9月26日(日)は旧浜北市にある静岡県立森林公園森の家で開かれた、県主催のシンポジウム『衣食住を考える分野別ミーティング』の取材に行ってき ました。
川勝知事の基調講演のあと、『衣』の分科会では遠州地域の繊維ファッション産業について、『食』では北遠地域の雑穀など地域の伝統食材や農山村の景観を生かした食のもてなし方について、『住』では天竜材を活かした住まいづくりにおける地産地消の潮流づくりをテーマに、学術研究者と地域事業者がディスカッションを行いました。
会場の県立森林公園森の家を訪れるのは、かれこれ10年ぶりぐらい。会合施設、宿泊施設、茶室、多目的ホール(体育館)、レストランが完備された多目的研修施設で、地元天竜木材がふんだんに使われ、森林公園と一体となった贅沢なロケーション。最初に来た時は事務棟ぐらいしか記憶になかったんですが、こんな立派な施設になっていたなんてビックリです。
レストランまつぼっくりは、シャンポール(パン菓子製造販売)や治一郎(バー ムクーヘン)を展開する浜松の㈱ヤタローが運営する地産地消レストラン。日曜ということもあって、一般の家族連れやグループ客で大いに賑わっていました。
ヤタローは秋葉街道ツーリズム事業にも取り組んでいて、天浜線二俣駅前に焼き立てパン&道の駅&コンビニが融合したモデルショップ『十文字屋』を出店。“山里の春の花香る城めぐりツアー”とか“秋葉街道開運両参詣の旅”といったツーリズム企画も実践し、『食』の分科会で事例紹介に取り上げられていました。
『食』の分科会では、水窪で農家レストラン「つぶ食いしもと」を経営する石本静子さんの事例紹介も。石本さんは昭和51年に農山村の生活改善を考える活動(生活改善グループ)を農家の主婦10人で始め、他地域に先んじて高冷地野菜や中国野菜を導入したり、地元の伝統食(こんにゃく、そば、とちもち)、雑穀(きび、あわ、ひえなど)の価値を見直そうと地元の山住神社の縁日で紹介したりと、今の地産地消運動の先駆けとして実績を積み重ねてきました。
行政の補助や支援を上手に活かし、昭和61年にはグループの加工所を設立。単独グループに県の補助が初めて認可された例として注目を集めます。加工所で作られた水窪の味は、「ふるさと宅配便」として人気を集め、百貨店 ギフトとも提携。県東京事務所の紹介で東京農大の学生が研修にやってきたりして、ちょうどそのころ、私も取材でうかがったことがあります。農大とは多方面で連携し、毎年、大学祭にも招かれるとか。
農家レストランは平成15年にオープン。雑穀と伝統食の2本立てメニューで、お客さんは国内外、ヨーロッパからもやってくるそうです。
『衣』『食』『住』各分科会を駆け足で巡回しながらの取材で、じっくりは聴講できませんでしたが、ついつい試食コーナーのあった『食』の会場に長居してしまいました(笑)。
久しぶりにいただいた、石本さんの煮もの、そして私が以前、県内の農産加工施設の手打ちそば取材で一番美味しいと思った佐久間町・北条峠(ほうじと うげ)の伝統食とじくり(麦だんご)は、どんな売り込み上手な人気B1グルメよりも心に染みる深い味わいでした。
ご当地グルメって現地に行かなきゃ食べられないからこそ価値があるのに、どこの土産物店でも買えるようになっちゃっていいのかなぁと思うこともあります。地元の人が期間限定で出張販売するぐらいならいいけど、食品会社や観光業者が量販・拡販を狙い過ぎると、せっかくの地域力が逆にそがれるような気も・・・。でも難しいですね、この地域にこういう味が残ってるって知らしめるため、ある程度の販促も必要なわけだし。
地域力の使い方、発信の仕方・・・改めて考える好機をいただいたような気がしました。