旅人ひとりー大阪大学探検部一期生のたわごとー

とこしえの精神(こころ)を求めて、さまよ(彷徨)う旅人ひとり。やすらぎを追い続け、やがてかなわぬ果てしなき夢と知るのみ。

絶滅の危機に直面しているフィリピンの蝶

2008-06-24 | 
以前に書いた「僕の名前が付いているシジミチョウ:Drupadia hayashii 」というタイトルの記事で、ケンブリッジ大学出版局発行の科学誌「Animal Conservation」について触れたが、2004年2月発行の同誌に、デンマークのFinn Danielsen、ドイツのColin G. Treada-way 両氏による研究論文「Priority conservation areas for butterflies(Lepidoptera:Rhopalocera)in the Philippine Islands」が掲載されている。

この論文で、彼らはフィリピンでの49年以上にわたる探索、研究の結果、当地に分布している915種の蝶のうち、133種に及ぶフィリピン固有種が絶滅危惧、または保全対策依存に該当するという結論に達している。

ドイツのシュレーダー博士とトレッダウエイ氏によって僕に献名されたDrupadia hayashii (ハヤシ フシギノモリノオナガシジミ)は「絶滅寸前」の「(CR) 絶滅危惧Ia」 に分類されていて、ごく近い将来、野生絶滅のリスクが極めて高いカテゴリーに入っている。

また、僕が記載した新種のうち11種がこの論文で絶滅の恐れがあるというカテゴリーに分類されている。

危急「VU(絶滅危惧Ⅱ)」、すなわち、中期的な将来において、野生絶滅のリスクが高いというカテゴリーには

 Paluparo mio H. Hayashi, Schroeder & Treadaway
 
ミオ ヤイロフタオシジミ

 Hypolycaena irawana H. Hayashi, Schroeder & Treadaway 
 (イラワン ツメアシフタオシジミ

 Hypolycaena schoederi H. Hayashi (シュレーダー ツメアシフタオシジミ

 Notocrypta howarthi H. Hayashi (ハワース クロセセリ

 Pyroneura toshikoae H. Hayashi (トシコ ハリマオセセリ

以上、5種が含まれ、

分類群としては低リスクであるが、保全対策依存(LR-cd)、すなわち特定の分類群あるいは特定の生息地に対する保全対策が継続して行われており、そのプログラムの中止が、5年以内に絶滅の恐れのあるカテゴリーのいずれかひとつになるという結果が見込まれる場合という分類群には

 Ptychandra ohtanii ohtanii H. Hayashi (オータニ ルリヒカゲ

 Deramas ikedai H. Hayashi (イケダ ユメドリキララシジミ

 Deramas treadawayi H. Hayashi (トレッダウエイ ユメドリキララシジミ

 Catapaecilma nakamotoi H. Hayashi (ナカモト ギンスジミツオシジミ

 Pratapa tyotaroi ismaeli H. Hayashi, Schroeder & Treadaway 
 (チョウタロウ ネグロフタオシジミ

 Dacalana akayamai H. Hayashi, Schroeder & Treadaway 
 (アカヤマ ウラオビフタオシジミ

以上、6種が含まれている。

自分が新種として記載した蝶であるだけに、これらの蝶に対する愛着はひとしおである。
どうか絶滅せずに、フィリピンの山野でいつまでも個体群を維持し続けて欲しいと心から願っている。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トレッダウェイ ユメドリキララシジミ

2008-06-08 | 
フィリピンの蝶についての知識では、ドイツ・フランクフルト在住のTreadaway氏の右に出る者はいない。彼は僕よりはるかに年長だが、若い時からフィリピンの島々を蝶を追いかけて、時には危険な目にあいながらもエネルギッシュに活躍してきた。多数の新種を発見、記載し、僕との共同研究も多い。

フィリピン南部のミンダナオ島のアポ山には幾種もの特産のシジミチョウが分布しているが、僕が彼の名を付けたトレッダウェイユメドリキララシジミ Deramas treadawayi H. Hayashi も、そのひとつである。

以前に紹介した Deramas tomokoae とほぼ同じ時期に、場所も重なって発生している。

両種は非常に似ているが、♂の前翅・翅表、第4、5、6室には青緑色斑は見られず、また顕微鏡による研究を必要とするが、♂交尾器にもはっきりとした違いがあらわれる。
右下の写真は地元の人たちがトレッダウェイ ポイントと呼んでいる場所で、ある素敵な女性からプレゼントされた「司馬遼太郎記念館のバンダナ」を鉢巻きにして、ロシア軍ならぬシジミチョウの出現を根気よく待っている姿である。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホウセキハナダイ・ジュエリーバスレット  1

2008-06-05 | ダイビング
フィリピン・マクタン島へダイビングに出かけた。出発する前週に台風3、4号がフィリピン・ルソン島の東側と西側に連続して発生し、ちょっとまずいな!と危惧していたが、台風が日本列島に向かって北上して来るのとちょうど入れ違いに、日本を発つかたちになった。

おかげで絶好のダイビング日和に恵まれる結果となり、透明度の高い暖かい海で、僕のお気に入りのハナダイたちと思う存分遊ぶことが出来た。中でもフィリピンを代表するハナダイ、メラネシアンアンティアスの群れにまぎれこんで泳いでいるジュエリーバスレットホウセキハナダイの美しさに魅せられた。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホウセキハナダイ・ジュエリーバスレット 2

2008-06-05 | ダイビング
ジュエリーバスレットには和名はついていない。英名はJewel(el)ry Bassletである。Jewelryは言うまでもなく、「宝石」、Bassは魚の「スズキ」の仲間を表し、-letは「小」を意味する接尾辞である。英名どおりに訳せば、「宝石のような小さなスズキの仲間」となる。実際、ハナダイはスズキ目のハタ科に属している。僕はこの美しいハナダイを月並みだが、英名にあやかってホウセキハナダイという和名で呼ぶことを提唱する。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホウセキハナダイ・ジュエリーバスレット 3

2008-06-05 | ダイビング
画像左側に見えるのが、メラネシアンアンティアス(♂)。フィリピンを代表するハナダイで、大きな群れを作って泳いでいる。マクタン島近くのヒルトゥガン島では、多数のメラネシアンアンティアスに混じって、数匹のホウセキハナダイジュエリーバスレットを見かけるだけで、極端に個体数が少ない。写真に撮れば色彩の違いは歴然としているが、海中ではよく似た色彩に見えて、最初はメラネシアンアンティアスの群れの中からホウセキハナダイを見つけ出すのはなかなかむずかしかった。

ひょっとすると少数の個体を守るためにメラネシアンアンティアスの群れに入ってカムフラージュしているのかも知れない(魚の眼には両者の色彩の違いがどのように見えるのか知る由はないが・・・)。

メラネシアンアンティアスは自分たちのグループによそものが入っているのを良しとしないのか、時々追いかけまわして群れから追い出そうとしていた。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする