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診療 死体検案書と死亡診断書について

2008年06月25日 07時28分53秒 | 講義録・講演記録 2

死体検案書と死亡診断書について

 

京都大学大学院医学研究科

初期診療・救急医学分野


松田直之

医師の死亡診断書の発行

医師の死亡診断書の発行に際しては,医師法第20条により,以下の2つの規定を満たす必要があります。
 1. 最終診療後24時間以内の当該傷病や当該傷病が影響を与えた直接死因で死亡した場合
 2. 死亡に立ち会った場合
 救急医療では,突然の心肺停止として,心肺蘇生を継続された状態で患者さんが運ばれて来ます。このような来院時心肺停止(CPAOA:Cardio-pulmonary Arrest on Arrival)では,救命救急センター内で蘇生を担当する医師は24時間以内の診察がない場合や,これまで一度も診療に立ち会っていない場合がほとんどです。 

 心肺停止が最終診療24時間以内の病気に関係するものでない限り,死体検案とし,死亡診断書ではなく,死体検案書を発行することになります。必ず,外因死の可能性を考慮することになります。

 死体検案書は,自身の診療中ではない患者さんや,診療中の患者さんが診察中の病気とは異なる事由で死亡した場合に,死亡診断書に代わって発行されるものでする。このような死体検案の対象は,必ずしも異状死体ではないことにも注意が必要です。

 死体検案を行った結果,実際には心拍が一度も再開することなく死亡確認した患者さんにおいて外因か内因かを断言することは極めて難しく,不可能です。異状死体か否かは,発行される書類が死体検案書か死亡診断書かによるのではなく,純粋な病死と確定診断できるかどうかにあります。異状死でなくとも,最終診療後24時間以内の当該傷病に関する死亡でない限り,CPAOAでは死体検案書を発行することを私はお勧めしています。死因が明らかそうであっても,自身が見ていないところでの心肺停止では,薬物中毒などを含むさまざまな外因的事件性が隠れている場合があります。内因死ではなく,外因的要素が含まれる可能性には十分に留意し,死体検案とすることが望まれます。

 死体検案における異状に際しては,医師法第21条により,24時間以内に所轄警察署に届け出る義務が明記されています。しかし,未だ異状死の定義は,必ずしも明確ではありません。日本法医学会は1994年に「異状死ガイドライン」を公表し,特に外因によるものや死亡原因が明らかでないものを異状死として定義しています。診断されている病気で死亡すること以外は,異状死としての可能性が高いことに注意して下さい。

異状死に含まれるもの

 1.外因による死亡(診療の有無や診療の期間を問わない)
 2.外因による傷害の続発症,あるいは後遺障害による死亡
 3.上記1または2の疑いがあるもの
 4.診療行為に関連した予期しない死亡,およびその疑いがあるもの
 5.死因が明らかでない死亡

CPAOAにおける死体検案

 CPAOAにおける死体検案は,異状死とは区分して考える必要があり,外因による異状死である場合にのみ,死体検案をするのではありません。突然の心肺停止での救急搬入では,死因が明らかでないとして,異状死として届け出ます。院外心肺停止ては,さまざまな事件を考慮する必要があります。CPAOAにおいて死亡確認をした場合には,死体検案を行い,死体検案書を発行することが望ましいとしています。

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