救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ー United in the World for Us ー

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敗血症の定義

2006年08月23日 07時07分00秒 |  ひまわり日記

敗血症の定義

京都大学大学院医学研究科初期診療・救急医学分野
松田直之

 2005年を超えた段階で,敗血症とSepsisは異なるなどと,未だに定義に異論を唱えてる状況がある。そこで私は,定義は実用的であるかどうか,実際の現象に側しているかどうかが鍵として,お話するようにしている。Sepsisの国際的定義に従い,敗血症の研究と臨床が発達してきている以上,敗血症はsepsisの訳語として用いると良いと考えている。実際には,日本国内でやっと敗血症が認識されてきた状況にある。その一方で,まだまだ敗血症に関する抗菌薬使用のタイミングが遅かったり,抗菌薬の使用方法がPK/PDの考慮が必要であったり,人工呼吸器を含めて呼吸管理の指導や適正化が必要,ショック管理をしっかり指導することが必要などの治療期間遷延の理由を実地に指導いていく時期にある。
 敗血症(ハイケツショウ,Sepsis)は,感染症によって生じたSIRS(全身性炎症反応症候群:systemic inflammatory response syndrome)と定義される。主に,感染症により生じた炎症性サイトカイン血症により,局所感染徴候のみならず,全身性炎症が進行する病態であり,このような病態進展には炎症性サイトカイン受容体シグナルを持つ白血球系細胞と主要臓器の炎症系的細胞が関与する。1990年代まで,あるいは現時点においても日本では,敗血症を菌血症と同様に捕らえ,血液中で菌が繁殖する病態と捕らえていた。このような病態は菌血症であり,菌血症は敗血症の1つの代表的な病態として再認識される時期にある。血中に菌が証明されなくとも,肺,腸管,腎臓などで局所感染状態が極めて強い場合に,敗血症は生じる。敗血症は,微生物に随伴する炎症により進行する臓器不全として定義される。この管理は,炎症と臓器不全を考える能力を与えてくれるものである。
 敗血症が適切に治療がなされない場合,ショック,播種性血管内凝固症候群,多臓器不全などから死亡時期が早まる。このような敗血症は,がん,術後,外傷,免疫抑制治療(ステロイドなど),長期絶食などに合併しやすく,もとの病気の修飾因子となる。感染症と敗血症は,異なるものであり,多臓器不全が進行する理由をまずは,「炎症」として理解し,そのスピード感ある治療を指導することがさまざまな急性期管理医学に応用できる。救急・集中治療領域においても,感染症管理と敗血症治療の確立が重要であると考えている。敗血症の病態学的理解を,国内外に伝えていく必要がある。


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