旅人ひとりー大阪大学探検部一期生のたわごとー

とこしえの精神(こころ)を求めて、さまよ(彷徨)う旅人ひとり。やすらぎを追い続け、やがてかなわぬ果てしなき夢と知るのみ。

幻影のアリバンバン・M氏の書評

2015-12-01 | 
2010年5月に自費出版した小説「幻影のアリバンバン」・・・蝶の友人M氏がある印刷物(2010年12月出版)に掲載してくれた書評で僕の小説を高く評価していただいていたので、ここに紹介する。上掲の画像は本のカバー裏面に印刷されたシジミチョウで、僕がフィリピンとボルネオから記載した新種・新亜種の一部であり、これらに和名を付けたものである。

「紋切り型の出だしに、正直あまり期待をしないで読み進めた。これが意外や意外、途中から徐々に筆者の筆が、活き活きと乗ってくるのが判る。予想以上に面白く読めた。
著者は林寿一氏。古くから東南アジアの蝶、特にシジミチョウに興味を持っておられる方なら誰でも知っている名前だ。グリーンブックスの『東南アジアのシジミチョウⅠ,Ⅱ』の著者と言えば、御存知の方も多かろう。  
何もこの本は、林氏が久々に書かれたシジミチョウの本では無い。男女の気持ちの交錯を書いた、立派な恋愛小説なのだ。あの林さんの何処に、こんな恋愛感情の気持ちの遣り取りを書かれる才能が在ったのか、関心と共に驚いている。

主人公はシジミチョウの研究者杉村昭彦、些か率直でない恋愛感の持ち主と言えなくもないが、何せこの主人公がモテモテなのだ。大学の時に探検部としてサラワクへ民族学調査へ、著者の体験をベースに物語は進んでいく。今のように気軽にボルネオに行けなかった時代、そこでの体験が主人公を通じて臨場感を持って伝わってくる。

一番愛した女性とは結ばれぬまま、物語はロンドンのBMに展開していく。ここでは実在のエリオットやトレッダウェイも実名で登場して、著者ならではの体験が織りなされている。嬉し恥ずかし濡れ場もあって、やがて物語はネグロス島カンラオン山に移っていく。今度は実在の採集人フランシスコ・モハガンも登場、はたして新種のシジミチョウを見つける事が出来るのか。
程良いバランスを保った結末は、爽やかですらある。著者が意識したかどうかは判らないが、それは性的接触以外での頂点を極めるという、ある意味精神的オーガズムを彷彿とさせて気持ちよい。」

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