救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ー United in the World for Us ー

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規約 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱い

2016年05月07日 23時47分35秒 | 規約・約束事項

救急・集中治療領域における個人情報取扱いの注意

名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野

松田直之

 

医療の質の向上として,患者さん個人の情報を維持することは大切です。これは従来から存在する「守秘義務」とともに,救急・集中治療領域でも十分に留意して対応する必要があります。例えば,研究会での症例報告,論文投稿,医学関連誌などにおける症例として,写真掲載などにおいては,個人情報の取扱として,皆が適切かつ十分な注意が必要です。患者さんの情報として,皆が共有しておく必要のある内容が幾つかあります。これらに注意して対応していくようにします。

 まず,「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱い」につきましては,厚生労働省の規約に準じて,適切に対応する必要があります。特に留意事項として,まず,①個人情報の「個人」とは生存しているものであって死亡しているものではないこと,②刑事ではなくて民事であること,③個人情報とは個人を識別できる内容であること,④個人情報を消去する匿名化の方法があることが必要です。個人情報取扱とは,「生存しているもの」における規約であり,生存者の名,生年月日,住所等を含む個人を識別する情報のことです。これらを取り除くことで,特定の個人を識別できないようにすることを「匿名化」と呼びます。顔写真については,一般的には「目の部分のマスキング」で特定の個人を識別できないとされています。これらは,医療業界においては患者さんとの個人の繋がりや了解としての「民事」となりますので,許可を得る配慮も大切です。厚生労働省等のガイドラインにおいては,承諾について書面として残すなどの厳格な承諾の規定は示されていません。

 一方,医療における第3者への「守秘義務」については,従来通り,刑法134条として「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」という刑事です。医師法の「守秘義務」については,医師個人の責務として,十分に気をつける必要があります。医師の「守秘義務」は刑法であり,「個人情報保護法」よりも上位法です。また,「個人情報保護法」は,個人情報取り扱い事業者に対してのみ適用されるものであり,さらに「個人情報取り扱い事業者」とは過去半年間に5,000件以上の個人情報を取り扱った事業者のことです。このため,医師の多くは,これに該当しません。その上で,勤務医の場合には,個人および勤務先の事業者にご迷惑をかけないように,厳重に連携する必要があります。

 法第50条第1項においては,憲法上の基本的人権として「学問の自由」の保障が配慮されており,大学その他の学術研究を目的とする機関等では学術研究の用に供する目的として,その全部又は一部として個人情報を取り扱う場合については,法による義務等の規定は適用しないとされています。その上で,これらの場合においても,法第50条第3項のように,「当該機関等は自主的に個人情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じること」が求められており,「学問の立場」と「個人保護」との2つの立場を尊重することを念頭におき,この「バランス感覚」が重要となります。病院等の管理者においては,監督義務(医療法第15条)および業務委託(医療法第15条の2等)が定められています。このように,個人保護に関しては,その部局の責任者に民事責任が負わされるため,勤務者は管理者の指導に従って十分に個人保護に注意する必要があります。その一方で,管理者は,必要以上に勤務者を萎縮させることを避け,個人情報に関する厳格な情報を与えることで,勤務者との相互信用に努める責務があります。

 また,診療カルテには2つの個人情報が含まれていることに留意します。つまり,一つは「患者さんの個人情報」であり,もう一つは「記載した医師などの個人情報」です。しかし,そもそも診療録全体が患者さんのための保有データですので,患者さんご本人から開示要求がある場合には,その二面性があることを理由として診療録の全部又は一部を開示しないことは一般にしません。

 以上について,厚生労働省から公表されているガイドラインをご覧下さい。個人情報保護は,生存している患者さんについての尊厳を維持するものとして,十分な配慮が大切です。守秘義務についても,継続して尊守していくことになります。

 

資料

医療・介護関係事業者における 個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン 

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/170805-11a.pdf

厚生労働省 (クリック)「医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会」について 


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