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集中治療 人工呼吸器の使い方の基本 NO.2 図表

2010年04月10日 03時56分12秒 | 講義録・講演記録

人工呼吸器の使い方の基本  図表

名古屋大学大学院医学系研究科 

救急・集中治療医学分野
松田直之

 

表1. Ramsay sedation score(RSS)

表2.Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS)



図1. カプノグラムの基本波型

カプノグラムは第1相から第4相までの4相で構成される。第1相は,吸気終末から呼期が開始されようとした時期に形成され,チューブやマスクなどの死腔のガス排泄で形成される相であり,呼気中のPCO2(二酸化炭素分圧)が上昇しない。第2相は,末梢気道の呼気が排泄されることで,その呼気流量にしたがってPCO2の急激な上昇が形成される。第3相は,肺胞内の気流が回路内に排泄され形成されるものであり,人工呼吸器回路内のガスとゆっくりと交じり合うことで呼気中のPCO2がなだらかに上昇し,alveolar plateauと呼ばれている。この最終点がPETCO2(呼気終末CO2分圧)である。これに対して,第4相は,吸気相であり,吸気開始によりPCO2が低下することにより形成される。


図2. カプノグラムの波型変化

肺気腫など閉塞性肺疾患や喘息の呼気延長では,Aのように相の鈍化と相の急峻化するカプノグラムの波型変化として出現する。また,SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)などの強制換気を中心として呼吸調節している場合,十分な自発呼吸数の増加により,Bのように第相に2峰性や多峰性の変化が生じる。PSV(pressure support ventilation)を中心とした自発呼吸下での管理でも,喀痰量の増加により,第相の2峰性化や多峰性化を呈する。Cのように第層が低下し,第相が短縮する場合は,浅呼吸により肺胞気が十分に排出されていない場合であり,PETCO2はPaCO2と極端に解離する。Dのような第相の延長はフェンタニールなどの麻薬による吸気ドライブの中枢性抑制で生じやすく,呼吸数低下の所見である。呼吸数を増やすようにSIMVの設定回数を増加させることが必要となる。


図3. Volume control modeによる気道内流速曲線

SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)をvolume control mode(漸減波)で設定している場合のフロー曲線を示した。基線の上方が吸気,基線の下方が呼気である。基線と波形が作る面積が1回吸気量と1回呼気量に一致する。回路リークがある場合は,呼気フローが低下し,1回呼気量が減少する。


図4. Pressure control modeによる気道内流速曲線

SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)をpressure control modeで設定している場合のフロー曲線を示した。Aでは吸気時間が短く設定されているため,呼気に転じる時間が早まり,十分な1回吸気量が得られていない。Bのように吸気フローがゼロになる時点で,呼気が開始されるように,吸気時間と呼気時間の比(I:E比)を再設定し,1回吸気量を適正化する必要がある。Aのような状態では,十分なCO2排泄が施されず,カプノグラムで測定されたPETCO2が,PaCO2より極端に低下する可能性がある。

 

図5. Volume control modeによる気道内流速曲線の波形異常

A:喘息様呼気延長所見,auto PEEPが増大している所見である。B: 喀痰貯留により呼気フローの乱れが生じ,呼出が遅延している。

 


図6. 換気量曲線

 換気量曲線では,横軸の時間経過に従って,縦軸に換気量が示される。Aは正常な波形であり,Bは呼気量が低下している異常波形である。



図7. Pressure-volume curve(圧-換気量曲線)


 圧-換気量曲線は,横軸の気道内圧に対して,縦軸に換気量を示したものである。自発呼吸における圧-換気量曲線は,Aのようにほぼ気道内圧の変化はない。吸気努力が認められる場合は,この吸気波形が側方に膨らむ。Bは,圧トリガーを用いたPSV(pressure support ventilation)における圧-換気量曲線である。Bにおいても,気道浮腫や喀痰貯留などにより末梢気道抵抗が強い場合には,圧-換気量曲線は左右に膨大する傾向を示す。一方,CはフロートリガーによるSIMVにおける圧-換気量曲線である。陽圧により吸気が形成され,その圧の減少とともに呼気が形成される。Dのように圧-換気量曲線の傾きは肺コンプライアンス(肺の拡張性)を示し,傾きが急峻であるほど,肺コンプライアンスは高く,低圧で肺拡張が得やすいことになる。

 


図8. Pressure-volume curve(圧-換気量曲線)の波形異常

A: 図はPEEP4cmH2OレベルからSIMVを施行している際の圧-換気量曲線である。SIMVモードにおける屈曲点(●:inflection point)が認められた場合には,肺胞や末梢気道の閉塞が疑われる。用手的に肺を再拡張させ,PEEP圧の設定を見直すopen lung strategyの適応である。B: 図はPEEP10 cmH2Oレベルから2 cmH2Oレベルの圧トリガーでPSVを施行している際の圧-換気量曲線である。PSV圧レベルの設定の最大気道内圧で‘キジのくちばし’様変形が存在するならば,高すぎるPSV圧と評価できる。図の●レベルにPSV圧を再設定する必要がある。

 

本文 松田直之「救急一直線 Happy保存の法則」

集中治療 人工呼吸器の使い方の基本 https://blog.goo.ne.jp/matsubomb/e/cc6b4f128cb021fa7f28df745b5b1f4a

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