旅人ひとりー大阪大学探検部一期生のたわごとー

とこしえの精神(こころ)を求めて、さまよ(彷徨)う旅人ひとり。やすらぎを追い続け、やがてかなわぬ果てしなき夢と知るのみ。

ルソンカラスアゲハ撮影・探検紀行

2020-01-01 | 探検
フィリピン・マニラの暑さを逃れる避暑地として知られるルソン島北部山岳地帯にあるバギオに通ずる険しい山々を這い上がるベンゲット道路が日本人の並々ならぬ努力によって完成したのは明治30年代後半で、織田作之助の小説「わが町」を読むと難工事の様子がよくわかる。そのバギオのサント・トーマス山でルソンカラスアゲハAchillides chikae)と呼ばれる美しい蝶が1965年(昭和40年)に発見され、若かった僕の心をときめかせた。
その後、近隣の高山(アマヤオ山、イヌリタン山)にも生息することが確認された。


現在はワシントン条約附属書Ⅰに指定され採集や標本の所有が厳しく規制されているので、現状を探るための観察行を計画。サント・トーマスは発見当時、既に頂上まで車道があったので今も生息しているとは思えず、しかも頂上付近は立ち入り禁止になっているので、別の州のアクセスが容易な町はずれの小高い丘で、1~2mの高さを緩やかに飛んでいるとの記述に出会い、高齢の僕でもOKだと2019年6月後半に出かけた。

現地の山岳住民イフガオ族数人をガイドに登り始めてびっくり 記述とは大違いの道なき急登のルートが待ち構えていた。先行のガイドたちが山刀で回りの枝や下草を払い、道を作りながらの登山で、息を切らしながらひたすら登った。文献に書かれていたのとは違って飛翔速度は早く、高く飛ぶのでカメラのフレーム内に入ってくれない。飽くなき執念の結果の一部の写真を下に掲げる。詳細な撮影紀行は日本蝶類科学学会会誌「Butterfly Science」No.15(2019年11月1日発行)に掲載されている。

ルソンカラスアゲハ・オス


交尾のために高速でメスを追いかけるオス


ようやく撮影出来た飛行中のオス


ルソンカラスアゲハ雌雄の追尾行動だと思い撮った写真を拡大して驚いた。モンキアゲハがルソンカラスアゲハを追いかけていたのだ。付近に両種の食草のハマセンダンと思われる樹があったので、縄張り争いの行動だった可能性が高い。


鳥に捕食されたと思われるルソンカラスアゲハの残骸が地面に落ちていた。       

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