杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

フランケンシュタインとホビット

2014-03-30 21:22:11 | 映画

 年度末バタバタしている中、急に2日間ぽっかり空いたので、取材予定先の下見を兼ね、東京へ行ってきました。観たい映画や展覧会が目白押しでした。

 

 

 一番のお目当ては、日本橋の新名所・コレド室町2にオープンしたTOHOシネマズ日本橋で限定上映の『フランケンシュタイン』。ロンドンのロイヤルナショナルシアターで上演された舞台のライブシネマです(こちらをご参照を)。

 お気に入りの英国ドラマ『SHERLOCK』で現代版シャーロックホームズを演じたベネディクト・カンバーバッチと、米国ドラマ『エレメンタリー』でNY版シャーロックホームズを演じたジョニー・リー・ミラーが、ブレイクする前、怪物と博士を相互に演じて数々の演技賞を受賞した話題の舞台。後に同じ役をまったくテイストの違うドラマで演じるなんて面白いですよね。

 

 

 28日に観たのは、カンバーバッチが博士役、ミラーが怪物を演じたもので、二人の怪演に圧倒されっぱなしでした。演出は映画監督のダニー・ボイル。『トレインスポッティング』『普通じゃない』『ザ・ビーチ』『スラムダッグ$ミリオネラ』『127時間』と、この人の作品はよく観ていて、どの作品も人間の泥臭さを手痛く、かつスタイリッシュに表現しています(ロンドン五輪開会式の演出はやや大人しかったような気も・・・)。

 今回の舞台は、今まで映像化されてきたフランケンシュタインのイメージとは異なり、怪物も博士も若くてエネルギッシュでカッコいい。映画と違い、舞台のシンプルなセットのせいか、二人の存在感がよけいにビンビン伝わってきます。今更ながら、身ひとつで表現する舞台こそが、役者の真の力量を示すものだと解る。否が応でも本物の舞台を見たくなります、ホント。

 

 カンバーバッチが怪物を演じた回もスゴイみたいで、こちらは今週末の上映予定。残念ながらチケットは完売のようです。

 

 

 

 

 

 今回、間際にもかかわらず運よく入手できたチケット、TOHOシネマズ日本橋の巨大スクリーン“TCX”と最新音響システムDOLBYATMOSを装備したスクリーンでの上映で、今までにない臨場感で楽しめました。席は最後尾でしたが、スクリーンが壁一面のデカさで、アトモスというドルビーの革新的なシネマ音響によって、最後尾のハンディはまったくありません。

当初、映像で、舞台のナマの迫力がどこまで伝わるのか懐疑的でしたが、こういう映画館なら観る価値があるなあとしみじみ。観た後はどうしてもナマの舞台に行きたくなるし(ロンドンは遠すぎるけど)、舞台製作者にとってメリットは大きいはずですね。

 

 

 

 ちなみに、新規オープンのコレド室町2、1階にはヴィノスやまざきさんがワインショップを開店されていました。ワインだけかなと思ったら、店頭に堂々と静岡の地酒!・・・しかも磯自慢、開運、初亀、喜久醉、國香と実力銘柄がズラリ。日本橋のど真ん中で、実に誇らしいです。ヴィノスやまざきさんありがとうございます!

 

 

 

 

 翌29日には、ユナイテッドシネマとしまえんまで行って『ホビット~竜に奪われた王国』を観て来ました。大好きな『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の60年前のお話で、童話として有名ですよね。映画化された『ホビット』も3部作で、『竜に奪われた王国』は2作目。1作目の『思いがけない冒険』を、IMAXシアターのHFR3D版上映のある湘南まで観に行った話はこちらで紹介しました。

 

 『竜に奪われた王国』も、通常の2D版は静岡で観たのですが、TOHOシネマズ日本橋で新しい映像装置の素晴らしさを体感した後だっただけに、やはりIMAXシアターのHFR3D版を観たくなり、ネットで調べたら都内でも数館しかなくて、朝9時10分から上映するユナイテッドシネマとしまえんまで遠征することに。

 

 1作目もIMAXとHFRのスゴさを堪能できたけど、2作目は激流の川下りやら巨大竜との戦いなど“規格外”のアクションシーン満載で、よけいにIMAXとHFRのよさが発揮されたと思いました。進化する映像技術をいかんなく活かす映像表現・・・映画監督には途方もない空間デザイン力が求められる時代になったようです。

 

 

 ちなみにホビット3部作の主演は、『SHERLOCK』でワトソンを演じるマーティン・フリーマン。ワトソンは実にはまり役ですが、ホビットの主役ビルボ・バギンズは彼以外に想像できない、ベスト・オブ・はまり役!。非日常なシチュエーションを、常識的な表情やしぐさで自然にさりげなく、でもちゃんと観ている者にビルボの内面が伝わるように演じきるプロフェショナルです。ホームズ役のカンバーバッチが、ホビットでは悪の巨大竜をモーションキャプチャーで演じ、マーティン演じるビルボと対決するのがこれまた面白いのです。監督のピーター・ジャクソンは絶対にドラマSHERLOCKのファンなんだろうなあと思いました。

 

 5月から、NHK BSプレミアムで、SHERLOCK第3シリーズが始まるようです(こちらを)。たぶん放送前にはSHERLOCK第1シーズン、第2シーズンの再放送もあると思いますので、見逃した方にはぜひおススメします。

 

 


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2014年静岡県清酒鑑評会一般公開

2014-03-26 09:56:25 | しずおか地酒研究会

 昨日(3月25日)は恒例の静岡県清酒鑑評会の一般公開がグランディエールブケトーカイで開催されました。13日に行われた鑑評会(審査会)に出品されたすべての酒が無料で試飲できるという地酒ファン垂涎の場です。

 

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 すでに結果発表されていますので(こちらを参照)、一般公開では例年のごとく、最高位(県知事賞)を受賞した酒に人気が殺到。私は入口から順に(吟醸の部から)全出品酒を試飲していったので、出口近くにあった純米の部県知事賞の開運に辿り着いたときは、すでに空瓶・・・。土井社長をつかまえて恨み節を吐露しました(苦笑)。

 

 

 

 今年も会場で、年に1度、この日にお会いする懐かしい酒友や地酒研発足当時の方々と、互いに健康で酒が飲める喜びを噛み締めました。ついついきき酒に集中してしまうので、ご挨拶しそびれた方も多いと思います。この場をお借りし、お詫び申し上げます。

 

 

 そんな中、会場では今年もいろいろな声を聞きました。

 

 

 

「上位は僅差。違いはほとんどないといってよい」(某蔵元)

 

 

「(吟醸の部県知事賞の)花の舞だけが香りの立ち方が違う。ダントツによかった」(某酒造蔵人)

 

 

 「吟醸の部にも純米で出品し、入賞できた。吟醸造りなら問題ないので」(オール純米製造の蔵元)

 

 

「上位の酒はきれいに濾過して仕上げてある。(製造計画の都合で)濾過が間に合わない蔵、あえて濾過をせず出品した蔵もある」(某蔵元)

 

 

 

「全体的にレベルが上がった。おかしな酒が一つもなかった」(常連客)

 

 

 

「全体的に似たような酒ばかりでつまらなくなった。昔は個性的な酒がいろいろあって面白かった」(常連客)

 

 

 

「私の好きな○○○が、名簿(=入賞蔵のみ記載)に載っていないのはどういうこと!? おかしいじゃない(怒)」(おそらく初参加?の女性客)

 

 

 

 おもしろいですね、同じきき酒をしていても、見方や感じ方がまったく違います。日頃、地酒とどう向き合っているのか、その人の、人となりがみえてくるようです。

 

 

 昔は、審査に疑問を呈する酒造関係者や、知ったかぶりの酒通に、不快感を覚えたこともありました(私自身も第三者からみれば不快な対象だったかも)が、最近では、いろいろな人のいろいろな飲み方や感じ方を多様性として面白く、頼もしく感じるようになりました。

 日本酒が置かれた社会的な環境を、少なからず俯瞰や複眼で見られるようになったからでしょうか。

 

 

 

 ちなみに、私自身はいつも、全銘柄を試飲したあと、よかったと思える銘柄を、再度、今度は吐くのではなくきちんと呑むのですが、今回、印象に残った銘柄は、濾過の有無やアルコール添加or純米にかかわらず、静岡県清酒鑑評会の大事な審査基準である、静岡型の吟醸造りと静岡酵母由来の香りを大事にしている、と確認できました。

 

 ただ、「面白みに欠けた」という声にも一理あり、で、以前は本当にとんがった酒、ひねた酒、かたすぎる酒など、良い意味でも悪い意味でも“個性”があって、日本酒が醸造発酵酒たるゆえんを実感したものでした。本当のファンが持つのは、鑑評会一般公開の試飲結果で、その銘柄の良し悪しをきめてしまうような単純な物差しではないと思うのですが、そうはいかないのが現実・・・。難しいですね、ホント。一般公開に出品する蔵元さんたちの心境が解る気がします。

 

 

 蔵元さんには、できたら同じ仕様の酒を、全国新酒鑑評会に出品していただき、全国の場で正々堂々と勝負してほしいと思います。昨年、『若竹』が、全量、誉富士の純米大吟醸&静岡酵母で全国に出品し、入賞はなりませんでしたが、最も感動を残してくれた、まるでソチ五輪の真央ちゃんみたいな酒だったこと、忘れられません(こちらをぜひご参照ください)。

 

 

 昨日の一般公開にいらした地酒ファンの多くは、たぶん10月1日の静岡県地酒まつりにもいらっしゃると思いますが、気になった銘柄が10月にはどんな酒に化けているのか、楽しみにしましょう。


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しずおか地酒サロンIN花博2014のご案内

2014-03-21 10:04:54 | しずおか地酒研究会

 本日(21日)朝8時30分からK-MIXの生放送でコマーシャルさせていただいたとおり、本日開幕の浜名湖花博2014はままつフラワーパーク会場内で、しずおか地酒サロンを開催することになりました。

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 10年前の地酒サロンIN花博では、6ヶ月間の開催中、たくさんの蔵元に交替でご協力いただき、多少なりとも地域の酒文化を発信することができました。今回は2蔵よりご協力をいただき、以下のようなサロンを開催します。

 

 

 

 

 

 

 

しずおか地酒サロン IN 花博2014

第1弾

フラワーパーク de 花見酒 <協力/花の舞酒造株式会社

 

日時 4月5日(土)・6日(日) 14時~21時

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場所 はままつフラワーパーク 花の休憩所・展示プラザ(モザイカルチャーメモリアルガーデン横)

 

内容

○花の舞の新酒搾りたて酒粕で作った甘酒の無料配布

○花の舞吟醸酒花ラベル(こちら)、花の舞Dolce(こちら)の試飲販売

○花の舞杜氏土田一仁さん(静岡県杜氏研究会会長・2014静岡県清酒鑑評会県知事賞受賞)による静岡酒解説

 

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 桜の開花に合わせ、フラワーパークから最も近い地酒の雄・花の舞酒造の杜氏で、今年の県鑑評会県知事賞を獲得した土田一仁さんと、私・スズキマユミとで、花見酒の醍醐味をたっぷりご紹介します。 

 

 

 花博期間中、最高の入場者数が予想される4月第1週の土日に、甘酒の無料配布と酒の試飲を行うというのは、イベント運営の経験がある方からみれば、かなりリスキーな計画かもしれませんが、地酒ファンの底辺拡大には、こういう試みも必要だと思います。フラワーパーク側の全面協力と、土田さん自らご出陣くださるということで、百万の味方を得た思いで頑張ります。 

 

 

 

 

 

第2弾

地酒トーク IN フラワーパーク 

『杜氏と樹木医 自然の育ちによりそう力』 <協力/青島酒造株式会社>

 

日時 5月17日(土) 14時~16時

 

会場 はままつフラワーパーク 花みどり館2階セミナールーム

 

内容 

○トークショー~青島傳三郎氏(【喜久醉】蔵元杜氏) × 塚本こなみ氏(はままつフラワーパーク理事長)

○【吟醸王国しずおか】パイロット版(20分)上映

○【喜久醉】の無料試飲(先着順)

 

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 10年前の地酒サロンIN花博でもオープニングレセプションで地酒を提供してくださった【喜久醉】の蔵元杜氏・青島傳三郎さんと、はままつフラワーパーク理事長塚本こなみさんに、酒を醸す、花樹を育てる、人を活かす仕事の醍醐味を語っていただきます。青島さんが出演した【吟醸王国しずおか】パイロット版や、こなみさんご出演の映像上映も。

 

 

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 先月、蔵へお願いにうかがったとき、ちょうど喜久醉純米大吟醸松下米40の仕込みの最中で、タンクのもろみをのぞいたら、こんな写真が撮れました。・・・なにか、タンクの中が無限の宇宙のようで、人智の及ばない世界がここにある、こういう世界を育て、見守っているスゴイ仕事なんだと、あらためて青島さんへのリスペクトを深めたところです。

 

 

 

 

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 私も参加させていただいた昨日(20日)の内覧会はあいにくのお天気でしたが、塚本こなみ理事長は「恵みの雨だわ」と喜んでおられました。今日の晴天で、さぞかし喜び満開!だと思います。 

 

 

 

 

 なお、地酒サロンは参加無料ですが、花博会場に入るには大人800円、小中学生400円の入場料がかかります。また試飲をされる方はご面倒でも電車やバスをご利用ください。JR浜松駅から10~20分ごとにフラワーパーク行きの路線バス(520円・所要約40分)、JR舞阪駅からは10~30分ごとにフラワーパーク行き直通バス(260円・所要約10分)があります。えんてつのHPでご確認ください。

 

 

 

 

 花の舞さんと一緒の花博4月5日の前日、4月4日には、静岡市内で日本酒評論家松崎晴雄さんを招く恒例の地酒サロンを予定しており、おかげさまでこちらは即満席となりました。ありがとうございました。【吟醸王国しずおか】に登場の、あの名杜氏がスペシャル参加してくださいます。お申込みのみなさま、ぜひお楽しみに!

 

 


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回遊魚の慈愛

2014-03-14 11:48:39 | NPO

 私がお手伝いしているNPO法人活き生きネットワークが、昨年、発足30周年、法人化15年の節目を迎え、先月2月23日には記念式典が静岡県男女共同参画センターあざれあで執り行われました。耳の聴こえないピアニスト・宮本まどかさんのトーク&コンサートのほか、県内の福祉団体がバザーや交流イベントに集まってくれて、とてもアットホームな式典でした。

 

 私は午後1時から始まったあざれあ大ホールでの式典とまどかさんコンサートの司会進行役を仰せつかっていたので、バタバタしていて取材する時間がありませんでした。当日の詳細は活き生きさんのブログ(こちら)でご確認ください。

 

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 午前10時、あざれあ小ホールで始まった開会式では、理事長杉本彰子さんを長年支えた多くの同志や仲間がそろい、ささやかなクス球割りでスタート。彰子さんの“心友”であるはままつフラワーパーク理事長の塚本こなみさんが代表で祝辞を述べられました。 

 ちなみに開会式の司会進行は、会議ファシリテーターで有名な小野寺郷子さん。進行方法、しっかりパクらせてもらいました!

 

 

 

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 こなみさんDsc03940からの「私はよく、“回遊魚”だといわれます。泳ぎを止めたら死ぬと。彰子ちゃんもまだまだ泳ぎ続けてください」とのお言葉。還暦を過ぎ、一線を退こうとしていた矢先に、赤字で苦しむはままつフラワーパークの経営再建を託され、ふたたび猛烈な勢いで泳ぎ始めたこなみさんらしい力強いメッセージに、「とてもムリムリ」と苦笑いされていた彰子さんですが、来月4月下旬には事務所のある安東1丁目(静岡高校グラウンド横)に、障害児のためのデイケア施設を新設するなど、彰子さんの“泳ぎ”の速度も加速する一方です。

 お2人とは20年以上のおつきあいになりますが、本当に、一度も減速することなく圧倒されっぱなしです。

 

 

 一流大学を出て官公庁や一流企業でキャリアを磨く女性や、女性ならではの知恵やアイディアで起業家として成功する女性はたくさんいますが、彰子さんやこなみさんは、草の根からスタートし、他者が避けてきた社会の負の部分に真正面から向き合って、社会を変えた力の持ち主。・・・なんて書くと、かつてのウーマンリブや左派フェミニストのようなイメージを持たれるかもしれませんが、お2人からは、いつもいつも、底知れない母性や慈愛というものを感じます。

 

 

 

 今、読んでいる『ゆかいな仏教』という本にあった、隣人愛と慈悲を解く一節がフッと、腑に落ちました。

 

 「愛には、限界というか困難があります。愛は、もともと、自分にとって身近であったり、価値があったりするような他者や物に向けられるからです。愛は、本来、自分にとって近い他者にのみ執着し、他を排除する性質をもっている」

 

 

 

 「このような愛は、正義とか公正性ということに反する。気にいった人、身近な人を優遇したのでは、正義とは言えない。愛は、人間の広い共同性とか、人間の複数性・多数性ということを成り立たせることができません。正義は、第三者―というか神の観点からした公平性に関わっているので、身近な人への愛とは対立します。そこで、ユダヤ教では、法を重視する。法は、だから、原初的な愛へのアンチテーゼという側面があったと思います」

 

 

 

 「キリストの隣人愛というのは、その法に対するアンチテーゼです。もともとの素朴な愛に対しては、否定の否定になっています。そういう愛は、もとの愛とは、まったくの裏返しのものになる。つまり、キリストが説く隣人愛は、近い人への愛ではなく、敵のような最も遠い他者への愛になる。あるいは、価値ある他者への愛ではなく、罪人のような最も価値のない者への愛になる」

 

 

 

 「『慈』というのは、ある意味で、最も近い他者への愛です。いや、最も近いというより、距離ゼロの他者への愛といったほうがよい。(中略)ブッダは、すでに、自己も他者もない、自己と他者の区別がないという境地に入っていますから、普通に見れば最も縁遠い他者ですらも、ブッダにとっては、自分自身なのですね。その他者は、実は自分自身なのだから、それに対しては『慈』の感情を抱くのでしょう」

 

 

 

 「『慈』というのは、他者にある『価値』を認めるからこそ感じる愛ではないか、と思いました。その他者にも、ほんとうは仏性があって、覚る可能性を秘めているのに、まだ覚っていない。その意味では、ブッダから見ると、劣位にあるわけですが、『ほんとうは覚りに至りうるはずなのに…』と思うから、『慈』の感情がわいてくるのです。その『覚りうる』というポテンシャルが『価値』ですね」

        『ゆかいな仏教』(橋爪大三郎・大澤真幸著/サンガ新書)P140~142より抜粋

 

 

 

 

 私のような劣位の人間は、こういう解説本にしがみつくしかないのですが、彰子さんやこなみさんは、宗教を学んだり実践しているわけではないのに、慈愛をカタチにしている。活き生き30周年で集った方々や、フラワーパークの改革に汗を流すスタッフの皆さんを見ていると、自然にそう思えてきます。

 

 

 活き生きネットワークでは、福祉職の人材不足という難問に真正面から向き合い、県やハローワークから受託され、求職者を対象とした『福祉・介護職の魅力発見ツアー(参加費無料)』を昨年9月から今月まで、月3回、県東部・中部・西部で開催してきました。いろいろな介護施設の視察ができ、現場スタッフの生の声が聞けるとあって、私は半ば取材者気分で、全ツアーの運営をお手伝いしました。

 

040  昨日(3月13日)で全ツアーが終了しましたが、毎回、20人~40人参加し、年齢層も10代から70代までさまざま。もちろん、ツアー参加の目的もさまざまだと思います。こういう求職支援事業が必要なぐらい人材不足だという現場で働く人の思い、施設を経営しようと思った人の思い、さらには施設の利用者やその家族の思い・・・福祉は、さまざまな人の思いの遭遇・摩擦・融和が積み重なっている分野だと切実に感じました。

 

 

 Imgp1940 数多くの施設を訪問し、代表者の思いをうかがいましたが、とりわけ、心に残ったのは、昨日、訪れた静岡市駿河区丸子の(有)生陽会 の山本茂樹さん、沼津のNPO法人マムの川端恵美さん、富士のインクルふじ(左写真)の小林不二也さん、袋井のデンマーク牧場福祉会の松田正幸さん、浜松のここ倶楽部の見野孝子さん、浜松のNPO法人クリエイティブサポート・レッツの久保田翠さん。・・・静岡県が誇る福祉分野のプロフェショナルたちです。

 

 素晴らしいと思ったのは、この方々のキャリアもさることながら、彼らの元で働いているスタッフが活き活きとしていたことです。厳しい現場でも、しっかり活かされている。彼らの価値が、誰かの支えになっていることを、彼ら自身、実感している=覚っているのではないかと思えました。

 

 

Dsc03932  彰子さんが、30周年記念式典でも、魅力発見ツアーの講座でも繰り返し語り続けてきたのは、「できる・できないか、ではなく、やるか・やらないか」。この原動力は、キリストの隣人愛とブッダの慈悲が融和したような、底知れない慈愛なんだと思います。

 こうして言葉で書くと、どうも自分でも薄っぺらく感じてしまうんですが、うまく表現できないのは、私自身、修業不足というか、慈愛不足に間違いない(苦笑)。

 

 

 

 このところ眼精疲労がひどくて、パソコンに向かう時間を減らしていたのですが、久しぶりにブログでも、と、簡単に活き生きさんの活動報告を書くつもりが、またまた長い駄文になってしまいました。すみません。

 

 


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しずおか地酒サロン2014春「酒造り職人レジェンドvsフロンティア」ご案内

2014-03-02 07:39:32 | しずおか地酒研究会
 2014年も早3月、茶道研究会で教わった二十四節気や五行陰陽によると、3月3日は「上巳(じょうし)の節句」。旧暦3月上旬の巳の日のことで、この日に人形を象って身の穢れを移して川や海に流して不浄を祓ったとか。流し雛も子どもの災いを流して祓うという意味があったんですね。
 
 
 酒徒にとって3月の声を聞くと、酒造りがひと段落し、杜氏さんや蔵人さんの晴れやかな顔が見られる楽しみな季節。しずおか地酒研究会では毎年、静岡県清酒鑑評会審査員を務める日本酒評論家松崎晴雄さんを囲む地酒サロンを開催ています。昨年の様子はこちら
 
 今年は松崎さんがスケジュールの都合で鑑評会の審査員を務められないのですが、毎年、当会の松崎サロンを楽しみにしてくださる会員さんのため、無理をお願いして来ていただくことになりました。
 
 
 
 さらに今年は、浜名湖花博10周年を記念した『浜名湖花博2014』が3月21日~6月15日、浜名湖ガーデンパーク・はままつフラワーパークにて開催されます。
 しずおか地酒研究会では10年前の2004年、樹木医塚本こなみ先生のお力添えで花博パビリオン「庭文化創造館」にて半年間、しずおか地酒サロンin スーパードリームガーデンを開催しました。よければこちらの懐かしい記事をご覧ください。
 このご縁を10年経た今年、ふたたび活かすべく、こなみ先生が理事長を務めるはままつフラワーパークにおいて、4月5~6日、5月17日と地酒サロンを開かせていただくことになりました。現在調整中で、決まり次第、当ブログでもご案内します。
 花博はままつフラワーパーク開会日の3月21日(金)8時30分にはK-MIXに電話出演し、一連の企画をPRさせていただきますので、お聴きできる方はぜひ!
 
 
 
 
 
 
 
しずおか地酒サロン
第42回 松崎晴雄さんの日本酒トレンド解説
「酒造り職人・レジェンドvsフロンティア~杜氏の流派を見つめなおして」
 
 
 ソチ五輪では10代から40代まで幅広い年齢のメダリストが話題になりました。酒造りの世界でも、南部杜氏、能登杜氏など伝統的な酒造技能集団が一時代を築き、今は20代30代の若い造り手が台頭しています。
 
Dscn7097  松崎さんは以前「静岡県は南部(岩手)、能登、越後、丹波、広島など全国各地から杜氏が集まり、地元志太杜氏とともに技術を磨きあった全国でも稀な酒造技術のクロスロード地点」と解説してくださったことがあります。
 静岡酒が酒質向上した理由のうち、静岡が、酒造技術を競い合う土地だったという側面にスポットをあて、伝統産業やモノづくりに共通した課題である〈技能の伝播・継承〉の在り方を一緒に考えたいと思います。
 
 
 
■日時 4月4日(金) 19時~21時
 
 
 
 
■会場 Salon de SAANA (酒井信吾建築設計事務所・永田デザイン一級建築士事務所)
静岡市葵区呉服町2-7-10 育英会ビル3F 
*静岡銀行呉服町支店西向かいのビルです。
TEL:054-263-7277
 
 
 会場は、茶道研究会&変人の会のお仲間である酒井さんと永田さん、建築家コンビの共同オフィス。呉服町の真ん中にあり、立地条件はバツグンです!
 
 
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 実は先日、3階にあるお二人のギャラリー「Salon de SAANA」にて、静岡県舞台芸術センターSPACの俳優奥野晃士さんがリーディングカフェを開催し、私の茶の湯の師匠である望月静雄先生が酒井さんの依頼で盆点前を披露されました。
Dsc_0286  
 
 そのお手伝いに急遽、借り出された私、先生がお茶を点てた木製のクラシカルなテーブルが、なんと、満寿一酒造の蔵で使用されていたものと聞いて超ビックリ! 実は永田さんが満寿一酒造の蔵元杜氏、故・増井浩二さんと同級生で、形見分けをしてもらったそうです。
 増井さんはご存知の通り、静岡県が誇る志太杜氏の現役最後の伝承者でした。この机と出会ったことが、今回の地酒サロンのテーマにつながりました。
 
 一見、専門性の高い小難しそうなテーマにみえますが、モノづくりの世界における伝統と革新、職人の世界の世代間ギャップなど普遍的な課題を含んでいます。酒に限らず、モノづくりに関心のある方にも広くご参加いただければ、と思っています。
 
 
 
 
 
■会費 4000円
 
杜氏流派別の地酒、リアルフード@あくつの酒肴料理をご用意します。
 
 
 
■定員 20名
 
定員になり次第締め切ります。鈴木までメールでお申込ください。
 
 
 
 
 なお、はままつフラワーパークでの地酒サロンin花博2014は、
①4月5日(土)~6日(日) 日本一美しい桜とチューリップの庭園で「花の舞」大試飲会!
 
②5月17日(土) 吟醸王国しずおかパイロット版上映とトークショー「杜氏と樹木医・自然の育ちによりそう力(仮題)」
 
 
 
を予定しています。詳細は追ってご案内します。
 
 この春、久しぶりにアクティブな地酒研にご期待ください。
 

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