旅人ひとりー大阪大学探検部一期生のたわごとー

とこしえの精神(こころ)を求めて、さまよ(彷徨)う旅人ひとり。やすらぎを追い続け、やがてかなわぬ果てしなき夢と知るのみ。

40数年前に記載したシジミチョウ亜種の新種への昇格

2022-01-01 | 
1978年、フィリピン・ミンダナオ島産タカネフタオシジミ属オスの前翅翅表の大きな黒色性斑が目立つ標本を展翅して、ドミヌスタカネフタオシジミTajuria dominus H.H.Druce,1895かな?と思いましたが、ミンダナオからの採集記録はないし、よく観察すると翅表亜外縁の黒色部の形が違う上に裏面後翅肛角部の橙色紋の出方も違っていました。当時、ドミヌスタカネの画像があるのみで、標本を入手出来ず、交尾器の比較がかなわなかったので、別種の可能性を抱きつつドミヌスタカネの新亜種として、オスの交尾器図を添え Tajuria dominus mizunumai H.Hayashi,1978 の学名で記載しました。
その後、英国の著名な研究者が描いた名義タイプ亜種の簡単な交尾器図を観て、その違いの大きさにミンダナオのドミヌスタカネは新種であると確信しました。残念ながら標本がなかなか手に入らず、交尾器の比較研究が出来ないまま歳月が過ぎてしまいました。数年前待望の標本を研究仲間の方から借り受けることが出来、交尾器の詳細な比較検討をしました。その結果ミンダナオ島の亜種は、別の種で、かつ新種であることを確認しました。
亜種 mizunumai の分類学的地位は Tajuria mizunumai H.Hayashi,1978ミズヌマタカネフタオシジミ)へ変更となり、40年余りの時を経て新種として名乗ることが出来ました。
各種の図を下に掲げます。
1-2.ミズヌマタカネフタオシジミ、オス(ミンダナオ島)。3-4.ドミヌスタカネフタオシジミ、オス(パラワン島南部)。5-6.ドミヌスタカネフタオシジミ、オス(インドネシア、Belitung島)


ミズヌマタカネフタオシジミ、オス交尾器図(スケールは0.5㎜)


ドミヌスタカネフタオシジミ(パラワン島南部)、オス交尾器図(スケールは0.5㎜)


ドミヌスタカネフタオシジミ(インドネシア、Belitung島)、オス交尾器・顕微鏡写真

研究論文は日本蝶類学会の「Butterflies」75号に掲載されています。


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