旅人ひとりー大阪大学探検部一期生のたわごとー

とこしえの精神(こころ)を求めて、さまよ(彷徨)う旅人ひとり。やすらぎを追い続け、やがてかなわぬ果てしなき夢と知るのみ。

ミルザラムラサキシジミのフィリピン・ルバング島からの初記録

2017-08-01 | 
ルソン島マニラやミンドロ島に近い位置にあるルバング島地図


ルバング島と聞けば、中高年の者にとっては即座に第二次世界大戦最後の日本軍投降兵、小野田さんを思い浮かべることだろう。

ルバング産のシジミチョウにお目にかかる度に、ひょっとして珍しい種が混じっているのではないかと期待を抱くのは、日本の敗戦から29年近くジャングルの中を島民の目をかいくぐり、 捜索隊の呼びかけにも応じなかった小野田さんが一日本人青年の前に突然姿をあらわしたように、ある日僕の目前に思いがけず珍稀種が出てきてくれるのではないかという虫のいい願いからである。

ルソン島、ミンドロ島に近いので、 現実に目にするのは両島に分布する普通種ばかりでなかなか僕の思い入れを実現出来ずにきたが、ようやく初記録となる下に掲げる・ルバング島産ミルザラムラサキシジミ(Arhopala myrzala Hewitson, 1869)1メス・を手に入れることが出来た。


フィリピン諸島での分布は局地的で、 Treadaway & Schroeder(2012)の「 Revised checklist of the butterflies of the Philippine Islands(Lepidoptera: Rhopalocera)」や Takanami(2016)の「A Synonymic List of lycaenidae(Lepidoptera) from the Philippines・電子版」によると名義タイプ亜種がルソン、サマール、レイテ、ミンダナオの各島に分布するが、ミンドロ島からの記録はない。 ルバング島産本種メスとフィリピン他島産本種メスとの相違は特に認められないので名義タイプ亜種として扱った。

この報告は2017年7月発行の日本鱗翅学会発行の「やどりが」253号に掲載されています。

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