宝山寺
宝塚民話No.2-15 宝山寺のケトロンまつり
紀州有田の村の海岸べりのお寺に立派な十一面観音菩薩があり村人達の信仰を集めていました
ある日津波が押し寄せてきて海岸近くにあった村の家々は波に飲み込まれ
そのお寺も跡形もありませんでした
村人達は大事な観音様をさがしたが見当たりませんでした
数年後のことです 摂津の鳴尾の浜に信心深い海女が海で漁をしていますと
岩場のかげで立派な十一面観音を見つけました
その観音様を家に持ちかえり大切にまつっていました
それからすこし後に一羽の白い鳥がどこともなく現れ観音様をくわえると
北の方へ飛び去りました
その白い鳥は、宝塚の北部の玉瀬にある古宝山に建てられていたお堂に
飛来し観音様を置いてたち去りました
またある年の夏西谷の大原野の村で病がはやったとき大原野の人々は
鳴尾の村のできごとを伝え聞いていましたので大きな灯籠をつくり観音様にお供えし
病気が早く治ることを祈願したところ病はみるみるうちにおさまりました
このことから大原野の村人達は毎年八月十四日の夜「ケトロンまつり」の
灯籠会をしてお祭りをするようになりました
このお祭りは九人ずつ二組にわかれた少年達が海女の黒髪をまねた黒い帯を背中に
垂らし大きな灯籠を先頭に海女の磯笛に似せて「ヒュー」という声を出し念仏を
となえゆっくりと山門を登って行くというもので今でも念仏踊りとして
毎年八月十四日に宝山寺で行われています
めずらしい藁ぶきの山門 本堂も藁ぶきですが覆い屋があります