4月20日(火)~21日(水)、久しぶりに伊豆を訪ねました。20日は東伊豆町商工会会議室で『吟醸王国しずおかパイロット版』試写&トークをやらせていただき、21日は伊豆の酒販店さんを3軒回って情報収集。20日は真冬みたいな寒さだったのに、21日はいきなり夏日で日焼け止めが必要なくらいの陽気で、車のエアコンを暖房にしたり冷房にしたり忙しい旅でした。
東伊豆町の稲取温泉は、過去にしずおか地酒サロンを開催したり、静岡県商工会連合会しずおかうまいもの創生事業「つまんでごろーじ」でキンメダイの酒肴を企画したりと、伊豆エリアの中でもひときわ酒縁深いまちです。
それもこれも、地元で長年、静岡の酒を伝道し続ける手打ちそば誇宇耶の山田慶一さんと、酒販店『吟酒むらため』村井篤さんのおかげ。伊豆の観光地は、それまでハッキリ言って“地酒不毛の地”だったのですが、彼らの地道な販促活動が奏功し、少なくとも稲取温泉の旅館ホテル・飲食店では、静岡酒、しかも喜久醉、國香、杉錦、志太泉といった通がナットクするラインナップ導入率が高いのです。
山田さんには吟醸王国しずおか映像製作委員会斗瓶会員になっていただいて、映画制作のPRや資金調達の協力をお願いしたところ、さっそく稲取飲食店組合の総会に試写&トークをからませてくれ、お店の常連さんという某有名ミュージシャンを会員に誘ってくれました。いわゆる全国区の著名人が入会してくれたのは初めてだったので、斗瓶仲間も一様に喜び、大いに励まされたのでした。
誇宇耶に行くと、自家菜園で育てた旬の野草で、みずみずしい酒肴を出してくれます。これに十割の手打ちそばと冷酒のカップリングは、酒飲みの琴線をブルブル震わせてくれます。7年前にしずおか地酒サロンの講師にお招きしたエッセイストの藤田千恵子さんは、2日連続して誇宇耶に通い、すべての酒肴をたいらげて満足されましたっけ!観光地の国道沿いにあるとは思えない、酒飲み向けの通な蕎麦屋さんです。
なお、山田さんの尽力で実現した20日のパイロット版試写&トークの様子はこちらを参照してください。
翌21日は、5月に下田でパイロット版試写を企画してくださる植松酒店さんを訪ねました。植松さんも地酒研発足当時からの長いおつきあいで、2000年の伊豆新世紀創造祭では『下田テイスティーアート』というイベントにからんで地酒サロンを開かせていただきました。このときはラリーライダー&エッセイストの山村レイコさんをゲストに、お泊りサロンで盛り上がりました。
その後、植松さんは地元有志で下田自酒倶楽部を結成し、下田の米を使ったオリジナル酒『黎明』を企画販売しました。いきさつはこちらの記事を参照してください。
http://www.izu-kankou.or.jp/special/izujin/021001/index.html
『黎明』は下田在住の女優有馬稲子さんに命名していただき、富士高砂酒造で委託醸造した純米吟醸酒。21日にうかがったときは、新企画として地元の障害者施設への寄付金付きバージョンも。施設のみなさんの手すき和紙とデザイン画を生かしたそうです。観光地のPB酒というと、とかく地名や人名を利用しただけの話題先行商品が多いように見受けられますが、こういう、真に地域に根差したPB酒というのは素直に応援したくなりますね!
次いで、全国の地酒が多数揃う、つちたつ酒店に寄って、開運の純米吟醸『高天神』をゲット。開運のお膝元・掛川市旧大東町産の山田錦で醸したこの酒、しずおか地酒研究会発足当時に山田錦研究家の永谷正治先生と一緒に県内山田錦栽培地を視察したとき、開運の蔵元でも山田錦栽培に着手したことを知り、酒になったときは、自分がラベルをデザイン企画させていただきました。
「高天神」の文字のうしろに紹介コピーが薄~く印刷されているんですが、ちゃんと読んでくれる人はいないだろ~な~(苦笑)。販売先が限定されている酒なので、まさか下田で買えるとは思わず、他にも魅力的なラインナップがたくさんあったけど、ついつい懐かしくなって手に取りました。ちなみにこの店では某有名俳優がロケの帰りに『喜久醉』をゲットしていったそうです。
最後に沼津のせりざわ酒店に寄って、沼津市内で地酒が飲める飲食店情報をいただきました。芹沢さんとは、98年に『地酒をもう一杯』を出版したときに取材でお世話になって以来でしたが、この冬、初亀醸造で撮影をしていた時、偶然、蔵で再会して、映画制作のことを知っていただいたのでした。県東部地区の酒販店では製作委員会会員店が少ないので、ぜひお願いしますと頭を下げて帰りました。
地酒と直接商売がからむ酒販店や飲食店との付き合い方には、今も戸惑うことがあって、こちらから発信する情報を受信してくれるかどうかに賭けるしかない、とも思っています。
それでも、情報感度の高い首都圏の観光客や有名人が立ち寄ることも多い地域では、静岡酒のディープな情報を持っておくことは決して無駄ではないと訴え続け、ちゃんと受信してくれる売り手さんが頑張っています。未だに意識が低く、地酒を見下したり乱暴に取り扱ったりする業者がいるとも聞きますが、頑張る売り手が注目を集め、それがまっとうな方法なんだと評価されるよう、私も出来る限りサポートしていきたいと思っています。2日間の伊豆の旅は、そのことを再認識させてくれました。
お世話になった売り手のみなさま、ありがとうございました。