を白黒させ、飲む酒がどれもハDsc02461ズレがないのにビックリされていました。

 

 望月先生にはジョン・ゴントナーさんを紹介しました。裏千家インターナショナル運営理事で、海外へ茶の伝統を普及させるお仕事をされている先生と、海外に日本酒の価値を伝えるジョンさん。“良縁”になればいいなあと思います。

 会場では、年に1回、この会のときだけお会いできる懐かしい酒徒の皆さんと親交を温めることができました。お声をかけてくださった皆さま、本当にありがとうございました。 

 
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 写真は地酒研でお世話になっている松崎晴雄さんと奥様典子さん、ジョン・ゴントナーさん、すっかりダンディー?になった浜松の片山酒店さん、今やベストセラー作家?の仲間入りをした松下明弘さん。

 

 

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 2次会は、伝説の洋酒バー『ブルーラベル』へ。ボウモア62年古酒にしびれました。

 最上の静岡吟醸を味わった後の、幻のシングルモルト―明日の仕事や暮らしの保証がない風来坊な自分が、どうしてこういう酒にありつけるのか、我ながら笑っちゃうほど不思議です・・・。

 

 

 きっとこうして美味しい酒に出会うたんびに自分の運を使い果たしちゃって、最後は何も残らないんだろうな~と今から覚悟しています。

 

 


スマイル静岡茶特集2013 その3~産地編

2013-06-11 20:34:41 | 農業

 JA静岡経済連の情報誌スマイルの静岡茶特集。茶産地の新たな取り組みについて、2ヶ所の事例を紹介しました。

 

 菊川市は、今、ブームの『深蒸し茶』発祥の地なんですが、NHKのためしてガッテンで取り上げられたのが掛川の深蒸し茶だったので、深蒸し茶イコール掛川のイメージが全国的に浸透してしまったよう。それはそれで静岡県人として喜ばしいものの、菊川で長年、深蒸しをこだわって作り続けてきた生産者にしてみたら、内心、複雑じゃないのかなあ・・・。

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 と思っていたところ、JA遠州夢咲管内で、プレミアムな菊川深蒸し茶を新発売したと聞いて取材しました。寿命の尽きた茶園をいったんリセットして、新たに“更新”した新芽だけを使った『茶更(ささら)』です。

 

 お茶の取材で“更新”という言葉を聞いた、その新鮮な驚きと、深蒸し茶の中にもピンからキリまであることを実感した顛末は、こちらの記事で紹介しましたので、ご確認ください。

 

 

 

 

 

 

 もう一ヶ所は静岡市の安倍川奥・梅ヶ島です。最初、聞いたとき、「梅ヶ島ってお茶の産地だっけ?」とピンとこなかったのですが、考えてみれば静岡って、川根とか牧之原とかの有名茶産地じゃなくても、どこでも、ちょこっと郊外に行けば、そこかしこに茶畑がある。他県や他国の人からみれば、静岡県全体が『茶産地』なんですね・・・。

 そういえば、昨年末にアメリカに住む妹がアメリカ人の夫と里帰りしたときも、夫ショーンは、うちから近い賎機山のふもとにある茶畑を見つけて物珍しそうにやたら写真を撮ってましたっけ。

 

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 それはさておき、梅ヶ島の藤代・大代・戸持・入島の4地区の茶生産者が1996年に共同設立した「まるうめ共同茶業組合」で、『石激る垂水の里 こくり茶 “梅里”』というティーバッグ&ドリップバッグのお茶を開発しました。

 最初、パッと見せられたとき、「なんて読むの!?」と目がテンになっちゃいました(苦笑)。これをストレートに読める人は、国文学に精通した人かもしれません。

 

 

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 万葉集で志貴皇子が歌った「石激(いわばし)る 垂水(たるみ)の上の早蕨(さわらび)の 萌え出づる春になりにけるかも」がモチーフになっています。この歌の情景そのもの、といった景観が、この地区にあるんですね。JA担当者から提供していただいた写真ですが、いいですよねえ。

 

 

 

 

 

 

 清流だけではなく、この地区一体が知る人ぞ知る山野草の宝庫なんです。

 

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 私が取材に行ったのは3月終わりで、花は少なかったものの、シュンラン(左)を見つけました。これから夏にかけて、イワタバコ(右)などが見られます。

 

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 現在、「NPO法人郷里の自然をはぐくむ会」が調査を行い、ハイカー向けの案内看板やガイドマップなどを作る予定とのこと。このお茶が、梅ヶ島という山里の新しい魅力発見のきっかけになれば素敵ですよね。

 

 
 

 

 

 

 

 山のお茶は、生産面積を広げ、大型機械を入れることのできる平野部とは違い、限られた面積で、平地よりも1~2ヶ月生育が遅いなど、さまざまなハンディを背負っています。

 

 一方、標高1000メートル級の傾斜地で、一級河川の川霧のマイナスイオンをたっぷり浴びたみずみずしい茶芽からは、豊かな香りとすっきりとした渋7味、まるで静岡吟醸のような洗練された味わいを楽しめるのです。

 

 

 “こくり”とは、時間をかけてじっくり手揉みで仕上げる製法のこと。途中まで機械製揉しても、最終工程で“こくり”を施すことで、抽出すると清澄山吹色の美しいお茶に仕上がります。豊かな香りと渋味と澄んだ山吹色・・・これぞ山の茶です。

 

 

 

 

 

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 左が静岡・梅ヶ島の『石激る垂水の里 こくり茶 “梅里”』。

 

 右が菊川深蒸し茶の『茶更』。

 

 

 

 

 

 

 一口に「静岡茶」といっても、これだけ見た目が違うし、味わいも違います。同じ品種(やぶきた)なのに、産地の違い、作り手の違い、精揉加工の違いによって、これだけ幅のある飲み物になるんです。この2つを飲み比べるだけでも、実に面白い!

 

 

 なお、『茶更』はJA遠州夢咲管内の菊川茶販売所、『梅里』は梅ヶ島地区の観光施設のほか、JA静岡市じまん市、JR静岡駅構内の駿府楽市、久能山東照宮で販売しています。機会があったらぜひお味見くださいませ!


スマイル静岡茶特集2013 その2~生産者編

2013-06-10 11:03:04 | 農業

 JA静岡経済連情報誌スマイルの静岡茶特集つづきです。

 フロンティアスピリットを持った農業生産者を紹介する『農力開拓人』というコーナーでは、2人の茶農家を紹介しました。

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 まず牧之原市の農事組合法人「茶夢茶夢ランド菅原園」の代表・増田浩二さん。「茶夢茶夢(ちゃむちゃむ)ランド菅原園」というのは、牧之原市菅ヶ谷地区の茶農家6人で結成した“会社”で、6人が個人で経営していた茶園を統合し、共同で摘採管理・荒茶製造する組織です。

 

 

 企業が農業に参入する例は珍しくないと思いますが、個人農家が集まって企業を作って成功させる例はなかなか少ない。それまで先祖代々、個人の○○園という名前でやってきた看板を捨てて、法人組織の一組合員になるんですから、当人が腹をくくる以上に、身内の理解も必要でしょう。

 

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 その難しいハードルを超えるのに、増田さんは、「10年後、20年後の茶園を想像したとき、後継者がいなくてもお茶を作り続けるには、雇用型経営にしていくしかないと思った」と明快に語ってくれました。そう、今の農業生産者に欠けていて、一番必要な、近未来へのビジョン。これを具体的に行動に起こしたというわけです。

 

 取材中は照れくさいのか、仲間とゲラゲラ雑談を交えるなど巧妙な語り口だった増田さんですが、最後に「10年後には家族を月給で養っていけるようになりたい」とビシッと締めてくれました。

 取材後、県下有数の茶産地である牧之原の茶品評会でトップを獲得。昨年も関東ブロック茶共進会で最高賞(農林水産大臣賞)、経営の部で内閣総理大臣賞を受賞されています。品質と効率を見事に両立させるその手腕にも唸りました。

 

 

 

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 もう一人は天竜茶の太田昌孝さん(写真右)。昨年11月に掛川市で開かれた第66回全国茶品評会で最高賞(農林水産大臣賞)を受賞し、これまでも数々の受賞歴を誇る名人です(ホームページはこちら)。

 

 

 私は個人的に天竜や川根など山間地の渋味のあるすっきり爽快なお茶が好きで、取材で天竜方面に行くときは自宅用の値ごろ茶を大量に買い込みます。天竜区西藤平・阿多古街道沿いにある太田さんの自園直営店にも寄った事がありますが、ご本人にお会いするのは初めて。

 

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 北遠なまりの迫力ある語り口で、「ええからまず茶畑を見ろ」と有無も言わさず、車で数分の山間に広がる茶園に連れていかれ、人の背丈ほどに伸びた自然仕立ての茶畑を案内されました。

 

 

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 足元がふかふか気持ちいいなあと思ったら、稲藁を敷き詰め、土には種がす、魚粉など自家製の完熟堆肥を混ぜているとか。「このほうが気持ちよかんべ?」と大田さん。「扇風機に当てっと風邪引っから」と防霜ファンはおかず、手作りの風除けネットで囲います。「この子ら、手をかけりゃぁちゃ~んと応えてくれっと。おら、自分の子より可愛ええもん」と。・・・なんだかこの一言で、太田さんのお茶がなぜ評価されているのか、理解できた気がしました。

 

 

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 ご存知の方も多いと思いますが、太田さんのお茶を水出し煎茶にしてワインボトルに詰めた『King of Green MASA Premium』は、東京の百貨店では1本3万円ぐらいの高級ギフトとして人気があります。ミャンマーのアウンサン・スーチーさんが来日されたときは、お酒が飲めないスーチーさんのためにこのお茶が用意されたとニュースになっていましたね。

 

 2008年の北海道洞爺湖サミットでも世界の首脳に振舞われた静岡・天竜茶。今回の取材で、太田さんのお茶が使われたとうかがいました。「静岡は酒(磯自慢)も茶も日本代表だぁ~!」と思わず心の中でガッツポーズしてしまいました。

 

 

 

 

 

 そんな太田さんご自身は、お茶の樹をわが子以上に慈しむ、根っからの作り手さん。4月下旬の出品茶手摘みの写真を撮りにうかがったとき、てんてこまいだった奥様に対し、「お前が倒れたらお茶をやめてもいい」とつぶやいたとか。

 

 

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 植物のいのちと向き合う農業という仕事は、人間の都合に一方的に合わせていては成り立たないし、自然に都合に合わせていたら人間の体や暮らしがもたない・・・その帳尻をどのへんで合わせるかの判断力や価値観を共有できる家族や仲間が必要なんだ・・・と、殊更実感させられました。

 『農力開拓人』というのは私が適当につけたコーナータイトルですが、農の力とは、家族や仲間を同志にできる人間力に他ならないようです。

 

 太田さんの出品茶摘みについては、こちらの記事でも紹介してますのでご覧ください。

 

 スマイル静岡茶特集、あと2ヵ所、産地紹介があります。つづきはまた。