旅人ひとりー大阪大学探検部一期生のたわごとー

とこしえの精神(こころ)を求めて、さまよ(彷徨)う旅人ひとり。やすらぎを追い続け、やがてかなわぬ果てしなき夢と知るのみ。

自然史のイラストレーション~描いて伝える・描いて楽しむ~大阪自然史博特別展に因んで

2024-05-01 | 
大阪市立自然史博物館で2024年2月23日~5月26日までこのブログのタイトルのごとき特別展が開催されている。誰もが写真を気軽に撮れる今の時代に図や絵などイラストレーションを描く過程で、描き手によって必要な情報が取捨選択されることで、写真とは違った情報をもたらしてくれる。下はこの特別展の紹介ポスターである。





筆者は上の紹介文を読んで 長女が高校2年生の時の年賀状を思い出した。毎年、年賀状は家族の名前を連名であげて筆者が記載した新種のシジミチョウの写真を添えていた。この時は長女に因んだシジミチョウを使用する予定だったので、長女に写真ではなくて絵を描くことを勧めた。その時の賀状の一部分を下に掲げた。長女は上手に描いたので、下の解説を読むことによってモノクロの図が色彩を帯びて生き生きと目に浮かぶようであった。正しく「特別展」の意図するように写真とは異なった情報をもたらしてくれたかのようであった。



賀状の線画はオスの表・裏だったので、参考のため下にオスの表・裏のモノクロ写真に加えて雌雄のカラー写真を掲げた。
線画と写真を見比べると読者はその違いに驚かれることと思う。





新種の蝶を記載する際、論文にはオスの交尾器図を添えなければ査読の対象にしてもらえない。最近は顕微鏡写真を添えることが多くなったが、以前は線画が普通だった。
長女の名前を使った別のシジミチョウ・ミオウラオビフタオシジミのオス交尾器図を下に掲げる。これは筆者の描いた線画である。顕微鏡写真では、キチン質の構造があるとその裏にある膜質部分がどのようになっているのかが判然としない場合が多々あるが、線画の場合、点線を使って表現することにより顕微鏡写真でははっきりしない膜質部を表示することが出来る。下図のA、Bを見てもらえば筆者の言わんとしていることを理解していただけると思う。



ついでに、線画でなくて申し訳ないがオス、メスの写真を掲げる。



写真による表現が万能ではなくて、線画で強調したい部分の情報を詳細に描くことで、閲覧者により理解を深めてもらえるものがあるとの「特別展」の意図を理解していただけたと思う。

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