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救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ー United in the World for Us ー

HP「救急一直線〜Happy保存の法則〜」は,2002年に開始され,現在はブログとして継続されています。

謹賀新年 

2022年01月01日 17時33分33秒 | COVID-19の集中治療
令和4年 2022/01/01(金) 
謹賀新年 新年のご挨拶
 
主催 救急一直線
 
救急・集中治療医学 松田直之
 
 
新年あけましておめでとうございます。
 
救急医学と集中治療医学
これはとても大切な医学領域です。
 
私の専門としているこの領域におきまして,
適切な提案と診療をさせて頂き,
より一層の日本の医療の礎
そして発展となりますよう,
本年も尽力させて頂きます。
 
皆さまの力添えをお借りしてばかりの1年となりますが,
私自身はクリエイティブに,楽しく,明るく,
皆さんの未来に貢献できる1年を歩ませてください。
 
本年も,どうぞよろしくお願い申し上げます。
 

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Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 PART 4 〜項目46~93の推奨ポイント〜呼吸・補助療法・ケアシステム

2021年10月12日 20時10分35秒 | COVID-19の集中治療

敗血症という病態を知ろう

Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 PART4

推奨内容の整理:呼吸管理,追加治療,ケアの目標と長期転帰における48項目

欧州集中治療医学会/米国集中治療医学会

〜 6グループ 93の推奨ポイント 〜

 

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野

教授 松田直之

はじめに

 敗血症は,感染症に随伴する多臓器傷害の病態です。集中治療では,COVID−19における診療活動で見られたように,多臓器傷害の評価,そして診断と治療を提供しています。国際的敗血症診療ガイドライン2021であるSurviving Sepsis Campaign guidelines 2021(SSCG 2021)が,2021年9月に公表されました。このSSCG 2021における呼吸管理,追加治療,ケア目標と長期転帰,後半の3グループの内容48項目(93項目中の48内容)の推奨を,本稿では記載しました。本ブログに記載した前の45項目と合わせて,確認されてください。

 本稿の後半の内容では,項目74から93までの20項目が敗血症罹患後の総合的ケアとして記載されています。多職種連携として大切な内容ですが,まだまだ診療エビデンスの少ない領域です。 

 全般を通して,SSCG 2021の改訂ではより一層に,診療の方策,そして罹患後のケアを充実させることが期待されます。私のコメントを,一部に,付記しています。敗血症診療の補助的視点として,活用されてください。

 

呼吸:酸素化について

46. 成人の敗血症における低酸素性呼吸不全における酸素化の目標について推奨するための十分な証拠はない。

※ 松田コメント: 集中治療における酸素化指標(conservative oxygen target)は,一般にPaO2 55–70 mmHg,SpO2は92%レベルです。

 

呼吸:HFNCの利用

47. 成人の敗血症における低酸素性呼吸不全では,非侵襲的換気よりも高流量鼻酸素(high flow nasal oxygen:HFNO)を使用する(弱い推奨,低い質のエビデンス)(NEW)。

呼吸:NIVの利用

48. 敗血症誘発性低酸素性呼吸不全の成人に対する侵襲的換気と比較して,非侵襲的換気(noninvasive ventilation)の使用するエビデンスは不十分である(推奨なし)。

 

ARDS

49. 成人の敗血症で誘発されたARDSでは,高い一回換気量(>10 mL/kg)ではなく,低い一回換気量(6 mL/kg)とする(強い推奨,高い質のエビデンス)。

50. 成人の敗血症で誘発された重症ARDSでは,高いプラトー圧ではなく30 cmH2Oのプラトー圧を上限とする(強い推奨,中程度の質のエビデンス)。

51. 成人の敗血症で誘発された中等から重症のARDSでは,低いpositive endexpiratory pressure(PEEP)よりも高いPEEPを使用する(弱い推奨,中程度の質のエビデンス)。

52. 成人の敗血症で誘発されたARDSではない呼吸不全でも,高い一回換気量換気ではなく,低い一回換気量とする(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

 

肺リクルートメントについて

53. 成人の敗血症によって誘発された中等度のARDS(moderate ARDS)では,従来行われている肺のリクルートメント手技を行う(弱い推奨,中程度の質のエビデンス)。

54. 肺のリクルートメント手技を行う場合は,徐々にPEEPを上げていくようなincremental PEEP titration/strategyとしない(強い推奨,中程度の質のエビデンス)。

※ 松田コメント:従来型のリクルートメントマニューバーは,ジャクソンリース回路などを用いて30~40cmH20で30~40秒間ほどで,一度,肺を拡張させる手法(手技)です。一方で,IPTS(incremental PEEP titration/strategy)は,90分程度をかけてPEEPを26 cmH20程度まで緩徐に上げていき,また90分ほどかけて緩徐にもとに戻していくような肺拡張の方法です。この手法は,肺の圧保護を期待した非従来手法ですが,1)即効的効果が得られない,2)90分から3時間の中で新たな変化が起きる,3)厳格管理のタイミングを逃すなどが懸念されます。

 

腹臥位療法

55. 成人の敗血症で誘発された中等度のARDS(moderate ARDS)の人工呼吸管理では,1日12時間以上の腹臥位とする(強い推奨,中程度の質のエビデンス)。

※ 松田コメント:私も睡眠の半分は腹臥位ですので,私の人工呼吸管理の半分は腹臥位で良いかもしれません。しかし,日本の現在のICU管理では,安全管理が強く期待されます。つまり,腹臥位療法管理には,「腹臥位安全管理ベッド」の新規システム開発が必要です。顔面・皮膚管理,眼球保護管理,唾液管理,腹腔内圧管理など,管理の安全化システムの開発の総合討議の解決の下で安全で手のかからない腹臥位療法が期待されます。また,ここには多くの尽力が必要となるために診療加算が必要です。患者さんがまず,どのような睡眠様式を一般としているかを理解することも重要です。腹臥位療法は下葉背側の無気肺に対する対応と私はお伝えしています。

 

筋弛緩薬

56. 成人の敗血症で誘発された中等度から重症のARDS(moderate ~severe ARDS)では,筋弛緩薬を使用する場合は,持続注入よりも間欠的な投与とする(弱い推奨,中程度の質のエビデンス)。

 

ECMO

57. 成人の敗血症で誘発された人工呼吸管理が困難な重症ARDS(severe ARDS)では,活用できる状況であればVV-ECMOを利用する(弱い推奨,低い質のエビデンス)(NEW)。

※ 松田コメント:VV-ECMOによる管理過程で,どのような改善治療をできるかの治療策がとても大切です。

 

ステロイド

58. 成人の敗血症性ショックで昇圧が必要な場合は,糖質コルチコイドを使用する(弱い推奨; 中程度の質のエビデンス)。

解説:適切な輸液療法とノルアドレナリンで血行動態の安定性を回復できる場合は,敗血症性ショックの治療にIVヒドロコルチゾンを使用しません。ショックを蘇生できない場合にヒドロコルチゾン1日量 200 mgを分割して静脈内投与します。敗血症性ショックの成人に使用される典型的なコルチコステロイドは,ヒドロコルチゾンを6時間ごとに50 mgを静脈内投与するか,または持続注入すると記載されています。

※ 松田コメント: 24時間持続投与を私はお勧めしています。血中コルチゾル濃度を,朝・夕としてヒドロコルチゾン使用開始後DAY1とDAY3にモニタリングする方法や工夫があります。

 

血液浄化法について Blood Purification

59. 敗血症または敗血症性ショックの成人には,PMX-DHPを使用しない(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

※ 松田コメント:非常に厳しい敗血症性ショックでは私はPMX-DHPでまず救命しますので,PMX-DHPを使用する理念が必要なのだと思います。大切なことは,敗血症性ショックをPMX-DHPで一時的に離脱した後に,その患者さんをどのように社会復帰できるようにするかの治療策です。このような「敗血症総合管理バンドル」が大切です。

60. 他の血液浄化技術の使用を推奨するには証拠が不十分です。

※ 松田コメント:糸球体濾過の厳格管理が,敗血症診療に期待されます。後述の67項と68項と,どうして一緒にまとめなかったのかについては,現在,調べています。

 

輸血について

61. 敗血症または敗血症性ショックの成人には,制限的な輸血の方策とする(強い推奨,中程度の質のエビデンス)。

解説:赤血球輸血は,通常,ヘモグロビン値が7 g/dL以下です。その上で,赤血球輸血についてはヘモグロビン濃度のみで判断するべきではなく,全体的な患者の臨床状態を評価し,その上で急性心筋虚血,重度の低酸素血症,急性出血などの緊急性を考慮します。

※ 松田コメント:これは現在の急性期医療の基本知識ですので,確認されていただくとともに,現在でも記載されています。

 

免疫グロブリンについて

62. 敗血症または敗血症性ショックの成人には,静注用免疫グロブリンを使用しない(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

※ 松田コメント:毒素産生ブドウ球菌(MRSA),サイトメガロウイルス検出,1,3-β-Dグルカン上昇,またウイルス関与(疑)において,救命や早期改善のために使用しています。その上で,費用対効果を考慮します。

 

胃粘膜防御

63. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,消化管出血の危険因子がある場合には,ストレス潰瘍を予防する(弱い推奨,中程度の質のエビデンス)。

 

深部静脈血栓症対策

64. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,禁忌が存在しない限り,薬理学的な深部静脈血栓症対策とする(強い推奨,中程度の質のエビデンス)。

65. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,深部静脈血栓症を予防のために未分画ヘパリン(UFH)よりも低分子量ヘパリン(LMWH)を使用する(強い推奨,中程度の質のエビデンス)。

66. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,深部静脈血栓症を予防のために,薬理学的予防に加えて機械的予防を併用しない(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

 

血液浄化法 Renal Replacement Therapy

67. 敗血症または敗血症性ショックに急性腎障害を併発した成人では,持続的または断続的な腎代替療法を併用する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

68. 敗血症または敗血症性ショックに急性腎障害を併発した成人では,腎代替療法の明確な適応がない場合は,腎代替療法を使用しない(弱い推奨,中程度の質のエビデンス)。

 

血糖コントロール

69. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,血糖値180 mg/dL以上でインスリン療法を開始する(強い推奨,中程度の質のエビデンス)。

解説:集中治療領域のインスリン療法の目標血糖範囲は,NICE-SUGAR研究に準じて144~180 mg/dLです。

 

ビタミンC

70. 敗血症または敗血症性ショックの成人には,ビタミンC静注療法をしない(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

※ 松田コメント:喫煙歴,飲酒歴,FIO2>0.5などで,私は大量ビタミンC静注療法を考慮しています。

 

重炭酸イオン

71. 敗血症性ショックおよび低灌流で誘発される高乳酸血症の成人では,血行動態を改善するためや,昇圧剤の投与量を減らすために,重炭酸イオンを投与しない(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

72. 敗血症性ショックで重度の代謝性アシドーシス(pH≤7. 2)およびAKI(AKINスコア2または3)の成人では,重炭酸イオンを投与する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

 

栄養管理

73. 経腸栄養が可能な敗血症または敗血症性ショックの成人患者には,経腸栄養を早期(72時間以内)に開始する(弱い推奨; 非常に低い質のエビデンス)。

※ 松田コメント:遅い感じがします。少なくとも48時間,原則としてすぐに開始する方法もあります。早期経腸栄養の定義がおかしいです。

 

ケア目標

74. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,患者や家族とケアと予後の目標について話し合う(ベストプラクティスステートメント:BPS)。

75. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,早期(72時間以内)からケアの目標に取り組む(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

76. 敗血症または敗血症性ショックの成人において,ケア目標のための標準化された基準の推奨には,エビデンスが不十分である。

※ 松田コメント:ここも解説を読まれると良いです。引用文献は,534〜544までの11編しかないこと,今後の本内容の充実のための課題となります。

 

緩和ケア

77. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,患者と家族の症状および苦痛に対処するために,適切な場合,緩和ケア(臨床医の判断に基づく緩和ケアの相談を含む)を治療計画に統合させる(ベストプラクティスステートメント:BPS)。

78. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,すべての患者にルーティンに正式な緩和ケアの相談とするのではなく,臨床医の判断に基づいて緩和ケアの相談とする(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

 

ピアサポート

79. 成人の敗血症または敗血症性ショックの生存者とその家族については,ピアサポートグループ(敗血症に罹患した同じような立場のサポーターグループ)に紹介する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

ケア場所の移動に際して

80. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,管理移行時には重要な情報の受け渡しをプロセスとして行う(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)。

81. 敗血症または敗血症性ショックの成人において,重症管理報告として構造化された申し送りツールを使用することと,通常の申し送りの優劣を区分できない。

※ 松田コメント:現在は,管理時間帯移行時の患者さん管理の申し送り内容は電子カルテにしっかりと残されていると思いますが,各施設での工夫として,さまざまな方法が用いられています。しっかりと申し送り情報を明確に,担当者移行の氏名,時刻,場所,内容をカルテに残ことが不可欠です。

 

経済的支援や社会的支援のスクリーニング

82. 成人の敗血症または敗血症性ショックとその家族に対して,経済的支援と社会的支援(住居,栄養,経済的,精神的支援など)をスクリーニングし,それを利用可能な場合には,本人や家族に紹介する(ベストプラクティスステートメント:BPS)。

 

患者と家族への敗血症教育

83. 敗血症または敗血症性ショックの成人とその家族には,退院前およびフォローアップにおいて,敗血症に対する教育(診断,治療,および集中治療管理および敗血症後の徴候)を口頭と書面で提供する(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)。

 

治療計画の共有

84. 成人の敗血症または敗血症性ショックとその家族に対して臨床チームは,ICU後および退院後の計画が受け入れ可能で実行可能であることを確認するために,それらの決定に参加する機会を提供する(ベストプラクティスステートメント:BPS)。

 

退院計画・退院支援

85. 成人の敗血症または敗血症性ショックとその家族に対して,患者が一般病床に移動する際には,通常のケアと比較して,クリティカルケア移行プログラム(critical care transition program)を使用する(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)。

※ 松田コメント:管理場所が,集中治療室から一般病床へ,また自宅への退院後なる場合は,投薬誤りや情報逸脱の内容にがないようにしっかりと管理することになりますが,このようなcritical care transition programの作成を各施設で工夫しましょう。

86. 成人の敗血症および敗血症性ショックでは,ICU退出と退院の両方で投薬の調整を行う(BPS:ベストプラクティスステートメント)。

87. 成人の敗血症および敗血症性ショックの生存傷病者と家族に対して,そのICU滞在,敗血症と他の診断内容,治療,そして一般的な合併症についての情報を,書面および口頭で退院要約に含める(BPS:ベストプラクティスステートメント)。

88. 成人で新たな障害を発症した敗血症または敗血症性ショックでは,臨床医による新規および長期の後遺症のフォローアップを退院時計画に含める(BPS:ベストプラクティスステートメント)。

89. 通常の退院後のフォローアップと比較して,退院後の早期のフォローアップを推奨するには,エビデンスが不十分である。

 

認知療法

90. 成人の敗血症および敗血症性ショックの生存傷病者に対して,早期認知療法を推奨するにはエビデンスが不十分である。

 

退院後のフォローアップ

91. 敗血症または敗血症性ショックの成人生存者には,退院後の身体的,認知的,および感情的な問題の評価とフォローアップを推奨する(BPS:ベストプラクティスステートメント)

92. 成人の敗血症および敗血症性ショックの生存傷病者に対して,可能であれば重症後の病気のフォローアッププログラム(post-critical illness programs)を共有する(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)。

93. 48時間以上の人工呼吸管理または72時間以上の集中治療管理を受けた敗血症または敗血症性ショックの成人生存者には,退院後のリハビリテーションプログラムを紹介する(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)。

記載:Post-critical illness programs(PCIP:集中治療後管理プログラム)は,集中治療で生存した患者さんが倦怠感,健忘,無気力,呼吸苦,筋力低下,活動性低下,抑うつ状態など多くの多面的な問題をスクリーニングし,そして対処する方法として,世界的に開発されている過程にあります。これらの個々のプログラムは,構造が異なり,現在は世界中で共有して利用できるものではありません(637)。心的外傷を評価したランダム化研究は非常に少ないですし(文献638,639),これらのメタ解析ではコクランレビュー(文献640)と一致して,死亡率,QOL,身体機能,そして認知において,通常のケアとPCIPを用いた違いは認められていません。 精神的症状として不安,うつ病,心的外傷が,わずかに改善する可能性がありますが不明瞭です。このような敗血症後のフォローアッププログラムPCIPの研究が進行中です(文献641,642)。研究結果としての有効性は曖昧ですが,これらの集中治療後管理プログラムは患者に好まれており,介入試験が必要になります(文献637,643)。

参考文献

637. Teixeira C, Rosa RG: Post-intensive care outpatient clinic: Is it feasible and effective? A literature review. Rev Bras Ter Intensiva 2018; 30:98–111

638. Cuthbertson BH, Rattray J, Campbell MK, et al; PRaCTICaL study group: The PRaCTICaL study of nurse led, intensive care follow-up programmes for improving long term out- comes from critical illness: A pragmatic randomised con- trolled trial. BMJ 2009; 339:b3723

639. Jensen JF, Egerod I, Bestle MH, et al: A recovery program to improve quality of life, sense of coherence and psychological health in ICU survivors: A multicenter randomized controlled trial, the RAPIT study. Intensive Care Med 2016; 42:1733–1743

640. Schofield-Robinson OJ, Lewis SR, Smith AF, et al: Follow-up services for improving long-term outcomes in intensive care unit (ICU) survivors. Cochrane Database Syst Rev 2018; 11:CD012701

641. Kowalkowski M, Chou SH, McWilliams A, et al; Atrium Health ACORN Investigators: Structured, proactive care coordina- tion versus usual care for Improving Morbidity during Post- Acute Care Transitions for Sepsis (IMPACTS): A pragmatic, randomized controlled trial. Trials 2019; 20:660

642. Paratz JD, Kenardy J, Mitchell G, et al: IMPOSE (IMProving Outcomes after Sepsis)-the effect of a multidisciplinary fol- low-up service on health-related quality of life in patients postsepsis syndromes-a double-blinded randomised con- trolled trial: Protocol. BMJ Open 2014; 4:e004966

643, Prescott HC, Iwashyna TJ, Blackwood B, et al: Understanding and enhancing sepsis survivorship. Priorities for research and practice. Am J Respir Crit Care Med 2019; 200:972–981

 

おわりに

 SSCG2021における「93の推奨項目」,後半の46項から93項までを紹介しました。以上,ご確認ください。2021年においてもSSCG2021,まだまだ不十分であり,診療エビデンスを満たしていく領域が散見されます。本稿においては,意訳をしているところなどを含めて,適時,追記,また補足とさせていただきます。敗血症診療,世界の潮流として,ご確認ください。

初稿:2021年10月2日,保存:2021年10月12日,修正UP:2021年11月3日

 

参照:

PART1 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021  概要 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021

PART2 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 「敗血症のスクリーニングと早期発見」について

PART3 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021  推奨内容の整理「スクリーニングと初期蘇生,感染,血行動態の45項目」

 


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診療 ワクチン接種の会場管理:ワクチン接種の診療

2021年09月13日 07時01分15秒 | COVID-19の集中治療

診療 コロナワクチン接種の会場管理

新型コロナウイルスワクチン接種における注意事項の整理

 

名古屋大学大学院医学系研究科 

救急・集中治療医学分野

松田直之

 

 

【はじめに】新型コロナワクチン接種として,ファイザー(株),モデルナ(株),アストラゼネカ(株)のワクチン接種が,日本でも進んできています。このワクチン接種において,接種可能かどうかを医師が診察します。一般に,けいれん(てんかん),心臓(起立性低血圧),腎臓,肝臓,血液疾患,アレルギーなどの重要な病歴のある方などの基礎疾患のある場合には慎重に対応することになります。また,1週間前に骨折した,肺炎でまだ抗菌薬を飲んでいる,意識が悪い,お腹を壊しているなど炎症状態や炎症の回復状態においても,注意が必要です。しっかりした状態の評価のもとでワクチン接種を遂行することが大切であり,適切にワクチン接種の承認を行うことが期待されます。筋注による薬剤の血中濃度のピークは一般に7分から10分です。筋注後の血中濃度上昇による直接の影響は約15分前に評価します。このため,ワクチン接種後は15分間,あるいは30分間は経過観察とさせていただくのが良いでしょう。その一方で,ワクチン接種会場では,いろいろな出来事に遭遇することになります。対応する皆さんが留意するとよい事項について記載しています。

1.言葉が通じない

 日本語も英語も通じない場合があります。スマートフォンや携帯コンピュータの言語翻訳ソフトを使う準備があるとよいです。ブラジル語,ラテン語,ロシア語,もちろん,予め摂取される方の情報がわかるため通訳の方を置くことも重要ですが,限られた状況においては,スマートフォンのコンピュータの翻訳機能,翻訳会話が役立ちます。

2.COVID-19接触歴あり

 ワクチン接種会場に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(疑)あるいはCOVID-19未発症のSARS-CoV-2ウイルス保持者がやってこられます。COVID-19と診断された方と接触したという方もやってこられます。このようなことのないようにワクチン接種希望の皆さんには,予め自己管理,自己申告を徹底していただくようにワクチンホームページで注意喚起する必要があります。

 ワクチン接種数日後にCOVID-19に罹患した患者さんも報告されてきています。ワクチン接種会場が新型コロナウイルス罹患のクラスターとならないように,厳格にワクチン接種会場をクラスター化から守る必要があります。

 COVID-19接触歴,また接触歴がなくても,発熱,咳,嗅覚症状,消化器症状などの症状に注意してCOVID-19をワクチン接種会場に紛れ込ませないようにします。COVID-19に罹患した方との接触歴がある場合にはワクチン接種を延期していただき,症状観察を1週間程度行い,ご自身でご自身を隔離することを説明します。

3.COVID-19で入院していた

 既に一度,COVID-19に罹患して入院治療を受けた方が,ワクチン接種を希望される場合があります。CDC(Centers for Disease Control and Prevention:アメリカ疾病予防管理センター;https://www.cdc.gov)は,「新型コロナウイルス再感染のリスクは,感染後数か月は低くいため,罹患後数ヶ月後までワクチン接種を遅らせることも考える」などとしています。COVID-19罹患後10日程度であれば,ワクチン接種を2ヶ月後まで遅らせることもご本人と相談するのが良いかもしれません。その一方で,ご本人の希望が強い場合で,全身状態として問題のない場合にはワクチン摂取を許可します。

 厚生労働省は,既にコロナウイルスに感染した方も新型コロナワクチンを接種する方針としています。(参照:厚生労働省新型コロナワクチンQ & A;https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0028.html)

4.ピルを飲んでいる

 避妊策としてピルを服用している場合,血栓症のリスクに注意が必要となります。この低用量ピルの内服では,ピル服用後3~4か月以内に血栓症(深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症・脳梗塞など)のリスクが高いことが知られています。一方で,内服期間が長い場合には,血栓リスクも下がる傾向があります。このため,ピル服用期間の評価が必要となります。

 結論として,一般には,海外ではワクチン接種のためにピル服用を中止としていません。一度ワクチン接種のためにやめてピル内服を再開するということは,むしろ血栓症発症のリスクを高める可能性があるとしています。ピル内服と全身性血栓症の関連には今後も留意が必要となります。

5.妊娠8週の妊婦さんのワクチン接種希望

 子供さんの器官形成期(胎児の臓器が作られる時期)は妊娠12週頃までですので,異常があった場合に偶発的な胎児異常の発生であるのか,またはSARS-CoV-2 mRNAワクチンの影響なのかの評価ができませんので,妊娠12週を過ぎるまでワクチン接種を延期していただくのが良いかもしれません。ご本人と相談してワクチン接種を決定します。(参照:日本産婦人科感染症学会「新型コロナウイルスワクチン Q & A」https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/390112.pdf)

6.授乳中のお母さん

 授乳中のお母さんに対しては,抗体が母乳に移行することも知られているため,ワクチンを摂取していただいています。(参照:日本産婦人科感染症学会「新型コロナウイルスワクチン Q & A」:https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/390112.pdf)

7.混合ワクチンを昨日打ったけどコロナワクチンも打ちたい

返答:厚生労働省は他のワクチンを摂取した場合は2週間の間隔を開けることを勧めています。厚生労働省は,「原則として,新型コロナウイルスワクチンとそれ以外のワクチンは,同時に接種できない」としています。どれぐらい時間をあけるべきかのエビデンスがないために,2週間レベルを一つの区切りとしています。しかし,現在,米国疾病予防管理センターCenters for Disease Control and Prevention(CDC)は,新型コロナウイルスワクチンの接種を遅らせるべきではないとしています。流れとしては,他のワクチンを接種していても新型コロナウイルスワクチンを接種して良いという方向性になると予測しますが,接種希望の個々の皆さんの状態を評価して2週間以内では延期,1週間以内では延期などとすると良いと評価されます。その上で,現在は厚生労働書の指針に従い,2週間以内は延期とする説明が最も適切と考えています。インフルエンザワクチンと新型コロナウイルスワクチンの接種間隔においても,理想としては2週間あけることが期待されます。ここには,2021年9月において診療研究エビデンスがありません。以上を含めて,まずは新型コロナウイルスワクチンはさまざまな危険がありますが,この接種を早く完了することをお勧めしています。

解説:CDCの記載(2021/09/17)は,以下の内容となります。Coadministration with other vaccines:COVID-19 vaccine and other vaccines may be administered on the same day, as well as any interval without respect to timing. When deciding whether to administer COVID-19 vaccine and other vaccines, providers should consider whether the patient is behind or at risk of becoming behind on recommended vaccines, their risk of vaccine-preventable diseases (e.g., during an outbreak), and the reactogenicity profile of the vaccines.

例:1週間まえに2種混合ワクチンを打ったという小児(11歳以上13歳未満)がやってくる場合があります。2種混合ワクチンは,ジフテリア(D)と破傷風(T)に対する ワクチンなので「DTワクチン」などとも呼ばれており,11歳以上13歳未満が対象です。また,4種混合ワクチンはジフテリア(D:diphtheria),百日せき(P:pertussis),破傷風(T:tetanus),ポリオ不活性化ワクチン(IPV:inactivated polio vaccine)の4種類ですので「DPT-IPVワクチン」などと呼ばれています。第1期として4種混合ワクチンは生後3ヵ月から接種でき,3~8週間隔で3回,3回目の約1年後に4回目を接種します。そして,第2期として11歳から2種混合ワクチン(DPワクチン)を1回接種することになります。そして,3種混合ワクチンというジフテリア(D),百日せき(P),破傷風(T)の3種類,つまりポリオのない「DPTワクチン」は11歳から12歳に接種する2種混合ワクチンの代わりに3種混合ワクチンとして接種してもよいと厚生労働省が認可しています。このような小児の内容に加えて,成人や高齢者における肺炎球菌ワクチン,破傷風トキソイド(破傷風ワクチン),インフルエンザワクチンなどもあります。本邦では,厚生労働省の指針に従って,当面は他のワクチン接種後は新型コロナウイルスワクチン接種,2週間待つことをお勧めしています。

引用:Interim Clinical Considerations for Use of COVID-19 Vaccines Currently Approved or Authorized in the United States 

8.寝たきりだけど連れてきた

 状態の悪い方に対して,自宅や介護施設への訪問としてワクチン接種を行っている先生もいらっしゃるともいます。このような方のワクチン接種後のトラブルは,低ナトリウム血症や痙攣,肺炎像の出現,接種後2日目の心肺停止などです。しっかりと全身状態の評価を行ってからの接種が重要です。電解質異常として,血清ナトリウム値117 meq/Lの低ナトリウム血症(意識障害)へのワクチン接種などの有害事例もありますので注意が必要です。

9.HIVですがワクチン大丈夫ですか?

 「大丈夫です」と答えています。(参照:HIV感染者における新型コロナウイルスワクチンに関するQ&A;http://www.acc.ncgm.go.jp/news/20210317131915.html)

10.血友病ですがワクチン大丈夫ですか?

 筋肉内出血に注意が必要ですので,凝固因子補充の予定と合わせて可能かどうかを相談していただきます。

11.ワクチンスケジュールについて

 ワクチンスケジュールについて,改めて質問を受けた際には,現在は2回の接種として説明しています。

□ ファイザー(株)のワクチン:1回目の接種から3週間後に2回目を接種します。

□ 武田/モデルナ(株)のワクチン:1回目の接種から4週間後に2回目を接種します。

□ アストラゼネカ(株)のワクチン:1回目の接種から4~12週間後に2回目を接種します。最大の効果を得るためには,8週以上の間隔をおいて接種することが望ましいとされています。

(参照:厚生労働省 新型コロナワクチン接種についてのお知らせ:新型コロナワクチン接種についてのお知らせ)

【おわりに】現在使用されているワクチンは,COVID-19への罹患率を減少すること,また重症化を阻止することが確認されてきています。この有効性の一方で,ワクチン接種をしてよい状態かどうかの評価を医師が行います。本稿は,適時,追記させて頂きます。

投稿:2021年9月13日(初稿),9月17日(内容 7 & 8 追記)


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救急一直線 インデックス 3 COVID-19についての記事検索

2021年05月21日 01時47分10秒 | COVID-19の集中治療

救急一直線 COVID-19 関連記事の整理 集中治療  

インデックス 3 COVID-19についての記載記事検索

救急科指導医・専門医,集中治療専門医,麻酔科指導医・専門医

松田直之

診療の手引き

新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き・第 6.0 版

令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業一類感染症等の患者発生時に備えた臨床的対応に関する研究 ページ更新:2021年11月2日

検査の手引き 新型コロナウイルスの検査/スクリーニング

病原体検査の指針第4.1版(厚生労働省健康局結核感染症課)https://www.mhlw.go.jp/content/000841541.pdf

病原体検査の指針第3版(厚生労働省健康局結核感染症課)https://www.mhlw.go.jp/content/000725966.pdf

抗原検査キット「エスプラインSARS-CoV-2(富士レビオ社)」の厚生労働省の薬事承認について

 

データ共有 新型コロナウイルスの各地域の現状 

世界 WHO 新型コロナウイルス感染情報 https://covid19.who.int

日本 新型コロナウイルス感染状況 https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html

厚生労働省コロナウイルスウイルス感染症国内発生状況 https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html

日本 新型コロナウイルス死亡統計 http://www.ipss.go.jp/projects/j/choju/covid19/index.asp

愛知県新型コロナウイルス情報 https://www.pref.aichi.jp/site/covid19-aichi/

東京都新型コロナウイルス情報 https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp

京都府新型コロナウイルス情報 https://www.pref.kyoto.jp/kentai/corona/hassei1-50.html

大阪府新型コロナウイルス情報 http://www.pref.osaka.lg.jp/default.html

奈良県新型コロナウイルス情報 https://stopcovid19.code4nara.org/?fbclid=IwAR2BuH056HCMLHhYCS_KP0Eua7kcJRMdsuBDbXC0HQIqleL5n7vEhR10_ns

 

敗血症関連市民講座(YouTube)

   1. 市民講座 敗血症ってなんですか?? 松田直之

   2.  市民講座 敗血症では意識が悪くなります 松田直之

   3.  市民講座 敗血症で呼吸は早くなります 松田直之

   4.  市民講座 敗血症で血圧が低下します 松田直之

   5.  市民講座 敗血症で脈が早くなる?? 松田直之

   6.  民講座 敗血症で出血が起きます 松田直之

   7.  市民講座 敗血症で腎臓の機能が低下します 松田直之

   8.  市民講座 敗血症管理における救急外来でのモニタリング 松田直之

   9. 市民講座 世界における敗血症の救命活動〜Global Sepsis Alliance〜 松田直之

 10. 市民講座 敗血症における集中治療室の役割 松田直之

 

ブログ内検索 新型コロナウイルス関連

共有注意事項 ワクチン接種で注意すること

2021年5月10日 UP

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マニュアル  敗血症 俳優・女優等 メイクアップアーティストの新型コロナウイルスに対する予防策

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レビュー COVID-19の多臓器障害の特徴

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留意事項 アビガン® 催奇形性に対する適正理解

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寄稿 アビガンⓇ(ファビピラビル )  間質性肺炎への注意勧告・アビガン予防投与の提案

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寄稿 新型コロナウイルスの救急・集中治療 COVID-19の集中治療バンドル 〜病態生理学的アプローチ〜

新興ウイルス感染症発症における集中治療対策(prospective)

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寄稿 Contribution: Critical Care against New Coronavirus SARS-CoV2  

Perspective 13  Bundles for COVID-19 Treatment in Emergency and Critical Care

新興ウイルス感染症発症における集中治療対策(prospective) 間質性肺炎への中国への注意勧告・アビガン予防投与の提案

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2020年3月4日 UP

留意共有 新型コロナウイルス感染症と集中治療

新興ウイルス感染症発症における集中治療対策(prospective)

2020年2月25日 UP


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お知らせ コロナ対策シンポジウム 「新型コロナワクチン導入後のあるべき姿」

2021年05月20日 23時53分12秒 | COVID-19の集中治療

bioMerieux Syndromic Symposium 2

日程  :2021年5月22日(土) 14:00~17:00

形式  :WEBセミナー(ライブ配信形式)

テーマ :「新型コロナワクチン導入後:これからの呼吸器感染症診断のあるべき姿」

広く,皆さま,ご参加下さい。

 

【特別講演】

  • 演題:演題ワクチン導入後のCOVID-19鑑別診断の重要性 ~ワクチンの効果をどのように見える化するか?~
  • 演者:中野 貴司 先生  川崎医科大学 小児科 教授

 

【講演1】--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

  • 演題: 呼吸器感染症診断:新型コロナワクチン導入前と今後の在り方
  • 演者: 相良 博典 先生   昭和大学病院 病院長 
  •  

【講演2】--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

  • 演題:検査の立場から考える、マルチプレックスPCR機器の活用と課題
  • 演者:清祐 麻紀子 先生  九州大学病院 検査部 副技師長

 

【講演3】 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

  • 演題: 小児科診療に新型コロナが与えている影響とワクチンへの期待
  • 演者: 庄司 健介 先生  国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 感染症科 医長

 

【講演4】 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

  • 演題: コロナウイルス流行による重症呼吸器感染症診断への影響:集中治療領域でのアプローチ
  • 演者: 志馬 伸朗 先生  広島大学大学院 救急集中治療医学 教授

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

座長

・岩田 敏 先生   国立がん研究センター中央病院 感染症部/感染制御室 室長

・大塚 喜人 先生  亀田総合病院 臨床検査管理部 部長

・松田 直之 先生  名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 教授

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■セミナー案内

https://www.biomerieux-jp.net/wp/wp-content/uploads/2021/04/2F528-1_2nd-BSS-seminar.pdf

■セミナー申込はこちらより※

https://www.biomerieux-jp.net/seminar/

   


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共有注意事項 ワクチン接種で注意すること

2021年05月10日 20時28分11秒 | COVID-19の集中治療

共有事項 新型コロナウイルスのワクチン接種の注意事項

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野

教授 松田直之

ワクチンの現状の把握

 現在,新型コロナウイルス対策としてワクチン接種が開始されましたが,皆が知っておくべきこと,前向きに報道しなければならないことがあります。個人でも,厳格に注意していただくのですが,ご老人の接種,いくつかの問題発生に注意です。以下の危険が生じないように,周囲で気をつける,未然の対応が大切です。医療事故に,十分に気をつけて対応していくことが大切です。

内容1.ワクチン接種スケジュール(薬機法)が守られない危険性

 ファイザー社のワクチン(コミナティ筋注)は,現在,3週間を目安に2回の摂取となっています。しかし,ご高齢においては,この約束が守られないケースが散見されています。理由は,前回接種の記録をご本人がなくしてしまったこと,2回目の接種で記録書の持参を忘れたこと,ワクチン接種記録システムを守るために対応者がワクチン接種を延期することです。記録書類などを忘れたご老人の2回目の接種が,予定の1日後などの速やかではなく,5週間目になってしまう事例が散見されます。ワクチン薬剤の不適切使用の範疇になります。私たちや市町村は,都道府県や国と連携して,ワクチン接種スケジュールを厳守し,このような高齢者の問題事例を改善することが必要です。

  用法及び用法:日局生理食塩液1.8mLにて希釈し,1回0.3mLを合計2回,通常,3 週間の間隔で筋肉内に接種する。

  接種間隔:1回目の接種から3週間を超えた場合には,できる限り速やかに2回目の接種を実施すること。

内容2.ワクチン混合接種の危険性

 ファイザー社に続いて,モデルナ社のワクチンが特例承認され,2021年5月中旬により接種開始となります。この初期は接種会場を変えて対応することになりますが,後に様々な場所で様々な会社のワクチンが摂取される危険に事前的注意が必要です。さらに,アンジェス社などのDNAワクチンなどを摂取できるようになると,ワクチン2回目などの重複接種に十分に注意しなければなりません。「ファイザー社」の2回めの接種に間違って「モデルナ社」を摂取した場合など,アナフィラキシーや免疫異常などを含めて,どのような事態になるかの短期的かつ長期的な予想が付きません。ファイザー社もモデルナ社も,また海外のワクチンを独自に摂取したなどという多種のワクチンの「混合接種」を回避する必要があります。種類の異なる,製造元の異なるワクチンの混合接種には,要注意です。このような医療事故については,細かな確認を取れない高齢者などの接種で,厳格に注意する必要があります。接種記録表を担当者が重視し,接種記録表や使用するワクチンの種類については2名以上で「目視」だけではなく,「声出し」での確認とし,厳格に対応します。しかし,「接種記録表」を自宅に忘れた等の場合にも,その日の対応として頂き,2回目の接種を遅らせない工夫が必要です。報道でも,アラートすることが大切な内容です。

内容3.ワクチン接種後の活動の危険性

 ワクチンを摂取したことにより,行動を拡大してしまう方がいます。本ウイルスは,ワクチンにより症状出現が抑えられていても,不顕性感染として気道などに存在している可能性があります。個人差があると思いますが。ワクチン接種後に無症状であってもスーパースプレッダーとして,感染播種に関連した可能性なども知られています。こういう事例は,今後,日本でも皆で確認していくことが大切です。ワクチン接種後の行動拡大の是非については,論文や,しっかりと報道で繰り返して討議していくことが期待されます。知識の提供により,自らで深く考えていただく,このシステムが期待されます。

内容4.熱中症

 ワクチン接種後の熱中症に気をつけて下さい。ワクチン接種とは別に,毎年,5月から9月まで,熱中症に注意が必要です。現在,多くの急性期病院が満床状態となっており,これを「医療崩壊」と呼んでいます。心肺停止,意識障害,そして重度熱中症などの受け入れが,これまで以上に断られ始めています。ご自身が熱中症にならないように気をつけるとともに,特にご高齢者の熱中症には,ご家族や周囲の皆さんが気をつけてあげて下さい。本年は,熱中症患者さんを受け入れる病院システムが壊れ,都市部の救命救急センターや国公立大学病院に完備できていません。ここを,病院長や救急科指導医が指導していくことが必要です。

内容5.上腕筋注手技の改善と徹底

 より適切な筋注の手技を開発していく時期にあります。より完成された筋注手技を提供していくことが大切です。注射用シリンジの持ち方は,手技としてとても大切です。テレビを見る限りでは,「針刺し事故」に十分に注意した「適切な注射法」を指導する必要があります。技術を洗練させる方法の教授が大切です。

 

今後も,情報共有とします。

初版:2021年5月10日(内容1,2,3)


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共有事項 新型コロナウイルス SARS-CoV-2の変異について

2021年03月01日 20時27分41秒 | COVID-19の集中治療

話題 新型コロナウイルス SARS-CoV-2の変異について

 

名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野

教授 松田直之

新型コロナウイルス SARS-CoV-2の変異について,一般の方からも質問を受けることがあります。

 

質問1:日本での新型コロナウイルス変異などを監視する「行政システム」は,どの様になっているのでしょうか?

返答1:内閣総理大臣,内閣官房長官,そして内閣官房副長官の直下に40の事務局や推進室などが設置されています。この中で,新型コロナウイルス感染症に関係する部局として,1)情報通信技術(IT)総合戦略室,2)新型インフルエンザ等対策室,3)国際感染症対策調整室,4)新型コロナウイルス感染症対策推進室,5)新型コロナウイルス感染症対策本部事務局が,内閣官房副長官の直下に置かれています。2021年4月1日の時点で,新型コロナウイルス感染症対策推進室は,1)総務・総括班,2)法令・ガイドライン班,3)企画調整班,4)調査・広報班,5)ICT・国際班の5つの班に分かれ,室員約87名として感染対策推進室を運営し,外部委員などとの小会議などを含めて内閣官房副長官の上申する仕組みとなっています。より明確に,ホームページ(https://www.cao.go.jp/index.html)に仕組み編成の推移を掲載していくことが期待されています。

 一方,内閣官房とは別に,新型コロナウイルス感染症対策推進本部が2020年1月に設置され,厚生労働省にも結核感染症課を母体として2020年7月に技術総括班が戦略班として改編され,新型コロナウイルス感染症対策の技術的課題や感染症法の解釈に対応するだけではなく,アドバイザリーボードなどを交えて,コロナ対策の基本指針が検討されています。2021年4月1日からにおいても,事務局直下として総務班と戦略班の2つが共同して,総括班は,渉外部門(官庁班,広報班,国会議員班,コールセンター班現地リエゾン班),対策部門(技術総括班,サーベーランス班,検疫班,医療体制班,公衆衛生対策班,国際班医薬品物資班,法令班),ロジスティック部門(総務班,庁舎班,会計班,IT班)として,新型コロナウイルス感染症対策をまとめて下さっています。

 2021年4月から5月にかけては,内閣官房と厚生労働省の2つの連携体制として,新型コロナウイルス対策が充実してきています。その中で,10月中旬からの次波に備えて,より一層の向上が8月までに求められています。この透明性と公開性が必要とされています。1)治療結果をまとめるデータベースの作成・解析・運用(データバンク事業),2)変異株に関するon-time解析,3)治療指針提案など,経済活動を正常化させるための前向きな提案として,頭脳の結集可塑性力が必要とされています。データベースにおいては,厚生労働省関連としては,G-MISHER-SYSが運用されるようになりました。質問の変異株の解析については,行政から国立感染症研究所への補助体制が強化され,変異株解析などが適正化されています。

 

質問2:新型コロナウイルス SARS-CoV-2の変異になぜ,注意する必要があるのですか?

返答2:コロナウイルスは1本鎖(プラス鎖)のRNAウイルスであり,直径約80-100 nmとされています。このウイルス表面には,約20 nmの花弁状の長い突起があり,スパイク蛋白(Sタンパク質)と呼ばれ,この部位が私たちの体内のⅠ型膜結合糖蛋白であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE-2)などに接着し,私たちの細胞に寄生します。このスパイク蛋白などによる形状が太陽の光冠(コロナ)のような外観となるので,コロナウイルスと命名されています。このような基礎研究のおかげで,さまざまな情報がつながって参ります。

 新型コロナウイルス SARS-CoV-2の変異については,2020年2月の第1波の際より十分に指摘されていました。従来,コロナウイルスは牛や豚などにワクチンを作りにくいウイルスとして知られていました。豚の血球凝集性脳脊髄炎や流行性下痢などの治療として,コロナウイルスは一つの重要なターゲットです。新型コロナウイルスSARS-CoV-2については,紫外線や環境などにより29,000レベルの塩基で構成されるRNAが違うRNAに変異し,スパイク蛋白だけではなく,RNAポリメラーゼ,RNAプライマーゼ,そしてカプシドなどの表現型が変わることが確認されています。

 既に2020年3月23日の段階で,GISAIDデータベースから新型コロナウイルス感染患者さんの合計558株のSARS-CoV-2のゲノム配列が解析されています。RNAポリメラーゼ(nsp8)とスパイク蛋白の同時に遺伝子変異などが,合計163株で確認されています(PMID: 32353474)。スパイク蛋白についてはRNAレベル(23403A>G)とタンパク発現レベル(D614G:アスパラギン酸→グリシン)の変異が183株(32.8%),RNAポリメラーゼ(nsp12)についてはRNAレベル(14408C>T)とタンパク発現レベル(P323L:プロリン→ロイシン)の変異が182株(32.6%)です。変異株と呼ばれている新型コロナウイルスについては,スパイク蛋白を介した細胞接着性だけではなく,RNAポリメラーゼ活性などの変化にも注意が必要です。ワクチンについては,スパイク蛋白のどこを認識させるかが,ワクチン作成において重要なポイントとなります(文献)。

 さて,以上の新型コロナウイルスの変異について,なぜ日本でも大きく取り上げらるようになったのかについては,もちろん変異株に注意しなければならないのですが,世界保健機関(WHO:World Health Organization)や東京オリンピック開催に向けてなどの国際指針/国際情報としての関連があります。英国では2020年12月からイングランド南東部で発症した新型コロナウイルス感染症COVID-19の多くが,「スパイク蛋白変異」として報告されました。この変異株は,スパイク蛋白などにおけるアミノ酸の欠失や変異(欠失69-70,欠失144,N501Y,A570D,D614G,P681H,T716I,S982A,D1118H)などとして紹介されています(文献)。この英国の報告に対して2020年12月20日にWHOは,新型コロナウイルスの変異株としてホームページに公表しています。こうした変異株については,既に1年前に報告されているように,結合に関与する「スパイク蛋白」だけではなく,「RNAポリメラーゼ」の表現系の変化にも注意が必要であり,RNAポリメラーゼ阻害薬ファビピラビル(アビガン®)やレムデシビルなどの有効性についても評価を継続する必要があります。

 

質問3:新型コロナウイルス変異株の定義と注意する変異株について教えて下さい。

返答3:WHOは2021年2月25日の段階で,注目する変異株(VOI:Variants of Interest)と懸念する変異株(VOC:Variants of Concern)の定義を暫定的内容として報告しています(文献)。このようなVOIとしてWHOは,① 英国VOC-202012/01株,② 南アフリカ株501Y.V2, ③ ブラジル株Nextstrain clade 20J/501Y.V3を挙げています。これらは,ワクチンがターゲットとしている「スパイク蛋白」などのアミノ酸配列が変化しています。一方,日本においても,英国VOC-202012/01株はよく検出されていますし,その他,南アフリカ株501Y.V2やブラジル株501Y.V3に類似して,E484K(グルタミン酸→リジンへの変異),N501Y(アスパラギン→チロシンへの変異),K417T/N(リシン→トレオニンあるいはアスパラギンへの変異)などの「スパイク蛋白」の変異が確認されています。「スパイク蛋白」を標的として作成されたワクチンの効果が低下する可能性に注意が必要となります。現在,WHOは,このように世界各地で新型コロナウイルスの変異株が確認されることから,注目すべき変異株としてVOI,そして懸念される変異株としてVOCという用語を用いて,国際的に変異株への注意を喚起し,新型コロナウイルスの国際的指導としています。政府やマスコミの変異ウイルスに関する報道は,皆さんへの情報共有として,とても大切であると思います。まだまだ,ワクチンや,罹患後の治療薬の開発や承認が必要になる状況にあります。

※ 2021年7月までの段階で,L452RやN501Yは感染力を高めること,E484KはE484Qなどとして現在のワクチンでの免疫が効かなくなる可能性が示唆されました。これは,2019年の当初からわかっていたことですので,初期の重症化しないためのウイルス治療薬(対コロナ治療薬)の承認が緊急時医療体制として必要です。(2021年8月28日追記)

 

質問4.新型コロナウイルスが寄生した細胞はどのようなタンパクを作るのですか?

返答4:さまざまな細胞腫に新型コロナウイルスを反応させ,その細胞がどのようなタンパク質を作るかを調べることは,治療に応用できますのでとても大切です。いわゆる寄生された細胞は,正常時の情報伝達蛋白などの産生が低下する傾向があります。肺胞上皮細胞などでは,SLC1A5,CXADR,CAV2,NUP98,CTBP2,GSN,HSPA1B,STOM,RAB1B,HACD3,ITGB6,IST1,NUCKS1,TRIM27,APOE,SMARCB1,UBP1,CHMP1A,NUP160,HSPA8,DAG1,STAU1,CHMP5,DEK,VPS37B,EGFR,CCNK,PPIA,IFITM3,PPIB,TMPRSS2,UBC,LAMP1,CHMP3などのさまざまなタンパク質を新たに作りはじめるのかもしれません。細胞の機能は,正常時とは異なり,例えるならば災害モードとなります。

 

質問5.新型コロナウイルスのスパイク蛋白のアミノ酸配列を教えて下さい。

返答5.GenBankのQOS45029.1として登録されているスパイク蛋白のアミノ酸配列は,以下となります。新型コロナウイルスのスパイク蛋白は,1,273個のアミノ酸で構成されています。この関連論文として,Chiuppesi先生たちの論文が知られています。世界や日本で問題となっているスパイク蛋白のアミノ酸変異として,E484K(グルタミン酸→リジンへの変異),N501Y(アスパラギン→チロシンへの変異),K417T/N(リシン→トレオニン/アスパラギン)に色をつけていますので,以下のアミノ酸配列の中で確認されてください。その後,2021年4月より注目されたのは,インド型変異(G142D,N440K,L452R,E484Q,D614G,P681Rなど)です。L452R(ロイシン→アルギニンへの変異),E484Q(グルタミン酸→グルタミンへの変異)などに注意しますが,はじめから予測されていた内容ですので,このウイルス感染予防策を改めて国内に徹底し,学術的には繰り返しとして適切に早期対応策を提案していくことになるのだろうと思います。治療パラダイムや治療ストラテジーは,1年の過程で多くの医師に見えてきていると思います。L452R(ロイシン→アルギニンへの変異),そしてE484Q(グルタミン酸→グルタミンへの変異)は,継続して日本でも注目していくべき変異です。

文献:Chiuppesi F, Salazar MD, Contreras H, Nguyen VH, Martinez J, Park Y, Nguyen J, Kha M, Iniguez A, Zhou Q, Kaltcheva T, Levytskyy R, Ebelt ND, Kang TH, Wu X, Rogers TF, Manuel ER, Shostak Y, Diamond DJ, Wussow F. Development of a multi-antigenic SARS-CoV-2 vaccine candidate using a synthetic poxvirus platform. Nat Commun. 2020 Nov 30;11(1):6121.

新型コロナウイルスのオリジナルのスパイク蛋白のアミノ酸配列(GenBank:QOS45029.1)

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       961 tlvkqlssnf gaissvlndi lsrldkveae vqidrlitgr lqslqtyvtq qliraaeira
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     1081 ichdgkahfp regvfvsngt hwfvtqrnfy epqiittdnt fvsgncdvvi givnntvydp
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質問6.新型コロナウイルスのスパイク蛋白は,変異に関わらず,構造を変化させるそうですが,この構造変化について教えて下さい。

返答6.新型コロナウイルスのスパイク蛋白は3つのポリペプチド鎖(たくさんのペプチド結合)に分けて,構造を説明されています。この3つに分類されるポリペプチド鎖は,1)N末端ドメイン(NTD),2)受容体結合ドメイン(ACE-2と結合する部位:receptor binding domain:RBD,S1ドメイン),3)S2ドメインです。Sはスパイク グライコプロテイン(spike glycoprotein)のSです。このスパイク蛋白は,Glycation(糖化)やGlycosylation(グリコシル化)されることが知られており,スパイク グライカン シールド(spike glycan shield)などという呼称もあります。このため,糖化蛋白の受容体であるRAGEと結合するのかもしれないことや,血管炎症や凝固異常が生じる可能性などは,生体内でSタンパクを作る今回のmRNAワクチンの一つの危険性なのかもしれません。さて,質問4のようなアミノ酸構造の中で,N165,N234,N343などのアスパラギンが糖鎖修飾を受けることで,スパイク蛋白は安定化することが知られています。また,スパイク蛋白は,糖鎖修飾で「アップ型」と「ダウン型」の2つに形を変化させることが,理化学研究所の森先生たちより報告されています。スパイク蛋白の構造変化に関する素晴らしい研究です。ヒトの細胞表面に結合する際は,「アップ型構造」で結合しやすくなることが確認されています。糖尿病患者さんでは,新型コロナウイルスのスパイク蛋白の構造安定として,アスパラギンの糖鎖修飾により強化される可能性などがあるのかもしれません。細胞内でタンパク質が合成された後の翻訳後修飾として,糖鎖修飾は,新型コロナウイルスの接着や繁殖にも関係することとして留意が必要となります。スパイク蛋白の変異では,N501Y(アスパラギン→チロシンへの変異),K417T/N(リシン→トレオニンあるいはアスパラギンへの変異)として,これらのアスパラギンなどの糖鎖修飾がどのようなものなのかについて留意していく必要があります。高血糖の制御されていない状態や糖尿病では,スパイク蛋白の糖鎖修飾とともに,ACE-2のグリコシル化などによる機能変化についても,新型コロナウイルスの感染性に関係することに留意が必要です。

文献1:スパイク グライカン シールド. Ghorbani M, Brooks BR, Klauda JB. Exploring dynamics and network analysis of spike glycoprotein of SARS-COV-2. Biophys J. 2021;S0006-3495(21)00210-1. 

文献2:Mori T, Jung J, Kobayashi C, Dokainish HM, Re S, Sugita Y. Elucidation of interactions regulating conformational stability and dynamics of SARS-CoV-2 S-protein. Biophys J. 2021 Mar 16;120(6):1060-1071.

文献3. 新型コロナウイルスとRAGEの関連:Stilhano RS, Costa AJ, Nishino MS, Shams S, Bartolomeo CS, Breithaupt-Faloppa AC, Silva EA, Ramirez AL, Prado CM, Ureshino RP. SARS-CoV-2 and the possible connection to ERs, ACE2, and RAGE: Focus on susceptibility factors. FASEB J. 2020 Nov;34(11):14103-14119.

 

質問7.変異ウイルスに対して薬の効き方は変わるのでしょうか?

返答7.その可能性があります。薬剤の作用部位に変化がある場合,例えばRNAポリメラーゼに変化がある場合など,薬剤の効果を再評価する必要があります。細かな内容については,調べられている過程ですので,結果に応じて紹介します。臨床研究については,ひとまとめな評価ではなく,効果の多様性についての評価も必要とされています。

 

質問8.デルタ株というのは何でしょうか? いつから,デルタ株はできたのでしょうか?

返答8.世界保健機関WHOは懸念される変異株(Variant of Concern:VOC)と注目すべき変異株(Variant of Interest:VOI)に対して,2021年5月31日にギリシャ文字を用いて,新たな呼称を提唱しました。これが,デルタ株やシータ株などの呼称です。現在,2021年5月31日の時点でWHOは,VOCとしてα,β,γ,δの4つを世界で警戒するように指定しています。学術的には,アルファ株はB.1.1.7系統,ベータ株はB.1.351系統,ガンマ株はP.1系統,そしてデルタ株はB.1.617.2系統と呼ばれています。つまり,デルタ株という株が新しく出現したわけではなく,インドだけの問題ではないインド株などの呼び方を,2021年5月31日から国際的に変更したのです。

 現在の日本では,α,β,γ,δの4つだけ注意するわけではありません。イプシロン(B.1.427系統・B.1.429 系統),(P.2 系統),イータ(B.1.525系統),シータ(P.3系統),イオタ(B.1.526系統),カッパ(B.1.617.1系統)は,VOIとして注意が必要とされています。

 これまでWHOによりVOCとしてパンデミックを懸念されきたB.1.617系統は,2021年6月の段階でB.1.617.1~3の3系統に細分類されています。B.1.617系統は,SARS-CoV-2のスパイク蛋白においてL452R,D614G,P681R変異を特徴とします。この内のB.1.617.2系統が,インドで報告されたデルタ株です。従来呼ばれた英国株はアルファ株,南アフリカ株はベータ株,ブラジル株はカンマ株,インド株はデルタ株と名称が変わり,国を超えた変異株として国際的に対応する指針となっています。

 これまでと同様に,アルファ株はN501Y変異,デルタ株はL452R変異などとスパイク蛋白の単一の変異と認識することなく,いろいろな箇所での複数のアミノ酸変異が生じること,これは予測されていたことですし,SARS-CoV-2やコロナウイルスの特徴です。変異することがプログラムされている可能性なども学術的には非常に興味深いものです。

文献1. WHOによるVOC/VOIの呼称の変更の提案

世界保健機関 SARS-CoV-2 Variants of Concern and Variants of Interest.  31 May 2021.

文献2. 英国アルファ株に関する2020年12月のコメント

https://www.sciencemag.org/news/2020/12/mutant-coronavirus-united-kingdom-sets-alarms-its-importance-remains-unclear

初版:2021年3月1日(質疑応答:1,2.3),2021年4月5日(4,5),2021年5月7日(6,7),2021年6月13日(8), 2021年8月28日(3)

※ 適時,追記を予定します。

※ 蛋白の記載については,現在,「タンパク質」で一般的に統一されています。その前提のもとで,カタカナや英字と併記するときに「蛋白」,また略語として「タンパク」の表現を用いさせていただいています。


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インデックス 2 救急一直線 新型コロナウイルス関連ページ紹介 PART 2

2021年01月16日 11時11分11秒 | COVID-19の集中治療

 救急一直線 COVID-19 関連記事の整理 集中治療  

インデックス 2 COVID-19についての記載記事検索

救急科指導医・専門医,集中治療専門医,麻酔科指導医・専門医

松田直之

COVID-19 早期救命に向けた介入について Part. 2

COVID-19の病態生理学的管理評価:ウイルス感染症を主病態とする敗血症に対するアプローチ

With コロナ:内服治療の優先 & ICUに入室させない管理の重要性 & 重症化予測スコアの開発の必要性

※ 留意事項(FDP/D-ダイマー比):COVID-19やウイルス感染症においては,線溶が亢進する時期があリ,初期感染状態ではフィブリンだけではなくフィブリノゲンの分解が進む時期があリます。凝固第Ⅰ因子フィブリノゲン(Fibrinogen)は,肝臓で生成され,血漿中でトロンビン(活性化第Ⅱ因子)によりフィブリン(活性化第Ⅰ因子)に変換されて,二次止血として凝固反応における重要な役割をしています。FDPは,フィブリノゲンとフィブリンなどの分解産物ですので,フィブリノゲンの分解が進んでいる線溶亢進状態か(FDP上昇増加傾向,フィブリノゲン→,FDP/D-Dimmer>5など),線溶が抑制されてきている炎症性線溶抑制状態か(FDP増加の減少傾向,フィブリノゲン↑,FDP/D-Dimmer<5など)をD-ダイマー高値の状態で評価できると良いと考えられます。線溶の主役であるプラスミンや,ウイルス感染症におけるミニプラスミンは,新型コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク切断酵素でもあリ,SARS-CoV-2の増殖に関与しているためにプラスミン制御が重要とする見解もありますが,その一方で,集中治療管理においては線溶が抑制されてFDPが落着してくる時期の炎症性線溶抑制,PAI-1の発現亢進,血栓傾向などに十分な注意が必要と考えています。(コメント補足:松田直之 2021/01/15)

政策・方策(2021/01/15

□ 行政との連携:① 救命救急センター整備,② ICU整備,③ 病院機能評価・災害時連携体制整備の整備(超急性期病院/急性期病院/慢性期期病院/回復期病院),④ 医療物資の需要把握と適正供給の仕組み化,⑤ tele-ICUシステムの充実(集中治療専門医の全国共有)

  ※ 災害時の病院体制の見直し:国公立大学 救命救急センター化連携,ICU指導者教育連携システムの構築,病院指導,等

□ 2次救急COVID-19対応輪番制度の充実と評価システムの構築:① COVID-19診療を行う2次医療機関の市町村レベルでの整備,② 受け入れ病院の依頼および決定システムの構築, ③ COVID-19診療における診療評価システムの構築,④ 市町村COVID-19管理センターの機能強化・充実,⑤ 市町村COVID-19対策議会の機能強化

  ※ 2次救急医療施設の充実 → 3次救急医療との連携および診療相談

□ コロナ病床運用計画の重要性:① 当道府県および市町村等との病院連携と病床確保指導,② 各病院での自発的な病床確保に向けた相互協力連携システムの構築(要指導)

  ※ 大学病院:救急体制としての大学間および救命救急センター連携システム(オンライン)および,病床運用指導体制/指揮命令系統構築が必要(2021年10月への対策

□ 医療従事者教育:① PPEの適正着用および消費量報告,② 感染防御教育(ゾーニング教育),③ 医療廃棄物処理法,等

□ 薬剤治療ベースの構築:COVID-19と診断のついたケース ※ 院内承認や臨床研究に準じた検討課題

(1)院外フォロー:リスクあり(60歳以上,糖尿病,心血管疾患,腎臓病,免疫抑制剤使用中)の処方承認例; ① アビガン内服,② オルベスコ吸入 or デキサメサゾン内服,等

   ※ 目標:重症化の予防・阻止

(2)入院ケース(一般病床): ① アビガン内服,② オルベスコ吸入 or デキサメサゾン内服,③ 抗凝固薬,④ 経口栄養継続,等 ※ 目標:重症化の予防・阻止

(3)集中治療ケース(呼吸・全身管理):① レムデシビル,② デキサメサゾン静注療法 or メチルプレドニゾロン 1mg/kg/日持続投与療法,③ ヘパリン 600 U/時〜:APTT比 1.5目標,④ 経腸栄養,⑤ その他:適応外使用として院内規約に準じて考慮(rTM,抗IL-6受容体抗体,等) ※ 目標:救命・後遺症の軽減

□ 人材活用・人材育成の最大化:救急科専門医・救急科指導医・集中治療専門医,そして看護師さん,臨床工学技士,理学療法士,病院執行部,医療従事者

 データ共有 新型コロナウイルスの各地域の現状 

日本 新型コロナウイルス感染状況 https://covid-2019.live/?fbclid=IwAR0KAlc53ghuIOhZiupf8AbrFhrL6nNTgQPypZBgI2h1rNnPao4yyzxd7xQ

日本 新型コロナウイルス死亡統計 http://www.ipss.go.jp/projects/j/choju/covid19/index.asp

愛知県新型コロナウイルス情報 https://www.pref.aichi.jp/site/covid19-aichi/

東京都新型コロナウイルス情報 https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp

京都府新型コロナウイルス情報 https://www.pref.kyoto.jp/kentai/corona/hassei1-50.html

大阪府新型コロナウイルス情報 http://www.pref.osaka.lg.jp/default.html

奈良県新型コロナウイルス情報 https://stopcovid19.code4nara.org/?fbclid=IwAR2BuH056HCMLHhYCS_KP0Eua7kcJRMdsuBDbXC0HQIqleL5n7vEhR10_ns

 データ共有 薬物診療エビデンス 

日本版敗血症診療ガイドライン2020(J-SSCG2020)特別編
COVID-19薬物療法に関するRapid/Living recommendations(日本集中治療医学会)

 文献紹介・考察 COVID-19 ジャーナルクラブ 

新型コロナウイルスSARS-CoV-2およびCOVID-19の文献紹介

SARS-CoV-2の特徴

感染性について(2021/1/17記載COVID-19の臨床症状の出現する2日前でもSARS-CoV-2ウイルスをヒトからヒトへ伝播する危険性がある:He X, Lau EHY, Wu P, et al. Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19. Nat Med. 2020 May;26(5):672-675. PMID: 32296168.

内容:広州第八人民病院に入院した検査室で確認されたCOVID-19の94人の患者のうち,症状の発症から発症後32日まで,94名の患者さんから合計414本の咽頭スワブの研究データが掲載されています。また,中国本土内外の公的データベースから,発症までの潜伏期間が平均5.8日(4.8– 6.8日),中央値は5.2日と評価されています。このデータでは,SARS-CoV-2罹患は症状発症の2日前から1日後がピークであるとしています。つまり,症状が出る2日前あるいは2日前以上の無症状な状態でも,新型コロナウイルスSARS-CoV-2を伝播する危険性があるということです。これは,受験生が発熱がなく咳もなく,受験会場で試験を受けたり,休憩時間に友人と会話をしている時に友人にSARS-CoV-2を伝播し,自宅に持ち帰る危険性などとして伝えられています。自宅で,高齢者や糖尿病などのリスクを持つ方と同居している場合には,特に注意が必要となります。

感染性について(2021/5/01記載COVID-19の臨床症状の出現する2日前でもSARS-CoV-2ウイルスをヒトからヒトへ伝播する危険性がある:Johansson MA, Quandelacy TM, Kada S, et al. SARS-CoV-2 Transmission From People Without COVID-19 Symptoms. JAMA Netw Open. 2021 Jan 4;4(1):e2035057. PMID:33410879

内容:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は,これまで症状のない状態や発症前2~1日などのヒトから感染する可能性が報告されており,時系列で疫学的検証が必要とされています。本論文は,中国の8件の研究のメタアナリシスのデータを使用して,米国CDCにより解析された内容です。これまでのSARS-CoV-2の多変量解析データより,SARS-CoV-2の潜伏期間を中央値5日に設定して研究されています。主要評価項目は,無症候者と症候者からのSARS-CoV-2の感染伝播の程度の評価としています。結果は,SARS-CoV-2の感染の59%が無症候性感染であり,35%が発症前の個人から,24%が症状を発症しない個人からというものでした。感染性のピークは,症状発現の2日前から2日後の間として解析されています。COVID-19は,無症候性の個人からの感染が全感染の半分以上を占めると推定されています。感染拡大を効果的に管理するためには,症候性COVID-19の特定と隔離に加えて,発熱や咳などの症状のない無症候者からの感染リスクを減らす必要があります。

 

COVID-19回復後の後遺症について:肺線維症

新型コロナウイルス感染症において,肺線維症を後遺症として残す可能性については,パンデミック前より懸念事項として挙げられていました。退院後3ヶ月~6ヶ月が経過した時点において,20%には肺線維症などの肺拡散障害が残存することなどが報告されてきています。以下の2つの論文は,一度目を通しておかれると良いでしょう。

後遺症 文献1. Huang C, Huang L, Wang Y, et al. 6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohort study. Lancet. 2021 Jan 16;397(10270):220-232. PMID: 33428867 (2021/3/26追記)

内容:2020年1月7日から2020年5月29日までの間で中国武漢の金銀丹病院で治療され,退院したCOVID-19患者さんのコホート研究の結果です。COVID-19で退院した2,469名の患者さんのうち1733名が登録され,年齢の中央値は57.0(四分位範囲:interquartile range 47.0-65.0)歳,約52%が男性である解析です。後遺症の追跡調査は2020年6月16日から9月3日までであり,追跡期間の中央値は186(175-199)と約6ヶ月です。結果は,倦怠感または筋力低下(63%),睡眠障害(26%),不安またはうつ病(23%)と報告されています。この原因として,肺線維症とまでは言えないものの類似する胸部X線像異常と肺拡散障害が器質化として残存することが問題とされます。

後遺症 文献2. González J, Benítez ID, Carmona P, et al. CIBERESUCICOVID Project. PULMONARY FUNCTION AND RADIOLOGICAL FEATURES IN SURVIVORS OF CRITICAL COVID-19: A 3-MONTH PROSPECTIVE COHORT. Chest. 2021 Mar 4:S0012-3692(21)00464-5. PMID: 33676998 (2021/3/26追記)

内容:スペインのリェイダのアルナウデビラノワ大学病院とサンタマリア大学病院のICUに入室したCOVID-19患者さんの退院の3か月後のフォローとして,症状,生活の質,不安感やうつ症状,呼吸機能,運動機能(6分間歩行検査),胸部CT像が評価されています。結果として,2020年3月から6月の間​​にCOVID-19にARDS(急性呼吸不全)を合併してICU管理となった患者さん125名が登録され,3か月のフォローとして62名(年齢中央値60歳,男性約74%)を評価できたとのことです。スペインという特徴なのか,喫煙歴者が約57%含まれています。この62名のうち,退院後3ヶ月においても,呼吸困難感(46.7%)と咳(34.4%)が残存しており,この82%が肺拡散能がを示していたという結果です。 6分間歩行距離の中央値は400(362-440)mでした。 胸部CT像では70.2%が異常であり,59.6%にすりガラス陰影,49.1%に網状病変,21.1%に線維化パターンが観察されたというものです。胸部CT像の重度度は,肺機能低下と6分間歩行距離低下と関連するという内容です。COVID-19のICU管理では,肺線維化対策についても十分に留意して,事前的対策を考えていくことが必要です。退院後3か月~6ヶ月において,COVID-19生存者の肺機能をフォローする必要があります。

SARS-CoV-2の予防:重要 マスク着用の意義のエビデンス

マスク着用を継続しましょう(2021/3/12記載)Brooks JT, Butler JC. Effectiveness of Mask Wearing to Control Community Spread of SARS-CoV-2. JAMA. 2021 Mar 9;325(10):998-999. PMID: 33566056

内容:マスク着用の利点については,「有効」・「重要」というエビデンスがまとめられてきています。コミュニティマスクの着用について,1)ソース(感染巣)管理としてウイルスを含むエアロゾルを空気中へ散布することを防ぐこと,2)非感染者のCOVID-19発症を減少することの2つの側面から,マスク着用の有効性がまとめています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の少なくとも50%以上が症状を発症したことがない方やCOVID-19発症前の方から感染であることから,ソースコントロールとして皆さんにマスクを付けていただくことが重要とし,この2020年2月より1年以上が経過しました。本疫学調査は,当時,エビデンスがない中で飛行機内などの公共の場でマスク着用を否定するケースがありましたが,SARS-CoV-2の蔓延を防ぐためにマスクを着用することが有益であることが以下の表などの解析としてまとめられてきています。例えば,米国海軍の航空母艦セオドア・ルーズベルトでのCOVID-19クラスターの発生時に,マスク着用で感染陽性リスクが70%低くなったと報告されていました。この論文も表の2番目に引用されています。

SARS-CoV-2の薬物療法についての文献紹介

ステロイド関連 1(2021/1/16記載)COVID-19におけるステロイド併用に随伴する2次感染症の増加:Obata R, Maeda T, DO DR, Kuno T. Increased secondary infection in COVID-19 patients treated with steroids in New York City. Jpn J Infect Dis. 2020 Dec 25.  PMID: 33390434.

内容:マンハッタンのマウントシナイベスイスラエル病院での小幡先生たちのCOVID-19入院患者の解析報告です。COVID-19において,ステロイドの併用により,肺炎発生率が有意に高かくなったと報告としています(75.4% vs 50.3%,P = 0.001)。デキサメサゾンなどのステロイド薬の併用により,入院中の細菌感染(25% vs 13.1%,P = 0.041),真菌感染(12.7% vs 0.7%,P <0.001)が増加することを報告しています。しかし,結果としてステロイド薬は,ICUに入院した重症例で有意に多く使用されているにも関わらず(ステロイド使用 vs 非ステロイド使用:ICU入室 62.3% vs 11.8%, P<0.001),ICUに入室していない群と同等の院内死亡率でした(OR [95%CI]:1.02 [0.60-1.73, P = 0.94])。ステロイド投与により併発する肺炎像の増悪にもかかわらず,生存させるメリットがステロイドにはあるのかもしれません。現在,ステロイドでは臨床研究結果(CoDEX試験;PMID: 32876695など)としてデキサメサゾンが国内外でCOVID-19の重症例によく使用されています。この観察研究においても,ステロイド薬としてデキサメサゾンが84.2%で選択されています。

ステロイド関連 2(2021/1/16記載)RACCO study;COVID-19におけるオルベスコ®(シクレソニド)による胸部浸潤影の増大傾向について(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター:NCGM)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状または軽症患者に対するシクレソニド吸入剤の有効性及び安全性を検討する多施設共同非盲検ランダム化第Ⅱ相試験A multicenter, open-label, randomized phase II study to evaluate the efficacy and safety of inhaled ciclesonide for asymptomatic and mild patients with COVID-19(RACCO study)

内容:COVID-19患者においてシクレソニド吸入剤投与群と対症療法群との肺炎増悪割合を群間で比較したNCGMのRACCO studyでは,主要評価項目として胸部CT画像による入院8日目以内の肺炎増悪割合,副次評価項目として鼻咽頭ぬぐい液のウイルス量の変化量などが評価され,90例の登録が解析されました。結果として,肺炎増悪率はシクレソニド吸入剤投与群41例中16例(39%),対症療法群48例中9例(19%)(リスク差 0.20(90%信頼区間 0.05-0.36),リスク比 2.08(90%信頼区間 1.15-3.75), p=0.057]と評価されています。対症療法群と比べてシクレソニド吸入剤投与群の方が有意に肺炎増悪が多いと結論されています。

ウイルス治療薬関連:エボラウイルス治療薬レムデシビルなど(2021/2/13記載

Repurposed Antiviral Drugs for Covid-19 - Interim WHO Solidarity Trial Results. N Engl J Med. 2021 Feb 11;384(6):497-511.  PMID: 33264556

内容:30か国の405の病院における11,330名の成人の無作為化前向き臨床研究において,エボラウイルス治療薬レムデシビル2,750例,マラリア治療薬ヒドロキシクロロキン954例,はHIV治療薬ロピナビル1,411例(インターフェロンなし),インターフェロン2,063例(内651例はインターフェロンとロピナビルを含む),そして対照群として4,088例が解析されています。合計1,253例の死亡が報告されています(死亡日の中央値8日目)。この研究は,ヒドロキシクロロキン,ロピナビル,およびインターフェロンの研究として,無益としてそれぞれ,2020年6月19日,7月4日,10月16日に中止されました。レムデシビルとロピナビルは,RNAポリメラーゼ阻害薬として新型コロナウイルスの増殖を抑制する可能性があるとされていましたが,肺移行性の低いことが薬物分布の観点からは問題とされていました。

 実データでは,レムデシビルを投与された患者さん2,743例中301例(約10.9%)が死亡,その対照患者さん2,708例​​中303例(約11.1%)が死亡しており,レムデシビルに救命効果がありませんでした。(率比0.95; 95%信頼区間,0.81〜1.11; P = 0.50)。また,HIV治療薬ロピナビルを投与された患者さん1,399例中148例(約10.5%),その対照患者さん1,372例中146例(約10.6%)が死亡しており,ロピナビルにも救命効果を認めませんでした(率比1.00; 95%信頼区間、0.79〜1.25; P = 0.97)。

 結論として,このNEJMのデータは,レムデシビル(図A),ヒドロキシクロロキン(図B),ロピナビル(図C),およびインターフェロン(図D)は,死亡率,人工呼吸回避,入院期間において,改善効果を認めないとしています。このような中で,2020年2月当初より注目している内容は,① 外来レベルでの早期のアビガンⓇ処方(リスク症例,発熱症例等),② 抗凝固療法(外来ではヘパリン皮下注などの検討),③ 吸入ステロイドあるいはデカドロン内服(NF-κB抑制,vWF産生抑制等),④ コルヒチン(抗炎症効果)です。ステロイド吸入については,肺末端にSARS-CoV-2を撹拌させてしまうことには注意し,抗ウイルス策との併用が不可欠かもしれません。集中治療室に入らないように対応できるように,ER等での初期外来診療をより充実させることが必要です。

ウイルス治療薬関連:イベルメクチン(2021/3/5 記載

López-Medina E, López P, Hurtado IC, et al. Effect of Ivermectin on Time to Resolution of Symptoms Among Adults With Mild COVID-19: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2021 Mar 4. PMID: 33662102.

イベルメクチン(ivermectin)は,マクロライド系経口除虫剤であり,救急領域では疥癬,また腸管糞線虫症の治療薬である。本邦の大村 智先生により放線菌が産生する抗生物質を基に創薬されています。このイベルメクチンは,SARS-CoV-2のメインプロテアーゼを抑制する既存の分子解析の中からリストアップされた薬剤の一つです。SARS-CoV-2のプラス鎖RNAゲノムでは,26個のタンパクがコードされています。これらは大きなタンパク(ポリペプチド)としてまず合成されて,次にタンパク分解酵素(プロテアーゼ)により切断されて発現型のタンパクとなります。SARS-CoV-2に発現するタンパクは,メインプロテアーゼ(Mpro/3CLpro; 非構造タンパク質5, nsp5)とパパイン様プロテアーゼ(PLpro,nsp3の一部)の2つが関与することが知られています。イベルメクチンは,SARS-CoV-2のメインプロテアーゼ阻害薬として作用し,SARS-CoV-2の構造構成に影響を与える可能性が期待されました。その一方で,SARS-CoV-2の接着する肺,血管内皮などの細胞内移行性などがどうなのかという見解がありました。この研究は,イベルメクチンが軽症COVID-19において有効な治療となるかどうかを検討した前向き臨床研究です。

 コロンビアのカリで実施された二重盲検ランダム化試験であり,2020年7月15日から11月30日までの間に7日以内(在宅または入院中)の軽度のCOVID-19患者476名が2020年12月21日まで追跡調査されました。イベルメクチン,300 μg/kg/日を5日間(n = 200),またプラセボ(n = 200)としてランダム化されています。主要評価項目は,21日間のフォローアップ期間内での症状解決までの時間でした。有害事象と重篤な有害事象も解析されています。

 結果として,症状消失までの時間の中央値は,イベルメクチン群で10日(IQR:9-13)であり,プラセボ群は12日(IQR:9-13)であり(症状の解消のハザード比、1.07 [95%CI、 0.87~1.32];ログランク検定によるP = .53),臨床症状改善までの日数に統計学的有意差を認めませんでした。 最多の有害事象は頭痛だったようですが,イベルメクチンで104名(52%)とプラセボを投与された111名(56%)とイベルメクチンで増加しているものではありません。

 COVID-19においては,1年以上が経過した現在,医療崩壊を阻止することが重要であり,「COVID-19を重症化させない創薬や治療戦略の構築」が極めて重要です。本臨床研究は,COVID-19の初期診療でのイベルメクチン投与の有効性を統計学的にはサポートできませんでした。これまで,18の臨床研究として2,282例を確認できますが,2重盲検ランダム化は2件にすぎません。これらにおいてRT-PCRの信頼度に加えて,イベルメクチンの投与量,投与期間などに研究間で統一性がありません。このような中で,本邦では240例の解析を目標として前向き2重盲検ランダム化試験としてCORVETTE試験が進行中です。コロナウイルスの変異が進む中で,試験開始時から現在までの,特に変異株に対する治療効果の検討もサブ解析として期待されます。

 

血漿療法 回復期血漿のエビデンス2021/3/27 記載

Janiaud P, Axfors C, Schmitt AM, et al. Association of Convalescent Plasma Treatment With Clinical Outcomes in Patients With COVID-19: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 2021 Mar 23;325:1185-1195. PMID: 33635310

COVID-19罹患患者の回復期血漿を投与する臨床研究のシステマティックレビューが報告されています。【評価項目】評価項目は,死亡率,入院期間,臨床的改善,臨床的悪化,人工呼吸管理,そして重篤な有害事象の発生です。【結果】4つの査読されたランダム化比較試験(RCT)から合計1,060例,6つの公的なRCTから10,722例が解析されています。 4つのRCTにおける回復期血漿の投与では,死亡リスク比は0.93(95%信頼区間:0.63~1.38)であり,絶対リスク差は-1.21%(95%信頼区間:-5.29%~2.88%まで)であり,有意な改善とは評価できない結果となっています。10件のRCTのすべての解析では,死亡リスク比は1.02(95%信頼区間:0.92~1.12)とされています。人工呼吸管理数,臨床的改善,臨床的悪化,また重篤な有害事象において,残念ながら,罹患患者さんの回復期血漿による統計学的に有意な改善は得られていませんでした。【私見】回収された血漿をまとめる段階で,スパイク蛋白などの変異株の増加のために,抗体間の抗原抗体反応や凝集の危険性を考慮しています。抗サイトカイン抗体や凝固系の修正は得られるのかもしれません。

ワクチン情報 ファイザー/BioNTechワクチン後の抗体の母乳移行性の確認

Perl SH, Uzan-Yulzari A, Klainer H, et al. SARS-CoV-2–Specific Antibodies in Breast Milk After COVID-19 Vaccination of Breastfeeding Women. JAMA. Published online April 12, 2021. PMID: 33843975

 イスラエルでは,COVID-19のワクチンプログラムは,2020年12月20日に開始されたそうです。ファイザー製薬さんのワクチンは,私たちの体の中で新型コロナウイルスのスパイク蛋白を作り,その生体内で作られたスパイク蛋白に対して私たちが生体内で抗体を作るというものです。スパイク蛋白は私たちには異物ですので,それがACE-2やKim-1などを介して接着した血管内皮などに炎症が起きないか,血栓傾向が固まらないかなどは,実際にSARS-CoV-2に感染したときと同様に注意しなければならないところです。まず,妊婦さんには注意が必要でしょうし,長期的には冠動脈などの石灰化,免疫膠原病の発症要因などにも注意が必要と思います。その一方で,この研究は母乳育児中のお母さんがワクチン接種後に,母乳中にSARS-CoV-2のスパイク蛋白抗体が出てくることを報告したものです。母乳を介して乳児に新型コロナウイルスに対する抗体を供給することができる可能性を示したものです。

内容:2020年12月23日から2021年1月15日までの間に広告とソーシャルメディアを通じてイスラエル全土から募集された母乳を与えているお母さんを対象としています。試験参加者は3週間の間隔でファイザー-BioNTechのスパイク蛋白mRNAワクチンを2回接種しています。母乳サンプルは,ワクチン投与前に収集され,最初のmRNA投与後2週目から6週間まで週1回の割合で収集されました。結果は,84名の解析として504個の母乳サンプルが評価されています。母乳中の抗SARS-CoV-2特異的IgA抗体の平均レベルは急速に増加し,最初のワクチン接種後2週間で約2.05倍となり,4週目(2回目のワクチン接種の1週間後)では母乳サンプルの86.1%に抗体が現出されています。84名中 47名のお母さん(55.9%)が最初のmRNA筋注後にワクチン関連の有害事象を報告し,2回目のmRNA筋注後は52名(61.9%)が有害事象を報告しています。この有害事象は,注射部の痛みが最も一般的であり初回が47.6%,2回めが40.5%です。 倦怠感は,初回で9.5%,2回目で33.3%です。また,2回目はothers(26.2%)に様々な症状が出現しており,胸の重たさなどには注意が必要です。母乳中の乳児はどうかというと,4名の乳児に発熱があったという報告です。この研究では,mRNA筋注後の6週間,母乳中にSARS-CoV-2特異的IgAおよびIgG抗体が強力に分泌されることが報告されています。 IgA分泌はスパイク蛋白mRNA接種後2週間で確認でき,4週間後(2回目のスパイク蛋白mRNA接種の1週間後)にはIgGが急増しています。妊娠中や出産後の女性に対してのCOVID-19のワクチンプログラムには,これからも経過を追跡し,慎重に対応していくことが必要です。

掲載:2021年1月16日,追記: 本ページは掲載を追記する継続した内容とします。

 

インデックス 2 COVID-19についての記載

記事 マニュアル   敗血症 舞台メイクアップアーティストの新型コロナウイルスに対する予防策

動画 敗血症について


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インデックス 1 救急一直線 新型コロナウイルス関連ページ紹介 PART 1

2020年07月28日 08時09分16秒 | COVID-19の集中治療

 救急一直線 COVID-19 関連記事の整理 集中治療  

インデックス COVID-19についての記載記事検索

救急科指導医・専門医,集中治療専門医,麻酔科指導医・専門医

松田直之

COVID-19 早期救命のための介入に向けて

COVID-19の病態生理学的管理評価 

With コロナ:内服治療の優先 & ICUに入室させない管理の重要性 & 重症化予測スコアの開発の必要性

       ※ COVID-19バンドル:改訂予定(Ver.4)※ オルベスコに対しては,肺炎像増悪の可能性があるとして注意した対応とします(2020/12/25)。

       ※ ステロイド併用では2次感染にも注意

 留意事項:With コロナのための国際救命のための方策(WITHスタンス) 2020年7月25日〜9月30日

                   検討目標:RT-PCR陽性→ 自宅待機 or ホテル待機 希望者にアビガンⓇとオルベスコⓇを処方→ さらに血栓性重篤化の監視や予防

       ※ 解熱薬 NSAIDsの処方:妊婦さんに対しての催奇形性や流産の危険性の説明は重要

       ※ 目標提案:外来診療としての処方の確立 → 急変による救急搬送の減少 2020年7月の段階

       ※ 救急外来の整備・救急科専門医の適正配置/集中治療室の整備・集中治療専門医およびNPの適正配置/専門看護体制の強化

       ※ ホテル待機患者さんへの対応:① ON-line診療システムの開発(ZOOM診療など),② 医師派遣システムの構築(議会討議など)

         ③ 重症化救急搬送システムの整備,④ 重症化対策:救急科専門医・集中治療専門医・呼吸器内科専門医等の連携

      方向性:WITHコロナ体制にためには,9月までに準備・対応の発案を持ち寄り,内容を統合させ,11月からの戦略とする必要があります。

                  0-1)準備:ワクチンおよび特効薬の発案と臨床治験:軽症化のための創薬開発;抗ACE-2抗体,SARS-CoV-2ワクチン,メシル酸ナファモスタット,コルヒチン,など

                  0-2)準備:外来フォロー体制の完備:COVID-19専門病院(感染症指定病院等)の認定と運用,処方の安全確認および経過評価(血栓性リスクの評価)Tele-診療システムの導入等

      0-3)準備:安全管理システム,個人防御具の作成と備蓄,11月以降に向けてのPPE(N95マスク,フェイスシールド,背面等非露出ガウンの製造と備蓄(行政指導による備蓄

      1)発見:症状出現の早期発見:発熱,呼吸症状,味覚症状,嗅覚症状,消化器症状

      2)早期処方:承認可能かどうか:アビガンⓇ,オルベスコⓇ,(必要に応じてコルヒチン,抗凝固薬など)

      3)重症化対策:場所の整備:救急外来と集中治療室の整備(動線の厳格化,ゾーニング,陰圧化設備,等)(行政からの整備資金支給の重要性

      4)人材育成:COVID-19 集中治療対応医・看護師等の医療従事者の育成(重症対応医療支援者育成)(国内共有)

      5)重症化リスク管理:心臓病,糖尿病,免疫膠原病,腎機能低下,高齢者等への個別探索・改善化プログラムシステム等の応用

      6)行政との情報共有:人工呼吸器の台数の調査と把握,人工呼吸器の一定数の中央管理,酸素供給の評価と維持,薬剤提供体制の調査と維持(鎮痛・鎮静薬等),

        個人防御具(PPE)の備蓄確認と提供体制の維持,陰圧システムの充填化計画と続行・実行,集中治療に携わる医療従事者の育成の推進など

    With コロナにおける留意事項:「予測」の重要性,ウイルス保持量減量策(冬場)

         ※ 最重要=重症化させない治療:集中治療管理とならないための「早期治療策」の立案と検証(Highリスク者への対応:高齢者・糖尿病・心血管疾患・腎機能障害・免疫抑制状態等)

                   ※ アビガン®・オルベスコ® 早期併用療法のメリットの可能性:① 院外突然死の低下,② ICU管理以降の減少,③ 症状増悪の抑制,④ D-ダイマーの評価(血栓傾向評価)

                   ※ コルヒチン(0.5 mg,1日6回 内服:痛風予防としての適応,追加目標:炎症抑制)を加える「3剤併用療法」:メリット:早期炎症制御。

         ※ 抗凝固薬:内服の抗凝固薬,抗血小板薬等の早期投与に関する臨床研究が必要です。COVID-19では,血栓傾向の把握としてD-ダイマー,FDP/D-ダイマー比のモニタリング

           ※ 集中治療管理:救命を前提とする一方で,後遺症(細胞死/線維化/活動性低下)を軽減させることに留意した管理も検討(KL-6が高値となるケース等)

         ※   デキサメササゾン(デカドロン錠Ⓡ)/ オルベスコⓇ:肺炎像増悪に注意,抗血栓作用の評価継続

         ※ ICUでの重症治療におけるステロイド薬:少量メチルプレドニゾロン持続投与法の検討

         ※ レムデシビルの留意点:肺移行性の低さ,プラス鎖RNAウイルスに効くのかどうかの検証が必要

   

       ※ アビガン®(ファビビラビル)は,罹患初期のウイルス量減量策・増殖抑止策として期待される。

       ※ アビガン®については,安全域を考慮し,血液・生化学的評価を続ける一方で,治療の最大効果を期待できる増量等の処方設計が必要です。

 

改革・改善アドバイス:RT-PCRに注意:プライマー設定とPCRサイクルの設定を厳格化するSARS-CoV-2に対するRT-PCR法の国際的統一・規格化

        ※   全自動検査RT-PCR検査の移行  10月移行の目標:各都道府県における具体策の検討と行政指導

       ※ 2020年4月30日まで,PCRの具体的方法は,中国,ドイツ,香港,日本,タイ,米国などの国々で,使用するプライマーやサイクルなどの検出法の統一

       ※   2020年2月25日の記事 プライマー設定とPCRサイクルの設定を厳格化

基本アドバイス 1 PPE(Personal Protective Equipment:個人防護具)を揃えの厳格化:2020年9月30日目標(11月からに備える)

基本アドバイス 2 肺後遺症や全身衰弱を残さない早期治療開始・早期改善を目標(リスク患者例:アビガン®+オルベスコ®(or デキサメサゾン)の早期処方等の検討),肺線維化後遺症の評価

 

インデックス

 

留意事項 アビガン® 催奇形性に対する適正理解

催奇形性で気をつけるものは,解熱鎮痛薬。SARS-CoV-2自体はおたふく風邪ウイルスなどと同様に,薬剤とは無関係に,精巣,副睾丸,卵巣などへ移行する可能性があります。

2020年5月22日 UP

寄稿 アビガンⓇ(ファビピラビル

2020年5月5日 UP

寄稿 COVID-19の必須治療戦略/臨床研究

2020年3月26日 UP

寄稿 新型コロナウイルスの救急・集中治療 COVID-19の集中治療バンドル 〜病態生理学的アプローチ〜

2020年3月4日 UP 

寄稿 Contribution: Critical Care against New Coronavirus SARS-CoV2  

Perspective 13  Bundles for COVID-19 Treatment in Emergency and Critical Care

2020年3月4日 UP

 

 データ共有 新型コロナウイルスの各地域の現状 

日本 新型コロナウイルス感染状況 https://covid-2019.live/?fbclid=IwAR0KAlc53ghuIOhZiupf8AbrFhrL6nNTgQPypZBgI2h1rNnPao4yyzxd7xQ

愛知県新型コロナウイルス情報 https://www.pref.aichi.jp/site/covid19-aichi/

奈良県新型コロナウイルス情報 https://stopcovid19.code4nara.org/?fbclid=IwAR2BuH056HCMLHhYCS_KP0Eua7kcJRMdsuBDbXC0HQIqleL5n7vEhR10_ns

 

 文献解説 ジャーナルクラブ 

新型コロナウイルスの集中治療のための文献紹介

 ・ Bundle   0 救命救急センターおよび集中治療室の拡充の必然性,PPEの適正使用の重要性,医療従事者の汚染に注意

 ・ Bundle   1 液性免疫が期待できるまでに何日かかるのか? Answer:2~3週間です。

 ・ Bundle   2 中国のアビガン錠の治療効果は良好:アビガンは効果的ですが,安心してはいけません。

   1.アビガン錠について:初期投与量を上げた14日治療:肺移行性の高さ→ COVID-19適応性の高さ

   2.エボラウイルス治療薬レムデシビルについて:死亡率改善の低さに注意:肝・腎移行性の高さ→肝機能障害,肺に適切に移行するのかの問題

 ・ Bundle   3 

   1.新型コロナウイルスは環境でどれぐらい生存できるのか?

    Answer:エアロゾルとして空中に3時間,プラスチックやステンレスに2~3日。

   2.NO吸入療法は意義があるのか?注意点は? 

    Answer:NO吸入療法には,換気血流比改善作用とウイルス繁殖抑制作用を期待できます。しかし,高額医療となりますし,優先内容とは言えません。

 ・ Bundle   5 

   1.COVID-19の胸部CT像の特徴について

   2.血管内皮細胞へのSARS-CoV-2の浸潤とD−ダーマー上昇について

 ・ Bundle 10 免疫グロブリン大量療法の可能性/回復症例の血漿利用について

 ・ Bundle 11 PMX-DHP吸着のFDA承認について

 

新型コロナウイルスの臭覚障害/味覚障害/動物の関与について

 ・ 臭覚異常における中枢神経障害合併率上昇に留意

 ・ 亜鉛欠乏と味覚障害に留意

 ・ 動物の媒介性に留意

 2020年3月9日 UP

 

 紹介 COVID-19の集中治療:呼吸管理法 

オーストラリア・ニュージーランド ANZICS COVID-19 Guidelines 2020.3.16 Ver.1

2020年3月17日 UP

米国集中治療医学会・欧州集中治療医学会 SSCG COVID-19 ガイドライン 2020.3.20

2020年3月21日 UP

2020年3月30日 UP

 文書 新型コロナウイルス感染症対策 

新型コロナウイルス感染症に正しく備える

新型コロナウイルス感染症に正しく備える PART 2

2020年2月25日 UP

 情報共有 一般の皆さまへ ブラッシュアップ 

マニュアル  舞台メイクアップアーティストの新型コロナウイルスに対する予防策

2020年7月12日 作成 (劇場クラスター化を受けて)

マスクはSARS-CoV-2でどれくらい感染を抑制できるのか 松田直之

2020年2月26日 作成

ハンカチでのマスクの作り方 松田直之

2020年2月26日 作成

感染防御の解説 松田直之

2020年2月24日 UP

 

 情報共有 内閣府/厚生労働省通達 

新型コロナウイルス感染症対策の基本方針 

対応策:具体的内容共有の重要性  2020年2月24日

 

  書 籍 紹 介  

ICU・救急ナース松田塾 呼吸と循環に強くなる!

 

  お 知 ら せ  

世界 敗血症 DAY 毎年 9月13日

新型コロナウイルスの集中治療

※ 2020年4月17日(金)の,COVID-19関連の救急・集中治療の診療点数の決定を報告です。

※ 第2期,第3期また次の新興感染症や自然災害にも対応できるように,感染及び救急・災害医療に強い「救命救急センター」を立ち上げ,指導する必要があります。

追記 2020年4月18日 

医協総会 2020年4月17日 資料  救急医療・集中治療 診療点数加算特別処置

 

更新:2020年7月28日,2020年12月25日


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マニュアル  敗血症 俳優・女優等 メイクアップアーティストの新型コロナウイルスに対する予防策

2020年07月12日 19時46分43秒 | COVID-19の集中治療

マニュアル   敗血症 舞台メイクアップアーティストの新型コロナウイルスに対する予防策

救急科指導医・専門医,集中治療専門医,麻酔科指導医・専門医

松田直之

COVID-19に関する情報として,受験生の皆さま,芸能関連の皆さま,一般の皆さま,御覧ください。

敗血症関連市民講座

   1.  市民講座 敗血症ってなんですか?? 松田直之

   2.  市民講座 敗血症では意識が悪くなります 松田直之

   3.  市民講座 敗血症で呼吸は早くなります 松田直之

   4.  市民講座 敗血症で血圧が低下します 松田直之

   5.  市民講座 敗血症で脈が早くなる?? 松田直之

   6.  市民講座 敗血症で出血が起きます 松田直之

   7.  市民講座 敗血症で腎臓の機能が低下します 松田直之

   8.  市民講座 敗血症管理における救急外来でのモニタリング 松田直之

   9.  市民講座 世界における敗血症の救命活動〜Global Sepsis Alliance〜 松田直之

 10.  市民講座 敗血症における集中治療室の役割 松田直之

【はじめに】 

 芸能,舞台,ファッションショーなどのメイクアップや指導において,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を伝播させない対策が必要とされます。新型コロナウイルスにかかってしまい,症状が出ると,この病気をCOVID-19(COronaVIrus Disease 2019)と呼んでいます。死亡率が高まる理由として,「敗血症」という病気に移行することにも注意が必要です。このSARS-CoV-2は,対面式の「深呼吸」により罹患者から非罹患者の肺の末端(肺胞領域,肺毛細血管領域)に拡散し,接着し,感染するため,対面式の食事やメイキャップで移りやすいことに注意します。また,保菌者の鼻や口元などの処置により,メイク道具や手技者の手などにSARS-CoV-2が付着し,道具や手を介して自身や他者に伝播させてしまう危険性があります。メイクアップアーティストの皆さんは,独自のセットを持たれていますが,これらのファンデーション,リップ,アイシャドーなどを共用する場合には,小分けするか,使い捨てチップを利用するかなどを検討して下さい。メイクアップアーティストの皆さんは,SARS-CoV-2の伝播を抑制する監視役の一人として,感染伝播に気をつけて頂き,また,室内の換気を重視して頂き,役者さんたちや皆さんを新型コロナウイルスから守ることを期待しています。

  

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/メイクアップアーティスト

留意事項:対面ではフェイスシールドを着用します。その上で,頭髪や頸部の汚染に注意します。

対象:メイクアップアーティスト,芸能関係,舞台関係,ファッション関係,など

キィ・ワード:換気環境,咳エチケット,パレットやブラシのコンタミ,フェイスシールド着用,手指衛生

 

【準 備】

A. 被メイク者用(俳優・女優さん等:メイクされる者)

□ 個人用メイクアップ道具:個人購入(一人一つの原則)

□ 小ティッシュペーパー(被メイク者の手元おき:一人一つの原則)

□ アルコール性手指消毒剤(共用でよい) 

※ パレット汚染に注意:共用して使用する場合には,被メイク者の皮膚につけたブラシ等をもとに戻して塗り直すことは危険です。SARS-CoV-2にパレットやブラシが汚染される危険性があります。

※ 一つのパレットなどを用いる場合は,SARS-CoV-2に汚染される危険があります。新品の使い捨ての筆などのセットも考慮します。

                             

出典:Amazon公式サイト https://www.amazon.co.jp/プロ用-メイクパレット全78色,等

B. メイキャップアーティスト用(メイクを施すプロ)

□ フェイスシールド

□ マスク(口と鼻をしっかりと覆う)

□ ヘッドキャップ

□ 手袋(フィットタイプ,1回使い捨て)

□ アルコール性手指消毒剤

□ ティッシュペーパー(箱型)

          

出典:Amazon公式サイト等

【方 法】

A. 舞台控室:メイク場所の選定

□ 換気の良い場所で行います。個室では,換気できる状態とします。換気ができる状態でのメイク作業とします。

□ 開ける窓が1つしかない場合の効果的な換気法(図参照:出典 ダイキン工業HP https://www.daikin.co.jpより以下の図を引用)

※ 劇場の特徴を考えて,独自の換気対策を立てる必要があります。ポイントは,① 換気良好,② 環境汚染阻止,③ 対面式への注意と留意です。

※ オープンスペースにおいても,換気がどのように行われているかを皆で理解しておくと良いでしょう。

 

B. 被メイク者の心得(役者さん,タレントさん,モデルさん等)

□ 体温と咳の確認:微熱が続く場合,咳が出る場合,味覚や臭覚がおかしい場合は,自主的に申し出て,非メイク者の対象から外れるようにして下さい。また,当日37℃以上の状態では,SARS-CoV-2の可能性があるために,メイクを行う対象から外されても,めげないで下さい。このような場合には,近医で直ちにSARS-CoV-2のRT-PCR検査を行って頂く必要があります。現在は,早く検査して頂き,陽性であれば治療薬を処方して頂くことがベストです。病院受診時は,マスクを適切に着用して受診され,COVID-19の疑いであることをはっきりと伝えて下さい。

□ 個人具の準備:メイクに必要な個人具を予め伝えてもらい,必要であれば新品として揃えます。マネージャーさんがいる場合は,マネージャーさんに対応して頂きます。メイクアップアーティストが,個人・個人のために揃えるかもしれません。

□ ティッシュペーパー:ティッシュペーパーは手元に置きます。くしゃみや咳をしそうな時はティッシュペーパーを口に当てて,「咳エチケット」を守って下さい。

□ アルコール性手指消毒剤:咳の後には,アルコール性手指消毒剤を用いて,手指衛生を行ってください。

 

C. メイキャップアーティストの心得(対面式メイクの重要注意事項)

□ フェイスシールド:必ずフェイスシールドをつけて,被メイク者の息や咳を直接に吸い込まないように注意してください。自分を守ることが大切です。フェイスシールドを外す時は,手袋をつけた状態でアルコール手指消毒剤で消毒します。2分程度おいてから,ティッシュペーパーで拭きます。

□ マスク着用:フェイスシールドしてもマスク着用として下さい。鼻は上のフェイスシールドの写真のように,鼻根部でタイトシールされることが重要です。

□ ヘッドキャップ:被メイク者の「息」や「咳」を介してSARS-CoV-2が髪に付く可能性があります。簡易型ヘッドキャップを装着する。ヘッドキャップを外す際には,裏返しとして外し,ビニール袋内に廃棄してください。

□ 手袋着用:タイトなプラスティック製手袋を着用する。手袋を外す際には,裏返しとして外し,ビニール袋内に廃棄する。

□ 個人用メーク道具:メイクに使用する道具は持ち込まれた新品の個人用か,用意したものとする。1名1つの使い捨てを原則とする。SARS-CoV-2の保菌者へのメークにより,道具が汚染されることに注意する。

□ アーチストのフェンデーション,リップクリーム,アイシャドウ等の共用:これらの固形や液状や粉末を複数のタレントさんに共用する際には,これらにSARS-CoV-2がコンタミすることに気をつけます。コンタミとは,コンタミネーション( contamination:汚染)の略語であり,混じり合い不潔・不純になることを意味します。被メイク者に一度付けたものを戻すことで,固形や液状や粉末の汚染の可能性が高まります。これらは,「小分けして使用する」,または,「その都度新しいチップなどを使用する」,「事務所に新品を請求する」などの工夫が必要となります。これは,SARS-CoV-2に限らず,B型肝炎ウイルス感染などでも注意が必要な内容です。

□ 周囲の汚染への対応:アルコール性手指消毒剤などを用いて,環境を消毒し,2分程度の放置の後にティッシュペーパーで環境の拭き取りを行います。一人ひとり対応した後に,一度,周囲を清潔化すると良いでしょう。

 

D. 手指衛生の徹底(共通留意事項)

□ 手袋の適正使用:正しく外し,机の上に置かずに,直ちにビニール袋や廃棄箱に廃棄してください。

□ 手指衛生のタイミング:処置前処置後で,アルコール性手指消毒剤を用いて,必ず手指衛生を行ってください。

※ 外した手袋はまだ手袋をつけている手で握り,もう片方の手袋を手袋を外した片手で同じように裏返しにして外します。

※ 直ちにビニール袋内に廃棄,直ちにアルコール性手指消毒剤での手指衛生として下さい。外した手袋は,机などの上においてはいけません。

出典:SARAYAホームページより https://shop.saraya.com/hygiene/category/hand_hygiene.html 

E. 確認すると良い内容

□ 舞台芸術公演における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン 緊急事態舞台芸術ネットワーク 2020年6月30日公開

□ 劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン 公益社団法人全国公立文化施設協会 2020年5月14日公開

※ 必要な内容が,とても良くまとめられています。その上で,本稿は,より具体的に,注意するべきポイントを具体的に記載しています。ガイドラインについては,適時,Ver.2などとしてバージョンアップしていくことになります。

【おわりに】 「With コロナ」の時代として,芸術活動の再開や充実が期待されます。その一方で,演劇,舞台,ファッションショーなどのメイクアップや休憩のの場が,クラスターとなることを防ぎ,個々のタレントさんや役者さんの活動を適切に守る対策が必要です。SARS-CoV-2の管理ポイントは,体の中で大量の増殖させないこと,つまり① 早期発見と,② 早期治療,そして同時多発とならないようにクラスター発生の阻止です。ここに,メイクアップアーティストや舞台メイクさんは重要な役割を担うことができます。SARS-CoV-2に対しては,まず自分を守り,そして同時に皆を守るために,厳格に感染対策をすることが期待されます。目に見える汚染がある場合は「流水手洗い」,目に見える汚染がない場合でも「アルコール性手指衛生」を徹底されて下さい。発熱,咳,呼吸が変,味覚や嗅覚がおかしい場合などは,マスクを正しく着用して頂き,「COVID-19の疑いです」と伝えて頂き,適切に病院で診察を受けましょう。以上を参考として,芸術活動,芸能活動に,ご活躍ください。

初版:2020年7月12日,追記:2020年7月14日,2021年1月7日


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レビュー COVID-19の多臓器障害の特徴

2020年06月01日 19時09分49秒 | COVID-19の集中治療

レビュー COVID-19の集中治療:多臓器障害の特徴について 2020.05

 

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野

教授 松田直之

 

はじめに

 新型コロナウイルス感染症COVID-19(corona virus disease 2019)のパンデミックにおいて,集中治療室(Intensive Care Unit:ICU)は,重症化した際の救命および社会復帰のための砦として重要な役割を担っています。ICUは,急性期全身管理として脳,呼吸,循環(心血管),肝臓,腎臓,消化器,血液凝固線溶,内分泌,筋骨格などのすべての臓器や生体機能管理を担当し,生命に関わる緊急状態から早く適切に回復させることを目標として,病院内での中央診療部門として運用されています。

 COVID-19においても,集中治療によるさまざまな臓器機能の管理が,重症状態や中等症状態の改善に寄与しています。本稿は,COVID-19において国内外で観察される臓器機能障害について,2020年5月までの主要な報告から集中治療を必要とする多臓器障害の特徴をまとめました。

 

1.COVID-19における初期症状と重症化の理解の必要性

 2020年1月1日から2月23日までに発表されたCOVID-19の診療に関する文献レビュー1)として,Medline/PubMed, Scopus,およびWeb of Scienceの3つのデータベースを使用して19臨床研究論文と39件の症例報告が解析され,COVID-19の初期症状が報告されています。COVID-19患者656名において,発熱88.7%,咳57.6%,呼吸困難45.6%が一般的な症状であり,患者の20.3%がICUを必要とし,32.8%が急性呼吸窮迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome),6.2%が急性循環不全,ショックでした。入院患者の死亡率は約13.9%(95%信頼区間:6.2–21.5%)です。

 日本では,ファビピラビル(アビガンⓇ)観察研究の中間報告2)において,COVID-19の重症化率を確認できます。本中間解析は,2020年5 月15 日 18 時までの日本におけるCOVID-19診療の解析として,407の医療施設から2,158 名が登録されています。臨床経過において,ファビピラビル投与開始7 日目においてCOVID-19が増悪と判定されたのは軽症例で13.1%,中等症例で21.3%,重症例で28.3%(表1),14 日目において増悪と判定されたのは軽症例で5.9%,中等症例で8.8%,重症例で25.2%でした(表2)。中等症および重症は,ICUなどで呼吸管理が必要となります。その上で,7日や14日レベルでの増悪においても,ICUでの適切な管理が生存のためには必要になると思います。このような重症化とされる病態の理解が重要であり,単に呼吸状態だけではなく,凝固亢進,血管内皮障害を含めて多角的に捉える必要があります。

 日本でSARS-CoV-2が拡大しはじめた2020年3月は,このような重症化に関与する臓器障害の特徴を確認すること,その上で臓器障害の進展を阻止するための集中治療の方策が必要とされていました。

2.概説 COVID-19における臓器障害の特徴

 新型コロナウイルスSARS-CoV-2は,アンジオテンシン変換酵素(ACE-2:angiotensin-converting enzyme-2)との結合性が高く結合し,ヒト細胞膜上のACE-2と接着し,細胞寄生します3)。このため経気道的には,SARS-CoV-2は, ACE-2の発現の高い場所である肺の末梢部位である肺胞領域や毛細血管領域に接着し,播種しやすい特徴があります。肺末梢領域における肺胞嚢や毛細血管領域へのウイルス播種と増殖により,呼吸苦が出現し,呼吸状態が急激に悪くなる特徴があります。また,SARS-CoV-2の侵入経路は,舌,唾液,そして消化管を介した経路もあります。消化管より,肝臓や血管内に播種する可能性もあります(図1)。

 実際に,どのような臓器にSARS-CoV-2が播種するのかについては,病理解剖所見が重要と思われます。日本では,84歳のCOVID-19における病理解剖が報告されています4)。死後5時間で病理解剖が行われています。肉眼的には気管と気管支は発赤もびらんはなく,肺(左:590 g,右:690 g)は部分的に赤色固化し,含気がなく,切断面は粘液状であり,胸膜が両側で肥厚しており,胸水は1 mL未満です。肺の組織学的分析は,肺が浸出性および組織化びまん性肺胞損傷の両方の特徴を示しており,CT像で報告された所見5)などと同等のようです。心臓(420 g)は,右心室が拡張しており,10 mLの心嚢液がありました。さらにこの報告では,肺,脾臓,リンパ節に血球貪食があり,また腎臓の糸球体は微小血栓症として特徴づけられ,播種性血管内凝固の初期徴候に矛盾しないと考えられます。このように,肺の末梢領域,心臓,腎臓,脾臓,さらに血管内皮などを障害する特徴が病理所見として確認できます。

 また,スイスからの病理解剖の報告6では,3例の病理解剖が行われています。1例目の71歳男性は,腎移植のレシピエントであり,COVID-19診断後に全身状態が悪化し,人工呼吸下で進行する多臓器不全に対する管理が行われたが,管理8日目に死亡されています。電子顕微鏡では,腎臓の内皮細胞にウイルス封入体があり,腎に移行する可能性が確認され,組織学的分析では肺,心臓,小腸への浸潤があり,肺において微小血管内凝固が確認されています。2例目の58歳女性は,糖尿病と高血圧症の既往があり,COVID-19により呼吸不全などの多臓器不全となり,16日目に腸間膜動脈領域の虚血による小腸壊死となっており,さらに心筋梗塞を併発して死亡しています。死後の病理解剖では,肺,心臓,腎臓,および肝臓においてリンパ球性内皮炎症と組織壊死が明らかとされています。最後の3例目の69歳男性は,COVID-19による呼吸不全により人工呼吸管理をされていましたが,2例目と同様に小腸領域の壊死を生じて死亡しています。これらの病理所見においては,肺だけではなく,心臓,肝臓,腎臓,消化管など複数の臓器へSARS-CoV-2が浸潤する特徴があることや,T細胞やマクロファージなどの白血球の浸潤,そして血管を含む内皮系細胞死や血液凝固が確認されています(図2,図3)。

 以上のように,これまでに日本や海外で報告された臨床経過や病理解剖の報告から,肺胞領域などの肺の末梢領域はCOVID-19の初期のターゲットとなる一方で,心臓,腎臓,肝臓,脾臓,消化管などの重要臓器のすべてが臓器障害のターゲットとなることが確認されています。

 

3.急性呼吸不全/ARDS

 COVID−19における急性呼吸不全は,肺胞領域などの末梢気道病変として,急激に進行する特徴があります。中国の武漢や瀋陽のCOVID-19の重症化に関する報告では,ARDS7の発生率は15.6–31%,急性心筋障害(7.2–17%),急性腎障害(2.9–15%)の発症率であす8-13)。COVID-19においては,呼吸器感染症として呼吸不全の進展としてARDSの発生が認められます。中国武漢の金銀潭病院と武漢肺病院の191例の後ろ向き観察研究データ13)では,呼吸不全103例(54%),ARDS 59例(31%),敗血症性ショック38例(20%),血液凝固障害37例(19%),急性心筋障害33例(17%),急性腎障害28例(15%)であり,SARS-CoV-2により臓器不全をきたした症例は112例(59%)です(表3)。

 

 中国以外で2020年初頭にCOVID-19感染症による死亡の急増を認めたイタリアでは,20020年6月1日の段階で罹患者233,019名,人口10万人あたり罹患者数3,868名,死者数33,415名と,米国についで国際的に死者数が多い特徴がありました。2020年2月20日から3月18日までCOVID-19に罹患してイタリアのICUに入院した1,287例の解析14)では,合計1,150名が気管挿管下の人工呼吸管理を必要とし,137例が非侵襲的人工呼吸管理で治療されています。気管挿管下人工呼吸管理は,63歳以下で645例中565例,64歳以上では655例中585例(約89%)と年齢に関わらず若年層でも呼吸不全が進行し,ICUで呼吸管理されることが確認できます(表4)。

 ARDS7は,非心原性透過性亢進型肺水腫であり,2012年に公表されたベルリン定義に基づき,現在は日本でもARDS診療ガイドライン15)が作成され,これらを基準としてARDSの診療がICUで行われています。

 

4.心血管系異常

 COVID−19において,SARS-CoV-2は心血管系にも播種することが確認されています13, 16, 17)。SARS-CoV-2に関連する心筋障害は,武漢でCOVID-19と診断された最初の41名の患者では5名で確認され,高感度の心臓トロポニンの上昇として同定されています。5名の心筋障害患者のうち4名がICU管理を必要としたと報告されています。一方で,心筋障害のバイオマーカーのレベルは,正常域内にとどまるもののICU治療を必要した群で高い可能性が示唆されています17)。中国武漢の金銀潭病院と武漢肺病院の191例の後ろ向き観察研究データでは,急性心筋障害は17%であり,心筋障害としての心筋逸脱酵素の上昇,心筋炎や不整脈などを合併しています13)

 急性心筋炎などの心不全としてextracorporeal membrane oxygenation(ECMO)を必要とした症例などについては,日本COVID-19対策ECMOnet18のからの報告やデータ解析が行われることになるでしょう。

 

5.肝機能異常/急性肝不全

 武漢初期の2020年1月2日までに収容された41例のコホート調査9)では,感染した患者の73%が男性であり,糖尿病8例(20%),高血圧6例(15%),心血管疾患6例(15%)などの基礎疾患を持つ13例(32%)において,管理中の総ビリルビン(t-Bil)の中央値はICU管理群で0.82(0.7-1.92) mg/dL,一般病棟管理で0.62(0.55-0.72)mg/dLとICU管理を必要とした群で軽度の上昇する傾向があります。また,中国武漢の金銀潭病院と武漢肺病院の191例の後ろ向き観察研究データでは,死亡群41例の肝逸脱酵素ALTは40(24–51)IU/Lですが,t-Bilなどの上昇を認める肝不全としての死亡を認めていません13)

 肝細胞と胆管上皮細胞にもACE-2が存在することが確認されているので19),COVID-19における肝不全の進行が懸念されますが,観察された肝障害はSARS-CoV-2感染の治療に抗ウイルス剤として使用されたロピナビル/リトナビルなどの薬剤が原因である可能性が高いのかもしれません20)。ICUではICU一般の軽度の肝障害にとどまり,肝不全が進行しやすいという報告は確認できませんが, COVID-19の診療においても軽度の肝障害を増悪させない一般の管理は必要とされます20, 21)。COVID-19に関する肝障害は主にALT/ASTの上昇であり,t-bilは軽度な上昇に留まり,アルブミンレベルも2.6〜3.1 g/L,通常の一般のICU管理と相違がない特徴です10, 11, 20-28)

 

6.急性腎障害

 中国武漢の金銀潭病院と武漢肺病院の2020年2月1日までの191例の観察研究データ13)では,急性腎障害(AKI:acute kidney injury)は28例(15%)です(表5)。急性腎障害はKDIGOガイドライン29)に準じて診断されており,28例中27例が死亡しており,ICUなどにおける急性腎障害に対する血液浄化法などの併用の必要性があるかもしれません。

 中国からはさらに,2020年1月28日から2月11日まで武漢の同済医科大学関連病院における連続したすべてのCOVID-19患者 701名(男性367名,女性334名)の前向きコホート研究が実施されており,COVID-19において血清クレアチニン上昇は14.4%,血中尿素窒素上昇は13.1%,糸球体濾過有病率は13.1%です。KDIGOガイドライン29)に準じたAKI合併患者の重症度は,ステージ1が13例(1.9%),ステージ2が9例(1.3%),ステージ3が14例(2%),AKI全体で36例(5.1%)と,武漢からのAKI報告13)より少ない合併率となっています。しかし,表5のように院内死亡リスク比はAKI合併によりステージ1で1.90(95%信頼区間:0.76-4.76),ステージ2で3.51(95%信頼区間:1.49-8.26),ステージ3で4.38(95%信頼区間:2.31-8.31)とステージ上昇により高まり,AKIステージ2および3の合併により死亡リスクが高まることに注意する報告となっています。

 米国ニューヨーク州の13病院における2020年3月1日から4月5日までの報告32)では,Covid-19で入院した患者5,449名のうち,AKIが1,993名(36.6%)に発生し,AKIのピークステージはステージ1が46.5%,ステージ2が22.4%,ステージ3が31.1%と報告されています(表6)。中国のデータ13, 29)より高いAKI合併率です。人工呼吸中患者では89.7%,工呼吸中患者では21.7%に,KDIGOガイドライン29)に準じたAKIが発症したとしています。血液浄化法は人工呼吸器を装着した患者の276例(23.2%),工呼吸患者の9例(0.2%)と,人工呼吸患者における血液浄化法の併用が多い結果となっています。この報告では,AKI発症の危険因子として,高齢,糖尿病,心血管疾患,黒人,高血圧,人工呼吸管理,昇圧薬などが挙げられています。 AKI患者における694人(35%)が死亡,519名(26%)が退院,780名(39%)が治療中という結果です。

 日本でもAKI(急性腎障害)診療ガイドライン201631が作成され,AKIステージ分類とAKI診療がICUで行われています。

 

7.凝固線溶系異常

 COVID-19において,血液凝固線溶系の異常がCOVID-19の重症化に深く関わり,治療成績に大きな影響を与えることが報告されてます。国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis:ISTH)は,COVID-19の凝固線溶異常に対するISTHガイダンス31を公表し,COVID-19における凝固線溶管理の重要性を提唱しています。

 武漢におけるCOVID-19管理初期において2020年1月2日までに収容された41例のコホート調査9)として,ICUに入室が必要となった患者群で入院時のプロトロンビン時間(PT)とDダイマーが高く,血液凝固線溶系の異常が報告されています。COVID-19では,凝固が亢進することが一般的に観察できます。中国武漢の金銀潭病院と武漢肺病院の191例の後ろ向き観察研究データ13)では,血液凝固障害が37例(19%)に認められています。

 その上で,2020年1月1日から2月3日まで武漢の華中科技大学同済病院でCOVID-19における血液凝固に関する臨床研究34)が施行され,PT,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT),アンチトロンビン活性(AT),フィブリノーゲン,フィブリン分解産物(FDP)およびDダイマーが評価されています。COVID-19患者183名(男性98名,女性85名)が研究に登録され,21名(11.5%)が死亡し,死亡群でPT,FDPおよびD−ダイマーが高値となることが確認されています。また,ISTHの診断基準31)に準じて診断される播種性血管内凝固症候群(DIC:disseminated intravascular coagulation)として,死亡者の15名(71.4%)がovert-DIC(≥5ポイント)と診断されています。SARS-CoV-2は,血液凝固を促進させる特徴があります。

 2020年1月20日から2月20日までSoochow大学附属感染症病院に入院したCOVID-19と診断75例(男性:45例,女性:30例)においても,PTとAPTTは正常にもかかわらず,フィブリノーゲン(60%)とD-ダイマー(12%)の上昇が明らかとされています35)

 日本では,急性期DIC診断基準36)が2005年に定められ,DICおよび血液凝固線溶系の管理が,日本版敗血症診療ガイドライン201637)に準じて行われています。日本版敗血症診療ガイドラインは,世界に先駆けて,敗血症におけるDIC治療の診療エビデンスを提案しています。ICUなどのCOVID-19における重症化の管理では,血液凝固線溶系異常の合併を念頭におきます。血管内凝固DICが死亡率を高める危険性があることに留意して,COVID-19に抗凝固療法を併用することは不可欠と考えられます。

 

おわりに

 本報告は,COVID-19において国内外で観察される臓器機能障害について,2020年5月までの主要な文献から,集中治療を必要とする多臓器障害の特徴をまとめたものです。論文多くは,初期にCOVID-19が蔓延し,都市閉鎖が行われた武漢を中心とする中国からのものです。2020年7月移行には,米国やイタリアなどの海外各国からの臓器機能障害が報告されてくるようです。適時,再レビューとしていく必要があります。

 臓器不全の特徴として,ICUは肺,心血管系,肝臓,腎臓,血液凝固系に加えて,意識,消化器,内分泌,筋骨格など,すべての臓器や生体機能管理を担当しています。このような細部にわたって,集中治療管理過程で観察を続け,臓器不全の特徴としてまとめていくことが期待されます。ICUにおけるCOVID-19の多臓器管理の特徴についての参考としてまとめさせて頂きました。

 

文 献

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2.藤田医科大学ファビピラビル観察研究事務局. ファビピラビル観察研究中間報告 (2020 年 5 月 15 日現在). 2020年5月26日

3. Letko M, Marzi A, Munster V. Functional assessment of cell entry and receptor usage for SARS-CoV-2 and other lineage B betacoronaviruses. Nat Microbiol. 2020;5:562-569.

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6. Varga Z, Flammer AJ, Steiger P, et al. Endothelial cell infection and endotheliitis in COVID-19. Lancet. 2020;395:1417‐1418. 

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文献レビュー PART2 新型コロナウイルスの嗅覚障害/猫による伝播の可能性/味覚障害で考えること

2020年04月08日 23時34分26秒 | COVID-19の集中治療

文献レビュー PART2 新型コロナウイルスの救急・集中治療

ジャーナルクラブ

COVID-19の嗅覚障害と味覚障害について

猫によるSARS-CoV-2伝播の可能性

 

救急科指導医・専門医

集中治療専門医

松田直之

NAOYUKI Matsuda MD, PhD

 

新型コロナウイルスSARS-CoV-2およびCOVID-19の管理にお役立て下さい。

救急一直線「COVID-19への集中治療・診療バンドル2020」を考える参考文献の解説とします。

 

トピックス COVID-19の嗅覚障害について

文献 1. Jitaroon K, Wangworawut Y, Ma Y, et al. Evaluation of the Incidence of Other Cranial Neuropathies in Patients With Postviral Olfactory Loss. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2020 Apr 2. 

文献 2. Eliezer M, Hautefort C,  Hamel AL, et al. Sudden and Complete Olfactory Loss Function as a Possible Symptom of COVID-19. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2020 Apr 8. 

 ウイルス感染は嗅覚障害の原因の一つであり,インフルエンザウイルス感染症やおたふく風邪などでも臭覚異常が経験されます。末梢性の神経障害の可能性がありますが,ウイルス感染後の嗅覚損失と神経障害の研究報告があります。救急外来における臭覚障害では,① 慢性副鼻腔炎,② 鼻内形体変化(外傷歴含む),③ ウイルス感染症,④ 薬剤服用歴,⑤ 職業歴(金属メッキ作業など),⑥ 中枢性(腫瘍等)の6つをポイントとして指導しています。

 文献1. 2015年1月から2018年1月までの3次医療鼻科クリニックで症例対照研究として,ウイルス感染後の臭覚異常と頭蓋神経障害の発生率が評価されています。ウイルス後の嗅覚消失群として91症例,対照には100症例が評価されています。ウイルス後の嗅覚消失を伴う91中10例(11%)に脳神経障害を認めた結果であり,臭覚障害を伴う場合の脳神経学的異常のオッズ比は6.1(95%CI 1.3-28.4)とのことです。結論として,ウイルス感染後の嗅覚の喪失は,他の脳神経障害の発生率が高くなる可能性に注意します。

 以上の関連して,COVID-19に併発する臭覚障害について,嗅覚裂の炎症性閉塞が関与するとする放射線学的異常の報告(文献 2)があります。症例は,40代女性であり,COVID-19の診断がRT-PCRでついています。鼻腔の閉塞がないにもかかわらず,味覚異常はなく,嗅覚機能のみが急性喪失したとのことです。嗅覚テストでは,フェニルエチルアルコール(フラワーローズ),シクロテン(キャラメル),イソ吉草酸(山羊チーズ),ウンデカラクトン(果物),スカトール(肥料) の5種類が評価されていますが,これら臭気物質のどれもが識別されなかったという結果です。

 鼻腔のMRI像では,嗅球には異常を認めず,嗅覚裂の両側性炎症性閉塞が認められたとのことです(MRI 引用)。このような場合においても,上述の文献1のように,中枢症状の発症に気をつけなければならないのかもしれません。今回は,ウイルス感染症後の臭覚異常は約11%であり,意識障害などの脳神経学的異常にも注意しなければならないという内容のレビューとしました。アウトカム評価に加える一つの内容(COVID-19における臭覚・味覚障害の発生頻度/COVID-19における臭覚・味覚障害と神経学的予後)かもしれません。

引用 MRI : Eliezer M, Hautefort C,  Hamel AL, et al. Sudden and Complete Olfactory Loss Function as a Possible Symptom of COVID-19. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2020 Apr 8.

 

トピックス 猫によるSARS-CoV-2伝播の可能性

 

文献1. Luan J, Lu Y, Jin X, Zhang L. Spike protein recognition of mammalian ACE2 predicts the host range and an optimized ACE2 for SARS-CoV-2 infection. Biochem Biophys Res Commun. 2020 Mar 19. PMID: 32201080 

文献2. Jianzhong Shi, Zhiyuan Wen, Gongxun Zhong, et al. Susceptibility of ferrets, cats, dogs, and different domestic animals to SARS-coronavirus-2. BioRxiv 2020 Mar 31

 アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は,肺,心臓,肝臓,精巣,腎臓,腸などに広く分布しています。コロナウイルスSARS-CoVは,その受容体としてACE2に接着します。 ACE2は猫や犬にも存在しますので,SARS-CoVが猫や犬を介して伝播する可能性について,今後も注意や警戒が必要となります(文献 1)。

 文献2は,中国農業科学院(CAAS)のハルビン獣医学研究所(HVRI)のバイオセーフティレベル4の施設で実施された動物研究だそうです。フェレット,ネコ,犬,豚に対して,SARS-CoV-2を暴露した結果が記載されています。猫と犬は人間と密接に接触しているため,COVID-19の制御のために,動物のSARS-CoV-2に対する感受性を評価したという報告です。

 まず,猫においては,8か月齢の5匹の近交系飼育猫に105 pfuのCARS-CoV-2株(SARS-CoV-2/CTan/human/2020/Wuhan:CTan-H)を鼻腔内に接種させています。猫から糞便を収集し,安楽死後に各臓器のSARS-CoV-2のウイルスRNAを確認したという研究です。猫においては,CTan-HのRNAは,主に鼻甲介,軟口蓋,扁桃腺,気管で検出され,肺胞領域や小腸からは回収されにくいという結果です。猫は,ヒトに頬ずりしてきたりしますので,SARS-CoV-2の伝播の一つとして気をつけねばならないかもしれません。

 一方,ビーグル犬に105 pfuのCTan-Hを鼻腔内接種した検討では,糞便中には検出されたけれども,臓器や血液には検出されず,犬はSARS-CoV-2にかかりにくいという結果となっています。猫や犬の種類にもよると思いますが,猫などの鼻汁や頬ずりには引き続き,SARS-CoV-2の伝播における予防学的かつ疫学的観点から注意が必要と考えています。

 

トピックス 亜鉛と味覚障害/亜鉛のウイルス抑制

 

 コロナウイルスは,RNAウイルスであり,ACE-2(コロナウイルス受容体の1つ)などを産生するヒトの細胞表面に接着したあとに,ヒト細胞質内にRNAを導入し,自己増殖していきます。この作用を抑制する分子として,亜鉛(Zn2+,Zinc)が知られています。また,亜鉛は炎症期に補充しないと亜鉛欠乏症が進行する可能性があります。一般に,集中治療では創傷治癒にも関与する亜鉛を微量元素群としてルーティンに補充しています。

 COVID-19の治療においては,過剰な亜鉛投与には急性亜鉛中毒としての注意が必要ですので,COVID-19の管理重要項目に含めていませんが,亜鉛やセレンなどの微量元素やビタミン全般の補充療法は,栄養管理における常識的基盤ですのでご注意下さい。亜鉛欠乏で,味覚障害が進行すること,SARS-CoV-2の増殖速度が高まる可能性にご注意下さい。集中治療領域では,通常の微量元素補充に注意します。

文献1. Serkedjieva J, Stefanova T, Krumova E.  A fungal Cu/Zn-containing superoxide dismutase enhances the therapeutic efficacy of a plant polyphenol extract in experimental influenza virus infection. Z Naturforsch C J Biosci. 2010 May-Jun;65(5-6):419-28.

 Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)の高発現により,インフルエンザウイルス複製が抑制されたり,インフルエンザウイルスによる炎症活性が低下するというヒト培養細胞を用いた基礎研究です。細胞腫には,human lung epithelial cell line A549と Madin–Darby canine kidney (MDCK) が用いられています。SOD1は,その活性酸素消去の活性中心に銅を含み,その構造の安定化に亜鉛が必要とされています。亜鉛欠乏症では,インフルエンザなどになりやすく,かつ炎症活性が強く生じる可能性が示唆されています。集中治療室では,一般的に経腸栄養剤に微量元素を含むものを用いており,急性期といえども消化管活動を維持できるようにすること,また早く経腸栄養を完成させることとしています。そのような中で,手術後や出血などを含む消化管障害がある場合には,亜鉛やセレンなどを含む微量元素の静脈内点滴による補充をルーティンとしています。文献2に続けます。

文献2.te Velthuis AJ, van den Worm SH, Sims AC, Baric RS, Snijder EJ, van Hemert MJ. Zn(2+) inhibits coronavirus and arterivirus RNA polymerase activity in vitro and zinc ionophores block the replication of these viruses in cell culture. PLoS Pathog. 2010 Nov 4;6(11):e1001176. 

 新型コロナウイルスSARS-CoV-2の繁殖において,亜鉛がRNA増幅を抑制する可能性,つまりSARS-CoV-2の繁殖を抑制できる可能性が知られています。

 ジンクピリチオンのような亜鉛イオノフォアで細胞培養培地の亜鉛濃度を増加させると,ポリオウイルスやインフルエンザウイルス(文献1で紹介)など,さまざまなRNAウイルスの複製速度が減少するそうです。この文献2の研究は,2 µmoL/Lレベルの低濃度亜鉛に亜鉛イオノフォアを組みあわせて,SARS-CoVの複製が阻害されることを提案しています。しかし,このデータでは,亜鉛濃度を2 µmoL/Lレベルから8 µmoL/L(51.6 μg/dL)(注:亜鉛原子量 64.5)に上げてウイルス増殖が抑制されていますので,このデータを私は,亜鉛濃度を高濃度に持ち込むのがよいという解釈ではなく,「亜鉛欠乏状態ではSARS-CoV-2の繁殖が高まることに気をつけるべきである」,「急性期管理においても通常の亜鉛摂取を継続しましょう」という内容として捉えています。亜鉛100 µmoL/L(645μg/dL)レベルでは,SARS-CoVの複製が完全に抑制されるデータも示されていますが,この亜鉛濃度645μg/dLや半濃度(50μmoL/L:322.5μg/dL)は中毒濃度です。

 血清亜鉛濃度は,60 μg/dL未満で亜鉛欠乏症,通常生活における血清亜鉛濃度は100 μg/dLレベル(正常:80~130 μg/dL)です。血清亜鉛濃度は70 μg/dL未満から,味覚障害が出現しやすくなります。創傷治癒も,遅延傾向となります。以上を含めて,亜鉛欠乏があれば亜鉛を必ず補うようにし,亜鉛欠乏のサインの一つは味覚障害かもしれないことに注意します。その上で,味蕾のACE-2発現様式は,心機能低下や高血圧併存疾患,また年齢や栄養と関係する可能性があり,より細かな今後の病態学的研究が必要となります。亜鉛欠乏状態では,甲状腺治療薬,シクロオキシゲナーゼ阻害薬などの薬剤や果物の味が変わることも知られています。味覚障害がある場合には,まず,亜鉛欠乏の可能性を評価して頂き,SARS-CoV-2の繁殖増強に注意するようにお願いしています。そして,口腔内を観察し,乾燥舌あるいは唾液過多,舌変形などを合わせて評価します。

※  ジンク(Zn)ピリチオン:ジンク(Zn)ピリチオンは,昔,メリットシャンプー(花王)に含まれていました。しかし,花王は,ジンクピリチオンに環境ホルモンの可能性があるとして,ジンクピリチオンの配合を止めてしまい,現在はグリチルリチン酸(肝臓の配合にに変更されているようです。現在,ジンクピリチオンは,H&Sのヘッドスパシャンプーに配合されています。頭皮を含む脂漏性皮膚炎の抑制として,ジンクピリチオンは期待された時期がありました。

※ 亜鉛ジンクのRNAウイルス抑制の機序:亜鉛とSARS-CoV-2関連の面白い論文が2つありますので,ご参照下さい。

Lee CC, Kuo CJ, Hsu MF, Liang PH, Fang JM, Shie JJ, Wang AH. Structural basis of mercury- and zinc-conjugated complexes as SARS-CoV 3C-like protease inhibitors. FEBS Lett. 2007 Nov 27;581(28):5454-8. 

Joseph JS, Saikatendu KS, Subramanian V, Neuman BW, Brooun A, Griffith M, Moy K, Yadav MK, Velasquez J, Buchmeier MJ, Stevens RC, Kuhn P. Crystal structure of nonstructural protein 10 from the severe acute respiratory syndrome coronavirus reveals a novel fold with two zinc-binding motifs. J Virol. 2006 Aug;80(16):7894-901.

味覚障害のポイント

味覚障害→亜鉛欠乏の可能性顔面神経の評価→総合ビタミン及び亜鉛補充を考慮

初版:2020年4月8日,追記:2020年4月10日,2020年4月12日


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提言 COVID-19の集中治療戦略と臨床研究

2020年03月26日 01時50分05秒 | COVID-19の集中治療

提言 COVID-19の集中治療方策/未承認薬への対応および臨床研究について

Recommendations

COVID-19 treatment strategies in the world

 

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野

松田直之(Naoyuki Matsuda MD, PhD)

 

はじめに

 2020年3月11日,世界保健機関(WHO)は,SARS-CoV-2の「パンデミック宣言」をしました。東日本大震災から10年目,以前より,そしてこれからも予想される緊急事態です。現在,感染集合クラスターを作らないように,またクラスターからのSARS-CoV-2の伝播に気をつけます。多くの仕事はtele-workが推奨され,会議等の開催を避ける方針としています。潜伏中央値5.5日,定められた確定できる治療薬が存在しない状況ですので,外出に注意する一方で,日本集中治療医学会などは救命の手順を整えています。その上で,病院におけるCOVID-19の診療現場は,一つのクラスターです。病院管理について,行政は各病院の運営に任せるだけではなく,安全管理基準を明確としていく必要があります。

 COVID-19のSARS-CoV-2は,病態学的には肺胞嚢領域等の気道末端に親和性があります。ヒトのCT像や病理像を見る限りでは,SARS-CoV-2は肺胞嚢領域の末端に浸潤し,そして肺末梢領域にムチンを増生させる傾向があります。コロナウイルスの受容体は,ACE-2,CEACAM1(ミクログリア,肝細胞,腸管上皮細胞,尿細管上皮細胞などに発現),アミノペプチダーゼN受容体(APN),およびジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP-4)の4つが知られていますが,SARS-CoV-2はACE-2との親和性が高いことが末梢気道への浸潤性に関与しているのかもしれません。このため,急激に症状が出て,息が苦しくなる,つまり低酸素血症が進行し,生命の危機が突然に訪れる可能性があると評価されます。喫煙や副流煙がリスクとなるのは,気道過敏性が亢進している状態であったり,既に肺気腫などのCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などとして肺機能が低下しているからかもしれません。また,喫煙者では,血中ビタミンC濃度の低下の可能性があり,COVID-19において末梢気道領域で活性酸素種の暴露を受けやすい可能性もあります。高血圧や糖尿病がリスクとなる背景として,肺胞末端末端領域のACE-2の発現亢進が関与するかもしれません。

 初期に懸念した線維化が進行するなどの病態に難じるというよりは,まずは末梢気道の閉塞性病態の進行に注意します。末梢気道開放と末梢血管保存として,また,器質化を残さない長期予後を考え,リハビリテーションを考える集中治療が重要となります。

 2020年3月4日にCOVID-19管理バンドル(線維化抑制)を,ウイルス性間質性肺炎が進行する可能性としてして記載させて頂きました。薬理学的かつ病態学的に有害性が生命の危険に直結しない治療については,院内承認を得るとともに,特に患者さんに十分な解説を行い,承認を得ることを重視し,進んで加療することが期待されます。治療指針においては,医師の病態生理学的解釈と論理的思考が大切です。その上で,副作用や有害性の高い治療や,有効性が境界領域か,専門家内で意見が異なるような内容については,臨床研究に持ちこむことが必要です。

 本稿は,海外の先生に返答させて頂いた内容です。診療にあたっては,病態学を討議するとともに,薬理作用とPK/PDを考え,副作用の低い内容についてはジャストタイミングの治療が期待されます。論理的に明らかに有効で,有害性が極めて少ないものについては,生命の尊厳を損なう危険性を考慮し,臨床研究の実施については登録と観察研究が望ましいです。

 

 

出典 WEB掲載中:Inui S, et al. https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/ryct.2020200110(感謝:参考とさせて頂いています)

 

COVID-19の診療と行政に期待されること

 2020年3月末の本邦では,科学的論拠を共有しながら,治療の1st lineを整えることが必要です。また,政府には,① COVID-19を管理する場所の整備強化,② 人工呼吸器やCPAPマスク等の備蓄(緊急時:3Dコピーの許可・承認を含む),③ 薬剤・機器承認体制の強化(薬機法の例外的緊急対応),④ ワクチンの早期開発への支援が期待されます。その上で,臨床研究では,病態学的かつ薬理学的に効果的と予測される治療においては,使用の有無による2群に分けての前向き臨床研究は,生存を損なう危険性に十分に注意します。

 

A. 気管挿管されていない場合

 

 1.吸入療法

  1st オルベスコ®(一般名:シクレソニド)

  2nd  ムコフィリン®(mucofilin,一般名:N-アセチルシステイン)

  N-アセチルシステインは,前向き臨床研究が良いかもしれません。

  検討内容/海外との共有

  □ オルベスコ®(一般名:シクレソニド)の優位性:未承認および適応外使用,2018年12月からの薬機法に準じる場合には臨床研究が必要です。

  □ ムコフィリン®(mucofilin,一般名:N-アセチルシステイン)の酸素投与時の有効性

 

 2.抗SARS-CoV-2療法

  1st 肺移行性の良い抗ウイルス薬(RNAポリメラーゼ阻害剤)の使用が重要です。理論的にはアビガン錠®(一般名:ファビピラビル)が第1推奨ですが,薬機法では未承認薬の扱いとなります。肺移行性からは,アビガン®が期待されます。

  検討内容

  □ アビガン錠®(一般名:ファビピラビル)

  □ 投与期間:アビガン®は,成人には1日目は1回1,800 mgを1日2回,2日目から5日目は1回 800 mgを1日2回の経管投与とし,総投与期間は5日間を1つの投与法としますが,院内の倫理委員会の承認(あるいは包括同意)の下で投与期間を1週間以上に延長することを検討します。肝機能低下例では,投与量を半量とし,肝逸脱酵素の動向を評価します。

  ※ 未承認および適応外使用,2018年12月からの薬機法に準じる場合,日本での臨床研究が必要です。

 

 3.急性死亡の回避:最重要課題 用手換気技術の養成

 肺胞領域および呼吸終末細気管支領域のムチン性窒息,低酸素による徐脈心停止に注意が必要です。急激に悪くなる理由は,鼻水が増加するなどの手前の気道で病変が進行するのではなく,SARS-CoV-2受容体(ACE-2など)の多い肺末端で病変が進行し,低酸素となっていくからと考えています。このため,喘息における心停止回避に準じて,open lung,ジャクソンリース回路で換気できる技術が重要です。自発呼吸に合わせることが大切ですので,アンビューバックはダメです。病院では,PPEなどの自身へのエアロゾル防御体制で赤ゾーンとしてのゾーニングの下でジャクソンリース回路で気道確保のできる指導者が緊急時の救命に必要です。人工鼻をマスク接続部につけること,用手的PEEPがポイントとなります。

※ エアロゾル拡散のためにゾーニングやPPEの厳格化などの注意が必要ですが,DRカーやERなどにおける呼吸緊急では必修技術です。胃に空気を入れない,また嘔吐に注意する指導となります(臨床指導)。

ジャクソンリース回路での救命 1 急性心筋梗塞:丹羽成彦,三木裕介,杉浦由規,森田純生,林田 竜,松田直之,近藤 和久. ドクターカーの活用により救命したLMT心筋梗塞の一例. 日本循環器学会 第154回東海・第139 回北陸合同地方会 2019年10月19日 金沢. 現着時,低酸素性心停止の直前でジャクソンリース回路を用いて約15cmH2Oの陽圧をかけ,肺水腫による低酸素性肺をリクルートメントし,会話できる状態で現地よりカテーテル室へ早急に搬送しました。

ジャクソンリース回路での救命 2 羊水塞栓症:Hosono K, Matsumura N, Matsuda N, Fujiwara H, Sato Y, Konishi I. Successful recovery from delayed amniotic fluid embolism with prolonged cardiac resuscitation. J Obstet Gynaecol Res 37:1122-5, 2011. ジャクソンリース回路を用いて約15cmH2Oの陽圧をかけ,肺水腫による低酸素肺をリクルートメントし,救命しました。

ジャクソンリース回路での救命 3 致死的肺挫傷:星野弘勝,丸藤 哲,早川峰司,亀上 隆,松田直之,南崎 哲史. 鈍的気管支損傷に対する片肺全摘術後にみられた肺高血圧症に対してPCPSを施行した1症例. 日本救急医学会雑誌15:17-21, 2004 注:2000年6月4歳の子供さんの車の挟まれ事故として,右片肺挿管として縦隔気腫を増悪させずに心停止を起こさずにECMO(PCPS)スタンバイで5~6時間用手換気で救命しました。

  日本/海外検討内容

  □ ジャクソンリース回路の有効使用の調査,ジャクソン回路での自発呼吸下CPPV

  □ たこつぼ型心筋症/心拡張不全合併の調査

  □ 心筋炎を疑う比率同定

 

 4.パルスオキシメータ管理

 モニタリングとして,パルスオキシメータの適正管理が不可欠です。パルス波形を評価することも期待されます。

  検討内容

  □ パルスオキシメータ管理の有無による死亡率調査

 

 5.PPE講習

 医療従事者は,災害医療に準じて,自らが被災者としてCOVID-19にならないことが大切です。PPE講習気道管理におけるPPE重要です。

 

B. 気管挿管されている場合

 1.大量ビタミンC投与療法

 高濃度酸素投与を行っている場合,活性酸素種の産生に注意が必要です。COVID-19でKL-6が上昇しているケースや酸素投与濃度(FIO2) 40%以上(PEEP 10 cmH2O以上)では,大量ビタミンC投与療法は抗酸化療法や相対的副腎機能低下の回避として有効かもしれません。成人の敗血症における大量ビタミンC静注療法では,ビタミンC 1,500 mg(15Aレベル)を6時間ごとに,急性期4日間,あるいは集中治療室退出までとしています。初期の救命に加えて,長期予後に関与すると考えられる全身性線維化からの器質化を抑制することを目的とします。一方,経管栄養としてのビタミンC補充は,消化管吸収や排泄促進などのために血中濃度や組織濃度を高めるための限界があり,一般には1日量1,000 mgを経管投与の最大量としています。 ビタミンC大量投与の有害作用としては,下痢症状,腎機能低下および腎結石(シュウ酸結石)です。喫煙者では,ビタミンCレベルが低い可能性がありますので,通常レベルのビタミン補充が不可欠です。

 2.Dーダイマー上昇例の対応

 肺局所のAT活性は低下していることが予想されます。KL-6が上昇していない例ではAT活性70%以上を目標としてATⅢ投与(アコアラン®),さらにKL-6が上昇している状態ではリコンビナントトロンボモジュリン(リコモジュリン®)を検討します。TEMPRSS抑制作用があるかもしれません。これは,急性膵炎に準じた毛細血管後血栓症の治療としても重要です。一方,メシル酸ナファモスタットは血液浄化法を併用する際には,私は回路内投与の1stチョイスとしています。しかし,この静注療法は線溶系を抑制しますので,COVID-19初期の線溶亢進状態では使用できるかもしれませんが,CRP上昇として線溶抑制状態に移行していく段階では線溶を過剰に抑制する可能性があり,血栓形成の危険性を高めます。また,半減期が短いので,肺内濃度は上がらないと予想します。

 肺胞嚢や呼吸終末気管支レベルの細胞障害に伴うmicroangiopathy,血管内皮症傷害と血栓形成傾向に対して,ヘパリン持続投与を検討しますが,これはECMOでヘパリンを使用している際の肺胞出血のように,肺胞出血に注意します。厳格に部分トロンボプラスチン時間(APTT)をモニタリングできることが重要ですし,TATが上昇しているにも関わらず,AT活性が維持できている場合であればリコモジュリン®が良いかもしれません。炎症期のヘパリン使用は,ヘパリンの有害性に注意が必要です。

  検討課題:D-ダイマー>基準値の4倍以上,DIC様の時系列解析(線溶亢進 OR 線溶抑制)

  □ リコモジュリン®(一般名:リコンビナントトロンボモジュリン) KL-6>500 U/Lの場合 3日〜6日間 380単位/kg

  □ アコアラン®(一般名:リコンビナントATⅢ) AT活性>70%目標のAT補充療法持続投与法の検

  ■ ヘパリン 400~600 単位/時(成人) 持続投与 APTT比 1.5目標

 

 NO吸入療法および腹臥位療法

  臨床研究:前向きランダム化試験施行中 MGH

  □ 海外施行中:COVID-19におけるNO吸入療法

 

 4.CRP波形下面積

 肺局所の炎症活性を軽減できていない場合,肝臓でのCRP産生が高まります。改善速度のアウトカム評価として,私は朝6時の採血を基準としたCRP波形下面積の最小化が大切と指導しています。炎症を如何に早く深く下げこむかが,急性期管理技能となります。

  検討課題

  □ CRP波形下面積とPICS

  □ CRP波形下面積と在院日数

 

 5.IL-6受容体抗体 ケブサラ®(一般名:サリルマブ 

      臨床研究:前向きランダム化試験

  □ IL-6受容体シグナルの抑制効果の検討

  □ CRP波形下面積へのケブラサ®の検討

 

C. ECMO管理の場合

 ECMOは,最終の救命措置です。重症化後はその後14日までのSARS-CoV−2に対する免疫の獲得まで,上述の気管挿管下での治療において細菌性2次感染のリスクを低下させる医療技術が期待されます。また,たこつぼ型心筋症やカテコラミン誘導性心筋症(Ca overload)になっている場合は,ランジオロール(オノアクト®)の併用を検討して下さい。一方,徐脈やAFでは,心房筋へのSARS-CoV-2播種COVID-19におけるアセチルコリン血症を考えます。

  検討内容

  □ ビタミンC大量療法:抗酸化療法として

  □ 細菌性感染症併発のリスク解析:皮下ポケットに注意

  □ 心拍数>100/分 → 心拍数目標 < 94/分   ランジオロール(オノアクト®)の併用 1~7μg/kg/分

  □ 唾液量増加・徐脈傾向 → アセチルコリン血症の評価,心房筋播種の評価,唾液腺播種評価(唾液評価やアミラーゼ評価を含む)

  □ 経腸栄養を続けることができるかどうかの検討

 

D. 腎機能低下例:腎不全対応

 血液浄化法として,CHDFをお勧めします。

  世界での検討内容

  □ CH(D)F vs 間欠的透析:私はCHFを選択します。

  □ 使用膜の検討:私はPMMA膜をお勧めしています。

 

E.  行政介入:医療体制の整備

 政府の指導として,COVID-19診療の場は一つのクラスターと認識し,しっかりとCOVID-19診療場を分離する体制を,超急性期病院と急性期病院に整えることが必要です。大学病院などの超急性期病院は,救急・集中治療の診療教育機関であるとともに,気管挿管,人工呼吸器の適正使用,非侵襲的人工呼吸におけるCPAPやBIPAPの有効活用,またECMO管理をルーティンに施行している状況にありますので,これらの教育と指導を地域及び国内に行うことが期待されます。

 現在,日本には約6,500床の集中治療ベッドがありますが,この一定数の集中治療ベッドは手術後,急性心筋梗塞後,脳卒中後,がん患者さんや免疫不全患者さんの急変など,通常の集中治療管理の場として残す必要があります。これらのICUベッドは,SARS-CoV-2感染の疑われる患者さん管理と分離し,クラスター分離システムとすることが必要です。COVID−19は,決して数ヶ月で収束するものではなく,また今後の大災害や新興感染症にも留意し,事前性をもって備えることが必要です。国家安全として,事前的医療対応が最も必要です。

 以上,政府の指導として,特に旧帝国大学では,がん診療などの病院内診療とは別な仕組みとして,外部から搬入されるCOVID-19等の新興感染症・再興感染症に対応する「救命救急センター設立(感染症管理陰圧個室を含む)」の仕組み化,必修化が不可欠です。既にこれまでの平成9年度勧告4(10)に基づいて,すべての国公立大学に「救命救急センター」を設置すべきでしたが,未だ必ずしも整わず,国民や救急診療教育に適切に寄与できておらず,救急・集中治療の診療・教育体制を強化する必要がありました。国公立大学に対しては,診療・入院加算の補助の中で救急医療の診療と教育を充実させ,さらに地域の救命センターや急性期病院等との連携および教育指導とし,呼吸管理,ECMOを含む呼吸循環管理,急性血液浄化,全身管理などの診療体制を充実させ,さらに診療研究の発展のために診療データベースを充実させるように指導することが不可欠です。

 今回のような急性期感染症治療を含む救急医療体制の整備が,現在から将来までの院内安全管理の一環として必要となります。大学には,空気感染やエアロゾル感染などに注意した空間配置として,救命救急センター(ICU・陰圧個室数床を含む)を設置させます。救急科指導医・集中治療専門医などの専門性の高い資格を持つ教授等の指導下で,より明確な診療と管理が国家安全管理とともに実施されることが必要です。10年以上先の緊急時医療の充実を多角的に予測し,救急領域の安全医療と医療保護を約束することが不可欠です。今回のような治療および診療体制構築のために,政府には全国公立大学病院の救命救急センター設置に補助金を支給することが期待されます。この整備ができていなかったことを,これまでの反省や責任として終えず,強い反省として,現在こそ,未来に向けて緊急性医療を基盤化させる時であると提言されます。

 

本邦での超急性期病院・救急救命センターICU増設の課題

□ 2020年秋以降のリバウンド対策:行政と連携した国立大学連携構想,感染症および集中治療に強い医師及び医療従事者の招集と育成

□ 旧帝国大学における院内ICU(定期/院内)と緊急ICU(救急ICU)の分離:敗血症管理を含む救命救急センターの整備・移送連携,救急センター内陰圧個室設置,救急センター内ICU設置,国公立大学間広域搬送システム,国公立大学間集中治療専門医共有システム等

□ 病院リーダーシップの育成:先見的病院執行部の充実(多様的結束の支持),柔軟性と決断性の推進

 

F.  行政介入:抗体治療の整備

 COVID-19から回復された患者さんの有志として,献血をお願いし,血漿を安全なものとして保存する計画を進行させることが提言されます。

 本邦での検討

 □ RT-PCR検査陰性への注意/留意:退院まで2回の陰性を確認していますが,血液にSAES-CoV-2が存在しない安全確認および明確な手法が必要です。(日赤,血液製剤管理企業等との検討)

 □ SARS-CoV-2血漿投与基準の確定:重症ARDS,免疫弱者等のSARS-CoV-2血漿を優先的に投与でる患者群を明確化する必要があります。

 □ ワクチン開発:RT-PCRと同様に,ターゲット分子のモノクローナル抗体に加えて,ポリクローナル抗体作成にも期待します。ファジーディスプレイ法などを用いるのでしょうか(検討)。

 

 留意事項

 □ 動物のコロナウイルス感染症:動物は,家畜を含めてコロナウイルス感染症に罹患しやすいことが知られています。動物では,コロナウイルスの抗原性が変化することが指摘されています。SARS-CoV-2は,ヒトで流行してしまったことから,ヒト内で抗原変異する危険性に私は留意しています。インターフェロン療法などの確立も必要かもしれません。

 

G. 留意事項の整理

 □ 喫煙

 □ COPDの既往

 □ 間質性肺炎

 □ 免疫膠原病

 □ 心機能低下(たこつぼ型心筋症,慢性心不全など):SARS-CoV-2心筋炎の個別化と比率解析

 □ 慢性透析療法あるいは慢性腎不全の既往

 □ 予後関連遺伝子解析:死亡群と生存群の集中治療室入室時の遺伝子発現形式

         ;WBC total RNAマイクロアレイ評価,olfactomedin 4 (OLFM4) の発現形式など

 □ ADL低下状態への配慮

 □ DNAR:診療の別枠で考える必要性や可能性

 

おわりに

 現在のCOVID-19,SARS-CoV-2において,世界の皆さんが感染症管理を学んでいます。世界的に共通の克服課題として,行政や国公立大学病院の役割が問われる内容です。医療活動においても,国公立大学への救命救急センター完備などの国からの多額の補助が期待されます。

 一方,ご自身は,SARS-CoV-2に暴露されず,COVID-19にならない工夫が求められます。社会的には,自己隔離に加えて,喫煙の習慣のあるものには喫煙を止めて頂き,また排ガスの仕組みを改善することが期待されます。SARS-CoV-2だけではなく,匂い,スプレー,排ガス,煙,多くの有害分子の排泄を,私たちは日常から減少させていくことが大切です。

 

初版:2020年3月26日(木),追記・修正:2020年3月29日(日),2020年3月30日(月),2020年3月31日(火),2020年4月1日(水),2020年4月23日(木)


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紹介 米国集中治療医学会/欧州集中治療医学会 SSCGガイドラインCOVID-19 2020年3月20日公表

2020年03月21日 12時25分37秒 | COVID-19の集中治療

米国集中治療医学会/欧州集中治療医学会 SSCGガイドラインCOVID-19

2020年3月20日公表

Surviving Sepsis Campaign: Guidelines on the Management of Critically Ill Adults with Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)

新型コロナウイルス感染症 COVID-19

集中治療ガイドラインについて

 

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野

松田直之

Naoyuki Matsuda MD, PhD

 

 はじめに 

 米国集中治療医学会と欧州集中治療医学会は,敗血症診療ガイドラインをSurviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG)として公表しています。 この内容を踏襲するものとして,米国集中治療医学会と欧州集中治療医学会は,2020年3月20日に50項目の推奨で構成される「COVID-19に対応する敗血症ガイドライン」を公表しました。本稿は,厳格な翻訳ではありませんが,推奨内容に気をつけて記載しています。また,文献索引番号や表なども併記していますが,上記英文タイトルよりリンクできるようにしていますので,文献や表については原本でご確認下さい。簡訳として,読みやすいように記載していますので,参考とされて下さい。

 

 SSCGガイドライン:COVID-19管理の推奨ポイント 

 1.気管挿管:気管挿管を行う場合,可能であればビデオ喉頭鏡を用いることを弱く推奨しています。

 2.輸液制限:ショックを併発した場合には,輸液量を過剰にしないことを弱く推奨しています。初期蘇生においてHESやアルブミンを使用しないことを弱く推移称しています。

 3.カテコラミンの使い方:カテコラミンの使い方については,不適切な記載かもしれません。ノルエピネフリンとエピネフリンを,内因性カテコラミンの適正補充療法として,鎮痛鎮静下で最小量を模索しながら,適正使用するのが良いと思います。私からのアドバイスとしては,循環作動薬については,体血管抵抗やモトリングに気をつけて病態を理解して使用することをお勧めします。

 4.腹臥位療法:Moderate ARDS(PaO2/FIO2比≦200 mmHg)およびSevere ARDS(PaO2/FIO2比≦100 mmHg)において,低い推奨ではありますが,腹臥位療法を12時間~16時間として弱く推奨しています。

 5.筋弛緩薬:人工呼吸器との同期不全が続く場合,深い鎮静を必要とする場合,腹臥位療法を併用せざるをえない場合,また高プラトー圧を必要とする場 合,最大48時間として弱く推奨しています。

 6.NO吸入療法:NO吸入療法の推奨を,重症ARDS(PaO2/FIO2比≦100 mmHg)のみとしています。

 7.二次性血球貪食性リンパ組織球症(HLH):COVID-19に二次性血球貪食性リンパ組織球症が合併する可能性について言及されています。

 8.ステロイド静注療法:ARDSを合併した時に,弱く推奨しています。低用量ステロイドを想定しているようです。

 9.抗菌薬:人工呼吸管理となった場合,抗菌薬の経験的併用を弱く推奨しています。

10.体温管理:発熱に対してアセトアミノフェンを弱く推奨しています。

11. 抗ウイルス薬:ロピナビル/リトナビルの日常的な使用を避けることを弱く推奨しています。

 

 感染管理・感染対策について 

SARSCoV-2感染のリスクについて

 中国疾病管理予防センターの最近の報告では,中国からCOVID-19の72,314症例が報告されており,44,672例が検査で確定されています。検査で確定されたCOVID-19のうち,1,716人(3.8%)が医療従事者であり,そのうち1,080名(63%)が武漢で感染しているようです。感染した医療従事者の14.8%(247名)が重度または重度の病気にかかっており,5人が死亡したと報告されています。また,イタリアでは,2020年3月15日現在,医療従事者2,026例のCOVID-19が記録されているようです。ICUでの患者から患者への感染のリスクは現在不明であるため,感染制御予防策の遵守が最重要です。医療従事者は,医療機関で既に実施されている感染制御ポリシーに従う必要があります。考慮事項として,以下の推奨事項と提案を提供します。

推奨:

1. ICUでCOVID-19に対してエアロゾルが発生する手技を行う場合,手術用/医療用マスクではなく,フィットされた呼吸用マスク(N95マスク,FFP2マスク)の使用をお勧めします。また,保護具(手袋,ガウン,顔面シールドや安全ゴーグルなどの目の保護具)も加えて下さい。(ベストプラクティス)。

2. ICUでCOVID-19に対してエアロゾルが発生する手技を行う場合,陰圧室で管理することをお勧めします(ベストプラクティス)。

3.人工呼吸管理されていないCOVID-19の通常ケアでは,個人用保護具(手袋,ガウン,および目の保護具,フェイスシールド,安全用ゴーグルなど)に加えて,外科用/医療用マスクの使用をお勧めします(弱い推奨,エビデンス低)。

4. COVID-19の人工呼吸器(閉回路)でエアロゾルを生成しない作業の医療従事者は,個人用保護具に加えて,レスピレーターマスクではなく外科用/医療用マスクを使用することをお勧めします(弱い推奨事項,エビデンス低)。

5. COVID-19患者に気管挿管を行う場合,可能であれば,ビデオ喉頭鏡を使用してください(弱い推奨,エビデンス低)。

 ※ コメント:日本では,マックグラス(McGRATH®)を用いるのがよいかもしれません。気管挿管時間を短くできる可能性があるからです。(松田直之)

  参考文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/74/2/74_154/_article/-char/ja/

6.気管挿管を行う場合,気道管理の経験が最も多い医療従事者が行うことをお勧めします。(ベストプラクティス)

 

 診断と検査 

SARS CoV-2のICU患者の検査の適応

 世界保健機関(WHO)は米国時間3月11日,ジュネーブで会見を開き,新型コロナウイルス(COVID-19)を「パンデミック」だと宣言しています(3.11事例)。したがって,呼吸器感染症を疑う重症患者は,SARS-CoV-2に感染している可能性があるとみなすべきです。RT-PCR法は,SARSを含む同様のウイルス感染のゴールドスタンダードです(33)。特に,COVID-19は,潜伏期間が約2週間に延長したり,呼吸器症状が発症する前に約5日間のウイルス排出が行われるため,いくつかの診断上の課題が残されています。検査のパフォーマンスは,サンプリングの場所によって異なる可能性もあります。

推奨:

7. COVID-19の疑いが成人の気管挿管および人工呼吸器の場合:

 7.1 診断には,上気道(鼻咽頭または中咽頭)よりも下気道からサンプルを取得することをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

 7.2 下気道サンプルについては,気管支洗浄または気管支肺胞洗浄サンプルよりも気管内吸引液をお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

 

 血行動態サポート 

COVID-19におけるショックと心筋傷害について

 成人のCOVID-19におけるショックの有病率は,研究対象の患者集団,重症度,ショックの定義に応じて,ばらつきが強いです(1%~35%)。 中国のCOVID-19の44,415名の疫学報告では,2,087例(5%)が重篤な低酸素血症および/またはショックを含む臓器不全の存として診断されています(12)。重症COVID-19の1,099名を対象とした別の中国の研究では,ショックを発症したのはわずか12人(1.1%)です(1)。入院患者では,ショックの発生率は高い傾向があり(42)(表3),ICU患者では20-35%に達する可能性があります(42,43)。

 中国武漢(42-45)のCOVID-19の報告では,7%から23%に心筋傷害(CKMBやトロポニンなどの心損傷バイオマーカーの上昇)が報告されています。心筋傷害の有病率はショックの有病率と相関する可能性があります。血行動態が安定した患者では,心臓機能障害に対する体系的なスクリーニングが行われておらず,関連性を確実に捉えることができていません(表3)。

 また,COVID-19およびショック患者の予後は体系的に報告されていません。中国武漢の2つの病院の150人の患者を対象とした研究では,ショックが40%の主な死因であり,少なくとも部分的には劇症心筋炎による可能性があります(46)。

 このようにCOVID-19のショックに関連する危険因子に関する研究や報告は不足しています。利用可能な報告の大部分は,推定値を報告しています(12,42,46)。方法論的な制限がありますが,高齢,併存疾患(特に糖尿病と高血圧を含む心血管疾患),リンパ球数減少,D-ダイマー増加が,おそらく心損傷を考慮すべきリスク因子であるかもしれません。

推奨:

  8. COVID-19に併発した成人のショックでは,輸液反応性を評価するために,動的パラメーター,皮膚温,毛細血管再充填時間(CRT),血清乳酸測定を用い,静的パラメーターを超えることをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

  9. COVID-19に併発した成人のショックでは,リベラルな輸液戦略よりも保守的な輸液戦略とすることをお勧めします(弱い推奨,超低エビデンス)。

  ※ コメント:輸液量を過剰とならないように工夫ができると良いです(松田直之)。

10. COVID-19に併発した成人のショックの蘇生には,コロイド液ではなく晶質液を使用することをお勧めします(強い推奨,中程度エビデンス)。

11. COVID-19に併発した成人のショックの蘇生では,バランスの悪い晶質液(unbalanced crystalloidsよりもバランスの良い緩衝晶質液(balanced crystalloids)の使用をお勧めします(弱い推奨,中程度エビデンス)。

  ※ コメント:生理食塩水ではなく,ラクテートリンゲルやアセテートリンゲルなどの緩衝液を使用してくださいという内容です。当然のことですが,カリウムには注意して下さい(松田直之)。

  ※ Balanced Crystalloids Versus Saline in Critically Ill Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Pharmacother. 2020 Jan;54(1):5-13.

12. COVID-19に併発した成人のショックの輸液蘇生には,代用血漿製剤HESの使用を推奨しません(強い推奨,中程度エビデンス)。

13. COVID-19に併発した成人のショックの輸液蘇生には,ゼラチンを使用しないことをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

14.COVID-19に併発した成人のショックの輸液蘇生には,デキストランを使用しないことをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)

15. COVID-19に併発した成人のショックの初期蘇生に,アルブミンをルーティンに使用しないことをお勧めします(弱い推奨,中程度エビデンス)。

 ※ コメント:高齢者などのショックにおいて,輸液制限をするために,アルブミンを使用しても良いかもしれないと思っておりました。ルーティンな使用(ageinst routine use of albumin)がポイントなのかもしれません。ALBIOS studyのSepsis-2とSepsis-3を比較したサブ解析データなどもアルブミンを使用させる際には参考とされて下さい(松田直之)。

  血管作動薬の使用について 

推奨:

16.COVID-19に併発した成人のショックでは,ノルエピネフリンを他の薬剤よりも第一選択血管作用薬として使用することをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

17.ノルエピネフリンを使用できない場合,バソプレシンまたはエピネフリンの使用をお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

18. COVID-19に併発した成人のショックでは,ノルエピネフリンが利用可能な場合,ドパミンの使用を推奨しません(強い推奨,高エビデンス)。

 ※ コメント:ウイルス性心筋炎である場合,ECMOの適応となると思います。また,細菌感染症を併発しない限り,血管拡張性のworm shock(血流分布異常性ショック)とはなりにくく,ノルエピネフリンではなくエピネフリンFIRSTでも良いかもしれません(松田直之)。

19. ノルエピネフリン単独では目標平均動脈圧(MAP)を達成できない場合,COVID-19とショックのある成人に対して,ノルエピネフリン用量の漸増薬としてバソプレシンを追加することをお勧めします(弱い推奨,中程度エビデンス)。

 ※ コメント:COVID-19におけるショックを,通常の細菌性ショックと同一視しているのかもしれません。血管が拡張する,つまり体血管抵抗が減弱している場合には,① ノルエピネフリン,② バソプレシンで対応するのが適切ですが,心筋および血管平滑筋へのSARS-CoV-2の播種によりCOLDショックとなることにも注意が必要であると考えています(松田直之)。

20. COVID-19に併発した成人のショックでは,血管作用薬を滴定して,平均血圧のターゲットを高くするのではなく,平均血圧60~65 mmHgをターゲットにすることをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

21.  COVID-19に併発した成人のショックでは,輸液蘇生法およびノルエピネフリンにもかかわらず心機能障害および持続的な低灌流の証拠がある場合,ノルエピネフリンの用量を増やしながらドブタミンを追加することをお勧めします(弱い推奨,非常に低エビデンス)。

 ※ コメント:私は,ここはエピネフリン持続投与か,VA-ECMOの適応と考えます。ドブタミン(アドレナリン受容体β刺激薬)を使用することには,反対しています。ドブタミンは,頻脈や不整脈を誘導し,血圧維持のための輸液量を増加させる可能性に注意が必要です。むしろ,頻脈を抑制することや内因性カテコラミンを制御することが,長期的には重要となります(松田直之)。

22. COVID-19に併発した成人のショックでは,コルチコステロイド療法なしで低用量コルチコステロイド療法を使用することをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

 注:敗血症性ショックの典型的なコルチコステロイド療法は,点滴または間欠投与のいずれかとして,ヒドロコルチゾン200 mg /日を静脈内投与する方法です。

 

 呼吸補助療法について 

 COVID-19患者の低酸素血症の有病率は,約19%です(12)。中国からの報告では,COVID-19の4%から13%が非侵襲的陽圧換気(NPPV)を受け,2.3%から12%が気管挿管下人工呼吸管理を必要としたとされています(表3)(1,12, 42,43,65)。 COVID-19の低酸素性呼吸不全の真の発生率は明らかではないですが,約14%が酸素療法を必要とする重度の呼吸不全を発症し,5%がICUで人工呼吸器を必要とするようです(12)。また,別の研究では重症COVID-19患者52名において,67%がARDSを発症し,63.5%がHFNC療法を受け,56%が侵襲的人工呼吸器,42%がNPPVと報告されています(42)。

 機械的換気を必要とする呼吸不全に関連する危険因子は,公開された報告書では明確に説明されていません。限られたデータから重症化や ICU入室に関連する危険因子として,① 高齢(> 60歳),② 男性,③ 糖尿病,④ 悪性腫瘍,⑤ 免疫不全などが挙げられました(1,12,42,43)。 CDC(Centers for Disease Control and Prevention)は,COVID-19の致死率(CFR:case-fatality rate)を2.3%として報告し,80歳以上の致死率は14.8%,重症化するとCFRは49.0%であり,気管挿管例では50%を超えるとしました。心血管疾患,糖尿病,呼吸器疾患,高血圧,癌などの既往がある場合,死亡リスクが高いようです(12)。

 

推奨:

23. COVID-19の成人では,酸素飽和度(SPO2)が92%未満の場合は酸素療法を開始することをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。SPO2が90%未満の場合は,酸素療法を開始することをお勧めします(強い推奨,中程度エビデンス)。

24. 成人のCOVID-19による急性低酸素性呼吸不全(acute hypoxemic respiratory failure)では,SPO2を96%以下に管理することをお勧めします(強い推奨,中程度エビデンス)。

 ※ コメント:現在,高濃度酸素暴露の不適切性が,集中治療領域でも再燃されています。特に,ウイルス性間質性肺炎の危険性がある場合には,高濃度酸素投与をお勧めしていません。人工呼吸中に閉鎖式回路を用いた気管内サクションを行う場合などにも,高濃度酸素フラッシュを2分間するなどのことを止めて頂くようにしています(松田直之)。

25. 成人のCOVID-19による急性低酸素性呼吸不全において,従来の酸素療法で酸素化が得られない場合は,HFNCを使用することをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

26. 成人のCOVID-19による急性低酸素性呼吸不全では,NPPVよりもHFNCを使用することをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

27. 成人のCOVID-19による急性低酸素性呼吸不全で,気管挿管の緊急性はないけれどもHFNCが利用できない場合は,綿密なモニタリングと呼吸不全の悪化に関する短期間での評価を行いながらNPPVの試用を提案します(弱い推奨,非常に低エビデンス)。

28.マスクタイプのNPPVと比較して,ヘルメット型NPPVの使用に関しての推奨を作成できませんでした。COVID-19における安全性または有効性については確信がありません。

 ※ コメント現在,非侵襲的人工呼吸管理NPPVにおいては,マスクタイプではなく,ヘルメット型NPPVによる管理の呼吸管理状態や生命予後が良い可能性が示唆されています。このことを受けた,推奨文となっていると思います。NPPVで粘り過ぎると,エアロゾル拡散を悪化させるばかりではなく,気道狭窄や沈下性無気肺の増悪に気をつけることが期待されます(松田直之)。

29. NPPVまたはHFNCを投与されている成人のCOVID-19では,呼吸状態の悪化を綿密に監視し,悪化した場合は早期に気管挿管に移行することをお勧めします(ベストプラクティス)。

 

 気管挿管下人工呼吸管理について 

推奨:

30. 成人のCOVID-19におけるARDSで人工呼吸器を装着した場合,高い1回換気量(VT> 8 mL/kg理想体重)よりも,低い1回換気量(VT 4~8 mL/kg理想体重)を使用することをお勧めします(強い推奨,中程度エビデンス)。

31. 成人のCOVID-19におけるARDSで人工呼吸器を装着した場合,30 cmH2O未満のプラトー圧(Pplat)にすることをお勧めします(強い推奨,中程度エビデンス)。

32. 成人のCOVID-19におけるARDSで人工呼吸器を装着した場合,低いPEEPよりも高いPEEPをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

 備考:より高いPEEP(つまり,PEEP>10 cm H2O)を使用する場合,患者の圧外傷を監視する必要があります。

33. 成人のCOVID-19におけるARDSで人工呼吸器を装着した場合,リベラルな体液戦略よりも保守的な体液戦略を使用することをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

34. 成人のCOVID-19において中等~重症のARDSで人工呼吸管理をしている場合,12~16時間の腹臥位療法をお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

35. 成人のCOVID-19において中等~重症のARDSで人工呼吸管理をしている場合:

  35.1. 必要に応じて,神経筋遮断薬(NMBA)をボーラス投与,また持続投与として,肺保護換気を促進することをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

 ※ コメント:ANZICSガイドラインCOVID-19と同様の推奨です。ANZICSガイドラインCOVID-19のコメントを参考として下さい(松田直之)。

  35.2. 人工呼吸器との同期不全が続く場合,深い鎮静を必要とする場合,腹臥位療法を併用せざるをえない場合,また高プラトー圧を必要とする場合,最大48時間として筋弛緩薬持続投与をお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

36. 成人のCOVID-19におけるARDSで人工呼吸器を装着した場合,一酸化窒素(NO)吸入療法をルーティンな使用とすることを推奨しません(強い推奨,低エビデンス)。

コメント:ルーティンな使用を推奨しないという治療パターンに含めないことの推奨なのかもしれません。現在,MGHと西安で,COVID-19に対するNO吸入療法の臨床研究が開始されていますので,現時点では推奨できないとしているのかもしれません(松田直之)

37. 成人のCOVID-19における重症ARDSで人工呼吸器を装着し,換気などの救命戦略に反応しない場合,救命療法としての肺血管拡張薬の吸入を試用してもよいでしょう。酸素化の改善が認められない場合,治療は中止とします(弱い推奨,非常に低エビデンス)。

コメント:「we suggest a trial of inhaled pulmonary vasodilator as a rescue therapy」という記載の,吸入肺血管拡張薬は,後の解説を読む限り,一酸化窒素(NO)吸入療法を指しているようです。NO吸入療法の適応を,重症ARDS(PaO2/FIO2比≦100 mmHg)としています。(松田直之)。

38. COVID-19に人工呼吸器を使用したけれども酸素化が改善しない場合,リクルートメント手技を行うことをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

コメント:一度,Open Lungさせることが大切ですが,エアロゾル被曝手技となりますので,感染防御策に気をつけて下さい(松田直之)。

39. リクルートメントを行う場合,PEEPを段階的に上げていくなどのstaircase recruitmentとしないことをお勧めします(強い推奨,中程度エビデンス)。

40. 成人のCOVID-19におけるARDSで人工呼吸器を装着し,換気の最適化,レスキュー療法,および腹臥位にもかかわらず,酸素化が改善しない場合は,可能であればVV-ECMOを使用するか,患者をECMOセンターに紹介することをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

 

 COVID-19の追加治療オプション 

サイトカインストームについて

 サイトカインストームは,多臓器不全とサイトカインレベルの上昇を特徴とする過炎症状態です。中国の最近の研究では,COVID-19は二次性血球貪食性リンパ組織球症(HLH)を想起させるようなサイトカイン上昇プロファイルに類似することが示されています(44)。HScoreを用いて,COVID-19患者における二次性HLHをスクリーニングすることを提案されています(140)。コルチコステロイドおよび他の免疫抑制剤を,HLHの可能性が高いCOVID-19患者に使用できる可能性があります(141)。サイトカインストームの治療オプションについては,今後の多くのエビデンスが必要です。 抗ウイルス剤,免疫抑制剤,免疫調節剤,その他の治療法を含む,SARS-CoV-2とその合併症の治療オプションについて解説されています。

推奨:

41. ARDSまでには至らない呼吸不全で人工呼吸器を装着した成人では,コルチコステロイドの静脈内投与は行わないことをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

42. 人工呼吸器を装着した成人でARDSに至った状態では,コルチコステロイドの静脈内投与を行うことをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

 ※ コメント:メチルプレドニゾロン1-2 mg/kg/日を5日から7日間使用し,後にテーパリングしていく,少量ステロイド療法を弱く推奨しているようです。私は,この方法で行く場合には,24時間持続投与としていますが,血漿コルチゾル濃度を評価することもお勧めしています。測定法により,投与されたメチルプレドニゾロンが測定に反映されず,内因性コルチゾルのみの測定となる場合もありますのであわせて留意されて下さい(松田直之)。

43. COVID-19による呼吸不全で人工呼吸器を装着した成人では,抗菌薬の経験的使用をお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

注:経験的抗菌薬投与を開始する場合,毎日,ディエスカレーションを評価し,培養検査結果や患者の臨床状態に基づいて,投与期間と適用範囲を再評価してください。

44. 成人のCOVID-19の発熱には,体温管理にアセトアミノフェン/パラセタモールを使用することをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

45. COVID-19の重症化した成人に対して,標準的な静脈内免疫グロブリン(IVIG)のルーティンな使用をしないことをお勧めします(弱い推奨,超低エビデンス)。

46. COVID-19の重症化した成人に対して,回復期患者の血漿をルーティンに使用をしないことをお勧めします(弱い推奨,超低エビデンス)。

47. COVID-19が重症化した場合:

 47.1. ロピナビル/リトナビルの日常的な使用を避けることをお勧めします(弱い推奨,低エビデンス)。

 47.2. COVID-19の重症患者における他の抗ウイルス剤の使用に関する推奨のためには,エビデンスが不十分です。

コメント:アビガン錠®(一般名:ファビピラビル)などの有害とはならないことのエビデンスがある場合や,有害事象が低い抗ウイルス薬は,使用することが期待されます。薬理学的に作用機序を考えて,院内等の承認を得て,応用することになります。また,単純にRNAポリメラーゼ阻害薬をまとめずに,はいい校正の高いものを期待するなら,ファビピラビルを選択することになるのだと考えております(松田直之)。

48. COVID-19の重症化した成人に対して,単独または抗ウイルス薬と組み合わせた組換えrIFNの使用に関する勧告を発行するには,エビデンスが不十分です。

49. COVID-19の重症化した成人に対して,クロロキンまたはヒドロキシクロロキンの使用に関する推奨を提示するには,エビデンスが不十分です。

50. COVID-19の重症化した成人に対して,トシリズマブの使用に関する勧告を発行するには,エビデンスが不十分です。

コメント:リウマチ治療薬である抗IL-6受容体抗体(tocilizumab,アクテムラ®)についてのコメントも最後に述べられています。COVID19バンドルを知っている先生もいらっしゃることもあるのか,海外から抗IL-6受容体抗体を応用しようと考え,コメントを求められています。2020年3月4日の段階で,CRPが高く推移する症例を選んで,ケブサラ®(一般名:サリルマブ)の併用を考慮すると良いとしていました。臨床研究が開始される予定です。COVID-19ではCRPが高く推移する例が認められ,肺などの血管透過性が亢進しやすい状態があります(松田直之)。

 

 おわりに 

 オーストラリア・ニュージーランド集中治療医学会(ANZICS)に続いて,米国集中治療医学会と欧州集中理療医学会のSSCGガイドラインメンバーによるSSCG/COVID-19ガイドラインが公表されました。このすべての内容は,既に日本で行われている集中治療を超えるものではありませんでした。一方,現時点では新型コロナウイルスSARS-CoV-2に対しての治療エビデンスはあたり前のことですが,ストロングエビデンスは存在しません。明確なエビデンスはありません。現在,NO吸入療法や吸入ステロイド療法などのいくつかの臨床研究は立ち上がっていますが,まず救命を優先し,後遺症を軽減するという観点では,有害性除去と効果性期待としての病態生理学的アプローチがとても重要となります。その上で,この多くの労力の中で作成されたSSCG/COVID-19ガイドラインに感謝の念を抱くとともに,この原本にあたって頂き,より深くCOVID-19の集中治療を洞察していただきたいと考えています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

初版 2020年3月20日,追記・修正:2020年3月23日


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紹介 COVID-19の集中治療:呼吸管理法のANZICSの提案 2020.3.16

2020年03月16日 23時19分51秒 | COVID-19の集中治療

紹介 COVID-19の集中治療:呼吸管理法のANZICSの提案 Ver.1

The Australian and New Zealand Intensive Care Society (ANZICS)

COVID-19 Guidelines

Version 1 16 March 2020

Identification and Treatment of Patients with COVID-19 Infection Fundamental Principles

救急科指導医・専門医

集中治療専門医

松田直之

 

はじめに

 オーストラリア・ニュージーランド集中治療医学会(ANZICS)より,新型コロナウイルス感染症COVID−19ガイドラインが2020年3月16日付けで公表されています。本稿では,COVID-19の集中治療に関する推奨内容と私のコメントを記載しています。

 

ANZICSガイドライン2020

COVID-19における呼吸不全管理の推奨13項目

 ANZICSのCOVID-19ガイドラインVer.1では,COVID-19で呼吸機能が悪化している患者さんの早期認識の重要性を記載しています。 集中治療室(intensive care unit:ICU)では,ICUケアを必要とする患者さんの拾い上げシステムを構築するとともに,管理の早期最適化を目標とします。ANZICS は,COVID-19の呼吸管理として,13項目の治療についての記載をしています。写真をクリックすると,ANZICSホームページにも飛ぶようにしています。ANZICSは,この内容を広く世界に公表したいとされています。ここでは,ICUの医療従事者は,完全防備として,以下の適切な対応を行うことが記載されています。内容の記載の後ろに,私のコメントを付加しています。

1. HFNO療法:スタッフの最適なPPEの着用

 High flow nasal oxygen(HFNO)は,スタッフが最適な個人防御具(PPE:Personal Protective Equipment)を着用している限り,COVID-19疾患に伴う低酸素症の推奨療法である。最適なPPEや感染制御予防策が徹底されている場合,新しいHFNOシステムが適切に取り付けられていれば,新型コロナウイルのスタッフへの空中伝播のリスクは低くなる。 HFNO療法を受けている患者は,陰圧室管理が望ましい。高炭酸ガス血症,低酸素血症,呼吸疲労,循環の不安定,または精神状態が変化している場合は,気管挿管下人工呼吸管理を考慮すべきである。

私のコメント:宇宙服のようなPPEを付けた環境で,陰圧個室管理とできるのであればHFNOは利用できます。また,私は,High Flow Nasal Cannula(HFNC)とブログ内で記載しています。

 

2.非侵襲的人工呼吸:非侵襲的人工呼吸(NPPV)の日常的使用は推奨しない。

 現在までのCOVID-19の診療では,低酸素血症におけるNPPVは失敗率が高く,気管挿管の遅延,マスク適合が不十分な場合のエアロゾル化のリスク増加に関連していることが示唆されている。気管挿管までの遅延に気をつける。NPPVが閉塞性換気障害などの管理として適している場合には,HFNOと同様にPPEを使用して,感染防御を徹底する必要がある。 また,NPPVの患者は,陰圧室管理がよい。NPPVを行うすべての患者については,治療の失敗に対する次の明確な計画が必要である。

私のコメント:NPPVにおいては,エアロゾル暴露の十分に注意します。また,ARDS管理と同様に,気管挿管への以降のタイミングが重要となります。

 

3.気管挿管下人工呼吸管理:急性呼吸不全の管理として,肺保護機械換気が推奨される。

 低換気量戦略(予測体重4〜8mL/理想体重kg)を使用し,プラトー圧を30 cmH2O未満に制限した人工呼吸管理とする。高炭酸ガス血症は,permissive hypercapniaとして容認し,肺損傷を軽減する。高いレベルのPEEP(15 cmH2O)が推奨される。 APRVなどは,臨床医の好みと経験に基づいて検討する。回路にはウイルスフィルタを使用する必要があり,人工呼吸回路は定期交換しなくてもよい。

私のコメント:PEEPを15cmH20までは必要としないケースも多いようです。回路交換については,SARS-CoV-2が回路内で繁殖するわけではないので,アシネトバクター管理のような場合とは異なり,定期的交換は不要かもしれません。

 

4.筋弛緩薬(NMB):適応を定めた使用とする

 筋弛緩薬(neuromuscular blocking agents:NMB)は,悪化する低酸素症または高炭酸ガス血症,また,鎮静だけでは呼吸ドライブを管理できず,人工呼吸器と同期できない場合(dys-synchrony)やおよび肺虚脱(lung decruitment)で考慮する。

私のコメント:2007年7月31日にロクロニウムが日本でも認可/承認され,ロクロニウムを臨床で使用できるようになってから,より一層に筋弛緩薬を集中治療室の人工呼吸管理に使用しやすくなっていると思います。パンクロニウムやベクロニウムの時代とは異なる血漿除去半減期を考慮した使用となります。一方,適応・用法として,「集中治療における人工呼吸中の筋弛緩」はありませんので,こうした使用に厳しくなる傾向があります。薬剤の厳格管理として,院内承認を得てから使用されてください。

 

5.腹臥位療法:腹臥位療法は有効であるが注意が必要

 現在までの報告では,腹臥位療法がCOVID-19の低酸素血症の改善に有効であることが示唆されている。しかし,管理スタッフに適したPPEの着用とし,事故抜管などの有害事象のリスクを最小限に抑える病院ガイドラインに基づいて行われるべきである。

私のコメント:重力性にすりガラス陰影がでてくる場合,これは線維芽細胞増殖に,TGF-βなどの増殖性サイトカインの影響が出ている場合と考えられます。また,このような拡張性の損なわれた箇所に沈下性無気肺も生じてくるのだろうともいます。換気・血流比の改善など,免疫が育ってくるまでの人工呼吸中の時間稼ぎにもなるのかもしれません。一方,事故抜管などによる不幸な事例を避けるとともに,事前に院内で承認を取るとともに,患者さん,患者さん御家族に,十分な説明と同意のもとで施行して下さい。2015年までは,このような厳しい規約はなかったようにもいます。しかし,現在は,集中治療や救急医療における「院内包括的同意」として倫理審査を通しておくことも,急性期医療のルーティン管理として考慮されるとよいでしょう。また,医療スタッフの皆さんがSARS-CoV-2の自己暴露に十分に気をつけてください。

 

6.輸液管理:ドライサイド;厳格水分管理

 肺外水分量を減少させるため,輸液制限とし,経腸栄養量も高用量としないことを推奨する。

私のコメント:輸液バランスを毎日チェックし,尿量0.5 mL/kg/時レベルは必要としますが,過剰輸液に注意できると良いです。確かに,炎症に留意する一方で,輸液管理はドライサイドを皆さんが心がけていることでしょう。

 

7.人工呼吸管理からの離脱:標準的な抜管プロトコルに従う

 HFNOやNPPVは,抜管後のブリッジ療法となるかもしれないが,管理スタッフは厳密なPPEのもとで対応する。

私のコメント:余り抜管を急がないほうが良いと考えています。SAES-CoV-2に対する自己免疫ができるのは,症状発症後約14日〜21日です。抜管した後に肺線維症がでてくる患者さんにも注意します。気管挿管中は,人工呼吸関連肺炎(VAP)に注意が必要ですので,とにかく消化管免疫を維持すること,経腸栄養が必須と考えています。

 

8.気管切開:エアロゾル化対策必須

 気管切開術後のエアロゾル対策に注意し,また患者や御家族の意思決定で考慮する。常に最適なPPEを使用する必要がある。

私のコメント:気管挿管下での人工呼吸管理2週間で,一般に気管切開術を考慮しています。このタイミングを1週間,後ろにずらしても良いかもしれません。

 

9.気管内吸引:閉鎖式回路の推奨

 閉鎖式インライン吸引カテーテルが推奨される。肺虚脱(lung decruitment)とエアロゾル化(aerosolization)を避けるために,人工呼吸器から気管チューブを外さないようにする。

私のコメント:閉鎖回路を使うことは,SARS-CoV-2の管理では必須と思います。これは,このガイドラインに記載されているとおりだと思います。一方,気管内吸引において,必ず酸素濃度を上げるように指示している施設があるともいます。閉鎖式吸引カテーテルを用いる場合には,開放する場合とは異なり,回路内の酸素濃度は一定です。このため,不必要に酸素濃度を上げてはいけません。この時に注意して監視するのは,パルスオキシメータのSpO2の低下程度と心拍数です。SpO2が低下する場合は,末梢気道が収縮するためです。このANZICSガイドラインが提唱するように, PEEPレベルを15cmH2Oレベルに高めた方が良いのかもしれません。このあたりは,集中治療専門などがいらっしゃれば適切にPEEP値を設定してくれることでしょう。また,閉鎖式インライン吸引カテーテルを用いることで,循環変動は起きにくいとされていますが,頻脈傾向が出る時には,頭部後屈・顎先挙上として気管内吸引をしてください。気管チューブの咽頭や声門部への刺激を軽減して下さい。

 

10. ネブライザー:ネブライザーは推奨しない。

 吸入療法では,定量型吸入器の使用が推奨される。

私のコメント:気管挿管チューブの根本でコネクションできる良い定量型吸入器の開発が期待されます。吸入ステロイドなどの気管チューブ内投与なども,統一規格にできると良いと考えています。

 

11. 気管支鏡検査:気管支鏡検査は推奨しない。

 ウイルス性肺炎の診断には必要ではなく,エアロゾル化のリスクを最小限に抑えるためには,気管支鏡検査を避ける必要がある。COVID-19の診断のためには,気管吸引サンプルで十分であり,気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)の必要はない。

私のコメント:現在,集中治療における気管支鏡の適応は少なくなってきています。無気肺などができるメカニズムを考慮し,その適正化が優先されるようになってきたからです。そうは言っても,昔からの名残で,気管支鏡による吸痰などをしてしまいがちですが,① 肺胞虚脱,②SARS-CoV-2への暴露のリスクに注意します。

 

12. 抗菌薬:2次感染に注意

 敗血症または敗血症性ショックである場合は,1時間以内に適切な経験的抗生物質を投与する必要がある。COVID-19感染症の一部は,二次的な細菌性下気道感染症を合併している。

私のコメント:細菌感染症の併発に,もちろん注意して対応されて下さい。CRPの再上昇がおきないように管理することがポイントです。私のCOVID-19管理バンドルにも記しています。

 

13. 救命治療:一酸化窒素(NO)吸入療法およびプロスタサイクリン

 急性呼吸不全における吸入一酸化窒素,プロスタサイクリン,または他の選択的肺血管拡張薬にはエビデンスがない。しかし,新興感染症では,腹臥位療法やECMOでも難治性低酸素血症となる場合には,NO吸入療法やプロスタサイクリン併用を一時的な対策としても良いかもしれない。一方,初期のVV-ECMOは,推奨されない。現在までの報告では,COVID-19が上述の人工呼吸器戦略で対応できるようである。VV-ECMOを使用するためには,重症呼吸不全として選択基準を確立し,十分な専門知識と経験を持つ専門センターでEVCMOを導入する必要がある。 ECMOの専門家と早期に話し合うとよい。

私のコメント:ここにプロスタサイクリンが登場するのは,疑問があります。肺における換気血流比を改善させるためのNO吸入療法は,ECMOに移行できない状況では,考慮されても良いかもしれません。一方,日本では,日本救急医学会と日本集中治療医学会と日本呼吸療法医学会が主体となり,日本COVID-19 対策ECMOnetが立ち上っています。現在,日本では300例のECMO対応ができると見積もっています。その上で,ECMOnetが,ECMO管理を指揮していることは,素晴らしい業績です。日本集中治療医学会では,このECMOnetやCOVID−19の集中治療管理の情報をWEB掲載させて頂いています。その上で,現在,COVID-19で心配されていることは,人工呼吸器の数,ECMO対応ベッド数,また集中治療管理のマンパワーです。通常の集中治療管理とCOVID-19の集中治療管理の分離形式,場としての管理区分も重要課題となっています。このような内容は,今後も大きな課題となってまいります。院内発症ではない重症感染症や傷病者管理では,「救命救急センターの充実化」が,本邦における極めて重要な管理体型です。国公立大学病院が,救命救急センターを運営し,平時より人工呼吸管理,代用腎臓管理,ECMO管理などを適切に行うことが期待されます。この指導者として,私などもしっかりと後継者を育成することが大切であると感じています。

 

おわりに

 ANZICSガイドライン「新型コロナウイルス感染症COVID−19ガイドライン」は,ANZICSにより2020年3月16日にホームページに公表されています。他の項目などを含めて,ご参照下さい。

初版:2020年3月16日


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