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集中治療 ショック管理の原則 PART 1

2010年08月14日 03時42分11秒 | 講義録・講演記録

集中治療 

ショック管理のポイント2010

名古屋大学大学院医学系研究科
救急・集中治療医学分野
教授 松田直之


【はじめに】

 ショックは急性循環不全と同義であり,血圧低下,組織低灌流,組織酸素代謝失調により,組織や臓器の恒常性が損なわれる病態である1, 2)。出血性ショック,敗血症性ショック,アナフィラキシーショック,心原性ショック,神経原性ショック,外傷性ショック,熱傷性ショックなどのさまざまな呼称が1970年までになされ3, 4),1972年にはHinshowとCoxによりショックを導く直接の心血管病態をもとに,急性循環不全の分類としてショックは再編成された5)。さまざまなショックの管理において微小循環を維持するためには,微小循環の臨界閉鎖圧を超えて血圧を維持する必要がある。従来,心原性ショックでは,正常者であれば収縮期圧90mmHg以下,高血圧症患者であれば通常の収縮期圧の60mmHg以上の低下,また,収縮期血圧が110mmHg以下の低血圧症患者であれば20mmHg以上の血圧低下により,微小循環障害を疑い,ショックの評価と治療にあたるとされてきた。
 近年,基礎研究の目覚しい進歩により,ショックの病態形成に関与するサイトカインシグナルや転写因子の役割が解明されてきた6, 7)。ショック治療においても,患者一人ひとりの生体恒常性を読み取り,診断と治療にあたることが大切であり,病態生理学的知識に根ざした治療姿勢は不可欠である。また,近年は,敗血症性ショックを含め,多くの臨床研究がガイドラインとしてまとめられている。
 蓄積された臨床研究から,自らの管理技法を再考し,治療成績のよいエビデンスを取り入れる工夫も急性期管理に必要とされている。本稿では,ショックの診断と治療として,特にショック初期の循環管理に焦点を当て,その治療戦略を,近年の臨床研究の動向に基づいて論じる。

【ショックの分類】

 2000年までの段階で,敗血症性ショック8, 9),心原性ショック10-12),アナフィラキシーショック13, 14),出血性ショック15, 16)に対する病態と治療の戦略がほぼ確立し,近年はそれらが治療ガイドラインとしてまとめられてきた。また,2000年以降は,私などの研究結果も含め,敗血症性ショックに対する病態解明が進んだ8, 9)。ショック病態では,異なる誘因であっても,組織低灌流と組織虚血により好中球やマクロファージなどの炎症性細胞が活性化し,多量に炎症性サイトカインが産生される。このため,ショックでは炎症性サイトカイン血症を主病態とする全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome: SIRS)を認めやすい。現在,ショックは,HinshowとCox の提唱を用いて,心血管系の病態を基盤とした急性循環不全の分類5, 17)として理解されている(表)。
 HinshowとCox の提唱した急性循環不全の分類は,病態生理学的観点より心血管病態を個別に分類したものである5,17)。緊張性気胸,肺血栓塞栓症,心タンポナーデで惹起される心外閉塞・拘束性ショックは,その誘因を除去することで重篤なショック状態を速やかに回避できるため,突然にショックが出現した際には,まず,除外しなければならない病態群である。出血性ショックに代表される循環血液量減少性ショック,そして,敗血症性ショックやアナフィラキシーショックなどで惹起される血流分布異常性ショックでは,組織酸素運搬を維持するためにショック初期における輸液が不可欠である。一方,心原性ショックはまさに心機能に依存する急性循環不全であり,エコー図や肺動脈カテーテルを用いた心機能評価と,Forrester分類に基づく治療指針や抗不整脈治療が必要となる。
 しかし,このようなさまざまな誘因によるショックにおいて,治療に難渋し,ショックが遷延した際には,SIRS重篤化に類似した血流分布異常性ショックを併発し,死亡率が高まることが知られている18)。組織の低灌流や虚血が炎症性サイトカインの転写活性を高めることは,膨大なな研究より明らかとされている。ショックの治療が遷延すればSIRSが合併し,血管内皮細胞傷害,播種性血管内凝固症候群や多臓器不全が進展し,組織低灌流の病態が複雑となることを,治療の念頭に置かねばならない。このように,すべてのショック病態において,ショック初期の治療を把握することが重要である。

【Early Goal-Directed Therapy】

 SIRSを惹起するさまざまな疾患がまとめられ, sepsis(敗血症)が感染症に起因するSIRSとAmerican College of Chest PhysiciansとSociety of Critical Care Medicineの合同カンファレンスより公表されたのは1992年である19)。外傷,熱傷,膵炎などの病態や,食道摘出手術や膵頭十二指腸切除術などの高侵襲手術は,敗血症と同様に,炎症性サイトカインの産生が高まる病態であり,血流分布異常性ショックを合併しやすい。敗血症の治療指針が2004年に発表されたSurviving Sepsis Campaign guidelines8)により明示されたことは,SIRS疾患群の急性期管理を標準化し,新たな臨床研究やエビデンスを構築させる上での重要な意義を持つ。
 敗血症を代表とするSIRS病態では,産生されたNOやプロスタノイドなどの血管拡張に伴う血流分布異常性ショックが初期の主病態であるものの,心収縮性は時系列とともに低下し,心原性ショックが具現化する20-22)。Surviving Sepsis Campaign guidelinesでは,この敗血症性ショック出現の初期における輸液療法をearly goal directed therapy(EGDT)として重視し,十分に心前負荷を維持することを推奨している8, 23, 24)(図1)。従来,過剰輸液により,1)心負荷増大,2)肺内水分貯溜の増加と肺酸素化能低下,3)腸管浮腫と腹腔内圧増加,4)創処治癒の遅延などの,望ましくない病態が惹起されると考えられており,輸液バランスとタイミングのさじ加減こそが,周術期管理のセンスとも考えられる。盲目的な過度の輸液負荷は,身体ストレスとして働くことは,十分に注意しなければならない点に変わりはない。
 このEGDT としてRivers達が提唱した輸液プロトコールは,ショック出現後6時間までを目標に輸液を行い,初期到達目標としてCVP 8-12mmHg,平均血圧≧65 mmHg,中心静脈酸素飽和度≧70%を達成し,ショック初期から末梢循環不全を軽減しようとするものである。輸液は晶質液であれば1-2 L/h,膠質液であれば0.6-1 L/hの輸液速度を目標として,6時間の初期輸液治療を重視している8, 23, 24)。
 これまで急性期循環管理にEGDTを導入したのは,1988年のShoemaker WCらの報告にさかのぼる25)。Shoemaker WCらは,外科術後重症患者の前向き検討より,肺動脈カテーテルを用いて術後患者の心係数(CI),酸素供給量(D(・)O2),酸素消費量(V(・)O2)を高めることで,人工呼吸管理日数,集中治療日数,在院日数を短縮させる可能性を提示した。これを受けて,1993年にBoyd Oらは107名の外科術後重症患者の前向き検討より,術中よりドパミン受容体作動薬であるドペキサミンを持続投与してD(・)O2 600 mL/ min/m2を達成させることで,院内死亡率が対照群22.2%から,5.7%に低下すると報告した26)。しかし,CIやD(・)O2を過剰に高めることが,敗血症性ショックを含めた集中治療患者の生命予後を改善するとは限らないことが,後の臨床研究により明らかとされている。1994年にHayes MAらは,肺動脈カテーテルを用いてCI 4.5 L/min/m2,D(・)O2 600 mL/ min/m2,V(・)O2 170 mL/ min/m2を達成させる前向き臨床試験を施行し,対照群50例,ドブタミン負荷群50例の前向き検討の結果,この目標値をドブタミン負荷で達成させても,院内死亡率は減少せず,むしろ,院内死亡率が34%から54%に高まると報告した27)。この結果は,集中治療患者762名を対象に解析された1995年のGattinoni Lらの報告においても追認され28),ドブタミン負荷によりCI 4.5 L/min/m2以上,D(・)O2 600 mL/ min/m2以上に保つことは,むしろ有害であると考えられるようになった。さらに,1997年にHayes MAらは,敗血症と敗血症性ショックの患者79名の後ろ向き解析より,ドブタミンを使ってCI 4.5 L/min/m2,D(・)O2 600 mL/ min/m2の目標を達成しても,死亡例では組織酸素代謝失調のため,V(・)O2が高まらないことを指摘した29)。これらの先駆的EGDTの検討においても,V(・)O2を改善するには至適な循環血流量の維持が必要であることが示唆されていた。すなわち,ドブタミンによるアドレナリンβ受容体刺激を介した心陽性変力作用を重視する前に,必要な輸液により救命率が高まる可能性が示されている。
 2001年にRivers Eらが報告したEGDTは,救急初療の段階で敗血症性ショックと評価された対照群133症例,EGDT群130症例を前向き検討したものであり,カテコラミン投与に優先して十分な輸液を行うことで,末梢の虚血に伴う代謝性アシドーシスと乳酸産生を救急初療の段階で有意に軽減し,院内死亡率を46.5%から30.5%に減じている23)。この輸液を中心としてプログラムされたRivers EらのEGDTでは,ショック初期6時間における中心静脈酸素飽和度≧70%が患者の94.9%で達成されており,EGDTを施行しない対照群では60.2%の達成率に過ぎない。この報告は,3つの重要な提案として,1)ショックが進行性病態であり時間経過に伴い不可逆的循環不全へ移行する可能性があること,2)輸液の治療目標を具体的に定めるべきであること,3)初期の必要な輸液により院内死亡率を低下させる可能性を示したと考えられる。
 彼らの輸液療法を主体としたEGDTプロトコールは,中心静脈圧8 mmHg以上を目標として輸液を行い,平均血圧65mmHg以上を達成させ,混合静脈血酸素飽和度(Sv(-)O2)のかわりに中心静脈酸素飽和度>70%を目標とするものである。プロトコールでは,救急外来での敗血症性ショックの初期診療を円滑に行うために,肺動脈カテーテルによる詳細な評価ではなく,Sv(-)O2の改善に着眼し,これを中心静脈酸素飽和度で代用している。Varpula Mらの111症例の後ろ向き解析でも,敗血症性ショック初期6時間における平均血圧65mmHg以下の時間が長いほど,院内死亡率が高まることが示されており,Sv(-)O2>70%で循環管理することで院内死亡率を低下させる可能性が追認できる30)。この結果はさらに,Polonen Pら31)やZieglerら32)の報告した心血管手術管理におけるSv(-)O2と生命予後の結果にも合致する。従来,さまざまなショック病態で,盲目的に輸液量を設定してきた「一か八かの輸液輸液療法」,すなわち,「dry side v.s. wet side論争」を,より厳密に,エビデンスとして標準化させて行こうとする姿勢が,今後のショック管理に必要とされる。しかし,敗血症性ショックでは,必ずしもSv(-)O2やScvO2は高く保たれる傾向があり,必ずしも有用とは言い難い。EGDTにおける大きな誤りは,敗血症性ショックにドブタミンやドパミンを推奨している点にある。また,パルス波の解析ができるようなモニタリング力や教育体制があれば十分であり,ヘモグロビン値には注意するものの,実施には中心静脈圧などの厳格管理はむしろ輸液量を過剰にしてしまう危険もある。敗血症病態では,アドレナリンβ1シグナルが障害されるため,ドブタミンはアドレナリンβ2シグナルを介した頻脈を惹起するものの,陽性変力作用は期待できない。敗血症性ショックでは,血管拡張に伴う血流分布異常性ショックなのか,血管内皮細胞傷害による組織血流低下状態なのかを区分したカテコラミンの使用が不可欠であり,結論から言えば,ノルアドレナリン以外のカテコラミンをできるだけ使わない工夫こそが生命予後を改善させる。

【肺動脈カテーテルと中心静脈カテーテル】

 さまざまなショック形態において,肺動脈カテーテルは,肺動脈楔入圧,CI,Sv(-)O2などを連続して評価できるため,心血管系病態を把握するのに有用である。従来,心機能をエコー図のみで評価しずらい場合や,心臓手術などの心機能が刻一刻と変化する病態では肺動脈カテーテルを挿入し,そのデータを個人の特性として解析し,循環管理に役立ててきた。ここには,患者個々のショック病態形成に,個性が存在することが前提となっている。しかし,その臨床上の有用性にもかかわらず,これまでに行われた大半の臨床大規模研究では,肺動脈カテーテルの有無は,在院日数や患者死亡率の改善に影響していない33, 34)。
 敗血症性ショックや急性肺障害を対象に1999年1月から2001年6月までに施行されたRichard らの報告では,肺動脈カテーテルで管理した患者335名の14日死亡率は49.9%,28日死亡率は59.4%,90日死亡率は70.8%と,非挿入患者群341名と差がなく,人工呼吸管理期間にも有意な短縮を認めなかった35)。英国65施設における1041例の集中治療患者の前向き検討でも,肺動脈カテーテル挿入患者の院内死亡率は68%と,非挿入患者群の66%と差がなく,むしろ,挿入例の約9.5%にカテーテル挿入時の合併症を認めている36)。また,ヨーロッパ198施設の集中治療室に2002年5月1日から5月15日までに入室した3147症例の追跡調査では,15.3%にあたる481名が肺動脈カテーテルを挿入され,肺動脈カテーテル挿入例の集中治療室死亡率は28.1%と非挿入群の16.8%より有意に高く,院内死亡率も32.5%と非挿入群の22.5%より有意に高かった37)。心血管イベントに伴う患者に限定した解析でも,肺動脈カテーテルの挿入患者と非挿入患者の60日死亡率に差が認められない37)。肺動脈カテーテルを用いることでショックの病態評価ができ,厳密な循環管理が行いやすくなるものの,心原性ショックの短期的な治療においてのみ有効性が認められるに過ぎない。
 前述したRivers Eらの輸液療法を中核としたEGDTでは,中心静脈酸素飽和度≧70%をショック改善の目標値として定めている23)。循環血流量減少性ショックや血流分布異常性ショックでは,このような管理到達目標を定めることが必要なのかもしれない。Reinhalt Kらは,中心静脈酸素飽和度70%はSv(-)O2 65%に相当し,絶対値は中心静脈酸素飽和度がSv(-)O2より高いとし38),さらに,Ladakis Cらにより中心静脈酸素飽和度はSv(-)O2と正の相関で変動することが確認されている39)。これらを背景として,現在,敗血症性ショックを含めたさまざまなショック病態において,中心静脈酸素飽和度であれば70%以上,Sv(-)O2であれば65%以上を目標として,循環管理を行うことが望ましいと考えられている。
 エコ-図による心血管評価がベッドサイドでルーチンに行われている現在,カテコラミンや輸液負荷の基本指針が立てられない場合は稀であり,肺動脈カテーテルの代わりに中心静脈酸素飽和度を用いる指針でも,確かに十分にショックの治療を行うことができる。患者病態が複雑化していないショック初期の治療においては,エコーによる評価を優先すべきであり,肺動脈カテーテルを用いる場合には,その利用方法を最大限に高めるべく,十分な知識が必要である。

【ショックにおける赤血球輸血の適応】
 ショック病態では出血に限らず,十分な輸液により希釈性に貧血が進行する。赤血球は酸素運搬能の改善,新鮮凍結血漿は凝固因子やフィブリノーゲンの補充,血小板は血小板数減少を目標として投与されるものの,赤血球輸血による循環血液量の維持力は強いものであり,循環維持のために赤血球輸血をせざるをえない場合も多い。しかし,現在,赤血球輸血の適応は,虚血性心疾患,急性持続性出血や乳酸アシドーシスを除き,ヘモグロビン値7 g/dL未満と考えられている。
 Weiskopf らは,健常成人を対象として施行した脱血と膠質液輸液による出血性ショックの研究より,ヘモグロビン値5 g/dLでもD(・)O2とV(・)O2および血漿乳酸値に瀉血前と差が生じないことを示した40-42)。しかし,彼らは,ヘモグロビン値5-7 g/dLレベルでは頻脈と心電図のST変化を認め,さらに,意識低下や記憶障害が出現しやすいと報告している。この研究の一方で,Hebert らは,1994年から1997年に838名の重症患者を対象に施行した多施設合同前向き試験で,ヘモグロビン値を7-9 g/dLに維持した群と10-12 g/dLに維持した2群を比較し,院内死亡率はヘモグロビン値を7-9 g/dLに維持した群が22.2%と,ヘモグロビン値10-12 g/dLに維持した群の28.1%より有意に低いことを報告した43)。この報告ではさらに,Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II score(APACH II score)が20以下の患者群において,ヘモグロビン値を7-9 g/dLに維持した群の30日死亡率(8.7%)と,10-12 g/dLに維持した群の30日死亡率(16.1%)を比較すると,ヘモグロビン値を10-12 g/dLに維持した輸血群の30日死亡率が有意に高いことを示している。さらに,55歳未満の患者群においても,ヘモグロビン値を7-9 g/dLに維持した群が5.7%,10-12 g/dLに維持した群が13.0%と,ヘモグロビン値を10-12 g/dLに維持した群で30日死亡率が有意に増加していた。1999年に西ヨーロッパの146施設の集中治療室で施行されたABC study(anemia and blood transfusion in critical care)では,3534症例の輸血に関する前向き検討が行われた。集中治療室での輸血率は約37%であり,28日死亡率は輸血群で18.5%,非輸血群で10.1%と有意に輸血群で死亡率が高かったと報告され,患者重症度によるpropensity解析も同様の結果だった44)。2000年8月から2001年4月まで米国の多施設284の集中治療室で施行されたCRIT studyでは,患者の44%が集中治療室で輸血を受け,その輸血直前のヘモグロビン値は8.6±1.7 g/dLであり,このレベルにおける3単位以上の輸血は30日死亡率を増加させると結論している45)。これらの結果より,赤血球輸血の適応は現在,ヘモグロビン値7 g/dL未満が望ましく,輸血量に依存して死亡率が高まると考えられるようになった。
 一方,Hebert らは,4470名の重症患者を対象とした追跡調査で,ヘモグロビン値9.5 g/dL以下で心血管病変を持つ患者の院内死亡率は55%と,心血管病変を持たない患者の42%より,有意に院内死亡率が高まる可能性を指摘した46)。また,Carson らは,冠動脈病変などの心血管病変を持つ外科術後患者1958名を対象として,ヘモグロビン値6 g/dL以下と12 g/dL以上の2群を比較した結果,ヘモグロビン値6 g/dL以下の患者群の院内死亡率は33.3%,ヘモグロビン値12 g/dL以上の患者群の院内死亡率は1.3%と,術後ヘモグロビン値が6 g/dL以下と低い方が心血管系イベントが増加し,院内死亡率が高まる可能性を指摘した47)。さらに,Carson らは2083名を対象とした後向き解析で,心血管病変を持つ患者は,術後ヘモグロビン値8 g/dL以下で,死亡率が2.5倍に高まると報告した48)。これらの臨床研究などにより,心血管系病変を持つ患者では,ヘモグロビン値は8 g/dLを超えて高く保つほうがよいと考えられてきた。しかし, Hebert らの後の2001年に報告されたTRICCトライアルでは,心血管系病変をもつ集中治療患者357名を無作為に2群に分けた解析が施行され,ヘモグロビン値7 g/dL以下で輸血を開始し,ヘモグロビン値を7-9 g/dLに維持した群と,ヘモグロビン値10 g/dL以下で輸血を開始し,ヘモグロビン値を10-12 g/dLに維持した群では,30日死亡率,60日死亡率,院内死亡率に差がなく,むしろ,ヘモグロビン値を10-12 g/dLに維持した群で多臓器不全発症が増加すると結論している49)。以上の結果より,心血管系イベントを持つ患者の赤血球輸血は現在,ヘモグロビン値を8-10 g/dLを目安とするのが望ましいと考えられる。
 このような赤血球輸血による院内死亡率の増加には,輸血による免疫低下と混入した白血球の影響が強く関与する。2006年までの臨床研究では,基本パッケージあたり赤血球濃厚液2単位で約10(9乗),新鮮凍結血漿5単位で約10(6-7乗),血小板濃厚液10単位で約10(6乗)未満の白血球が混入していたことに注意が必要である。白血球除去フィルターを用いることにより,非溶血性発熱反応(non-hemolytic febrile transfusion reactions: NHFTRs),サイトメガロウイルス感染症,抗HLA抗体産生に伴う血小板不応症の発生を低下させることが,これまでの臨床研究により明らかとされている50)。また,近年の多くの臨床研究で,白血球除去フィルターの使用により,院内死亡率の低下が示されている51-56)。以上のことからも,採血時に白血球を除去することが望ましいため,2007年からは白血球除去製剤として,赤血球濃厚液が供給されている。このため,日本の輸血製剤における輸血後の生命予後は,特に白血球除去製剤として日本独自に評価する必要がある。白血給除去製剤の供給に伴い,これまでの輸血適応の基準が変更される可能性がある。
 一方,新鮮凍結血漿や血小板濃厚液の投与は,厚生労働省の基準に準じて施行される。血小板濃厚液の投与目安は血小板数5万/mm3未満,新鮮凍結血漿の投与目安は,プロトロンビン時間(PT)がINR 2.0以上あるいは活性値30%未満,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が各施設の正常値の2倍以上の延長あるいは活性値25%未満,フィブリノーゲンが100 mg/dL未満が推奨されている57)。しかし,外傷や手術などの出血性ショックにおいては,低体温を阻止し凝固能を保つとともに,赤血球輸血が6単位を超えて行われるようなケースでは,新鮮凍結血漿を濃厚赤血球液と同等の比率で早期から十分に投与することにより,生命予後が改善することも示唆されている58)。凝固因子と血小板の補充に対しても,早期より十分な対応が必要である。

続く

集中治療 ショック管理の原則 PART 2


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集中治療 ショック管理の原則 PART 2

2010年08月14日 03時40分42秒 | 講義録・講演記録

集中治療 

ショック管理のポイント2010

名古屋大学大学院医学系研究科
救急・集中治療医学分野
教授 松田直之

続き

【ショックにおけるステロイドの適応】

 これまで,ショックにおけるメチルプレドニゾロン大量療法(1日量30 mg/kgレベル)に対するいくつもの多施設前向き研究が報告され,特に敗血症性ショックでは大量ステロイド療法が否定されている59, 60)。基礎研究においても,メチルプレドニゾロン大量療法により,1日以内にその受容体であるグルココルチコイド受容体αの減少が,さまざまな主要臓器細胞や免疫担当細胞で確認できる。しかし,ICU管理が遷延した場合や薬物の影響により副腎機能低下が進行し,ショック形成に関与する場合があることには,留意が必要である61, 62)。
 外傷や全身性炎症の急性期管理に用いられる薬物の中には,副腎機能を低下させる可能性のある薬物がある。ベンゾジアゼピン系鎮静薬63)やオピオイド64)はACTHの放出を抑制し,副腎皮質からのコルチゾル分泌を抑制する可能性がある。術後鎮静に用いられているアドレナリンα2作動薬デクスメデトミジン65)は,副腎皮質束状帯におけるコルチゾル産生を抑制する作用を持ち,通常,周術期には1日までの期限で用いられるのが原則である。また,抗真菌薬であるケトコナゾール66)やフルコナゾール67),さらには,シクロスポリン68),フェニトイン69)などはコーチゾル代謝酵素6βヒドロキシラーゼを活性化させる作用があり,コーチゾル分解を促進させる。また,コーチゾル担体であるコルチコステロイド結合グロブリンは好中球エラスターゼの基質であり,好中球エラスターゼによりコルチコステロイド結合グロブリンが切断されるため,フリー体のコーチゾルの遊離が高まる70)。このため,局所炎症では好中球の浸潤によりコーチゾルレベルが高まり,細胞保護が合理的に行われているが,侵襲的手術や敗血症のように好中球エラスターゼレベルが血中で上昇する病態では,炎症部位へのコーチゾル運搬が障害される。敗血症性ショックや多発外傷ではアルブミンのみならずコルチコステロイド結合グロブリンが低下し71),コーチゾルの血漿消失半減期が短縮することも知られている72)。
 このようなざまざまな理由から,敗血症患者の約67-80%にACTH分泌の低下した2次性副腎機能低下症が合併し,さらに,約60%に副腎機能不全が存在すると考えられている73)。ACTH負荷試験によりコルチゾルの上昇が9 μg/dL以下であるショック患者では,ノルエピネフリンに対する昇圧効果が低下している可能性も示唆されている74)。2004年のSurviving Sepsis Campaign guidelines8)においてすら,1日量300 mgを超えるヒドロコルチゾンの投与は行うべきでないと提言され,輸液やカテコラミンで昇圧できない敗血症性ショックに対してはヒドロコルチゾン200-300 mg/日を3-4分割あるいは持続投与で7日間の投与が推奨されている。現在日本で使用されているヒドロコルチゾン(ハイドロコートンⓇ,サクシゾンⓇ,ソル・コ-テフⓇなど)の200 mgに相当する力価のステロイド量は,プレドニゾロン(プレドニンⓇなど)で50 mg,メチルプレドニゾロン(ソル・メドロールⓇなど)で40 mgであり,両者の血漿除去半減期は12-36時間とヒドロコルチゾンの8-12時間より長いことに留意して用いる必要がある。血流分布異常性ショックの誘因として,副腎機能不全を念頭に置く必要がある。

【お わ り に】

 本稿は,ショック初期における循環管理の動向を,輸液管理を中心として,これまでの臨床研究を整理したものである。個別のガイドラインとしてまとめられてきた出血性ショック15, 16),心原性ショック10-12),アナフィラキシーショック13, 14),敗血症性ショック8, 9)は,個々の治療指針としての特徴を把握することが大切であるが,その救命の基盤には共通する視点が存在する。ショック治療の初期過程より,その予後を決定する因子が動き始めることにも注意しなければならない。鎮静と鎮痛,輸液療法,カテコラミンの病態に合わせた適正使用,重炭酸イオンの使用制限,急性肺障害の管理,腎保護対策,血糖値管理,ステロイドの適正使用,感染防御と感染症コントロール,肺血栓塞栓症対策,血管内皮細胞保護の戦略,播種性血管内凝固症候群の早期発見と治療などは,共通の治療基盤である。しかし,ガイドラインはまさにある一定の治療の方向性を示すものに過ぎず,患者は複合病態を呈する場合があることにも,十分に配慮しなければならない。敗血症性ショックを合併した髄膜炎,頭部外傷を伴う出血性ショック,これらの輸液にはおそらく脳圧モニタを必要とし,本稿で述べた簡略化した治療はそぐわない。ショックに対するこれまでの多くのデータを自身に取り込ませる一方で,独自に日本において再考し,独自のデータを持ち,独自のエビデンスとして世界に公表し,より大きなエビデンスの構築させる可能性を救急・集中治療医は持つ。

【文 献】

1)Fink MP: Shock: an overview. In Rippe JM, Irwin RS, Alpert JS, et al, eds: Intensive care medicine, ed 2, Boston, Mass, 1991, Little, Brown
2)Cerra FB: Shock. In Burke JF, ed: Surgical physiology, Philadelphia, 1983, WB Saunders
3)Blalock A: Shock: Futher studies with particular reference to the effects of hemorrhage, Arch Surg 1937; 29:837
4)Weil MH: Bacterial shock. In Weil MH, Shubin H eds: Diagnosis and treatment of shock, Baltimore, 1967, Williams & Wilkins
5)Hinshow LB, Cox BG: The fundamental mechanisms of shock, New York, 1972, Plenum Press
6)Matsuda N and Hattori Y: Systemic inflammatory response syndrome (SIRS): Molecular pathophysiology and gene therapy. J Pharmacol Sci 2006; 101: 189-98
7)松田直之:全身性炎症反応症候群とToll-like受容体シグナル -Alert Cell Strategy-. 循環制御 2004; 25:276-84
8)Dellinger RP, Carlet JM, Masur H, et al. Surviving Sepsis Campaign guidelines for management of severe sepsis and septic shock. Crit Care Med 2004; 32:858-73
9)Poulton B: Advances in the management of sepsis: the randomised controlled trials behind the Surviving Sepsis Campaign recommendations. Int J Antimicrob Agents 2006;27:97-101.
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集中治療 ショック管理の原則 PART 1


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集中治療 人工呼吸器の使い方の基本 NO.1

2010年04月10日 03時59分25秒 | 講義録・講演記録

人工呼吸器の使い方の基本

名古屋大学大学院医学系研究科 

救急・集中治療医学分野
松田直之


 はじめに 

 外科術後,外傷,蘇生後,敗血症などの全身性炎症反応症候群では,炎症性サイトカインや,NO,プロスタグランジンなど炎症性物質の産生により,肺の血管透過性が亢進します。このような呼吸管理において人工呼吸器は1つの呼吸補助手段となりますが,不適切な使用をすると急性肺傷害が増悪することにも注意が必要です。しかし,実際にいろいろな先生の用い方をみていると,基本があまり理解できていないようです。人工呼吸管理では,人工呼吸の使用目的を明確にし,適切な使用とすることが必要です。本稿では,人工呼吸器を使用する目的を明確とし,人工呼吸用モニターをどのように活用するかをまとめます。

 人工呼吸器使用の目的 

人工呼吸の使用目的は,酸素化の改善,換気の改善,呼吸仕事量の軽減の3つに分けて考えることが大切です。

1)酸素化改善の目的:動脈血酸素分圧(PaO2)の改善
 PaO2の正常値:100 - age/4 mmHg (80 - 95 mmHg)
2)換気改善の目的:CO2排泄の補助,PaCO2の正常化(正常:35-45 mmHg)
一回換気量の改善・補助,あるいは呼吸リズムの改善・補助を目的とします。
3)呼吸仕事量の軽減目的
 適切な換気補助により,呼吸仕事量が減少し,患者さんは安楽となります。

 肺酸素化改善のために 

 人工呼吸を導入する最大の目的は,全身の酸素化を改善し,組織の虚血の進行を軽減することです。アシデミアではヘモグロビン・酸素飽和曲線が右方シフトし,ヘモグロビンの酸素結合率が低下します。このため,敗血症などの組織虚血によりアシドーシスに傾く状態では酸素投与により,肺でのヘモグロビン・酸素結合率を高める必要があります。しかし,敗血症の進行により,肺胞と肺毛細血管のガス交換が悪くなったり,気道確保が必要な場合には,人工呼吸により確実に肺酸素化を補助することができます。一般に,人工呼吸の導入前後では,鼻カヌラ,酸素マスクなどを用いた酸素投与が行われます。こうした条件で酸素化が達成できない場合や,患者さんの呼吸疲労が強い場合や,確実な気道確保が必要とされる場合に,人工呼吸管理に移行します。

1.人工呼吸器を用いない方法

① 酸素投与
経鼻カヌラ(酸素3 L/minまで)→ 酸素マスク(酸素10 L/minまで)→非侵襲的人工呼吸管理あるいは人工呼吸導入器の導入の順で,肺酸素化管理を行います。

【参考】
経鼻カヌラでの酸素投与と吸入酸素濃度
O2 1 L/min 投与 → FiO2  0.24
O2 2 L/min 投与 → FiO2  0.28
O2 3 L/min 投与 → FiO2  0.32
  空気  FiO2 0.21(1 % 酸素濃度)
しかし,これはあくまでも目安に過ぎず,以下の点に留意します。
■ 鼻カヌラであっても,患者さんの安静状態では1回換気量が減少しているため,予想以上の高濃度の酸素が吸入されていることがある。
■ 酸素マスクによる3 L/min以下の酸素投与では,マスク内に蓄積した呼気が再呼吸されやすく,CO2が貯留する可能性がある。
■ 酸素マスクによる5 L/min以上の酸素投与では,吸気が乾燥するため加湿する。

② 用手的間欠的陽圧呼吸(IPPV:intermittent positive pressure breathing)
ジャクソンリース回路やバックバルブマスクなどを用いて,自発呼吸にあわせて用手的に陽圧をかけて,肺胞・末梢気道レベルを拡張させることが可能です。患者の意識が保たれている場合には,用手的IPPVにより肺胞虚脱を一時的に緩和させ,喀痰排泄を施し,酸素化を改善させることを試みます。

2.酸素化改善に対する人工呼吸器の導入


 人工呼吸における酸素化改善の人工呼吸設定のポイントは,①終末呼気陽圧(PEEP:positive end expiratory pressure)と②FiO2の2つです。FiO2を上昇させる前に,十分なPEEPを施し,FiO2を最低値に保つ工夫が必要である。しかし,人工呼吸器を導入する際には,いかなるトラブルが生じるかが不明であるため,原則としてFiO2を高めに設定しています。

1)終末呼気陽圧(PEEP:positive end expiratory pressure)の重要性
 PEEPとは呼気終末に陽圧をかけることで肺胞や末梢気道を拡張させる方法です。肺酸素化の悪い場合は,酸素投与濃度を上昇させる前に,適切なPEEPをかけることが人工呼吸管理の原則です。正常肺においては,PEEP 15cmH2OまではPEEP圧に比例して肺胞器量が増加することが知られています。虚脱した肺胞は,PEEPにより再拡張し,酸素化が改善されます。PEEP圧の設定には,最小PEEP(3~5cmH2O),least PEEP(5~10 cmH2O),best PEEP(11~15 cmH2O),agressive PEEP(20~30 cmH2O)があります。最小PEEPは,通常の自発呼吸下で自然にかかるauto PEEPを再現したものであり,人工呼吸管理における最低限のPEEP圧と考えてよいでしょう。肺胞虚脱を伴う場合には,適切なPEEP圧として約10cmH2Oレベルが必要と考えられています。agressive PEEPは,心拍出量の低下や気胸の発症の危険があり,一般的とは言えません。
 
2)酸素濃度(FIO2
 重度の急性肺障害でPaO2を維持するためには,FIO2を上昇させなければならない場合がありますが,特に炎症治癒過程における高濃度酸素の有害性を考慮し,FIO2はできるだけ低く設定するように心がけ,FIO2 0.4以下を常に目標として管理するのが望ましいです。FIO2 0.35以下でPaO2が90 mmHg以上(PaO2/FiO2>250)を維持できる状態であれば,酸素化のみを目的とした人工呼吸器管理からは,十分に離脱が可能です。肺酸素化は,血液ガス分析とパルスオキシメータを用いて評価しています。私は,後述するフロー曲線を評価し,肺胞が虚脱しやすい状態ではPEEPを残し,FIO2から低下させていくことをお勧めしています。FIO2は,SpO2管理94%レベルを標準として0.25(25%酸素)レベルまで,気管挿管下の集中治療管理では低下させて,管理しています。PEEPは呼吸終末気管支レベルと肺胞嚢領域を拡張させるための方策として,末梢気道に浮腫が残存していたりなどのFIO2とは別な解釈としてPEEPを大切に温存する管理方法があります。

  換気の改善・CO2の排泄について 

 人工呼吸管理のもう一つの目的として,CO2排泄,適切な換気補助が挙げられます。努力性呼吸状態では,圧補助換気などの換気補助を施すこと,呼吸仕事量を軽減でき,患者さんの交感神経活性が軽減できます。また,浅い不確実な呼吸で分時換気量が減少した状態が持続すると,CO2排泄が損なわれます。このような動脈血CO2分圧上昇の状態では,呼吸性アシドーシスが進行することに加え,PaCO2の上昇により血管は拡張し,脳圧が脳血管も拡張するために亢進し,不隠の一因となります。まず,非侵襲的人工呼吸管理の適応を検討しますが,分泌物が多い状態では,人工呼吸管理に移行する場合も多いです。現在,急性肺障害の人工呼吸器設定では,1回換気量 6 mL/kgレベル,最大気道内圧<30 cmH2Oが推奨されていますが,これらのレベルでも,器質的障害を持たない肺では十分に換気の是正が期待できます。

1. 換気の指標
換気によるCO2排泄は,分時換気量により規定されます。分時換気量を調節することにより,CO2排泄を血液ガス分析とカプノグラムで評価します。人工呼吸管理においては,1回換気量を増加させる際だけではなく,呼吸数を上昇させる際にも,最大気道内圧が上昇することに注意します。
分時換気量(MV:Minute Volume)(L/min)=1回換気量(TV: tidal volume)(L/回)×呼吸数(RR:respiratory rate)(/min)分時換気量

2.換気モードの設定
 人工呼吸管理では,可能な限り生理的な呼吸に近い換気を維持する工夫が大切です。このためには,自発呼吸をトリガーとしたsupportモード(補助換気)を基本とすることが推奨されます。また,間欠的に強制換気を併用する場合には,Volume Controlモード(決められた1回換気量を決められた回数,1分間に入れる呼吸様式)ではなく,圧設定によるPressure Controlモードを選択するのが望ましいです。Volume Controlモードでは,強制的に一定量を肺に送り込むため,喀痰貯留により突然に気道内圧が高まる可能性があります。Volume Controlモードを選択した場合,喀痰分泌,無気肺生成により,健常肺に肺損傷を起こす可能性があることに注意が必要です。近年は,このようなVolume Controlモードの危険性を回避するために圧制御従量式調節換気(PRVC:pressure regulated volume control ventilation)を搭載する人工呼吸器が臨床使用されています。

 1) 自発呼吸と強制換気の違いについて
自発呼吸と強制換気の大きな違いは,胸郭および横隔膜運動の生じる方向性にあります。自発呼吸では,胸郭と横隔膜の運動により2次的に気道と肺に気流が生じます。これに対して,強制換気では気道と肺に気流を送り込み,2次的に胸郭と横隔膜を拡張させています。仰臥位では,横隔膜に肝臓などの臓器圧迫が加わるために,強制換気では横隔膜運動が障害されやすく,肺下葉背側に無気肺が生じやすいのです。このような状態を緩和するためには,自発呼吸を温存し,Pressure Supportモードで横隔膜運動を補助するとよいです。十分な筋弛緩薬を使用することにより横隔膜の弛緩が得られますが,筋弛緩薬の長期使用により横隔膜機能が低下することが知られています。このため,低体温療法におけるシバリングを予防する場合や,頭部外傷後の咳反応を抑制したい場合を除いて,人工呼吸管理には筋弛緩薬を併用しないのが一般的です。敗血症性急性肺障害の管理では,筋弛緩薬を用いることはありません。

 2)Pressure Support ventilation(PSV)モードについて
 PSVは,患者の呼吸を感知し,気道内圧を上げることにより,一回換気量を維持させる人工呼吸モードです。自発呼吸を感知する方法として,圧トリガー,フロートリガーの2つがあります。このうち,フロートリガーは呼吸感知が速く,呼吸仕事量が少ない段階で補助呼吸を達成できるため,現在の自発呼吸感知の主流です。圧トリガーは,患者呼吸の初期に患者の吸気努力を必要とするため,呼吸仕事量が必ずしも軽減できないことに注意する必要があります。

■ PSレベル(cmH2O)の設定
 必要な1回換気量(6 mL/kg)が得られる気道内圧はどれぐらいかを目標として,PSレベルを設定します。しかし,このPSVモードを単独で使用した場合には,呼吸数が多い患者さんや,喀痰量の多い患者さんでは,PSの吸気流速が早いために吸入気が気管から肺胞に拡散していく時間がなく,十分な換気を施せない可能性があります。このようなときには鎮静を深くし,呼吸数を減じように工夫するとともに,後述するPCモードを併用します。

■ PSVモードでは1回換気量をモニタリング
 PSVモードでは,1回換気量の変化に注意する必要があります。PSVモードでは,喀痰貯留や無気肺が生じると,1回換気量が減少します。このような場合,呼吸音を聴取し,ジャクソンリース回路で十分に加圧して,喀痰吸引することが大切となります。

 3)同期的間欠的強制換気(SIMV:synchronized intermittent mandatory ventilation)について
 SIMVは,自発呼吸に同期させ,強制換気を間欠的に行う方法です。自発呼吸の感知の設定は,PSVモードを同様であり,フロートリガーを主流としています。SIMVでは,自発呼吸に同期させることで,強制換気であるものの,患者の人工呼吸器とのファイティングを減少させています。
 このSIMVの具体的な内容は,従圧式強制換気(PCV:pressure control ventilation),あるいは従量式強制換気(VCV: volume control ventilation)である。このうち,喀痰や無気肺の発生に伴う気道内圧上昇や肺損傷を防ぐためにはPCVで設定するのが一般的です。PCV では,PSモードと同様に,1回換気量をモニタリングすることで,喀痰吸引のタイミングを知り,無気肺発生の予防に努める必要があります。また, SIMVは,PSVとは異なり,自発呼吸がなくとも指定した呼吸数にあわせて強制換気をするため,人工呼吸のバックアップモードとしての役割も担います。このように,現在は,PSVにSIMVを併用することにより,両者の欠点を補っています。具体的には,PS圧レベル10 cmH2O,PEEP 4~10 cmH2Oに加えて,SIMVとしてPCV 圧レベル 15~18cmH2O,換気回数 10回/分,吸気時間 1.5秒程度で人工呼吸管理を開始し,患者の状態にあわせてSIMVの換気回数を下げ,ウィーニング期にはPSVのみに移行させます。

 重要 人工呼吸中のモニタリング 

 人工呼吸中には,患者さんのストレスを回避することに加えて,以下をモニターすることで,適切な管理を心がける必要があります。

1.鎮痛と鎮静
 Ramsay sedation score(RSS)(表1)やRichmond Agitation-Sedation Scale(RASS)(表2)などを用いた適切な鎮静と不隠の管理が必要です。RSSやRASSは,患者さんの重症度に応じてレベルを選択しますが,日中は鎮静を浅く,夜間は鎮静を深く保つことで,日内リズムをつける工夫が大切です。侵襲の強い時期には,日中はRSS 4~5あるいはRASS-3~-4,深夜はRSS 5~6レベルあるいはRASS-4~-5を基準とします。また,患者さんの観察やCAM-ICU評価などにより,不隠(agitation)やせん妄を評価します。RASSによる鎮静レベルは,大声で名前を呼ぶか,患者さんに開眼するように伝えて評価します。10秒以上のアイ・コンタクトがあるかどうかでRASS -1かRASS -2を評価し,アイ・コンタクトがなければRASS-3以下となります。

2.呼吸音・回路音・触診・打診
肺野末梢で聴取される周波数250-500Hzレベルのcoarse crackle(水泡音)は,喀痰分泌亢進の指標となります。いびき様の音として気管支レベルに聴取されるrhonchusは,喀痰の中枢側への貯留や気管チューブの狭窄を疑う所見です。気道内分泌物の亢進の際には,呼吸音の変化とともに,人工呼吸回路の触知でも呼吸性振動として感知できます。また,人工呼吸管理において,喘息様症状が生じることもあります。喘息様症状では,周波数400Hz以上のピッチの高いwheezeとして聴診される。突然の換気異常や循環変動が認められた場合には,FiO2を高めるとともに,胸部打診により緊張性気胸を直ちに評価する必要もあります。

3.パルスオキシメータ
 肺酸素化能の指標として,パルスオキシメータを有効に活用します。

4.カプノグラム
カプノグラムの波形は,横軸が時間,縦軸が呼気ガス中のCO2分圧を示します。呼気ガスより得られる呼気終末CO2分圧(PETCO2)は,人工呼吸器などの死腔の影響で動脈血CO2分圧(PaCO2)より通常でも3-4 mmHg低く検出されますが,CO2排泄の変化を経時的にベッドサイドで知ることができるため,換気条件の変化の評価に有用です。このカプノグラム波形は4相で構成されており(図1),呼気延長,喀痰貯留などの評価にも役立ちます(図2)。呼吸数の多い状態では,十分な肺胞換気が施されないために,PETCO2がPaCO2と極端に解離する場合がありますので,1回換気量を再評価しましょう。

5.気道内流速曲線(time–flow curve,フロー曲線)
気道内流速曲線は,横軸に時間経過,基線上に吸気波形,基線の下に呼気波形が示されます(図3)。フロー(V(・))とは1分間当たりに流れる空気流量のことです。このフロー波形と基線が作る面積が換気量となります(図4)。喘息様症状や喀痰貯留,および回路リークの状態では,呼気波形の曲線が基線に戻らないなどの呼気相波形の変化が生じます(図5)。このような状態では,open lung strategy(肺の十分な拡張),気道内分泌物除去,PEEP圧の再設定,吸気流速調節,気管支拡張薬の使用などを検討します。

6.換気量曲線(time-volume curve)
 換気量曲線では,横軸の時間経過に従い,縦軸に換気量が示されます(図6 A)。呼気がゼロに戻らない場合(図6 B),気道内流速曲線と同様に,喘息様症状や喀痰貯留,および回路リークを疑います。

7.圧-換気量曲線(pressure-volume curve)
 圧-換気量曲線は,気道内圧の上昇とともに換気量がどのように変化するかを呼吸ごとに示してくれます。気道内圧が横軸に,換気量が縦軸に表記されます。この曲線は,図7のように自発呼吸やSIMVとPSVで異なる波形となります。図8 Aのように圧-換気量曲線に屈曲点(inflection point)が認められた場合には,肺胞虚脱が示唆され,用手的に肺を再拡張させ,PEEP圧の設定を見直すopen lung strategyの適応と評価します。圧-換気量曲線の傾きは,肺コンプライアンス(肺の広がりやすさ)を示しており,傾きが低下するほど肺コンプライアンスは低く,肺が拡張しにくいことを示す。PSV圧レベルの設定においては,図8 Bのように,最大気道内圧で‘キジのくちばし’様に変形のないことを確認する必要があります。高すぎるPSV圧レベルの設定では,図8 Bのように換気量が飽和してしまいます。この圧-換気量曲線においても,呼気波形が基線に戻らない場合,上述の気道内流速曲線や圧-換気量曲線と同様に,喘息様症状や喀痰貯留,および回路リークを疑います。

8.フローボリュームカーブ (flow-volume curve)
 患者さんの1回換気量を横軸に,患者の気道流量を縦軸に曲線を描いたものです。呼気相における波形変化として,呼気延長や喀痰貯留を検出できます。呼気相の流速(フロー)が減少しやすい場合,PEEPを温存させることになります。


 非侵襲的陽圧換気(NIPPV:non-invasive positive pressure ventilation)について 

鼻マスクやお面マスクを用いて,気管挿管をしない人工呼吸管理が可能です。このようなNIPPVでは,BiPAP(biphasic positive airway pressure)モードとして,吸気時陽圧(IPAP : inspiratory positive airway pressure)と呼気時陽圧(EPAP: expiratory positive airway pressure)の2つを設定します。IPAPとEPAPの差圧は人工呼吸管理におけるPSVレベルに相当するものであり,EPAPは人工呼吸管理におけるPEEPに相当します。急性肺障害,術後の呼吸補助,睡眠時無呼吸症候群,喘息,多発肋骨骨折における内固定などに応用されています。



 おわりに 

 本稿では,人工呼吸器の適切な使用を記載しました。急性肺障害の管理において,最も気を付けることは,①酸素化を改善するためにはまずPEEPを10 cmH2Oレベルでかけること,②フロー曲線を利用してCO2排泄のための適切な吸気時間を設定をすること,③最大気道内圧は30 cmH2O以下とすること,④圧-換気量曲線やフローボリューム曲線を利用し肺コンプライアンスの時系列評価と喀痰吸引のタイミングに役立てることです。人工呼吸管理では,酸素化とCO2排泄を個別に考えるとわかりやすく,CO2排泄のためにSIMV(PCV)とPSVを用いるのが一般的であると理解すると良いと思います。Airway pressure release ventilation(APRV)については,別稿に追記する予定です。

追記 参考図書

記事は,2010年の記載ですが,本稿を盛り込んで,学研で約7年間に渡り呼吸セミナーをさせて頂いていました。
この間に,合計約2,000名を超える皆さんに聴講して頂き,感謝しております。

ICU・救急ナース「呼吸と循環に強くなる」は,この講義内容を記載している口述本です。

 

図表 松田直之「救急一直線 Happy保存の法則」

集中治療 人工呼吸器の使い方の基本 図表 https://blog.goo.ne.jp/matsubomb/e/7de688f46021d3acd779b0f38b41c23c


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集中治療 人工呼吸器の使い方の基本 NO.2 図表

2010年04月10日 03時56分12秒 | 講義録・講演記録

人工呼吸器の使い方の基本  図表

名古屋大学大学院医学系研究科 

救急・集中治療医学分野
松田直之

 

表1. Ramsay sedation score(RSS)

表2.Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS)



図1. カプノグラムの基本波型

カプノグラムは第1相から第4相までの4相で構成される。第1相は,吸気終末から呼期が開始されようとした時期に形成され,チューブやマスクなどの死腔のガス排泄で形成される相であり,呼気中のPCO2(二酸化炭素分圧)が上昇しない。第2相は,末梢気道の呼気が排泄されることで,その呼気流量にしたがってPCO2の急激な上昇が形成される。第3相は,肺胞内の気流が回路内に排泄され形成されるものであり,人工呼吸器回路内のガスとゆっくりと交じり合うことで呼気中のPCO2がなだらかに上昇し,alveolar plateauと呼ばれている。この最終点がPETCO2(呼気終末CO2分圧)である。これに対して,第4相は,吸気相であり,吸気開始によりPCO2が低下することにより形成される。


図2. カプノグラムの波型変化

肺気腫など閉塞性肺疾患や喘息の呼気延長では,Aのように相の鈍化と相の急峻化するカプノグラムの波型変化として出現する。また,SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)などの強制換気を中心として呼吸調節している場合,十分な自発呼吸数の増加により,Bのように第相に2峰性や多峰性の変化が生じる。PSV(pressure support ventilation)を中心とした自発呼吸下での管理でも,喀痰量の増加により,第相の2峰性化や多峰性化を呈する。Cのように第層が低下し,第相が短縮する場合は,浅呼吸により肺胞気が十分に排出されていない場合であり,PETCO2はPaCO2と極端に解離する。Dのような第相の延長はフェンタニールなどの麻薬による吸気ドライブの中枢性抑制で生じやすく,呼吸数低下の所見である。呼吸数を増やすようにSIMVの設定回数を増加させることが必要となる。


図3. Volume control modeによる気道内流速曲線

SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)をvolume control mode(漸減波)で設定している場合のフロー曲線を示した。基線の上方が吸気,基線の下方が呼気である。基線と波形が作る面積が1回吸気量と1回呼気量に一致する。回路リークがある場合は,呼気フローが低下し,1回呼気量が減少する。


図4. Pressure control modeによる気道内流速曲線

SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)をpressure control modeで設定している場合のフロー曲線を示した。Aでは吸気時間が短く設定されているため,呼気に転じる時間が早まり,十分な1回吸気量が得られていない。Bのように吸気フローがゼロになる時点で,呼気が開始されるように,吸気時間と呼気時間の比(I:E比)を再設定し,1回吸気量を適正化する必要がある。Aのような状態では,十分なCO2排泄が施されず,カプノグラムで測定されたPETCO2が,PaCO2より極端に低下する可能性がある。

 

図5. Volume control modeによる気道内流速曲線の波形異常

A:喘息様呼気延長所見,auto PEEPが増大している所見である。B: 喀痰貯留により呼気フローの乱れが生じ,呼出が遅延している。

 


図6. 換気量曲線

 換気量曲線では,横軸の時間経過に従って,縦軸に換気量が示される。Aは正常な波形であり,Bは呼気量が低下している異常波形である。



図7. Pressure-volume curve(圧-換気量曲線)


 圧-換気量曲線は,横軸の気道内圧に対して,縦軸に換気量を示したものである。自発呼吸における圧-換気量曲線は,Aのようにほぼ気道内圧の変化はない。吸気努力が認められる場合は,この吸気波形が側方に膨らむ。Bは,圧トリガーを用いたPSV(pressure support ventilation)における圧-換気量曲線である。Bにおいても,気道浮腫や喀痰貯留などにより末梢気道抵抗が強い場合には,圧-換気量曲線は左右に膨大する傾向を示す。一方,CはフロートリガーによるSIMVにおける圧-換気量曲線である。陽圧により吸気が形成され,その圧の減少とともに呼気が形成される。Dのように圧-換気量曲線の傾きは肺コンプライアンス(肺の拡張性)を示し,傾きが急峻であるほど,肺コンプライアンスは高く,低圧で肺拡張が得やすいことになる。

 


図8. Pressure-volume curve(圧-換気量曲線)の波形異常

A: 図はPEEP4cmH2OレベルからSIMVを施行している際の圧-換気量曲線である。SIMVモードにおける屈曲点(●:inflection point)が認められた場合には,肺胞や末梢気道の閉塞が疑われる。用手的に肺を再拡張させ,PEEP圧の設定を見直すopen lung strategyの適応である。B: 図はPEEP10 cmH2Oレベルから2 cmH2Oレベルの圧トリガーでPSVを施行している際の圧-換気量曲線である。PSV圧レベルの設定の最大気道内圧で‘キジのくちばし’様変形が存在するならば,高すぎるPSV圧と評価できる。図の●レベルにPSV圧を再設定する必要がある。

 

本文 松田直之「救急一直線 Happy保存の法則」

集中治療 人工呼吸器の使い方の基本 https://blog.goo.ne.jp/matsubomb/e/cc6b4f128cb021fa7f28df745b5b1f4a


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症例 亜鉛中毒

2008年02月28日 21時39分28秒 | 講義録・講演記録

亜鉛中毒について

 

京都大学大学院医学研究科

初期診療・救急医学分野

松田直之

 

亜鉛中毒と亜鉛欠乏症

亜鉛(zinc)を用いた自動車のメッキ作業中に,亜鉛を吸入してしまうことがあるようです。頭痛を主訴として,救急搬入されることがあります。
 亜鉛の必要量は,成人で15 μg/日と言われています。70 kgの成人の場合,総量1.4~2.3 gを保持し,血清亜鉛濃度は約80〜160 μg/mLであり,血液中の亜鉛含量は体内の1%レベル未満です。亜鉛は,体内で,①筋肉(約60%),②骨(約30%)の2部位に多く,その他の主要臓器や血球系細胞には均等に分布しています。膵臓においては,α細胞,β細胞などの細胞質内に存在し,グルカゴンやインスリンの合成と分泌に関与しています。白血球系細胞では血液中の約100倍,赤血球では血液中の約10倍の亜鉛が含まれていることも知られています(Whitehouse RC, et al. Zinc in plasma, neutrophils, lymphocytes and erythrocytes as determined by flameless atomic absorption spectrophotometry. Clin Chem 1982;28:475)。 このような血清亜鉛濃度は,さらに日内変動があります。朝起きたときに高く,活動中の午後3時に最低値にあることが知られています(Lifshitz MD, et al. Circadian variation in copper and zinc in man. J Appl Physiol 1971;31:88)。亜鉛は生体にとって必須金属です。9種の微量元素(クロム,鉄,コバルト,モリフデン,マンガン,ヨウ素,セレン,銅,亜鉛)の一つです。亜鉛は,急性期病態では欠乏している可能性があり,まず,欠乏した場合にも望ましくない影響が現れていることに注意します。救急・集中治療における重症患者さんの管理では,亜鉛欠乏に注意し,亜鉛,セレンなどの微量元素補充を栄養管理の必須としています。

 

亜鉛欠乏症に注意

成人の慢性的な亜鉛欠乏による影響は,以下の7つなどが知られています。老人,免疫膠原病,糖尿病,消化器疾患,慢性的アルコール摂取,その他炎症病態などでは血清亜鉛濃度が低下していることが知られており,以下の症状を併発することに注意が必要です。ウイルス感染症などの感染症になりやすくなる可能性も指摘されています。亜鉛欠乏症では,血清亜鉛濃度が60 μg/dL未満となります。

(1)味覚障害

(2)生殖機能障害

(3)うつ状態や食欲不振

(4)易感染性:亜鉛の免疫細胞活性化,ラジカル消去作用,ウイルスの増殖などの機能低下

(5) 創傷治癒遅延

(6)貧血:亜鉛欠乏性貧血,腎性貧血におけるエリスロポイエチン活性に亜鉛が関与

(7)皮膚炎・脱毛

 食物から摂取する亜鉛の推奨規定摂取最大量は一般成人で約15 mg/日,推奨量は男性成人9 mg/日,成人女性 7 mg/日とされています。
主要食品中で亜鉛含量の多いものは,カキ140~270 μg/g,牛肉50~80 μg/g,豚肉20~50 μg/g,鶏肉5~30 μg/g,魚肉3~15 μg/g,大豆40~50 μg/g,インゲン豆20~60 μg/g です。ノロウイルスで有名なカキには,亜鉛が多く含まれています。

 

急性亜鉛中毒:亜鉛過剰で注意すること

亜鉛の急性中毒は,溶接作業やメッキ作業中に空気中に散布された亜鉛を吸入した場合などにおいて,最終的な血中濃度に依存して,発熱,頭痛,悪寒,嘔気,関節痛などが主症状となり,インフルエンザウイルス感染症に似た症状となるようです。一方,亜鉛欠乏状態ではインフルエンザウイルスなどのウイルス感染症にかかりやすいことにも注意します。亜鉛の代謝は,主にメタロチオネインと亜鉛トランスポーターファミリーのzinctransporter(ZnT)とIRT-like protein(ZIP)です。一般に急性亜鉛中毒は,4時間-12時間の経過観察で,症状は自然落着する傾向があります。酸化亜鉛を塗料された配管や,亜鉛を含んだメッキ作業で,発熱や頭痛などの急性亜鉛中毒になる可能性があります。夏場などでは,熱中症との鑑別や併発にも注意が必要となります。
 一方,亜鉛の慢性中毒,亜鉛に慢性的に暴露された状態では,腸からの銅の吸収障害が生じて銅欠乏症となります。銅に関与するセルロプラスミンやチロクロムオキシダーゼの活性が低下し,鉄芽球性貧血を併発するようです。慢性的に,亜鉛に暴露されることにも注意が必要です。
 急性亜鉛中毒,急性亜鉛血症では,輸液を十分に行い,利尿をはかり,発熱徴候や吐気の推移を評価し,緩和し,神経症状が出現しないことを観察することが大切となります。


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救急一直線 医療従事者向け 心肺蘇生 コンセンサス2005 (1)

2007年12月31日 16時19分14秒 | 講義録・講演記録

心肺蘇生 コンセンサス2005

京都大学大学院医学研究科
初期診療・救急医学分野
准教授 松田直之


1. 心肺蘇生法の概念 

 心肺蘇生法(CPR: cardiopulmonary resuscitation)は,心肺停止(cardiopulmonary)を素早く診断し,全身循環を得るための手法であり,一次救命処置(BLS: basic life support)と二次救命処置(ALS: advanced life support)の2つから構成される。特に,心肺蘇生法の目的は,全身循環の中でも「脳血流の維持」にあると考えてよい。脳はすべての臓器の中で最も虚血に弱い臓器であり,心肺蘇生法で心肺循環が改善し,循環と呼吸が再起動しても,傷病者は低酸素脳症として社会復帰できない場合を多く認める。この脳虚血時間を短縮するためには,心肺停止を評価する速やかな手順と蘇生システムが必要である。倒れている傷病者をはじめて見つけた第1発見者および駆けつけた救助者は,119番救急通報あるいは院内通報を直ちに行った後に,傷病者を社会復帰させるためにbystander(立会人)として心肺停止状態にあれば心肺蘇生(Cardiopulmonary Resuscitation:CPR)を開始する必要がある。成人の心肺停止後の社会復帰は,1)early access(第1発見者による迅速な通報),2)bystander CPR(迅速な心肺蘇生),3)early defibrillation(迅速な除細動),4)early advanced care(迅速な二次救命処置)の4つのステップを必要とし,これをchain of survival(救命の連鎖)と呼んでいる。これに対して,小児の「救命の連鎖」は,1)心肺停止の予防,2)迅速な心肺蘇生,3)迅速な通報,4)迅速な二次救命処置の4つを構成要素とする。これらの上記1)~3)までのステップが一次救命処置であり,傷病者の社会復帰を最も決定する重要な処置である。しかし,心肺蘇生法はテキストを読むだけでは施行することは不可能であり,病院内実習やさまざまな心肺蘇生講習会を通して,手技として体得する必要がある。2005年以降に発表された心肺蘇生ガイドラインでは,傷病者の社会復帰に対する一次救命処置の重要性が強調されている。

2. ガイドライン2000と国際コンセンサス2005 

 米国心臓病学会(AHA:American Heart Society)と米国医師会(AMA:American Medical Association)は1974年より6年ごとにthe Journal of the American Medical Association(JAMA誌)に「Standards and Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiac Care」を発表し,心肺蘇生ガイドラインを構築してきた。以上の流れの中で,AHAは2000年8月に,国際蘇生連絡協議会(ILCOR(イルコア):International Liaison Committee on Resuscitation)と伴に,「Guidelines 2000 for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care」をCirculation誌に発表し,心肺蘇生ガイドラインをより学術性のあるエビデンスの高いものとした。このガイドライン2000は,それまでJAMA誌に掲載された心肺蘇生指針などを,より科学的根拠に基づいて,ガイドラインとして編集したものである。一方,2003年よりILCORは,コンセンサス2005の作成に向けて,「1次救命処置」「2次救命処置」「急性冠症候群」「小児救命処置」「新生児救命処置」「教育に関する問題」の6つの作業部会を作り,2005年には国際コンセンサス2005(CoSTR(コスター): 2005 International Consensus on Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science with Treatment Recommendations)をCirculation誌に公表した。
 この国際コンセンサス2005に基づき,本邦でも2006年6月に「救急蘇生法の指針 市民用」,2007年1月には「救急蘇生法の指針 医療従事者用2005」が,本邦の医療システムに適したガイドラインして公表された。今後は,さらにこれらの心肺蘇生法を用いた治療成績の結果を公表し,世界の蘇生指針に本邦からも新たなエビデンスを提供することになるであろう。心肺蘇生法のガイドラインは,今後もエビデンスと実用性の高いものへと進化していく。国際コンセンサス2005においては,多くの点でガイドライン2000が踏襲されている。この中で,ガイドライン2000と国際コンセンサス2005の違いを理解することにより,国際コンセンサス2005の心肺蘇生指針の着眼点が明確化するとよい。
 ガイドライン2000と国際コンセンサス2005の主な変更点は,1)心肺蘇生開始のタイミングに死戦期呼吸を含めた点,2)人工呼吸の吸気時間を約1.5-2秒より約1秒に短縮させた点,3)人工呼吸の施行に難渋する場合には人工呼吸の省略を認めた点,4)胸骨圧迫・人工呼吸比率を,15:2より30:2に変更した点,5)心室細動や無脈性心室頻拍に対する除細動回数を連続3回より1回に減じた点などである。国際コンセンサス2005では,特に「絶え間ない胸骨圧迫」を重視している。国際コンセンサス2005では,一次救命処置に対するだけでなく,二次救命処置を含めて,胸骨圧迫の継続を如何に妨げないかに重点が置かれていると理解されるとよい。胸骨圧迫法に関しては,「Push hard, push fast」,すなわち,「強く,速く」が随所で強調されている。本稿では,国際コンセンサス2005に沿った心肺蘇生法を概説する。

3. 心肺蘇生に必要とされる手技 

 救急通報は行ったが,bystander CPRが施行されていないケースは2007年の段階でも,一般市民の多くに認められる。医療従事者である以上,bystander CPR開始のタイミングを逸してはならない。
 院内発症においても,顔色が変だ,前かがみになっているなどの異常状態に気付いた場合には,まず,意識,呼吸と循環の順番で,傷病者を評価する。まず,意識を確認し,意識低下が認められた場合には,院外であれば119番通報,院内であれば,「応援要請」と「資機材の手配」を行わねばならない。交通事故や転落などの外傷では,蘇生処置に移行する際に,頸髄損傷を否定できないため,頭頚部を安易に他動的に動かしてはならないことにも留意しなければならない。

【ノート欄】
■ Phone firstとPhone fast
 通常は,意識の悪い傷病者を発見した際には,すぐに緊急連絡を行い,これをphone firstと呼んでいる。これに対して,心肺蘇生を2分間施行したあとで,救急通報することをphone fastといい,溺水,薬物中毒,小児などの呼吸原性の心肺停止が疑われる場合の対応である。
■ 蘇生に必要とする資機材
院内発症の心肺停止では,応援要請とともに,バック・バルブ・マスク,背板,救急蘇生セット,自動体外除細動器(AED: automated external defibrillator)などの資機材の要請を行う。

4. 傷病者発見時の初期対応
 傷病者を発見した際には,まず,意識の確認が大切である。肩を軽く叩きながら大きな声で呼びかけて反応がなければ,「意識低下」と評価する。外傷では呼びかける前に頭頚部を用手的に保持し,意識を確認する。「意識低下」と評価した場合に,次にまず行うことは,大きな声で周囲に状況を知らせ,人を集めることである。大きな声で呼んだにもかかわらず,誰も応答のない場合には,携帯電話や院内PHSなどを用いて,救助者を集めることに留意しなければならない。各医療施設では,このような緊急事態に対応する院内通報として,「コードブルー」や「DRハリー」などが設置されている。この緊急通報の後には,第1発見者や集まってきた救助者は,直ちにbystander CPRを開始する必要がある。救助者が一人しかいない場合に,緊急通報に先駆けてbystander CPRを2分間施行するphone fastの基準は,8歳未満の小児,薬物中毒,溺水などに多く認められる呼吸原性の心肺停止である。呼吸原性心停止では,気道の開通と人工呼吸により心拍が再開する可能性が高い。

【ノート欄】

■ WitnessとBystander CPR
 意識を消失しそうになるところを見ていた場合,「Witness(目撃)あり」とする。また,この目撃者や集まってきた救助者により,直ちに心肺蘇生が行われた場合,「bystander CPRあり」とする。「Witness(目撃)あり」「bystander CPRあり」により,社会復帰率が高まる。「Witness(目撃)なし」「bystander CPRなし」の状況では,二次救命処置により心拍や呼吸が再開されても,低酸素脳症の可能性が高まる。

4-1. Bystander CPR

 Bystanderが施行するCPRが,一次救命処置(Basic Life Support: BLS)である。国際コンセンサス2005ではBLSが重視されている。このBLSの過程で,最も留意するべき点は,胸骨圧迫法を可能な限り中断しないことである。適切な気道確保状態で,胸骨圧迫法を継続できる手技が必要とされる。

1)気道確保と呼吸・循環の確認
 意識低下の発見に次いで,傷病者を心肺停止と評価するためには,適切な気道確保を行い,呼吸と循環を確認する必要がある。気道確保は,一般に,頭部後屈あご先挙上法(図3)で行う。項部挙上法は不適切な気道確保法である。一方,外傷などで頸髄損傷が疑われる場合の気道確保は,下顎挙上法(図4)が第1選択となる。気道は一般に,あごを胸壁に押し付けることで閉塞し,匂いをかぐポジション(sniffing position)で開通する。
 この呼吸確認の手技は,「見て,聞いて,感じて」を中心とする5感で行い,10秒以内に評価する。呼吸確認に,10秒以上かけてはならない。すなわち,呼吸観察のためには,図3のように,観察者は同一姿勢で周囲に振り返らず,胸壁運動を見て,耳で呼吸を聞いて,頬で呼気を感じる姿勢が必要である。この際に,あわせて図5のように頚動脈を触知し,循環の有無を確認する。頚動脈触知は,手掌や多指を用いるのは不適切であり,甲状軟骨を触知した後に,示指と中指を自らの肘の方向に滑らせ,胸鎖乳突筋と気管軟骨の間で触知する。呼吸と脈が確認された場合は,呼吸と循環が保たれていると評価できる。呼吸と脈が確認され,さらに外傷でない場合は,傷病者を回復体位(図6)として,救命救急医などの蘇生専門医師の到着を待つ。

2)人工呼吸2回
 次に,呼吸と循環が確認できない場合には,まず,人工呼吸を2回試みる。人工呼吸には,約1秒かけて胸の挙上を確認できるレベルまで送気する。ガイドライン2000では人工呼吸の吸気時間を約1.5-2秒に設定していたが,これらの気道確保手技に戸惑うことで,胸骨圧迫までの時間が遷延することが多く観察された。国際コンセンサス2005では,約1秒,2回の吸気吹き込みが推奨されている。人工呼吸に際しては,手元にバック・バルブ・マスクがある場合は,これを用いるべきである(図7)。人工呼吸が困難な場合は,sniffing positionで気道確保した状態で,胸骨圧迫のみを施行する。人工呼吸にとらわれて,胸骨圧迫までの中断時間が10秒を超えることを避けることに留意する。
感染防御の観点からは,傷病者がHIV,肝炎ウイルスなどの感染症罹患者である可能性もあるため,口対口,鼻対口の無防備な人工呼吸は,決して推奨されない。ベッドサイドであれば直ちに手袋を着用し,バック・バルブ・マスクを用いるべきである。感染防御体制が直ちにとれない場合には,資機材,感染防御具,蘇生熟練者などの到着まで,人工呼吸は施行せず,頭部後屈などの気道確保状態での胸骨圧迫法を優先させる。感染防御が取れない場合には,人工呼吸2回にこだわるべきではない。

3)胸骨圧迫法の開始
 呼吸と循環が確認できない場合には,人工呼吸の試みに次いで,胸骨圧迫法を開始しなければならない。胸骨圧迫には,胸骨の圧迫部位,圧迫の深さ,圧迫速度,圧迫姿勢,そして圧迫解除に対する理解が必要である。
 圧迫部位は,「左右の乳頭を結ぶ線の胸骨上」あるいは「胸の真中」である(図8A)。圧迫の深さは,胸骨が4~5 cm沈むのを目安とする。圧迫速度は,約100回/分の速度である。圧迫姿勢は,指先を胸壁に当てず手掌基部を用い(図8A),肘を曲げず,肩から手掌基部へ外力が垂直に加わるように行うことが大切である(図8B)。胸骨圧迫は,指先をそらすことを意識しなければならない。指先が胸壁に当たるような不適切な圧迫法では,肋骨骨折などの合併症の要因となる。圧迫部位を間違えれば,脾損傷,胃破裂,肝損傷の原因となる。絶えず手掌基部を胸骨上に接着させることに留意することが大切である。不適切な外力は,上記の外傷合併の原因となる。また,圧迫と圧迫解除の時間は,ほぼ同時間としなければならない。胸骨圧迫後の胸郭復帰(complete(コンプリート) recoil(リコイル))により心蔵内への血流が十分に確保されるため,胸骨は押すのみではなく,戻すことを意識する。圧迫解除においても手掌基部が胸骨より離れないように意識し,十分に圧迫が解除されたことを手掌基部で感知しなければならない。胸壁の戻りを確認して胸骨圧迫法が施行されれば,通常の約25%レベルの心拍出量が得られる。
 このような胸骨圧迫と解除30回に対して,人工呼吸2回のリズムで心肺蘇生が行われる。しかし,人工呼吸との連動が不可能である場合には,人工呼吸2回を加えることにこだわる必要はない。この心肺蘇生は,傷病者が動き始めるまで,あるいは,AEDが到着するまで,絶え間なく継続する。傷病者が動き始めた場合,「循環徴候あり」と評価し,呼吸と循環の確認を行う。

【ノート欄】
■ 2人法による心肺蘇生
救助者が1人の場合は,胸骨圧迫と人工呼吸を30:2の比率で交互に行うことになるが,救助者が2人以上いる場合には,気道確保および人工呼吸と,胸骨圧迫を2人で分担するとよい。2人法による心肺蘇生では,互いに声を出し,胸骨圧迫と人工呼吸のタイミングを損なわないように工夫する。心肺蘇生においては,胸骨圧迫や人工呼吸を無言で行うことはなく,大きな声で回数を数えながら,周囲に蘇生動作を伝えるように施行するのが原則である。

■ 胸骨圧迫と人工呼吸の比率
 蘇生に熟練した専門医を除けば,人工呼吸の手技に時間を取られ,胸骨圧迫の断続時間が長くなる傾向は否めない。このような背景より,絶え間ない胸骨圧迫を保つために,国際コンセンサス2005では胸骨圧迫と人工呼吸の比率が,15:2から30:2に変更された。しかし,この30:2を示唆する明確な根拠はない。胸骨圧迫と人工呼吸の比率として,理論値として50:2を推奨する見解も存在する。胸骨圧迫の際には,sniffing positionで気道が確保されていれば,胸腔内圧の変化により多少の換気が促される。気道確保の状態で絶え間ない胸骨圧迫が施行されるならば,胸骨圧迫と人工呼吸の比率が,50:2などに変更される可能性がある。

■ 心肺蘇生における人工呼吸の省略
 1)感染防御が取れない場合,2)人工呼吸に難じた場合には,人工呼吸にこだわる必要はない。しかし,医療従事者は,人工呼吸に難じることがないように,心肺蘇生講習会を受講しておき,心肺蘇生法に精通することが大切である。感染防御に関しては,フェースシールドやハンカチなどを用いても,ウイルスや肺結核などの十分な感染防御にはならない。

4-2. 除細動の適応とAED

 心電図による心停止状態は,1)心室細動(VF: ventricular fibrillation),2)無脈性心室頻拍(pulseless VT: pulseless ventricular tachycardia),3)無脈性電気活動(PEA: pulseless electrical activity),4)心静止(asystole)の4つに分類される(図9)。AEDやマニュアル除細動器による除細動の適応は,心室細動と無脈性心室頻拍の2つに限られる。AEDは,VFとVTを自動認識し,VFとVTのみを除細動の適応とする。Holter心電図の装着中に突然死した患者の心電図解析などからは,心肺停止直後の80%以上にVFが認められることが確認されている。ガイドライン2000では,除細動が1分遅延するごとに約10%の救命率低下が生じることが明記されている。以上のことなどから,心肺蘇生における早期除細動適応の評価は,「救命の連鎖」の1つとして,国際コンセンサス2005でも継承されている。心肺停止患者の発見に際しては,資機材に加えて,AEDを持ってきてもらうように具体的な指示を心がける必要がある。

1)AEDの基本原理
 VFやVTでは,心臓の刺激伝導路の自動能亢進とリエントリーにより,心室筋細胞の興奮性が多様化し,有効な心拍出量が認められない。AEDは,傷病者の心電図を自動解析の後に,自動的に除細動を指示する機器である。2004年7月1日の厚生労働省医政局による「非医療従事者による自動体外式除細動器の使用」の通知より,本邦のさまざまな施設でもAEDが設置されるようになった(図10)。AEDの特徴は,傷病者に必要とする電気刺激量を自動調節し,VFとVTに対してのみ,除細動を自動的に施行する点にある。AEDは,その充電時や除細動施行時に,傷病者の胸壁抵抗を自動計測し,電流量,通電波形,位相率,および通電時間を調節し,適切な通電エネルギーを決定している。

2)AEDの使用手順と注意
 AEDは,電源を入れると音声メッセージが流れ,手順を音声で解説する。使用に際しては,まず,電源を入れることが大切である。勝手に電極パッドなどを装着することは禁忌である。また,AEDが心電図解析を行う際や除細動を施行する際には,傷病者の体に触れてはいけない。それ以外では,胸骨圧迫法を途絶えさせない工夫が必要である。

2-1)AEDを持ってくる
 応援要請の際にAEDを持ってくることを依頼するが,他に誰もいない状態で,AEDが近くにあることがわかっている場合は,救助者自身がAEDを取りに行くのがよい。院内などでは,AEDの設置場所をあらかじめ把握しておく必要がある(図10)。

2-2)まず,電源を入れる
 AEDには,電源ボタンを押すタイプと,ふたを開けると自動的に電源が入るタイプの2種類がある。電源が入る前に,勝手にパッドなどを装着してはならない。AEDの操作は,音声メッセージと点滅ランプに従った手順で行うことが重要である。

2-3)電極パッドを貼る
 音声メッセージに従い,傷病者の上半身の衣類を脱がせ,袋から取り出した電極パッドを装着する。パッドの1枚は右上前胸部に,もう1枚は胸の左下胸部に密着させるように貼る。8歳以上では,成人と同様に,成人用パッドを用いる。1歳以上8歳未満の小児には,小児用電極パッドを用いる。1歳未満にはAEDの有効性を示すエビデンスが2007年の段階では認められない。一度貼られた電極パッドは,心肺蘇生の最中にも,剥がしてはならない。

2-4)心電図の解析
 電極パッドが貼られると,「患者から離れてください」という音声メッセージが流れる。この間に,AEDは心電図を自動解析するため,傷病者の体に触れていると,振動などにより心電図波形を誤認識する。心電図解析中には,傷病者の体に触れてはいけない。

2-5)電気ショックおよび心肺蘇生の再開
 AEDが除細動を必要とすると評価した際には,「ショックが必要です」などの音声メッセージが流れ,AEDの充電が自動的に開始される。救助者たちが傷病者の体に触れていないことを,もう一度確認する。充電が完了すると,連続音とショックボタンが点灯し,電気ショックを行うように音声メッセージが流れる。この合図に従い,「ショックボタン」を押す。除細動により,傷病者の体が跳ね上がったり,四肢が硬直することがあるが,救助者は驚く必要はない。除細動後は,その結果を待つことなく,直ちに胸骨圧迫法を開始する。傷病者が動き始めれば,「循環徴候あり」と評価し,呼吸と循環の確認を行う。一方,AEDの音声メッセージが「ショックは不要です」だった場合には,その後の音声メッセージに従い,直ちに胸骨圧迫を開始する。

2-6)AEDと心肺蘇生の連動
 初回のAED処置後,心肺蘇生を再開して2分すると,再びAEDが自動的に心電図の解析を行う。音声メッセージに従い,救助者は再び傷病者の体に触れないようにする。AEDの音声に従い,2-5)に準じてAEDに対応すればよい。

2-7)心肺蘇生の継続
 AEDの心電図波形解析と除細動の時間を除いて,絶え間ない心肺蘇生が,継続されていなければならない。傷病者が動き始めた場合と呼吸が再開した場合には,一旦,心肺蘇生を中止し,呼吸と循環を評価する。呼吸と循環が開腹した際には,気道確保の状態で,蘇生専門医の到着を待つ。やむを得ず傷病者から離れる場合は,回復体位(図6)とする。脈拍はあるが呼吸がない場合は,1分間に10回の人工呼吸を行う。この際,できれば継続的に,あるいは,少なくとも2分はおかずに頚動脈触知を行い,循環の維持を確認しながら,蘇生専門医の到着を待つ。呼吸のみならず頚動脈触知が消失すれば,直ちに胸骨圧迫法を再開しなければならない。

2-8)AED使用の注意
 AED使用に際しては,胸部の1)体の湿潤,2)胸毛,3)貼付剤,4)植え込み型ペースメーカ,5)酸素の5点に注意して,施行する。傷病者の体表が汗や雨などで濡れているときにはAEDの通電効果が損なわれるため,胸部を乾いたタオルや布などで拭いてから,電極パッドを貼る。胸毛が多い場合には,電極パッドが肌に密着しないため,AED効果が期待できないため,予備の電極パッドなどで胸毛を剥がした後に,電極パッドを正式に貼る。カミソリがAEDケースに入っている場合には,カミソリで胸毛をそってから電極パッドを貼るが,これらの胸毛処置は素早く行う必要がある。ニトログリセリンなどの貼付剤が胸部に貼られている場合には,発火の可能性があり,これらを剥がす必要がある。ペースメーカが埋め込まれている場合には,胸部の一部にペースメーカが突出した硬いこぶとして触知できる。AEDパッド貼付の所定の位置の場合は,ペースメーカの場所から,2-3 cm離して貼る。また,AEDを含めた除細動の際には,酸素を投与していると発火や爆発の危険性がある。周囲に酸素の流れがないことを,確認しなければならない。

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救急一直線 医療従事者向け 心肺蘇生 コンセンサス2005 (2)

2007年12月31日 16時10分13秒 | 講義録・講演記録

心肺蘇生 コンセンサス2005  PART2

京都大学大学院医学研究科
初期診療・救急医学分野
准教授 松田直之

ー続編ー

5. 一次救命処置から二次救命処置への移行

5-1. 救命の連鎖
 心肺停止の傷病者の救命のためには,1)early access(迅速な通報),2)early CPR(迅速な1次救命処置),3)early defibrillation(迅速な除細動),4)early advanced care(迅速な2次救命処置)の4つから構成される「救命の連鎖」が重要であると前述した。「救命の連鎖」では,第1発見者が迅速に連絡し,第1発見者や集まってきた救助者により適切にbystander CPRが施行され,救命に必要な資機材が到着した際にはAED処置を行い,それでも心肺停止が継続している状態であれば,適切な部署で二次救命処置(advanced life support: ALS,advanced cardiac life support: ACLS)を開始する手順となる。この4番目の最終項目に位置する二次救命処置は,二次救命処置を開始できるシステムを持った病院内の適切な場所で施行されることが望まれる。二次救命処置への搬送を必要とする場合は,搬送過程で絶え間ない心肺蘇生が継続される一方で,救急車内であれば,心電図解析,追加される気道確保(食道閉鎖式エアウエイ,食道気管コンビチューブ,あるいはラリンジアルチューブ)や,静脈路確保による輸液が,医師のオンラインメディカルコントロールのもとで,救命救急士に指示される。また,一定期間の研修や試験を通過した救命救急士には,オンラインメディカルコントロールのもとで,気管挿管やエピネフリン投与が認められている。

5-2. Primary ABCD survey
 病院内の適切な部署への搬送後の二次救命処置の開始にあたっては,まず蘇生に熟練した医師による心肺停止の評価が,一次救命処置の手順に準じて行われる。意識確認と,気道(A: airway)・呼吸(B: breathing)・循環(circilation)のABCの計15秒以内の初期評価に加え,心電図を装着後は,まず心電図波形を評価し,この波形がVFかVTの場合であれば,除細動(D:defibrillation)の適応とする。これらの二次救命処置の初期評価を,ガイドライン2000では「primary ABCD survey」と呼んでおり,一次救命処置における心肺蘇生法を総括する呼称でもある。二次救命処置開始にあたっても,VFとVTに対する早期除細動の必要性を伝える呼称である。この処置の2分後にはガイドライン2000における「secondly ABCD survey」に類似する内容に移行する。

5-3. Secondly ABCD survey
 Secondary ABCD survey もprimary ABCD surveyと同様に,ガイドライン2000において重視された呼称である。あくまでもガイドライン2000のものとして,secondary ABCD survey をprimary ABCD surveyと対比して理解するとよい(表1参照)。Primary ABCD surveyで心拍が確認できない場合,ガイドライン2000における二次救命処置ではsecondary ABCD surveyへ移行させていた。
このガイドライン2000におけるsecondary ABCD surveyでは,確実な気道確保として気管挿管が望ましいとしていた。しかし,現在,国際コンセンサス2005では,気道確保法として気管挿管にこだわる必要はなく,十分な換気が可能であれば,救命救急士の挿入した食道閉鎖式エアウエイ,食道気管コンビチューブ,あるいはラリンジアルチューブを用いるのでよいと考えている。しかし,気管挿管では,胸骨圧迫と呼吸の比率として,30:2の「同期」を行う必要がなく,これを「非同期」と呼ぶ。他の気道確保方法で「非同期」を行うと,誤嚥する可能性や,気道内圧の変化によりチューブ固定位置が損なわれる可能性がある。気管挿管後の呼吸は,用手換気による1回換気量6-7 mL/kg,呼吸数10/分レベルが望ましく,過度の陽圧換気は静脈還流を妨げ心拍出量を低下させることにも留意しなければならない。
 また,ガイドライン2000におけるsecondary ABCD surveyにおけるBは,気管挿管後の酸素化と換気状態の確認だった。心肺停止状態では酸素運搬能が停止しているため,組織虚血より代謝性アシドーシスが進行しやすい。このため,心肺蘇生にあたっては,可能であれば100%に近い高濃度酸素を投与すべきである。
Secondary ABCD surveyにおけるCは,心電図モニタ装着と,輸液・薬剤投与による循環の評価を意味する。ガイドライン2000におけるsecondary ABCD surveyでは,二次救命処置における心停止の最終評価に,頚動脈によるcheck pulseを用いていた。しかし,3誘導レベルの心電図を装着すれば,VF,VT,asystoleの評価を持続的に行うことができる。さらに,マニュアル除細動器でも,その電極を胸部に接着させることにより,心電図波形を確認できる。このような理由から,現在,国際コンセンサス2005では,胸骨圧迫中断時間を可能な限り少なくする目的で,check pulseに代わり,心電図モニタによる「リズムチェック」が推奨されている。以上のように,国際コンセンサス2005では,ガイドライン2000における除細動前後のcheck pulseの重要性は薄れ,二次救命蘇生におけるcheck pulseの絶対適応は,心電図波形が保たれているPEAのみである。VTにおいても,ガイドライン2000ではpulselessにのみ除細動を適応していたが,国際コンセンサス2005後の本邦ではcheck pulseによるVTのpulselessの評価は行わず,VTの心電図波形を確認した際には頚動脈を触知することなく,除細動を施行する方針としている。
 最後に,Secondary ABCD surveyにおけるDは,differential diagnosis(鑑別診断)である。国際コンセンサス2005では,特にPEAの鑑別診断に必要とされる重要病態として,原因検索の4H4Tをまとめている(表2参照)。

5-4. 国際コンセンサス2005に準じた成人の二次救命処置のアルゴリズム

 国際コンセンサス2005に準じた本邦のガイドライン「救急蘇生法の指針 医療従事者用2005」では,上述したprimary ABCD surveyとsecondly ABCD surveyの区分をなくし,図11のような二次救命処置の簡素なアルゴリズム(一部改変)にまとめている。この二次救命処置ではチームリーダーを決定し,リーダーの指示に従い,行動することが大切である。皆がばらばらに動く心肺蘇生は,混乱を招き,蘇生効率が低下する。 このため,二次救命処置では二次救命処置のアルゴリズムを十分に理解した蘇生法に熟練した医師が,リーダーとなることが望ましい。リーダーには,患者状態評価と蘇生における問題解決能力が要求される。

1)Flat line protocol
 心電図を装着してまっすぐな直線(flat line)だったからといって,早急にasystoleと評価してはならない。心電図波形がflat lineである場合,flat line protocol(表3)に準じて,心電図波形の確認が必要となる。しかし,この確認のために胸骨圧迫が妨げられる可能性があるため,flat line protocolは心肺蘇生と平行して確認される必要がある。心電図電極の装着の確認,心電図感度を上げる,心電図誘導を変えることにより,隠れたVFの発見につながる。二次救命処置のリーダーは,心電図を装着してflat lineを確認した際には,心電図誘導を変え,心電図感度を最大とするように周囲に依頼することが必要とされる。

2)心電図波形に準じた心停止治療の開始
 心電図装着後は,二次救命処置チームリーダーが心電図波形を評価し,「VFのアルゴリズムで治療を開始します」などのように,治療のアルゴリズムを大きな声で宣言し,チームが同一の治療方針にあるように方向付けることが大切である。心電図波形により心停止治療アルゴリズムの詳細が異なることに留意して治療に当たる。二次救命処置においても,絶え間ない胸骨圧迫が原則であり,不用意に胸骨圧迫が中断しないようにチームリーダーが工夫する必要がある。タイムキーパーを1人用意し,循環の再評価は2分毎に心電図確認による「リズムチェック」で行い, 2分毎に大きな声で連絡してもらうとよい。さらに,記録係を1人設けることで,処置内容や使用薬物,心電図波形の記載を残すことが必要である。あわただしい中にあっても,記録を残すことができなければ,心肺蘇生の救命システムが整った施設とは評価されない。

3)VFとVTのアルゴリズム
 心電図装着後,心電図がVFとVTである場合,電気的除細動の絶対的適応となる。ガイドライン2000では,VFかpulseless VTが継続する限り,3回の除細動が終了するまでは単相性除細動器のパドルを胸壁より離さずに200 J,300 J,360 Jの順に除細動を継続することを推奨していた。しかし,国際ガイドライン2005では,除細動は1回とし,除細動後はすぐに心肺蘇生に戻る「1ショックプロトコール」が推奨された。蘇生に長けている医師においては,従来のガイドライン2000に準じた「3ショックプロトコール」でもよい。
 二次救命処置チームリーダーが,気道確保者に気管挿管の指示を出す際には,気管挿管に熟練したものを第1選択とする。気管挿管完了までは心臓マッサージと人工呼吸は30:2の比率で同期させるが,気管挿管後の胸骨圧迫法は1分間に約100回の速度とし,人工呼吸10 回/分の非同期でよい。原則として,気管挿管に10秒以上の胸骨圧迫中断時間を費やすようであれば,バック・バルブ・マスクによる同期換気の継続,あるいはラリンジアルマスクの挿入を考慮する。また,二次救命処置チームリーダーは別な医師に静脈路確保の指示を出す。気管挿管後は気管内からエピネフリンを投与し,静脈路確保後からは静脈内投与に変える。除細動を行う以外では,チームリーダーは絶え間ない心臓マッサージを指示し,2分毎に「リズムチェック」を行う。エピネフリンは3~5分毎の投与とし,その間2分毎の「リズムチェック」に際しては,VFやVTが継続している場合,リーダー自らが単相性除細動器であれば360 Jで除細動を1回のみ行う。それでもVFやVTが継続している場合には,抗不整脈薬投与を考慮し,「リズムチェック」にあわせてアミオダロン(アンカロンⓡ 300 mg iv),ニフェカラント(シンビット® 0.15 mg/kg iv),リドカイン(1-1.5 mg/kg iv),プロカインアミド(アミサリンⓡ 50 mg/分,最大投与量17 mg/kg)を選択する。この他に,Toresade de pointesや,低マグネシウム血症に伴うVFやVTには,マグネシウム(マグネゾール®,コンクライト-Mg®)を1-2 gを希釈し,緩徐に静脈内投与する。このような治療に効果を示さない難治性不整脈は,心原性の心肺停止の可能性が高く,経皮的心肺補助(PCPS: percutaneous cardiopulmonary assist systems)の導入も考慮する。

【ノート欄】
■ 気管挿管の必然性
 気管挿管には,熟練が必要である。熟練者にとっては気管挿管を施行する際に胸骨圧迫法を中断する必要はないが,気管挿管困難患者や胸骨圧迫中断時間10秒以上を必要とする場合には,気管挿管は断念すべきである。国際コンセンサス2005では,換気が十分に可能であれば,バック・バルブ・マスク,あるいはラリンジアルマスク,救命救急士の挿入した食道閉鎖式エアウエイ,食道気管コンビチューブ,あるいはラリンジアルチューブを用いるのでよいとされている。

■呼気ガス二酸化炭素モニタによる胸骨圧迫法の効果判定
 心肺蘇生を行う過程の有効な胸骨圧迫の評価として,カプノグラフによる呼気ガスモニタがある。気管挿管やラリンジアルマスクの呼吸回路より呼気ガスサンプリングを行うことで,呼気ガスがモニタできる。胸骨圧迫法がうまく施行されている場合には,肺血流が生じるため,カプノグラフに呼気ガス波形が検出される。

■ 薬剤投与経路の選択
 薬剤投与経路の確保のために,胸骨圧迫の断続時間が生じてはならない。このため,薬剤投与経路は胸骨圧迫に比較的妨げとならない末梢静脈路が第1選択となる。末梢静脈路確保が難しい場合には,脛骨などの骨髄となる。末梢静脈路は,上腕正中皮静脈などの上腕の太い静脈が望ましく,薬剤投与後にはすぐに輸液20 mLを後押しするか,輸液速度を最大として,上肢を10-20秒間挙上する。心肺蘇生の過程で,胸骨圧迫の妨げとなる中心静脈路を選択する意義はない。

■ マニュアル型除細動器のショックエネルギー量の選択
 マニュアル型除細動器のショックエネルギーの供給型式は,単相性と二相性の2種類に分けられることは,AEDと同様である。二相性マニュアル型除細動器では,truncated exponential(切断指数)波形であれば150-200 J,rectilinear(矩形)波形であれば120 J,波形が不明な場合には200 Jを選択することが推奨されている。2回目以降の除細動に関しては,切断指数波形であれば200 Jの最大値を用いるようにする。除細動器のエネルギー特性は,機種により異なることから,VFやVTに対する二相性除細動器エネルギーは,機種開発メーカーの推奨する量を選択するのが良い。これに対して,単相性マニュアル型除細動器では,200 J,300 J,360 Jの順に,VFやVTに対するショックエネルギー量を選択するのが一般的である。

5)Asystoleの治療のアルゴリズム
 心電図装着後,flat lineを確認した場合,flat line protocol(表3)に基づき,心肺蘇生を継続させながら,隠れたVFを除外する。チームリーダーは「リズムチェック」の際に最終判断としてasystoleと確定した場合,「asystoleのアルゴリズムで治療を開始する」と宣言する。気管挿管と末梢静脈路の確保を指示し,2分毎の循環評価の際にasystoleが継続していれば,まずエピネフリン,次の「リズムチェック」の際にはアトロピンの順で用いる。初回または2回目のエピネフリンの代わりに,バゾプレッシン40単位(ピトレッシンⓡ 2 mL)を静脈内投与してもよい。動脈血ガス分析により代謝性アシドーシスや高K血症が高度な場合や,三環系抗うつ薬による薬物中毒では重炭酸ナトリウムの投与を考慮するが,重炭酸ナトリウムはルーチンに投与してはならない。Asystoleの治療においても,チームリーダーは,10秒以上の断続のない,絶え間ない心臓マッサージを指示することが大切である。

6)PEAの治療のアルゴリズム
 心電図装着後,心電図波形が認められる場合には,10秒以内を限定として頚動脈触知を行う。頚動脈で脈拍を触知できない場合,二次救命処置チームリーダーは心電図波形がPEAであると評価し,「PEAのアルゴリズムで治療を開始する」と宣言する。PEAの治療はasystoleに準じるが,原因検索として表2の4H4Tを評価することが必要である。このためには,チームリーダーは患者既往歴を聴取する者を別に指定し,さらに別な医師には動脈血ガス分析,さらに別な医師にはエコー図を施行させる。しかし,これらの過程においても,胸骨圧迫を中断させてはならず,中断しても10秒以内とする。Asystoleと同様にPEAに対する最も重要なことは,治療可能な原因を検索し,原因を特定し,取り除くことにある。動脈血ガス分析の結果,極度なアシドーシスや高カリウム血症が存在する場合,重炭酸ナトリウムの投与を考慮し,出血や脱水による循環血液量低下に対しては急速輸液を行う。緊張性気胸は胸部打診で評価し,胸腔内の脱気を必要とする。低体温,急性冠症候群,肺血栓塞栓症の可能性が示唆されれば,PCPSの導入を積極的に行う施設も多い。

6. 感染防御の重要性
 二次救命処置の施行に際しては,標準予防策に準じた感染防御を行うことが必修である。二次救命処置に参加する医療従事者には,あらかじめ,手袋,マスク,ガウンを着用しなければならない。処置前処置後の手指衛生も徹底する。


7. 心臓ペーシングの適応

 不安定な徐脈患者には,除細動器に設置されたペーシング用パッドを用いて,経胸壁ペーシングを施行できる(図12参照)。これは,あくまでも冠動脈造影や経静脈ペーシングに移行するまでの緊急避難的な治療である。

7-1. 経胸壁ペーシングの設定

 除細動器の通常の除細動パドルのコネクタを除細動器よりはずし,貼付用ペーシング電極パッドのコネクタを除細動器に装着する。電源を入れ,心電図モニタ電極を装着し,ペーシングモードに切り替える。貼付用ペーシングパッド(図12参照)を患者の心尖部と左背部に装着する。ペーシングレートを60/分,刺激電気量を0 mAに設定する。ペーシングを開始する際には,ペーシングスイッチをオンにし,心電図モニタを見ながら,刺激電気量を0 mAから上げていく。ある刺激電気量を越えた時点で。ペーシング波形のあとにQRS波形が出現する。この時点のmAをペーシング域値という。胸壁ペーシングの最終の刺激電気量は,ペーシング域値より5-10 mA高い値とする。

7-2. 経胸壁ペーシングの注意

 モニタ波形が骨格筋収縮による波形である可能性があり,心室細動の発見に遅れることがある。また,PEAである可能性もあるため,ペーシングに際しては必ず,常に患者のABCの確認が必要である。このモニタリングには,パルスオキシメータが有効である。ペーシング中には,心停止となる可能性があり,その危険に備えて,酸素投与と静脈路確保が同時に行われるべきである。

8. 小児および乳児の心肺蘇生で留意すること 

 成人を対象とする施設では,8歳未満を小児として,成人と心肺蘇生法を区分する。小児の「救命の連鎖」は,1)心肺停止の予防,2)迅速な心肺蘇生,3)迅速な通報,4)迅速な二次救命処置の4つを構成要素とする。国際コンセンサス2005においても,8歳未満の小児の1次救命処置では,人を呼ぶ前にすぐに5サイクル(2分間)の心肺蘇生が推奨されている。成人と8歳未満の小児の心肺蘇生の違いは,以下の点に集約される。

8-1. Phone Fast
 心肺蘇生を5サイクル施行したあとで,救急通報することをphone fastといい,通常の蘇生における人を集める場合のphone firstと区分している。8歳未満の小児の心肺停止では,呼吸原性心停止が多いため,発見時の蘇生を優先するphone fastとしている。

8-2. 徐呼吸と徐脈への早期対応
 呼吸数10回/分未満の徐呼吸や,60/分未満の徐脈に意識障害,チアノ-ゼなどの循環障害所見を認める場合には,完全な心肺停止を待たず,心肺蘇生を直ちに開始する。8歳未満の小児や乳児は,生理学的予備力が乏しいため,人工呼吸や胸骨圧迫の開始が成人に比較して早いことに留意する必要がある。

8-3. 胸骨圧迫の深さと方法
 8歳未満の小児や乳児の胸骨圧迫の深さは,胸の厚みの1/3を目安とする。乳児の場合,救助者が一人の場合は2本指で,救助者が2人の場合は胸骨包み込み母指圧迫法で,左右の乳頭を結ぶ線のやや尾側の胸骨を圧迫する。8歳未満の小児に対しては,両腕で圧迫する場合もあるが,一般に片腕で胸骨を圧迫する。

8-4. 胸骨圧迫と人工呼吸の比率
 コンセンサス2005では,胸骨圧迫と人工呼吸の回数比は8歳未満の小児や乳児においても,成人と同じ30:2が推奨されている。小児は酸素化を十分に施す必要があり,医療従事者2名による心肺蘇生では,15:2が推奨されている。

8-5. AEDと除細動に対する規制
 2007年現在では1歳未満の乳児へのAEDの十分なエビデンスはなく,ガイドラインに取り込まれていない。1歳以上8歳未満の小児に対しては,原則として心肺蘇生を施行した2分後に,エネルギー減衰機能を持っている専用の小児用電極パットを用いて,AEDを施行する。マニュアル除細動器では,VFとVTに対して,単相性,2相性ともに,2-4 J/kgの除細動1回が推奨されている。

8-6. 二次救命処置
 小児の「リズムチェック」は成人と同様に2分毎であり,エピネフリン静脈内投与量は0.01 mg/kgである。アルゴリズムは,成人のものに類似している。

 

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救急一直線 心肺蘇生 AHA コンセンサス2005 (図表)松田直之

2007年12月15日 01時14分39秒 | 講義録・講演記録
心肺蘇生 コンセンサス2005 図と表

京都大学大学院医学研究科
初期診療・救急医学分野
准教授 松田直之


2008年4月 京都大学病院に救急科を立ち上げました。極めて高い心肺蘇生率と社会復帰率です。


図1 救命の連鎖


図2 気道確保の重要性
①下顎挙上法,②頭部後屈顎先挙上:(注意)☓ 項部挙上


図3 頭部後屈あご先挙上法:LOOK/FEEL/LISTEN


図4 下顎挙上法:LOOK/FEEL/LISTEN


図5 頚動脈触知の方法


頚動脈触知は,手掌や多指を用いるのは不適切であり,まず,甲状軟骨を触知することが重要である。頭部後屈を維持させsniffing positionを保ちながら,甲状軟骨を触知し(A),触知した指を肘方向に戻し,胸鎖乳突筋との間隙に頚動脈を触知する(B)。一次救命処置の過程では,呼吸を見て,聞いて,感じながら,この操作を施行し,循環を確認する。通常の脈の確認においても,(C),(D)のように,甲状軟骨を触知し,手前に滑らせて,胸鎖乳突筋との間隙に頚動脈を触知するように行う。これが,できていない医師や看護師さんが多い。既に,心肺蘇生 AHAガイドライン2000(救急一直線 2005年4月9日)に記載したように,頸動脈触知は「技術」であり,天空を見上げながらでも,エレガントに出来る技術にスキルアップしておくとよい。このコツとポイントを,再記載する。

<特論:Check Pulse:MATSUDA法>

NORMAL MATSUDA法2000
a. 頸動脈を第1選択とする。
b. 甲状軟骨を第2指と第3指の2本指で触知する。
c. 指は手前にすべらせる。
d 甲状軟骨と胸鎖乳突筋の間隙で2本の指を立てる。
e. 指圧は,動脈触知に適した圧に感知調節とする。
以上を,天井を見ていても,他の皆の処置を見ていても,患者さんを見なくてもできるまでにトレーニングする。

頭部保持MATSUDA法2000
頭の側に位置して,気道確保している状態では,左の頚静脈は自分の左手で,右の頚静脈は自分の右手で触知する。私は,研修の時期に,右手でも左手でも動脈圧ライン(観血的動脈路)や静脈路を確保できるように自己トレーニングしたが,この応用である。患者さんの頭に立った場合,他の者の邪魔をしない空間管理が,多発外傷にしても,心肺蘇生においても最も重要である。50 cm2で動くなと,後輩には教えている。つまり,頭側に立った場合には,患者さんへの左側処置は全て自分の左手を使い,患者さんへの右側処置はすべて自分の右手を付けうようにトレーニングされて初めて救急科医であるのだ。
a. 患者さんへの左側頸動脈触知は,自分の左手を使う。
b. 患者さんへの右側頸動脈触知は,自分の右手を使う。

図6 回復体位

 呼吸と循環が確認された場合には,外傷患者でない限り,傷病者を回復体位とする。

図7 バック・バルブ・マスクによる用手的人工呼吸
自発呼吸のあるときは,バックバルブマスクを使用してはいけない。ジャクソンリースで自発呼吸の大きさを用手確認するのだ。これは,用手的pressure supportの極意である。
バック・バルブ・マスクによる用手的人工呼吸は,自発呼吸の停止した状態に私は許可している。救急科医などのプロであれば,一人でバックバルブマスク換気できることが,常識である。


図8 胸骨圧迫法

 圧迫部位は,「左右の乳頭を結ぶ線の胸骨上」あるいは「胸の真中」である(A)。圧迫の深さは,胸骨が4~5 cm沈むのを目安とする。圧迫速度は,約100回/分の速度である。圧迫姿勢は,指先を胸壁に当てず手掌基部を用い(A),肘を曲げず,肩から手掌基部へ外力が垂直に加わるように行うことが大切である(B)。

図9 心停止の波形

 心電図による心停止状態は,1)心室細動(VF: ventricular fibrillation),2)無脈性心室頻拍(pulseless VT: pulseless ventricular tachycardia),3)無脈性電気活動(PEA: pulseless electrical activity),4)心静止(asystole)の4つである。

図10 AEDの設置

 2004年7月1日の厚生労働省医政局による「非医療従事者による自動体外式除細動器の使用」の通知より,本邦のさまざまな施設でもAEDが設置されるようになった

図11 二次救命処置のアルゴリズム


図12 マニュアル除細動器と経胸壁ペーシング


表1 Primary ABCD surveyとSecondary ABCD surveyの違い

Primary ABCD survey とSecondary ABCD surveyは,ガイドライン2000において重視された呼称である。これらを対比して理解するとよい。

表2 PEAにおける原因検索(4H4T)


表3 心電図 Flat line protocol

 心電図を装着してまっすぐな直線(flat line)だったからといって,早急にasystoleと評価してはならない。心電図波形がflat lineである場合,flat line protocolに準じた心電図波形の最終確認が必要となる。

心肺蘇生 コンセンサス2005 シリーズ 救急一直線
※ プロとは,極上を志向するものである。この内容を超えて,世界を超えて,絶対を追求していただきたい。 2007年12月15日 京都大学 松田直之

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周術期の血糖コントロールの意義

2007年03月23日 13時48分05秒 | 講義録・講演記録

講 座
周術期の血糖コントロールの意義


京都大学大学院医学研究科
初期診療・救急医学分野
准教授

松 田 直 之(まつだなおゆき)

Title: Perioperative glucose control: challenges and the pathophysiology

Naoyuki Matsuda MD, PhD

E-mail:nmatsuda@med.u-toyama.ac.jp

キーワード:周術期,血糖値,インスリン



はじめに

 周術期における血糖管理を厳密に行うことで,全身性炎症を軽減できるばかりか,術後感染症,急性腎不全の合併率を低下できる可能性が,多くの臨床研究や基礎研究で示されてきた。本稿では,周術期の血糖管理に焦点を当て,これまでの臨床研究や基礎研究に基づき,周術期の血糖管理の重要性を論じる。

Surviving Sepsis Campaign guidelinesにおける血糖値管理指針

 2004年に米国集中治療医学会より公表されたSurviving Sepsis Campaign guidelines1)は,sepsis(セプシス,敗血症)における血糖値を150 mg/dL(8.3mmol/L)未満に管理することを推奨している。セプシスは感染に起因する全身性炎症症候群(systemic inflammatory response syndrome: SIRS)であり2),この重症化の主病態はサイトカイン過剰産生に伴う血管内皮細胞傷害と主要臓器傷害にある3, 4)。周術期には炎症性サイトカインの産生に伴い,全身性炎症が惹起されやすいばかりか,感染症を合併することでまさにセプシスとして全身性炎症が増悪し,重症病態として播種性血管内凝固症候群や多臓器不全に移行する可能性がある。
 2004年のSurviving Sepsis Campaign guidelinesにおける血糖管理指針は,2003年までに発表されたVan den Berghe Gら5, 6)とFinney SJら7)の臨床研究を基盤としている。ベルギーのルーバン大学のVan den Berghe Gらの2001年のN Engl J Medの報告 5)は,2000年2月から2001年1月までの彼女らの単一施設で施行された前向き臨床研究であり,Acute Physiology and Chronic Health Evaluation - II score(APACHE-IIスコア)9レベルの重症度の低い外科系患者1,548名を対象とし,術後の維持血糖値を80~110 mg/dLレベル,180~200 mg/dLレベルの2群に分類し,死亡率を解析したものである。管理初病日より1日量200~300 gのグルコースを投与し,1日あたり約71単位の速効型インスリンを用いて,血糖値を80~110 mg/dLレベルに維持している。結果として,この強化インスリン療法で血糖値を80~110 mg/dLレベルに維持した群では180~200 mg/dLレベルに維持した群と比較して,集中治療室(intensive care unit: ICU)での死亡率を8.0%から4.6%,5日以上ICUに滞在した患者群のICU死亡率を20.1%から10.6%,院内死亡率を10.9%から7.2%に減じていた。また,Van den Berghe Gら6)は,2003年のCrit Care Medにおいて,先のN Engl J Med 5)に報告した解析に血糖値110~150 mg/dLの群を併設し,死亡率を解析した。累積院内死亡率は血糖値150 mg/dL以上で約40%だったが,血糖値110~150 mg/dLで約26%,血糖値110 mg/dLで約15%に減じられていた。多変量解析により,血糖値20 mg/dLの増加により急性腎不全や感染症の合併率が高まることも確認され,さらに,インスリン10 IU/日の増加は3日以上持続するCRP 15 mg/dL以上の発生を有意に減少させていた。しかし,インスリン投与量の増加は糖尿病重症度やAPACHE-IIスコアと正の相関を示したため,インスリン投与量の増加自体が,急性腎不全や感染症の合併率を低下させてはいなかった。この報告6)では,血糖値20 mg/dLの上昇で死亡率が30%上昇し,血糖値200 mg/dLでは血糖値100 mg/dLの2.5倍に死亡率が高まると見積もられた。
一方,Finney SJ7)らは,2002年1月から6月までの単一ICUでの外科および内科患者523名に対する多変量ロジスティック回帰分析の結果,インスリン投与量の増大が患者重症度やICU死亡率と正の相関を示すことを確認した。患者重症度を同等とした解析からは,血糖値144 mg/dL以下の管理で,血糖値145~200 mg/dL の管理よりICU死亡率が有意に低下することが確認された。
以上のVan den Berghe Gら5, 6)とFinney SJら7)の結果より,2004年までの段階で,インスリンとは独立した因子として,血糖値管理こそが生命予後の改善に重要と考えられるようになった。Van den Berghe Gら5, 6)の臨床研究からは血糖値80~110 mg/dLの管理が望ましいと考えられるが,低血糖に対する具体的安全策が定まらない状況にあったため,2004年のSurviving Sepsis Campaign guidelines1)では推奨グレードDとして,血糖値150 mg/dL未満を目標に血糖管理を行うことが望ましいと公表された。
 
強化インスリン療法に関する臨床研究・基礎研究の動向

Van den Berghe Gら8)は, 2002年3月から2005年5月までの内科ICUで,さらに,APACHE-II スコアが23レベルの1,200名の検討を行った。この患者重症度を高めた検討においても,血糖値180-200 mg/dLに比較して,血糖値80-110 mg/dLに管理することで,急性腎不全合併率,人工呼吸管理期間,ICU管理期間が有意に減少し,特に,ICUに3日以上滞在した767名のサブグループ解析では,院内死亡率が52.5%から43%に減少していた。このようにAPACHE-IIスコアが23レベルの患者群でも,血糖値80-110 mg/dLレベルに管理する強化インスリン療法の意義が,Van den Berghe Gらにより追認されている。
 また,Van den Berghe Gら9)は,既に報告した外科ICU患者1,548名5,6)と内科ICU患者1,200名8)を合わせたサブグループ解析として,非糖尿病患者2,341名と糖尿病罹患患者407名の解析を加えた。非糖尿病患者群では,これまでの結果と同様に,血糖値150 mg/dL以上,110~150 mg/dL,80~110 mg/dLの管理の順に,有意に院内死亡率が低下していた。しかし,糖尿病罹患患者のサブグループ解析では,院内死亡率は血糖値150 mg/dLを超える管理で21.2%,血糖値110~150 mg/dLで21.6%,血糖値110 mg/dL未満で26.2%と,有意差を認めないものの,強化インスリン療法で死亡率が増加する危険性が示唆された。糖尿病病態の血管は,血管内皮細胞機能が損なわれ,血管拡張能が損なわれていることが,多くの基礎研究で示されている10-12)。糖濃度自体は,血漿蛋白存在下で濃度依存的に血管炎症を惹起し,誘導型NO合成酵素(iNOS)やプロスタサイクリンなどの血管拡張物質の産生を高めることが,培養細胞などを用いた基礎研究でも確認できる。また,糖尿病病態ではインスリンによる細胞内への糖取り込みに関与するグルコーストランスポータ4(GLUT4)などのインスリン受容体シグナル分子が減少している13)。糖尿病病態で血糖値を80-110 mg/dLに持ち込むには多量のインスリンを必要し,インスリン受容体のインスリン感受性を短時間で損なう可能性がある。
 1995年に報告されたDIGAMI study(diabetes mellitus insulin-glucose infusion in acute myocardial infarction)14)は,急性心筋梗塞を発症したHbA1cが8~8.2%レベルの糖尿病患者620名を対象に,1990~1993年にスエーデン19施設で行われた多施設合同前向き臨床研究である。80 IUの速効型インスリンを5%糖液500 mLに溶解し,30 mL/hの速度で静脈内投与する,言わば,グルコース・インスリン療法(GI)の効果検討である。GIにより,血糖値170 mg/dLレベルに維持した306名と血糖値210 mg/dLレベルに維持した314名の生命予後を比較した結果,血糖値170 mg/dLに調節した群で1年死亡率が26.1%から18.6%に低下していた。後に追試されたDIGAMI 2 study15)は,急性心筋梗塞を発症したHbA1c 7.2~7.3レベルの2型糖尿病患者1,253名を対象として,1998年1月より2003年5月までヨーロッパ44施設で施行された前向き臨床研究である。インスリン投与方法を3群に分けて解析し,血糖値を3群ともに170 mg/dLレベルに調節している。DIGAMI study で施行された24時間のGIのみの群,初病日のGIに加えて第2病日以降もインスリン皮下投与を継続した群,さらに,施設独自の管理でインスリンの有無にこだわらずに血糖値を170 mg/dLレベルに調節した群の3群を比較した結果,3群間の院内死亡率に差が認められなかった。すなわち,糖尿病を合併した急性心筋梗塞患者の生命予後において,長期的なインスリン投与やインスリン投与量が重要なのではなく,管理初期の血糖値管理こそが重要と結論された。糖尿病を合併した成人心臓血管外科術後1,579名の解析16)では,人工心肺中の血糖値が360 mg/dLを越える管理では死亡率が平均値1.7%レベルから6%に高まるとする結果が示されている。糖尿病患者であっても,一時的に300 mg/dLを越える極端な高血糖は避けるべきと考えられる。以上の結果より,術前の糖尿病管理状態を考慮することが必要であるものの,糖尿病を合併する患者の急性期における血糖値管理目標は,正常患者で提唱されている80~110 mg/dLレベルではなく,やや高い値である150~170 mg/dLレベルを目標とするのが望ましいと現在は評価される。
 強化インスリン療法における血糖値とインスリンの作用については,Ellger Bら17)による興味深い基礎研究がある。彼らは雄性ニュージーランド白兎を用い,膵β細胞をアロキサンで破壊し,20%熱傷を起こした全身性炎症モデルで検討を加えた。インスリンの外来投与により血漿インスリン値を43~47mU/Lに維持した正常インスリン群(NI)と血漿インスリン値を188~200 mU/Lに維持した高インスリン群(HI),グルコース投与により血糖値を80~110 mg/dLに維持した血糖正常群(NG)と血糖値を250~350 mg/dLに維持した高血糖群(HG)の2群ずつを掛け合わせ,4群の死亡率を比較評価した(図1)。その結果,高インスリン状態で高血糖に保った群(HI/HG)は正常インスリンレベルの高血糖群(NI/HG)と比べ,生存率が4日まで有意に高かった。この研究は動物研究であるものの,全身性炎症病態の初期における高濃度インスリンの生命保護効果をin vivoで示した貴重なデータである。

 

関連ページ(クリック)

周術期の血糖コントロールの意義 No.1

周術期の血糖コントロールの意義 No.2

周術期の血糖コントロールの意義 No.3


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周術期の血糖コントロールの意義 No.2

2007年03月23日 13時43分26秒 | 講義録・講演記録

高血糖による細胞傷害のメカニズム

 高血糖により傷害を受ける細胞はさまざまであり,網膜の毛細血管内皮細胞,腎糸球体のメサンジウム細胞,末梢神経のシュワン細胞に限られたものではない18, 19)。高血糖に対する生体反応は,血管内皮細胞や膵β細胞を含むさまざまな細胞で,その細胞内情報伝達系を介して惹起される。現在,高血糖の細胞傷害の機序には,①ポリオール経路,②ヘキソサミン経路,③AGE(advanced glycation end-product)産生経路,④ジアシルグリセロール(DAG)産生系路の4つの代謝経路が関与すると考えられている(図2)。
 急激な高血糖暴露では,まず,グルコースの細胞内取り込みを行うGLUTを介して細胞内グルコース濃度が上昇する。正常の血糖値レベルでは,細胞内に取り込まれたD-グルコースは主に解糖系で代謝されるが,細胞内に正常を超えるD-グルコースが取り込まれると,グルコースはアルドース還元酵素によりソルビトールに代謝され,ソルビトールはソルビトール脱水素酵素によりフルクトースに代謝される。ソルビトールやフルクトースは細胞内に貯溜しやすい安定物質であるため,アルドース還元酵素活性の高い網膜,水晶体,末梢神経,脳,肝臓,膵臓,赤血球,副腎では,高血糖にさらされて産生されるソルビトールやフルクトースにより細胞内浸透圧が上昇し,細胞傷害が惹起されると考えられていた。しかし,アルドース還元酵素阻害薬ソルビニルを用いた糖尿病犬の5年間の追跡研究20)では,ソルビニルは腎や筋肉や網膜の毛細血管レベルの構造変化を改善できず,末梢神経障害しか改善しなかった。Sorbinil Retinopathy Trial Research Groupによる臨床研究21)でも,ポリオール合成系を介した機序だけでは,糖尿病病態の細胞傷害を改善できないと評価された。現在本邦では,ポリオール合成経路に関与する糖尿病治療薬としては,エパルレスタット(キネダックⓇ)が糖尿病性末梢神経障害治療薬として臨床使用されているのみである。
一方,解糖系で産生されるフルクトース6リン酸の蓄積からは,グルタミン:フルクトース6リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)によるヘキソサミン経路を介して,グルコサミン6リン酸を経て,UDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)が生成される。このUDP-GlcNAcは,O-linked -N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)のセリン/スレオニン残基をリン酸化し,ゴルジ体や核内転写因子を機能修飾することが確認されている22, 23)。血管内皮細胞においてもO-GlcNAcは,specificity protein 1 family(Sp1),activator protein-1(AP-1),nuclear factor-B(NF-B)などの転写因子活性を高めるため,高血糖が独自に血管炎症を惹起する説明となる23)。
 解糖系の代謝産物グリセルアルデヒド3リン酸からは,AGEやDAGが産生される。AGEは,グリオキサール,メチルグリオキサールや3-デオキシグルコゾンなどのジカルボニル化合物を基質として産生される糖蛋白であり,主にRAGE(receptor of AGE)と結合して血管内皮細胞や炎症性浸潤細胞の転写因子NF-Bを活性化させ,tumor necrosis factor-(TNF-),interleukin-1(IL-1),iNOS,プロスタグランジン,組織因子,plasminogen activator inhibitor-1などのさまざまな炎症性物質を産生させる可能性を持つ(表1)24)。また,グリセルアルデヒド3リン酸より代謝されたジヒドロキシアセトンリン酸塩(DHAP)は,-グリセロール1リン酸を経てDAGとなり,プロテインキナーゼC(PKC)を活性化する。高血糖状態の血管内皮細胞や血管平滑筋では,主にPKC-βとPLC-δが活性化することが知られている11, 12)。血管内皮細胞におけるPKC-β活性は,eNOSの発現を転写段階で抑制し,ずり応力による血管拡張作用を傷害する可能性が示唆されている25)。
 解糖系で重要な役割を担うglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)などの解糖系酵素は,ミトコンドリア酸化ストレスにより産生された活性酸素種により,66%以上に活性を低下させる26)。周術期,虚血再灌流,SIRSによりさまざまな細胞で産生された活性酸素種は,GAPDHの活性を低下させることにより,ポリオール経路,ヘキソサミン経路,DAG産生経路,AGE産生経路を活性化させると考えられる。このような観点から,周術期管理においても組織虚血を如何に減じ,酸化ストレスを如何に抑制するかの治療指針も重要である27)。強化インスリン療法は,周術期の高血糖病態において,インスリン受容体を持つ細胞に無理やりグルコースを取り込ませることで血糖値を下げ,免疫担当細胞などのインスリン非依存的に糖を取り込む細胞の炎症を軽減させようとする方法である。インスリン受容体を持つ細胞には,インスリンを介した独自の細胞保護作用が存在するが,これらにも耐糖能異常を来たす限界があるようだ。

インスリンによる細胞保護のメカニズム
 
 インスリン受容体は分子量135 kDaのαサブユニットと,95 kDaのβサブユニットの糖蛋白がジスルフィド結合した4量体であり,骨格筋細胞,脂肪細胞,肝細胞のみならず,小腸,脾臓,血管内皮細胞にも存在し,脳では大脳皮質,線状体,脈絡叢,嗅球にも豊富に存在する28, 29)。インスリンがインスリン受容体と結合して細胞内にグルコースを取り込むには,①IRS(insulin receptor substrate)-PI3K(phosphatidylinositol 3-kinase)経路,②Gqα/11-PI3K経路,③CAP-Cbl-TC10経路の3つの経路が存在し,Akt,あるいは,PKC(λ,ζ)を活性化することが必要となる30-32)。このAktやPKCの活性化の結果として,GLUT4の細胞膜移動が高まり,インスリンによるグルコースの細胞内取り込みが行われる。
 このうち,Aktは,血管内皮細胞をはじめ,さまざまな細胞の恒常性を維持するために不可欠なリン酸化酵素である。元来,AktはAKT8と呼ばれるレトロウイルス由来の癌遺伝子v-aktに対応する癌原遺伝子として命名され,その構造がPKAやPKCに類似するため,PKBとも呼ばれるセリン・スレオニンキナーゼである33) 。このAktは,血管内皮細胞をはじめとするインスリン効果細胞で,GLUT4の細胞膜輸送を高めるほか,Badリン酸化によるアポトーシス抑制作用,mTOR活性化による蛋白合成促進作用を持つ。SIRSではPI3K-Akt活性が血管内皮細胞で低下する傾向があり, Akt活性を維持するスタチンやインスリンは,血管内皮細胞の恒常性を維持するために重要な役割を担う34-36)。インスリン受容体を介したインスリン受容体発現細胞への保護作用は,主にAkt活性の維持を介して惹起されると考えられている34-37)。
 
インスリン投与量の調節方法
スライディングスケールとダイナミックスケール

 強化インスリン療法として,血糖値を80~110 mg/dLレベルに維持するためには,低血糖対策や,目標血糖値達成の迅速性などの,いくつかの留意点が必要である。Vrisendrop TMら38)は,APACHE IIスコア 20レベルの2,272名のICU患者解析を行った結果,6.9%にあたる156名が血糖値45 mg/dL以下の低血糖を合併したと報告しており,その多変量解析により,低血糖リスク因子として,①糖尿病罹患暦,②敗血症,③インスリン投与,④インスリン投与中の低栄養化,➄重炭酸イオンを用いた体外循環,⑥心作動薬の併用を挙げている。Kanji Sら39)は,速効型インスリン50 IUを生理的食塩水50 mLに希釈して静脈内持続投与とするスライディングスケールのプロトコールを提示し,ベッドサイド簡易型血糖測定器を用いて,1~2時間ごとに血糖値測定を行っているものの,目標血糖値達成までに約11時間を必要としている点にも注意が必要である。
Thorell Aら40)の報告では,開腹胆摘術でさえ,術後初病日のインスリン感受性は約47%に減弱している。手術患者であれば,術中からの十分な血糖管理が,術後管理における血糖管理を用意とすることは疑いないが,その厳密な管理は生体侵襲の強い手術ほど難しい。さらに,第2病日以降のカロリー負荷により,血糖管理に難じる可能性があり,インスリン投与量を栄養と同時に評価する必要がある。このような観点から,スライディングスケールに変わるダイナミックスケールが注目され,試作コンピュータソフトやLonergan Tら41, 42)によるSPRINT(Specialized Relative Insulin Nutrition Tables)プロトコールなどが発表されている。このSPRINTは円型版として用意された栄養ホイールとインスリンホイールを回すことで,適切なインスリン持続投与量をベッドサイドで簡易に設定できるのが特徴である。Lonergan Tら42)は,APACHE IIスコア21レベルの患者19名を対象として,SPRINT プロトコールと,ルーバン大学プロトコール6),AIC4 プロトコール43),メイヨークリニックプロトコール44),バス大学プロトコール45),エール大学プロトコール46),CDHBプロトコール42)のスライディングスケールを比較評価した結果,血糖値75-110 mg/dLに持ち込むのに最も適したものとして,SPRINT プロトコール42)とAIC4 プロトコール43) を挙げている。現在,著者は,表2のスライディングスケールを用いている。このスライディングスケールは,患者のインスリン感受性を評価し,アルゴリズムの選択を変えるものである。しかし,この表におけるスケール3や4の選択は,過度の栄養負荷か,明らかにインスリン受容体シグナルの低下した病態を示すものであり,インスリン以外の別の治療を併用する必要がある。現在本邦では,peroxisome proliferator-activated receptor-γ(PPAR-γ)の作動薬であるピオグリタゾン(アクトスⓇ)が,インスリン抵抗性改善薬として臨床使用されている。PPAR-γ作動薬は,不全心の増悪に留意する必要があるものの,SIRSにおける抗炎症作用をもち,特にインスリン抵抗性を持つ炎症病態での血糖管理に十分に期待される薬物と考えている47-49)。

血糖値測定法に関する留意点

 集中治療領域の貧血の原因として頻回の採血が挙げられるため,血糖管理においてもベッドサイドの簡易型血糖測定器を用いた0.3 µLレベルの採血で対応する可能性がある。しかし,現在利用できる簡易型血糖測定器では低血糖値に対する誤差が大きいばかりか,術後などの血管透過性の亢進した病態では,採血部位により低血糖を見逃す危険があることに留意しなければならない。
Kanji Sら50)は,外科術後患者,血管作動薬使用患者,浮腫患者を対象に,動脈血と毛細血管血,および,ベッドサイド簡易型血糖測定器とガス分析器の感度比較を施行した結果,検査室でのオキシダーゼ/カタラーゼ法と比較して,毛細血管血や簡易型血糖測定器は低血糖を見落としやすいと報告した。低血糖阻止を目標としてベッドサイド簡易型血糖測定器が改良される必要があるが,それでも指先や耳介から採取する毛細血管血では,低血糖を見逃す可能性があることに留意しなければならない。周術期の血糖コントロールを厳密に行うためには,観血的動脈圧測定と同様に,持続モニタが望ましい。現在,このような観点より,皮下脂肪糖濃度が血糖値と正の相関することを利用した皮下グルコースセンサーが公表され51, 52),また,腸液を用いた微量持続解析や動脈圧ラインからの持続測定法などが検討されている。このような開発を日本でも独自に進め,実用化を検討することが,今後の周術期血糖管理に必要と考えられる。


おわりに

 周術期血糖管理は,周術期炎症を軽減し,患者生命予後を改善するために不可欠と考えられるようになった。本稿では,血糖管理に関するこれまでの臨床研究をまとめ,この病態生理学的意義を基礎研究に照らして整理した。しかし,現在のさまざまな臨床研究においても,患者急性期のインスリン感受性の極端に低下した病態における薬剤指針は見当たらない。重症度の高い急性期病態では,インスリン受容体シグナルが損なわれている可能性があり,インスリン持続投与に頼る血糖値管理が,すべてではない。我々麻酔科医は,全身性炎症の一環として高血糖病態を捕らえるとともに,急性期高血糖の病態をより探求し,より良き治療を発見する可能性をもつと考えている。

記載
周術期の血糖コントロールの意義 No.2

2007年3月

京都大学大学院医学研究科
初期診療・救急医学分野
准教授

松田直之

 

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周術期の血糖コントロールの意義 No.1

周術期の血糖コントロールの意義 No.2

周術期の血糖コントロールの意義 No.3


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周術期の血糖コントロールの意義 No.3

2007年03月23日 13時40分19秒 | 講義録・講演記録

文  献

1. Dellinger R, Carlet JM, Masur H, et al: Surviving sepsis campaign guidelines for management of severe sepsis and septic shock. Crit Care Med 2004; 32:858–73
2. Members of the American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference Committee: Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med 1992; 20: 864–74
3. Matsuda N, Hattori Y: Systemic inflammatory response syndrome (SIRS): Molecular pathophysiology and gene therapy. J Pharmacol Sci 2006;101: 189-98
4. 松田直之: 全身性炎症反応症候群とToll-like受容体シグナル -Alert Cell Strategy-. 循環制御 2004; 25:276-84
5. Van den Berghe G, Wouters P, Weekers F, et al: Intensive insulin therapy in the critically ill patients. N Engl J Med 2001;345:1359-67
6. Van den Berghe G, Wouters PJ, Bouillon R, et al: Outcome benefit of intensive insulin therapy in the critically ill: insulin dose versus glycemic control. Crit Care Med 2003;31:359–66
7. Finney SJ, Zekveld C, Elia A, et al: Glucose control and mortality in critically ill patients. JAMA 2003;290:2041-7
8. Van den Berghe G, Wilmer A, Hermans G, et al: Intensive insulin therapy in the medical ICU. N Engl J Med 2006;354:449-61
9. Van den Berghe G, Wilmer A, Milants I, et al: Intensive insulin therapy in mixed medical/surgical intensive care units: benefit versus harm. Diabetes 2006;55:3151-9
10. Hattori Y, Matsuda N, Sato A, et al: Predominant contribution of the G protein-mediated mechanism to NaF-induced vascular contractions in diabetic rats: association with an increased level of Gq expression. J Pharmacol Exp Ther 2000;292:761-8
11. Deedwania PC: Diabetes is a vascular disease: the role of endothelial dysfunction in pathophysiology of cardiovascular disease in diabetes. Cardiol Clin 2004;22:505-9
12. Winer N, Sowers JR: Diabetes and arterial stiffening. Adv Cardiol 2007;44:245-51
13. Klip A, Tsakiridis T, Marette A, et al: Regulation of expression of glucose transporters by glucose: a review of studies in vivo and in cell cultures. FASEB J 1994;8:43-53
14. Malmberg K, Ryden L, Efendic S, et al: Randomized trial of insulin-glucose infusion followed by subcutaneous insulin treatment in diabetic patients with acute myocardial infarction (DIGAMI study): effects on mortality at 1 year. J Am Coll Cardiol 1995;26:57–65
15. Malmberg K, Ryden L, Wedel H, et al: Intense metabolic control by means of insulin in patients with diabetes mellitus and acute myocardial infarction (DIGAMI 2): effects on morbidity and mortality. Eur Heart J 2005; 26:650–61
16. Doenst T, Wijeysundera D, Karkouti K, et al: Hyperglycemia during cardiopulmonary bypass is an independent risk factor for mortality in patients undergoing cardiac surgery. J Thorac Cardiovasc Surg 2005;130:1144 e1-8
17. Ellger B, Debaveye Y, Vanhorebeek I, et al: Survival benefits of intensive insulin therapy in critical illness: impact of maintaining normoglycemia versus glycemia-independent actions of insulin. Diabetes 2006;55:1096-105
18. Scheepers A, Joost HG, Schurmann A: The glucose transporter families SGLT and GLUT: molecular basis of normal and aberrant function. J Parenter Enteral Nutr 2004;28:364-71
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関連ページ(クリック)

周術期の血糖コントロールの意義 No.1

周術期の血糖コントロールの意義 No.2

周術期の血糖コントロールの意義 No.3


図と表の説明


図1 ウサギ20%熱傷モデルの累積生存率
 Ellger Bら17)は雄性ニュージーランド白兎を用い,膵β細胞をアロキサンで破壊し,20%熱傷を起こした全身性炎症モデルで検討を加えた。高インスリン状態で高血糖に保った群(HI/HG)は正常インスリンレベルの高血糖群(NI/HG)と比べ,生存率が4日まで有意に高かった。図は文献17より引用。

図2 高血糖による細胞傷害のメカニズム
 高血糖の細胞傷害の機序には,①ポリオール経路,②ヘキソサミン経路,③AGE(advanced glycation end-product)産生経路,④ジアシルグリセロール(DAG)産生系路の4つの代謝経路が関与する。GFAT: グルタミン フルクトース6リン酸アミドトランスフェラーゼ,UDP-GlcNAc: UDP-N-アセチルグルコサミン,ジヒドロキシアセトンリン酸塩(DHAP),PKC: プロテインキナーゼC,GAPDH: グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ。

図3 インスリン受容体シグナル
 
表1 転写因子NF-kB の活性化により増加する炎症性物質

表2 ICUにおける血糖値管理スケールの1例


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人工呼吸患者さんの鎮静参考 Ramsay Score 前編 (ICU看護師さん用)

2006年12月18日 08時38分17秒 | 講義録・講演記録
How to use the Ramsay Score to assess the level of ICU Sedation

Michael A. E. Ramsay M.D.

Introduction
Virtually every patient admitted into the intensive care unit (ICU) is administered sedation therapy. The precise control of the depth of sedation is often not well managed. Patients are frequently over or under-sedated with, as a result of this lack of control, an accompanying increase in morbidity, mortality and economic cost.
Over 25 years ago, an attempt was initiated to bring the control of sedation level up to the same level of intense management as the control of hemodynamics, fluid and electrolyte balances, oxygen and metabolic parameters [1]. This concept has taken a long time to reach the critical care pathway of the majority of ICUs. However, economic issues and advances in pharmacology, have lead to a critical re-evaluation of sedation techniques, so that the goal of a heavily sedated or comatose patient for the maintenance of ventilator synchrony, is now changing to the goal, where possible, of a calm, co-operative, comfortable and communicative patient, who can interact with family members and medical staff. This change in practice pattern has resulted in shorter periods of time on mechanical ventilation support, leading to a shorter stay in the intensive care unit [2,3].

Sedation goals

The effective management of pain, anxiety and sleep (hypnosis) are the major aims of a sedation therapy regimen. The ICU environment frequently lends itself to being an unpleasant experience for the critically ill patient. The patient is exposed to numerous ominous and frightening procedures that are a necessary part of the care process. In an effort to make this clinical arena a more humane place to be treated, sedation therapy is administered. The careful and precise control of sedation therapy may lead to better control of the patient requiring mechanical ventilation support, and reduce the requirement for the use of neuromuscular blocking agents.
The desired result of a sedation regimen is to allow the patient to tolerate the physical environment, and the unpleasant procedures and therapies that are necessary in the ICU; to facilitate nursing care and management, and reduce both anxiety and stress, so that post-traumatic stress disorder does not occur after discharge from the unit. Patient safety is paramount, and the avoidance of self-extubation and inadvertent removal of catheters and other life dependency equipment is essential. Amnesia is probably another useful goal of sedation therapy, so that the patient has no recall of unpleasant events or surroundings. It has, however, been suggested that patients recovering from intensive care therapy, may have an unrealistic outlook on their recovery, if they have no recall on the severity of their illness [4].
The blunting of autonomic responses, reduced oxygen consumption and ventilator synchrony are other important goals of sedation therapy. The maintenance of a normal sleep pattern can help maintain psychological well-being, as well as preventing exhaustion and the loss of a desire to survive. Patient agitation is another common problem in the critical care unit, it may result from a specific cause such as hypoxia, under ventilation, metabolic derangement and other correctable entities that should be addressed first, but it may be the result of sleep deprivation, or pharmacological interactions, and require sedation to control [5-9].

Pain management

The effective management of pain is essential in the proper management of sedation, and results in improved patient satisfaction, a faster recovery with reduced complications [10]. This has to be the priority when assessing a patient's sedation requirements. Adequate analgesia may reduce the necessity for other sedative therapy. Nearly all patients in the ICU experience pain, whether it is the result of procedures performed on them, the disease process, catheters or tubes inserted into them, or because they are immobile and cannot shift position. If the patient is paralyzed or obtunded, they will have lost the ability to communicate the severe discomfort that they may be in, to the care team. The sequelae of severe untreated pain can be long lasting psychological effects on the patient, together with adverse haemodynamic changes. Tachycardia and hypertension, together with an increase in systemic vascular resistance, will cause an increase in myocardial oxygen consumption and demand, that may result in myocardial ischemia [10]. There may also be a deleterious effect on the immune system in an all ready compromized patient who is trying to combat a serious illness, but foremost it is inhumane not to adequately treat pain. The precise control of pain can reduce the need for deep sedation and reduce the necessity for muscle relaxants. The mainstay of analgesic therapy is still the opiates. Morphine or fentanyl are two of the narcotics most frequently administered in the ICU. They are effective pain relievers, but come with significant side effects, that may have a deleterious effect on the patient [11]. The balance between the adverse effects of the opioid analgesics, and the beneficial effect of analgesia, is a limiting factor in their use and the appropriate pain therapy delivered to these critically ill patients. These adverse effects include respiratory depression, deep sedation, narcotic bowel syndrome, pruritus, nausea, vomiting and a decreased ability to communicate. Nearly all the narcotics have active metabolites that will cause a prolongation of their effects when continually administered to patients with multi-organ system failure. This is the common profile for the intensive care patient; therefore there may be an insidious build up in the narcotic actions of these agents. Remifentanil, a relatively new, mu-receptor specific opiate that is rapidly metabolized by non-specific esterases into metabolites with very weak narcotic activity, may have a future role to play in the close control of pain in the critically ill patient [12].

Over sedation

The results of over sedation in the mechanically ventilated patient are an increased time being ventilated, an increased time in the intensive care unit, and an increased cost of care. The common effect of an increasing dose of most sedative agents is respiratory depression. This may facilitate ventilator synchrony, but will prolong the weaning process. In the extubated patient it may be associated with severe hypercarbia, hypoxia and respiratory arrest.
There is no sensitive monitor of respiratory depression in the extubated patient, who is receiving supplementary oxygen. Under these circumstances, the only parameters that correlate well with respiratory depression are respiratory pattern and level of consciousness. Respiratory rate and end-tidal carbon dioxide measured via a nasal cannula, are not reliable monitors of depressed respiration [13]. The pulse oximeter is a LATE detector of respiratory depression, when there is an increased concentration of inspired oxygen [14].

Under sedation

The untoward effects of under sedation include an increased production of endogenous catecholamines, that results in an increase in blood pressure, heart rate and myocardial oxygen consumption. The patient may be at risk for self injury from the accidental removal of the endotracheal tube or vital catheters. The mental sequelae from being awake while painful, and terrifying procedures are performed on the patient can be the development of a post-traumatic stress disorder, that may require prolonged therapy after discharge [15]. The patients’ who are unresponsive because of the administration of neuromuscular blocking drugs are most at risk [16].
Sleep deprivation is very common, and can result in the development of the typical ICU psychosis [17].

Controlled Sedation

To prevent the adverse complications of poorly controlled sedation, sedation therapy should be administered in a careful and precise manner. The depth of sedation should be clearly defined and the infusion of sedative drug precisely targeted to this clinical endpoint. If the patient is sedated to an unrousable depth, then unless clinically contraindicated, they should be brought to a level where a neurological assessment can be made every 24 hours [18]. In his manner a cerebral insult will not go undetected. By defining the sedation level and carefully controlling the sedation infusion to meet this endpoint, the dangers of over or under sedation are minimized. It will also provide for continuity of care, as all care-givers understand the required depth of sedation.
To be able to reach this goal the routine use of sedation scales is essential. The scoring system selected for use must be easily understood, used routinely and be part of the regular assessment of the ICU patient In fact sedation scoring systems should be in regular use where ever potent respiratory depressant drugs are being used.

Sedation Scoring Systems.

A sedation scoring system should be an integral component of any sedation protocol. The four most validated scoring systems include: The Ramsay Sedation Scale; The Sedation Agitation Scale; The Motor Activity Assessment Scale and for the pediatric population: The Comfort Scale [19].

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人工呼吸患者さんの鎮静参考 Ramsay Score 後編 (ICU看護師さん用)

2006年12月17日 15時54分03秒 | 講義録・講演記録
Controlled Sedation

To prevent the adverse complications of poorly controlled sedation, sedation therapy should be administered in a careful and precise manner. The depth of sedation should be clearly defined and the infusion of sedative drug precisely targeted to this clinical endpoint. If the patient is sedated to an unrousable depth, then unless clinically contraindicated, they should be brought to a level where a neurological assessment can be made every 24 hours [18]. In his manner a cerebral insult will not go undetected. By defining the sedation level and carefully controlling the sedation infusion to meet this endpoint, the dangers of over or under sedation are minimized. It will also provide for continuity of care, as all care-givers understand the required depth of sedation.
 To be able to reach this goal the routine use of sedation scales is essential. The scoring system selected for use must be easily understood, used routinely and be part of the regular assessment of the ICU patient In fact sedation scoring systems should be in regular use where ever potent respiratory depressant drugs are being used.

Sedation Scoring Systems.

 A sedation scoring system should be an integral component of any sedation protocol. The four most validated scoring systems include: The Ramsay Sedation Scale; The Sedation Agitation Scale; The Motor Activity Assessment Scale and for the pediatric population: The Comfort Scale [19].

 The Ramsay Sedation Scale
The Ramsay Sedation Scale (RSS, Table), was the first scale to be defined and was designed as a test of rousability. The RSS scores sedation at six different levels, according to how rousable the patient is. It is an intuitively obvious scale and therefore lends itself to universal use, not only in the ICU, but wherever sedative drugs or narcotics are given. It can be added to the pain score and be considered the sixth vital sign.

Ramsay Sedation Scale

 1 Patient is anxious and agitated or restless, or both

 2 Patient is co-operative, oriented, and tranquil

 3 Patient responds to commands only

 4 Patient exhibits brisk response to light glabellar tap or loud auditory stimulus

 5 Patient exhibits a sluggish response to light glabellar tap or loud auditory stimulus

 6 Patient exhibits no response

The RSS defines the conscious state from a level 1: the patient is anxious, agitated or restless, through the continuum of sedation to a level 6: the patient is completely unresponsive. Therefore when an assessment is to be made, the first decision to be made is to note if the patient is awake. If the patient is awake: are they anxious, agitated or restless (RSS 1) or are they calm, co-operative and communicative (RSS 2)? If the patient is asleep then a test of reusability needs to be made. If the patient responds quickly to a voice command, this is a RSS 3. If the response is slow then the patient is assigned a level 4. If the patient does not respond a stronger stimulus is applied. A louder auditory stimulus or a glabellar (between the eyebrows) tap is enacted. A brisk response to this test of rousabilty places the patient at a RSS 4. A slow or sluggish response categorizes the patient to a RSS 5. No response at all places the patient at a level 6.

 The rousability stimulus was specifically designed not to be a painful test and not to startle the patient. In fact it was planned that a sleeping patient would not be roused to a fully awakened state, so that the sleep pattern would not be disturbed.

A disadvantage of the RSS is that it relies on the ability of the patient to respond, therefore the patient who has received neuromuscular blocking drugs cannot be assessed in this manner. Also at a level 1 score, there is no further definition of the degree of agitation, and there are occasions when this may be important to record. The Sedation-Agitation Scale does take this into consideration [20]. At the deep end of the scale, a RSS 6, there is no further information as to whether the patient is in a light plane of general anesthesia or deep coma. This assessment can be made from monitoring the compressed spectral array signal from an electroencephalogram, A bispectral index score of 61.7 correlates well with a RSS of 6.

Conclusion
 Despite the ready availability of sedation scales over the last 25 years, a review of ICU practice reveals that many units still do not closely control the level of sedation in their critically ill patients. In those units where sedation scoring systems are used fewer than half the patients are at the prescribed level for more than 50% of the time. Therefore there is still an opportunity to educate the importance of the dynamics of assessment, re-assessment and adjustment in the rate of delivery of sedative. This dynamic is essential to avoid the complications associated with over and under sedation.

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看護師さん用 DICの疑わしい症状 ―観察上の注意点ー

2006年11月27日 16時21分17秒 | 講義録・講演記録

看護師さん用DIC講座

DICの疑わしい症状 ―観察上の注意点―



京都大学大学院医学研究科
初期診療・救急医学分野
准教授 松田直之


はじめに

 播種性血管内凝固症候群(Disseminated Intravascular Coagulation: DIC)は,どうもよくわからない,難しいと考えている看護師さんが多いと聞きます。この特集では,DICに対する苦手意識を取り除き,DICのより良い観察の基盤をつくることを目的とします。DICの早期診断と治療をふまえて,DIC観察のポイントを解説します。


診断基準にそったDICの観察を行いましょう

 日本救急医学会DIC特別委員会により「急性期DIC診断基準」が2005年に発表されました1)。ここに提示されていますように,すべての侵害刺激,生体侵襲は患者さんの急性期にDICを引き起こす可能性があります。この急性期DIC診断基準を用いると,厚生労働省や国際血栓止血学会のDIC診断基準よりも,早い段階でDICを疑い,そして,早い段階からDICの診断と治療を行うことができます。
 写真(図)を御覧ください。写真はマウスが敗血症に罹患したときの肺の走査型電子顕微鏡像です。写真には肺胞と血管が写っていますが,たくさんの血小板が血管内皮細胞や肺胞に付着し,フィブリン網を形成していることがわかります。敗血症患者さんの管理では,このような肺に対して人工呼吸を行っているとイメージするとよいです。血小板やフィブリンは体表の見える創部の止血に関与するだけではなく,通常では私たちが観察できない体内の血管や組織にも集積し,創傷治癒に関与しています。外傷では体表だけではなく体内の創部へ血小板が集積しますし,敗血症では血管内皮細胞傷害の進行により血小板が血管内皮細胞に沈着するようになります。このような結果として,血液中の血小板数が低下し,些細な傷に対しても出血傾向が出現します。日本救急医学会DIC特別委員会により作成された急性期DIC診断基準では,血管内皮細胞傷害を導く可能性のある全身性炎症が存在するかどうか,そして,結果として生じる末梢血の血小板数の急激な低下があるかどうかに,観察の重きが置かれていると理解しましょう。

DICをひき起こす基礎疾患の把握が大切です

 日本救急医学会DIC特別委員会の急性期DIC診断基準では,DICをひき起こす基礎疾患を提示しています。このような基礎疾患の病態を理解しておくことでDICに対して注意深くなることができます。表1は,DICを合併しやすい基礎疾患をチェックしやすいようにまとめたものです。表1を参照して,このような病態では,DICの合併を早期から疑うように工夫してください。
 これまでDICは凝固優位型と線溶優位型に分類されていました。古い成書では,今でも,このような記載が残されています。しかし,DICの本体は凝固亢進ですから,凝固優位型という表現はふさわしくありません。このため,現在は,凝固が亢進することを前提として,凝固を溶かす線溶作用のレベルで線溶抑制型と線溶亢進型の2つにDICを分類しています。線溶抑制型DICは敗血症や外傷,術後などの全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome: SIRS)に合併し,線溶亢進型DICは急性前骨髄性白血病(acute promyelocytic leukemia: APL)などの白血病や,前立腺がんや肺がんなどの固形がんに合併します。線溶亢進型DICの代表である白血病や固形がんのケアにおいても,感染症の合併や輸血によってDICが進行する可能性に注意しなければなりません。そして,線溶抑制型のDICでは,トラネキサム酸(トランサミンⓇ)などの抗線溶療法により深部静脈血栓症を合併する危険があり,抗線溶療法には注意が必要となります。
 
SIRSに対する理解を深めましょう

 全身性炎症SIRSは,1991年に行われた米国胸部疾患学会と米国集中治療医学会の合同カンファレンスで提唱された疾患概念です2)。集中治療室や救急外来で看護にあたっている皆さんには,SIRSは聞きなれた症候群かもしれません。全身性炎症には,DICが合併しやすいことを理解しておくことが大切です。むしろ,全身性炎症がなければ,表1にあげた血管性病態,悪性腫瘍,産科疾患以外にはDICを発症しにくいと理解してよいと思います。
 このDICを合併しやすいSIRSの病態は,サイトカインストーム(サイトカインの嵐)と呼ばれています。炎症を増悪させるtumor necrosis factor(TNF)やインターロイキンなどの炎症性サイトカイン,白血球を遊走させるケモカインなどが好中球やマクロファージなどの白血球などが過剰産生されることで,SIRSが形成されます。外傷,予定された外傷である手術,広範囲熱傷,急性膵炎,長期絶食などでは,このような炎症性サイトカインが過剰産生されてSIRSが惹起されます。近年は,これらのSIRSを導く原疾患に,感染症が合併することにより,感染症が2次性侵害刺激(2nd attack,2nd hit)として働き,SIRSをより重篤な状態とすることが解明されてきました。現在,敗血症(sepsis: セプシス)は感染症を原因とするSIRSと定義されていますが,この感染の合併によりSIRSが重篤化した病態こそが重症敗血症(severe sepsis: 重症セプシス)と呼ばれている重症病態です。SIRSの重篤化の際にはDICを合併し,多臓器不全がさらに進行することに注意しなければなりません3)。以上のことから,患者さんが既にSIRS状態にある場合には感染症管理が非常に重要であり,感染防御のために,接触感染予防策を徹底することが必要です。さらに,看護に当たる皆さんも,適時,細菌培養検査結果をチェックし,どのような菌がどこから検出されているか,そして,どのような感受性のある抗菌薬が用いられているかを把握しておくことが大切です4, 5)。
 SIRSの診断は,表2に示したように,体温,心拍数,呼吸数,白血球数の4つの項目から成り立ちます。このうち,2つ以上の項目を満たす場合にSIRSと診断されます。日本救急医学会DIC特別委員会の急性期DIC診断基準では,SIRSの診断項目3つ以上でスコア1点と数えます。SIRS病態の時系列にそった申し送りが,DIC早期発見に必要となります。

カテーテル刺入部からの出血が止まらない

 先生,中心静脈カテーテルや末梢静脈カテーテルの刺入部から出血が止まらないので,止血してください・・・。カテーテル刺入部からの出血,口腔内清拭における出血,持続する鼻出血,黒色便などの下血,胃液に混入する黒色残渣,多発性皮下出血,これらは,まさに,出血徴候であり,DICの徴候とも考えられます。ここで注意すべき点は,このような出血徴候を示すDIC以外の病態を念頭に入れて,医師の治療方針を確認することです。カテーテルの刺入部を縫合し,止血にあたることは大切ですが,これが出血の原因を改善させる本質的な治療ではないことに注意しなければなりません。
 表3には,DICとの鑑別が必要な血小板減少が生じる病態,PT時間が延長する病態,フィブリン分解産物(FDP)が上昇する病態を示しました。医師がDICを診断する際に必ず評価する内容です。出血傾向を認めた際には,このような病態をDICと鑑別する必要があることを,理解しておかなければなりません。
 大量出血や大量輸血を必要とした手術後や外傷初期診療のあとでは,血小板輸血を行っていない限り,血小板数は低下しています。このような場合には,確かに,重篤な侵害刺激が加わったために炎症に伴うDICに発展する場合が多いですが,ただ単にフィブリノーゲンや凝固因子,血小板が減少しているだけでも1次止血が損なわれ,出血傾向が現れます。新鮮凍結血漿製剤や血小板製剤の輸血を予定している場合は,担当医師がプロトロンビン時間(PT時間)や血小板数をどのくらいに維持したいと考えているのかを理解する必要があります。また,ヘパリンを持続投与している場合は,それが原因で血小板数が低下してくる場合があります。ヘパリンを使用して透析や冠動脈インターベンションを行った際に,血小板数が減少してくる場合があります。このような病態はヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia: HIT)と呼ばれており,ヘパリン投与患者さんの約10%に認められるようです。ヘパリン投与後の患者さんで急激な血小板数の低下を認めた場合には,ヘパリン惹起血小板凝集法やELISA法でHIT抗体やヘパリン依存性抗体を検出して,DICとの鑑別を行う必要があることを記憶しておくとよいでしょう。
 
急性期DIC診断基準と診断後の観察

 日本救急医学会DIC特別委員会の急性期DIC診断基準を表4に示しました。たとえば,SIRSの診断項目が3つ以上あれば1点,血小板数が8万以下に低下すれば3点で,合計4点以上となり,DICと診断します。この診断基準では,スコア4点以上でDICと診断します。線溶抑制型DICでは凝固分解産物であるFDPやDダイマーの上昇は少ないですが,線溶亢進型DICでは25 µg/mLを超えるFDPの上昇が認められます。一般に,SIRSに伴うDICは線溶抑制型DICですから,DICの急性期にはFDPやDダイマーの上昇が軽度ですが,炎症が落ちつき,DICが改善してくると,線溶系が回復してくるので,FDPやDダイマーが上昇してきます。SIRSに伴うDICでは治療効果が得られてくると,FDPやDダイマーは上昇してくると考えてよいでしょう。DICをひき起こしやすい基礎疾患(表1参照)が存在する場合は,表4の急性期DIC診断基準を用いて,DICスコアを毎日計算することが大切です。
 DICの診断がつくと,血小板濃厚液や新鮮凍結血漿を用いた補充療法が開始されると思います。厚生労働省は,血小板濃厚液の投与目安は血小板数5万/mm3未満,新鮮凍結血漿の投与目安は,PTがINR2.0以上あるいは活性値30%未満,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が各施設の正常値の2倍以上の延長あるいは活性値25%未満,フィブリノーゲンが100mg/dL未満を,推奨しています6)。アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)も活性値を70%以上に維持することが重要と考えられていますし,活性値150%以上では抗炎症効果も期待できます。主治医は, DICの改善効果を目標に,これらの投与量をさじ加減していると思います。看護に当たる皆さんも,補充療法やDIC治療薬により,DICスコアや出血傾向が改善されてきているかを観察し,評価し続けることが大切です。

DICの抗凝固療法はここに気をつけよう

 DICの治療は原疾患の治療,抗凝固療法,補充療法,感染管理の4つを柱とします。この4つに十分に対応できれば,必ずやDICの改善を確認できると思います。このうち,抗凝固療法には,いくつかの注意点があります。
 現在,抗凝固療法には,未分画ヘパリン,低分子ヘパリン(ダルテパリン:フラグミン),ヘパリノイド(ダナパロイド:オルガラン),蛋白合成酵素阻害薬(メシル酸ガベキサート:FOYⓇ,メシル酸ナファモスタット:フサン)が用いられています。また,DICでは大切なこととしてアンチトロンビン活性(AT活性>70%)の維持に注意して下さい。薬剤ですが,ダナパロイドは,腎機能障害を合併している場合にには血液浄化法で除去できないため,出血性副作用が強く現れる危険性があるため,使用しない傾向があります。未分画ヘパリンは活性化凝固時間(ACT)やAPTTで凝固抑制をモニタし,低分子ヘパリンは抗Xa活性で凝固抑制をモニタすることにより,出血性副作用を軽減させることが大切です。これらのヘパリン類は凝固系を阻害しすぎれば出血を助長させることになりますが,先に述べたHITによる血小板数を減少させる可能性もあります。ヘパリン類を使用する際には,特に,出血症状が増悪する可能性に注意して観察を続ける必要があります。また,ヘパリン類の抗凝固作用はATⅢ活性に依存して発揮されますから,炎症の強いSIRS病態でATⅢ活性が低下している場合にはヘパリン類の効果が減じ,抗凝固が十分に行われない可能性にも注意が必要です。AT製剤の使用はヘパリンと併用として添付文書に記載されていますが,実際にはヘパリンと併用しないでAT活性を70%以上に保つことで生命予後の改善が期待されます。
 一方,蛋白合成酵素阻害薬であるメシル酸ガベキサート(FOY)とメシル酸ナファモスタット(フサン)は,出血性副作用の危険性が少ないため,急性期のDICの治療に頻用されています。メシル酸ガベキサート(FOY)は抗凝固作用が期待できますが,抗線溶作用が微弱なので,SIRSに起因する線溶抑制型DICの治療に有用です。しかし,メシル酸ナファモスタット(フサン)は抗凝固作用だけでなく,抗線溶作用も強く持つために,白血病などの線溶亢進型DICには有効ですが,SIRSに起因する線溶抑制型DICでは使用しにくいのが現状です。メシル酸ナファモスタット(フサン)はショック,アナフィラキシー,高カリウム血症の合併率が高いので,投与開始後は循環変動や血液電解質を観察することが重要となります。線溶抑制が強い場合には,血栓が大量にできる可能性もあるため,肺血栓塞栓症の危険性が高まることにも留意が必要でしょう。集中治療室では血液濾過透析法における透析膜への凝固沈着を抑制する目的で,メシル酸ナファモスタット(フサン)を使用しています。病態にあわせて,蛋白合成酵素阻害薬の使用を行っていることも理解されるとよいでしょう。
 
おわりに

 DICの発症と増悪の根源となる創部は,感染源や炎症源となる部位だけではなく,血管内皮細胞です。現在,血管内皮細胞の直接的な観察は不可能ですから,患者さんの出血徴候に敏感であるとともに,医師の提出した検査データの結果を有効に活用して,DICの早期発見に努めるようにしましょう。特に,血小板数の急激な減少には,十分に注意しなければなりません。DICと診断された後には,その治療が効果的であるかを,日本救急医学会DIC特別委員会の急性期DIC診断基準を用いて,毎日,評価し続けましょう。使用されているDIC治療薬の副作用出現の早期発見も大切となります。
 DIC増悪の根源には全身性炎症が潜んでいることが多いのです。血小板が下がったというその表面的な事実でとどまらず,どこに血小板が奪われているのかをイメージし,どこで血小板が足りないかを洞察できることが大切です。脳出血,消化管出血を起こさない,未然の事前的な診療が,集中治療には内包されています。こうした全身性炎症の原因が断たれれば,凝固・線溶系の回復がもたらされることを期待して,DICの観察に当たってください。

引用・参考文献

1)丸藤 哲,ほか:急性期DIC診断基準. 多施設共同前向き試験結果報告. 日救急医会誌;16:188-202, 2005.
2)Members of the American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference Committee: Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med; 20: 864–74, 1992.
3)松田直之:敗血症/敗血症性ショック. 救急・集中治療; 18:840-7, 2006.
4)松田直之, ほか:ICUにおける抗菌薬サイクリング Prog Med; 25:2329-36, 2005.
5)松田直之:MRSAに対する抗菌治療. 手術部位感染(SSI)対策の実践. 医薬ジャーナル社 p138-46, 2005.
6)厚生労働省 編:血液製剤の使用にあたって. 輸血療法の指針・血液製剤の使用指針. じほう,2005.


図 SIRSの進行による肺の変化
A:正常な肺組織の走査型電子顕微鏡像。B: 敗血症における肺組織の走査型電子顕微鏡像。敗血症の進行により,血管内皮細胞傷害と血管内凝固が亢進し,血小板やフィブリンの沈着が高まります。

表1  DICをひき起こしやすい基礎疾患のチェックリスト


 すべての生体侵襲はDICをひき起こすことを念頭におきます。


表2 SIRS診断のためのチェックリスト
 全身性炎症反応症候群(SIRS)の診断項目である。人工呼吸中の患者は呼吸数が損なわれているものとして,チェックしてよいです。

表3 DICと鑑別すべき疾患と病態のチェックリスト


表4 急性期DIC診断基準


 日本救急医学会DIC特別委員会により「急性期DIC診断基準」が2005年に発表されたDICの診断基準です1)。

 スコアの合計が4点以上でDICと診断します。

注意事項
 1)血小板数はスコア算定の前後24時間以内のデータとします。
 2)PT比(検体PT秒/正常対照値)ISI=1.0の場合は,INRに等しくなります。各施設においてPT比1.2に相当する秒数の延長または活性値の低下を使用しても良いです。
 3)FDPの代替としてDダイマーを使用してもよいです。各施設の測定キットにより換算表(表5)を使用します。

表5  Dダイマー/FDP換算表

 各施設のDダイマー測定キットに準じて,FDP10µg/mLと25µg/mLに相当するDダイマー値をFDPの代わりとして,急性期DIC診断基準に用いてもよいです。


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研修医の先生向け講座 「敗血症・敗血症性ショックの管理」

2006年06月26日 11時45分40秒 | 講義録・講演記録

研修医・看護師の皆さん用
 
「2006年版 敗血症・敗血症性ショックの管理」


京都大学大学院医学研究科
初期診療・救急医学分野

松 田 直 之(まつだなおゆき)

E-mail:nmatsuda@kuhp.kyoto-u.ac.jp


はじめに

セプシス(sepsis:本稿では敗血症と訳す)が感染症に起因する全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome: SIRS)とAmerican College of Chest PhysiciansとSociety of Critical Care Medicineの合同カンファレンスより公表されたのは1992年です1)。あわせて,重症セプシスは臓器不全やショックを合併する敗血症と定義されています1)。2004年にはSurviving Sepsis Campaign guidelines2)が発表され,敗血症管理の最低基準が提示され,これらはさらに新たなエビデンスのもとに再構築される予定です。敗血症や敗血症性ショックの管理では,診断と治療を同時に進めることが大切であり,いくつかの回避しなければならない管理ポイントがあります。質問に答える型式でこれらをまとめます。

(1)輸液管理をどのように行えばよいですか?

集中治療管理は優秀な単独の医師による連続した数日間の管理に期待するものではなく,多くの医師の参加により,客観的かつ統合的に管理を継続するものです。輸液管理においても管理指針を明確とし,客観的指標を皆で共有することが大切です。輸液指標として中心静脈圧(central venous pressure: CVP)の持続測定,その評価指標として観血的動脈圧による持続的血圧測定を用います。輸液による心前負荷の昇圧効果を観血的動脈圧を用いて連続的に評価すると考えましょう。特に,敗血症性ショックでは,そのショックが惹起された初期の輸液療法が不可欠です。Surviving Sepsis Campaign guidelines2)でも,この初期の管理目標をearly goal directed therapy3)として重視しています。ショック出現後6時間まではCVP 8~12mmHgを目安に十分な輸液負荷を行い,平均血圧≧65 mmHg,尿量≧0.5 mL/kg/時,中心静脈酸素飽和度あるいは混合静脈血酸素飽和度≧70%を満たすことを目標とします。輸液成分については,晶質液とコロイド液に優劣をつける明確なエビデンスはありません。晶質液であれば1-2 L/h,コロイド液であれば0.6-1 L/hの輸液速度を目標として6時間の輸液負荷を行います。充分な輸液を行わずにカテコラミン投与を優先すると,カテコラミン投与量が増大する一方で,十分な昇圧は得られにくいです。CVPの測定においては,中心静脈圧の波形解析を行うことも重要です。エコー所見で輸液量を評価して対応することもできます。CVP測定は適切に行うことが重要で,他覚的所見の一つと考えましょう。CVPが輸液バランスを鋭敏に反映するわけではなく,アバウトンものであることには注意して下さい。

(2)カテコラミンの効果的な投与法を教えてください。

カテコラミンは論理的なポリシーを持って使用する工夫が必要です。心収縮性を期待したい場合にはアドレナリンβ受容体刺激を介したドブタミン(DOB)を選択するべきですが,DOBはβ2受容体刺激による血管拡張作用を示すため,充分な輸液負荷のない敗血症性ショック初期に用いると極端な血圧低下をきたしやすいです。また,心拡張不全が起こっているときには,禁忌と考えてよいでしょう。敗血症性ショックの初期病態は一酸化窒素(NO)やプロスタグランジン産生に伴う血管拡張による相対的循環血液量減少性ショックです。このため,ショック初期の昇圧目的でカテコラミンを用いる場合には,過剰に拡張した血管を元に戻すという意識でノルアドレナリン(NA)0.05~0.2μg/kg/minかドパミン(DOA)の持続投与を行い,主にアドレナリンα1受容体を介した血管収縮作用を期待するのです。この作用をDOAに期待する場合には10μg/kg/min以上の高用量の投与が必要となり,α1受容体作用のみならず,β受容体作用も同時に現れています。論理的にはDOAの高用量を使用せず,NA 0.1μg/kg/minレベルで対応するのが望ましいです。敗血症に心拡張不全は,ルーティンに起こってきますので,原則としてはDOBは使用しないことが望ましいです。交感神経緊張期が強かった場合(タコツボ様),低体温,アシデミア,不全心では,DOBやDOAを使用しない管理が適切となります。

(3)輸液に反応しない敗血症性ショックはどう対応するのですか?

 CVP 8~12 mmHgを目安とした充分な輸液による心前負荷でも昇圧や達成目標が得られない場合は,NAを併用し血圧を維持します。しかし,同時に心機能を評価することも大切です。心機能は体表心エコ-図で必ず評価し,心壁運動の低下を認める場合にはドブタミン(DOB)を1~2 μg/kg/minレベルで併用します。すべてのカテコラミンは少量ずつ反応させ,昇圧効果や心収縮性をモニタしながら緩徐に増量すべきものであり,DOBにおいても高用量から投与することは慎むべきです。急激な心筋細胞内Ca2+過負荷により,心拡張不全や不整脈の原因となることに留意が必要です。また,ヘマトクリット値≦30 %であれば赤血球輸血を行うことが推奨されています2)。長期管理中の患者やステロイド使用患者においては,合併する副腎機能不全を念頭に置き,少量ステロイド補充が必要となります。

(4)呼吸状態の悪化を考えると輸液したくないのですが!

敗血症病態では産生された炎症性物質により,血管内皮細胞の支持組織のリン酸化と過伸展が生じ,血管透過性が亢進するため,輸液は細胞間質や重要臓器組織に浸透しやすく,肺の酸素化能も傷害されやすいです。輸液目標の上限はCVP 8~12mmHgと設定していますが,これにより肺酸素化が増悪する傾向は否めません。この背景をふまえて,敗血症においては充分な酸素投与を行い,また,敗血症性ショックでは人工呼吸を併用した呼吸管理を念頭に置く必要があります。敗血症性ショックの治療の成功させる秘訣は,起炎菌に対する治療と炎症性サイトカインの産生を軽減させる点にあります。この治療が敗血症性ショック初期には達成できないため,early goal directed therapyに準じた充分な輸液対応が不可欠となります。敗血症病態における血管透過性亢進改善薬が臨床応用されていない現在,呼吸管理は急性肺傷害の治療に準じて不可欠と考えましょう。

(5)重炭酸イオンはどのように用いればよいですか?

 pH 7.15未満のアシデミアではさまざまな生体内酵素の活性低下や,細胞内Ca2+ 過負荷による心血管系の拡張不全が生じます。敗血症における重炭酸イオンの絶対的補充は,pH 7.15未満と考えます2)。軽度のアシデミアではヘモグロビン酸素解離曲線が右方移動するため,ヘモグロビンからの酸素解離が組織末梢で行われやすいものとなっています。重炭酸イオン補充により代償的にpHを上昇させると,虚血領域の組織末梢での酸素運搬は正常レベル以下となり,組織末梢での酸素供給が低下する可能性に注意が必要であり,重炭酸イオンのルーチンな補充は極力避けるべきなのです。


(6)ストレス潰瘍対策はどのように行いますか?

H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビターは胃内pHを上昇させるため,腸球菌属などが逆行性に胃や咽頭に出現し人工呼吸器関連性肺炎の原因となります。これまで感染防御の視点からはスクラルファートなどの防御因子促進剤の投与が第1選択として推奨されてきました。しかし,重症なショック状態ではスルラルファートだけでは消化管潰瘍を合併することも多いため,敗血症性ショックの急性期にはH2ブロッカーやプロトンポンプインヒビターを用いることも推奨されています2)。胃管からの黒色残渣や便の黒色化には充分に留意し,消化管潰瘍の合併を疑う場合は,上部消化管内視鏡を行う必要もあるでしょう。赤血球輸血についてはヘモグロビン(Hb)≦7g/dLの場合を絶対的適応としています2)。

(7)ステロイドパルス療法は無効ですか?

現在,メチルプレドニゾロンを用いたステロイドパルス療法が敗血症性ショックの生命予後を改善するエビデンスはなく,ステロイドパルス療法はむしろ有害であるとも考えられています。ステロイド使用に際しては,ショック状態における副腎機能不全を念頭に入れ, 1日量200~300mgのハイドロコルチゾンを3分割あるいは4分割投与あるいは一日持続静注での7日間投与を開始する「少量ステロイド療法」が推奨されています2)。表1には重症敗血症に使用できる静注用グルココルチコイド製剤を示しました4)。投与直前には採血を行い,血漿コルチゾル値を計測し,副腎機能不全を評価します。しかし,この結果には数日を必要としますので,充分な輸液で昇圧効果の得られない難治性敗血症性ショックでは検査結果を待たずに少量ステロイド療法を開始します。後日評価された血漿コルチゾル値が34μg/mL以上であればステロイド投与を中止とし,9~34 μg/mLレベルであればACTH 250 mgの負荷試験を行い,副腎機能不全があるとみなした場合,投与を継続することになります5)(図参照)。

(8)血糖コントロールは重要なのですか?

敗血症が持続した病態管理で最終的に留意すべき点は血管内皮細胞保護と充分な栄養です。重症敗血症では血管内皮細胞が急速に傷害される可能性もあり,血小板数の急激な低下では播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療を開始することが必要です。高血糖の持続は易感染状態を導くばかりでなく,それだけでも血管内皮細胞傷害を惹き起こすため,血管内皮細胞保護の観点からも血糖コントロールは重要です。現在,血糖コントロールは速効型インスリン持続投与で150 mg/dL以下を目標とした厳密な管理が推奨されています2)。重症敗血症ではインスリン抵抗性も出現するため,治療に当たっては表2に示したようなインスリン持続投与のスライディングスケールを用いる工夫も必要です。2006年の米国集中治療医学会では,積極的なインスリン療法による敗血症管理で低血糖の合併率が増加したことが問題とされていましたが,血糖値の安定しない敗血症の急性期管理では少なくとも4時間ごとの血糖値評価が必要です。

(9)栄養管理は中心静脈栄養より経腸栄養が良いのでしょうか?

高炎症性サイトカイン状態や高カテコラミン状態ではインスリン抵抗性が高まり,耐糖能異常や蛋白異化が亢進します。高血糖を気にするあまりに低栄養管理を持続させた弊害は,痩せにとどまらず血管内皮細胞を含むインスリン受容体陽性細胞の細胞内情報伝達系蛋白の発現にまでおよぶことを意識するべきです。必要不可欠なエネルギー補充を行い,インスリンやインスリン抵抗改善薬を用いて蛋白異化を最小限に軽減する工夫が急性期管理にも求められています。その上で,経腸栄養は腸を動かすことにより腸管におけるIgAなどの液性免疫産生をもたらすことや,ω3系脂肪酸を含有させることにより腸管で過剰産生される誘導型シクロオキシゲナーゼを消費させ,プロスタグランジン産生を抑制する利点を認識すればよいです。腸を使用しない状態では腸粘膜の浮腫や脱落によりbacterial translocationが亢進するため,敗血症管理においても栄養経路の第1選択と考えられています2)。「先生,腸音が聞こえないので経腸栄養をストップしました」。腸音が聞こえなくても経腸栄養は継続すべきですし,開始すべきです。急性期管理では間欠的投与ではなく20 mL/hの24時間持続投与で僕は経腸栄養を開始します。カテーテル先端がTreitz靭帯を超えて留置されていれば,急速に経腸栄養速度を速めることができますが,胃内に留置されている場合は6時間ごとに逆流を確認し,胃液分泌量も把握するように努めています。胃や腸は食物が入って動きが高まるのです。そして,排便管理には注意しましょう。また,腸の動きが悪い場合は鎮静レベルを充分に評価することも大切となります。

(10)持続濾過透析やエンドトキシン吸着はどのように行いますか?

 持続濾過透析(continuous hemofiltration: CHF)は敗血症病態における水分管理を行いやすくします。また,エンドトキシン吸着カラムはearly goal directed therapyの初期輸液に反応傾向を示さない難治性ショックに対して有効である可能性が示唆されています。正常腎の1日の糸球体濾過量に相当する180 Lレベルの6~9 L/hで4~6時間程度の短時間だけ限外濾過を行うshort-term high-volume hemofiltration(STHVH)により,炎症性サイトカインの除去が効率よく行える可能性もあります。これらは未だ十分なエビデンスとしてまとめられていないものの,多くの集中治療施設でCH(D)Fを用いて,水分管理を行っているのが現状です。フロセミドの使用により利尿をつける工夫は,ショックの急性期を離脱した後とするのが一般的と考えています。

(11)抗菌薬はどのように選択し,どのように投与しますか?

抗菌薬投与に触れる前に,まず,敗血症管理において何よりも注意すべきことは,ベッドサイドでのアルコール製剤による手指消毒です。また,汚染が予想される処置では標準予防策を徹底しなければなりません。敗血症性ショックなどの慌しい対応の中で,医師の手によりMRSAや多剤耐性緑膿菌などが交叉感染し,数日後にこれらが菌交代症として出現してくることを意識して対応しなければなりません。中心静脈カテーテル挿入においても,手洗いとmaximum barrier precautionを徹底しましょう。
 敗血症性ショックの患者管理では,血液,喀痰,尿,胃液,便,そして,ドレーン排液などの細菌培養検査を提出し,経時的に検出結果を追うことが大切です6)。これらの監視培養を週2回定期的に行い,この結果に基づき抗菌薬のスペクトルを狭いものに変更します。この抗菌薬使用戦略をde-escalating strategyと呼び,敗血症性ショックにおいても有効な抗菌薬投与法となります。感染巣が不明である場合は,その検索を行うことが必修であり,常に感染巣に対してのドレナージや洗浄を考慮します。
 従来,広域スペクトラムの抗菌薬は薬剤耐性菌出現の可能性から慎むべきとされてきましたが,たとえ広域の抗菌薬を用いたとしても,作用機序の異なるものを週単位でバランスよく使用することで耐性菌出現を緩和することができます6)。現在,こうした広域の抗菌薬を用いる耐性菌出現抑制の戦略には,サイクリング,ミキシングなどが知られています6)。
 また,敗血症病態における抗菌薬使用には工夫が必要であり,血中濃度の確実な上昇が期待できる静注薬を用いることが原則であり,さらに,ペニシリン系抗菌薬,カルバペネム系抗菌薬,セファロスポリン系抗菌薬ではtime above MIC(minimum inhibitory concentration)を考慮し,1日3~4回投与を原則とします。キノロン系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬は最大血中濃度とAUC(aria under the curve)を大きくするために,分割投与ではなく1日1回投与を原則とします。MRSA治療ではバンコマイシン(trough 10~15µg/mL),テイコプラニン(trough 20 µg/mL以上),アルベカシン(peak 12 µg/mL)を用い,併記した血中濃度レベルに持ち込むことが必要となり,添付文書や従来の投与法では菌体数減少が期待できないことがほとんどです7)。真菌感染も疑うことが必要であり,血漿(1→3)-β-D-glucan値の上昇が認められる場合は真菌培養検査結果を待たずに,ミカファンギンかボリコナゾールの投与を開始します。血中で真菌が検出された場合は眼内炎の合併にも留意しなければなりません。CHDF併用中は保険適応レベルのフルコナゾール投与量のほとんどが除去されてしまうため,CHDFを併用する際にはフルコナゾールを用いません。

(12)最近話題の敗血症治療について教えてください。

 敗血症は抗菌対策の成功が鍵であるにもかかわらず,その成否を抜きに炎症コントロールに着眼しても治療結果は伴いません。多くの抗サイトカイン療法が大規模臨床研究で有意な生存率改善をもたらさなかった一方で,活性化プロテインCのみがPROWESS studyで患者予後を改善しています8)。PROWESS studyは長期にわたる敗血症患者管理では血管内皮細胞保護とDIC対策がいかに重要かを示唆する結果とも考えることができます。このような血管内皮細胞を含めた炎症病態を軽減させる治療の一端として,日本ではCH(D)Fの導入を積極的に行っており,これらの結果がエビデンスとして公表されることに僕は期待しています。僕の敗血症治療ではCH(D)Fは不可欠なものとなっています。

(13)治療を成功させるための秘訣をまとめてください。

 敗血症の起炎菌対策が速やかに行われる限りでは,炎症性サイトカインの産生が高められた時期をどのように乗り越えるかが大切であり,このために必要とされる戦略がearly goal directed therapyです。敗血症の治療を成功させる秘訣は,起炎菌をどのように消退させるかにあります。起炎菌を速やかに除去できない場合には,起炎菌消失法を絶えず検討することが大切であり,長期戦に備えての抗菌薬戦略,十分な栄養管理,血糖コントロール,DIC予防が重要となるのでしょう。

(14)ここだけは気を付けたい敗血症管理のピットフォールはありますか?

 以下の質問に答えられるとよろしいでしょう。
その1 DOA 8 μg/kg/min ,DOB 8 μg/kg/min,正しいカテコラミン使用でしょうか?最小で最大の効果を得る,これがプロの真髄です。
その2 起炎菌と薬剤感受性は何でしょうか?
その3 副腎機能不全は存在するのでしょうか?
その4 血糖値200mg/dLですが,放置してよいのでしょうか?
敗血症管理においても,病態生理を十分に把握して,観察力と論理的ポリシーを持って治療に当たる姿勢が大切です。患者には多様な個性があります。エビデンスは基盤知識に過ぎません。患者個性をベッドサイドで見極めながら治療に当たること,これは,敗血症管理においても要求される点であると考えています。

参 考 文 献

1)Members of the American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference Committee: Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med 1992; 20: 864–74.
2)Dellinger RP, et al. Surviving Sepsis Campaign guidelines for management of severe sepsis and septic shock. Crit Care Med. 2004; 32:858-73. Review.
3)Rivers EP, et al. Eeary goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis and septic shock. N Engl J Med 2001; 345:1368-77.
4)松田直之. セプシスにおけるステロイド治療 ―古い薬に対する新たな概念― 治療学 2006; 40:551-6.
5)Annane D, et al. Effect of treatment with low doses of hydrocortisone and fludrocortisone on mortality in patients with septic shock. JAMA. 2002; 288:862-71.
6)松田直之, ほか. ICUにおける抗菌薬サイクリング Prog Med 2005; 25:2329-36.
7)松田直之. MRSAに対する抗菌治療. 竹末芳生 編. 手術部位感染(SSI)対策の実践. 
医薬ジャーナル社,東京. 2005; p138-46.
8)Bernard GR, et al. Efficacy and safety of recombinant human activated protein C for severe sepsis. N Engl J Med 2001; 8:699-709.


図 重症敗血症におけるステロイド投与の指標

表1 重症敗血症に用いる静注用合成グルココルチコイド


表2 速効型インスリン持続静脈内投与のアルゴリズム

 

表は速効型インスリン持続静脈内投与のアルゴリズムの一例である。速効型インスリンを生理的食塩水で1単位/mLに希釈し,シリンジポンプを用いて中心静脈路より静脈内持続投与を行う。アルゴリズム1を通常の投与開始のものとし,炎症強度の強い場合やステロイド投与症例ではアルゴリズム2を基準とする。アルゴリズム3と4は耐糖能が不良な場合に段階的にあげるためのアルゴリズムである。血糖値の目標80-140 mg/dLに達成されるまでは1時間ごとの血糖値測定とし,血糖値が145 mg/dL以上で1時間後に60 mg/dLの改善が得られないときにはアルゴリズムを上げる。血糖値70 mg/dL以下ではインスリン投与を中止する。血糖値40-50 mg/dLでは50 %ブドウ糖液20-30 mL,血糖値40 mg/dL未満では50 %ブドウ糖液40-60 mLの中心静脈路からの投与とし,この場合15-30分ごとに血糖値を再検し,血糖値80 mg/dLを2回確認できたら,アルゴリズムを下げてインスリン持続投与を開始する。血糖値調節の一例として参考とされたい。


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