旅人ひとりー大阪大学探検部一期生のたわごとー

とこしえの精神(こころ)を求めて、さまよ(彷徨)う旅人ひとり。やすらぎを追い続け、やがてかなわぬ果てしなき夢と知るのみ。

バタフライ カービング

2013-05-01 | 
バード カービング(bird carving)という言葉や作品を見聞された方はいるでしょうが、バタフライ カービング(butterfly carving)、それも木彫りの作品をご覧になった方はほとんどいないと思われる。それもその筈、本格的にやっておられるのは多分日本はおろか世界でも唯一人、兵庫県にお住まいのKさんが制作しておられるだけである。それも販売目的でなく、ご自分の楽しみでやっておられるのだから、正しく尊敬に値する。アメリカ産の原木をコツコツと彫ってゆき、彩色を施し、一匹完成するのに約一ヶ月かかる。

上掲の作品は羽を広げた大きさが約3cmのシジミチョウを10cmに拡大して作っていただいた。飛翔している姿であるが、羽が微妙に反り返っているのにお気付きだろうか。蝶が飛んでいる時は羽は水平を保っている訳ではなく、羽ばたく度にしなやかにたわんでいる。反り返りは彫り終えた羽を曲げるのではなく、彫り進めてゆく過程でたわみを作り上げるのだから、ただただ感嘆するばかりである。


上掲のチョウは羽の裏から、下に掲げるチョウは羽の表がよく見えるようにクローズアップしたものだが、チョウには翅脈というものがあって、ちょうど植物の葉脈と同じように見えるのだが、この翅脈を羽の表ではふくらませ、羽の裏ではくぼませてあるのがおわかりだろうか。このような細かな点についての工夫にも驚かされる。裏から見たチョウの画像の胸部にも注目願いたい。空気の抵抗を少なくするために飛翔中は六本の脚がぴったりと胸部に沿って折りたたまれている。Kさんの観察眼には脱帽するしかない。

下に掲げる画像の台座の文字を読んでいただけるだろうか。 Deramas treadawayi H.HAYA-SHI 1981、これは僕がドイツの長年にわたる蝶研究の先輩であり、友人であるColin. G. Treadaway氏に献名したチョウである。和名はトレッダウェイユメドリキララシジミという。彼へプレゼントしたいのでとKさんにご無理をお願いした。フランクフルトのTreadaway氏の研究机の上を華麗に彩っているに違いない。

Kさん、本当にありがとうございました。



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