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救急外来 小児感染症 感染症の登校基準

2022年04月01日 18時35分55秒 | 救急医療

救急外来 小児感染症 感染症の登校基準

救急科指導医・専門医/集中治療科 専門医

松田直之

 

【はじめに】感染症の登校基準として,救急外来での参考とします。

 

【病名】

□ インフルエンザウイルス

  □ 潜伏期間 :1-4日

  □ 登校基準:発熱後5日経過,そして解熱後2日経過

    例)◯ 発熱後3日後に解熱し,さらに2日経った場合:発熱後5日ですが,解熱後2日が経過ししているので6日目に通学した。

 

□ 百日咳

  □ 潜伏期間 :7-10日

  □ 登校基準:特有の咳が消失するまで,または抗菌薬の5日間投与の終了日まで

  □ 知識:遅延生咳嗽:グラム陰性細菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)の感染により主に小児あるいは学童に発生します。上気道感染症状が出現した後に,長い吸気性笛声(whoop)や痙攣性咳嗽(痙咳)を特徴とします。診断は,上咽頭液細菌培養検査,ポリメラーゼ連鎖反応検査(PCR検査)です。治療は,マクロライド系抗菌薬です。咳として,理解しておく用語は,急性咳嗽と遅延性咳嗽です。一般に,発症後3 週間以内までを「急性咳嗽」,3 週間以上 8 週間以内を「遷延性咳嗽」,8 週間以 上を「慢性咳嗽」と定義しています。百日咳は,遅延生咳嗽の代表的な疾患です。慢性咳嗽で注意が必要なものは,1)薬剤:ACE阻害薬,2)逆流性食道炎,3)副鼻腔炎気管支症候群,4)呼吸器疾患既往歴,5)結核です。

 

□ 麻疹ウイルス

  □ 潜伏期間 :8-12日

  □ 登校基準:発疹に伴う発熱が解熱して3日後

  例)◯ 夜に解熱して次の朝から3日が経過したので4日後に通学した:◯

 

□ 風疹(rubella:ルベラ)

  □ 潜伏期間 :16-18日

  □ 登校基準:発疹が消失するまで

  例)◯ 発疹が消失した次の朝に微熱があったが通学した:◯

    ※ 微熱があり,体調が悪いようであれば,クリニックを受診するなど,通学せずに様子を見ることをおすすめします。1)リンパ節腫脹,2)肝機能,3)脱水症,4)電解質異常などに注意します。

 

□ 水痘(水ぼうそう)水痘帯状疱疹ウイルス

  □ 潜伏期間 :14-16日

  □ 登校基準:すべての水疱が痂皮化するまで

  例1)水疱が潰れて皮が向けたので通学した:✗

  例2)水疱がすべてカサブタになったので通学した:◯

  □ 知識:水痘は,水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:バリセロ・ゾスター ウイルス)による伝染性疾患です。空気感染もするので,注意が必要です。治療には,抗ウイルス薬(アシクロビル,バラシクロビル,ファムシクロビルなど)を使用します。

 

□ 流行性耳下腺炎(おたふく)ムンプスウイルス

  □ 潜伏期間 :16-18日

  □ 登校基準:頸部腫脹の出現後5日が経過し,体調が回復している場合

  例)頸部腫脹があるが5日が経過して学校に行きたい:◯

    ※ 微熱や体調不良がある場合は,通学せずに様子を見ることをお勧めします。1)肝機能,2)脱水症,3)電解質異常などに注意します。

  □ 知識:ムンプスウイルスは,パラミクソウイルス科のウイルスです。4歳が最も多く,続いて5歳と3歳です。

 

□ RSウイルス(respiratory syncytial virus)

  □ 潜伏期間 :4-6日

  □ 登校基準:症状が軽減した場合

  例)微熱があるけれども症状が軽減したので学校に行きたい:◯

    ※ 体調不良が残っている場合は,通学せずに様子を見ることをおすすめします。1)肝機能,2)脱水症,3)電解質異常などに注意します。

  □ 知識:Respiratory syncytial virus(RSV)は年齢に関係なく,生涯にわたって発熱や咳などを起こします。典型パターンは,4~6日間の潜伏期間の後に,発熱、鼻汁などの上気道症状が3日間ほど続くことです。注意しないといけないケースは乳幼児であり,声門下に浮腫や気管支炎をおこし,呼吸困難,低酸素血症となり,未然の救命対応が必要となることです。お母さんからの移行抗体が存在するはずなのですが,生後数週から数カ月の期間にもっとも重症な症状となる可能性があります。

 

□ 咽頭結膜熱(プール熱)(アデノウイルス)

  □ 潜伏期間 :2-14日

  □ 登校基準:発熱と結膜炎の症状が消失して2日経過した場合

  例)発熱と目の症状がなくなり3日が経過したので登校したい:◯

    ※ 体調不良が残っている場合は,通学せずに様子を見ることをおすすめします。1)肝機能,2)脱水症,3)電解質異常などに注意します。

 

□ ヘルパンギーナ(コクサッキーウイルスA群)

  □ 潜伏期間 :3-6日

  □ 登校基準:全身状態が安定した場合

  例)発熱がなくなり,体調も良いので登校したい:◯

  □ 知識:ヘルパンギーナは,夏風邪の代表です。発熱に加えて,口腔粘膜に水疱性の発疹が出現します。3~6 日の潜伏期を経て,突然に発熱と咽頭痛が出現し,咽頭粘膜が発赤します。口腔内の観察が重要であり,軟口蓋から口蓋弓にかけての直径1~2 mmから,5 mm程度の紅暈(こううん)に囲まれた小水疱が観察できます。小水疱の周りを取り囲むような充血所見(紅暈)が水疱の周りに観察できます。

 

□ 流行性角結膜炎(アデノウイルス D/E)

  □ 潜伏期間 :2-14日

  □ 登校基準:目の症状を眼科に評価してもらった後

   例1)目の腫れがひいたので通学した:✗

   例2)眼症状が消失した後に眼科を受診して通学許可をもらった:◯

  □ 知識:流行性角結膜炎(epidemic keratoconjunctivitis:EKC)は,主にD種およびE種のアデノウイルスによる眼症状が出現する疾患です。手で目をこすったりなどの接触感染として,眼瞼浮腫,眼瞼腫脹,流涙が発症します。感染力が強いので,片眼にとどまらずに,両眼に感染し,視界がなくなることにも注意が必要です。


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