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総説 敗血症における免疫不全とアジュバンド療法の可能性

2021年12月04日 06時00分51秒 | 論文紹介 敗血症性ショック・重症敗血症

総説 敗血症における免疫不全とアジュバンド療法の可能性

Global Sepsis Alliance

名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野

松田直之

 

はじめに

 2016年よりSepsis-31)として国際的に,敗血症(sepsis)は「感染症や感染症が疑われる状態における臓器不全の進行」と定義されています。1992年に公表されたSepsis-12)では,感染症における全身性炎症の進行として敗血症を定義することで血液中での微生物の検出としての菌血症と区分し,2003年に公表されたSepsis-23)では敗血症診断のために観察事項が24項目として整理されました。現在のSepsis-3の定義では感染症に随伴する特徴を「全身性炎症(サイトカインストーム)」から「臓器不全」に変更し,これは臓器不全の進行を阻止するための集中治療管理と関連するものとしています。

 Japanese Sepsis Alliance(JaSA)による日本のDiagnosis Procedure Combination(DPC)のデータの解析4)では,2010年から2017年の間に入院した50,490,128名の成人患者のうち,2,043,073名(約4.0%)が敗血症に罹患していました。入院患者全体に対する敗血症患者の年間割合は,敗血症の認知と診断の向上により0.30%/年の正の傾きとして大きく増加し,2017年では入院患者全体の約4.9%が敗血症に罹患したと評価されます。2017年の本邦の敗血症による院内死亡率と入院期間の中央値は,約18.3%と27日でした。

 このような敗血症において,意識障害,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome: ARDS),ショック,肝機能障害,急性腎障害(acute kidney injury:AKI),播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC),さらに消化管,末梢神経,骨格筋,耐糖能などにおけるさまざまな障害が導かれます。多臓器障害から多臓器不全に進行しやすいなかで,免疫細胞にも異常が生じています。敗血症に合併する免疫麻痺(immune paralysis)について理解を共有するものとします。

 

敗血症における病原体関連分子パターン

 PAMPs(pathogen-associated molecular patterns:病原体関連分子パターン)およびDAMPs(damage-associated molecular patterns:傷害関連分子パターン)という名称を用いることで,敗血症や多臓器障害を説明しやすくなりました5)。病原微生物の含有する内毒素によるPAMPs反応は,Toll-like受容体,TNF受容体,インターロイキン受容体などの受容体を介して,多臓器障害を進行させます。また,私たちの細胞障害は,DAMPsとして組織細胞障害を進行させます。このようなPAMPs/DAMPs反応は,免疫細胞や血管内皮細胞や臓器を構築する主要な細胞にも認められます6)。結果として,これらの細胞内で多くの転写因子が活性を変化させ,例えばnuclear factor-κB(NF-κB),activator protein-1(AP-1),signal transducers and activator of transcription-3(STAT-3),interferon regulatory factors(IRF)などの転写因子の活性化を介して6-10),誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)やプロスタノイドなどの炎症性分子,TNF-α,IL-1β,IL-6などの炎症性サイトカイン,ケモカイン,接着分子,C反応性蛋白(CRP)などの転写が促進され,症状として発熱,意識障害,呼吸数増加,頻脈,血圧低下,耐糖能異常,血液凝固線溶異常などの全身性炎症および急性相反応が形成されます。

 

敗血症における好中球/リンパ球比の変化

 敗血症,特に細菌敗血症において,好中球/リンパ球比(neutrophil/lymphocyte ratio:NLR)が増加し, CRPなどの炎症値と共にNLRが変動します。敗血症におけるNLRに関するシステマテックレビュー11)では,2019年3月までのものとして9件の研究より10,685例が抽出され,NLRのカットオフ値を10として敗血症の死亡率が高まり,敗血症の改善とともにNLRが低下することが確認されています。

 正常状態における好中球は,24時間以内にカスパーゼ依存性にアポトーシスを起こします12)。しかし,好中球は上述のPAMPs/DAMPs刺激下では, Myeloid Cell Leukemia-1(Mcl-1)やサイクリン依存性キナーゼなどの抗アポトーシス因子を一時的に活性化させることで,アポトーシスに抵抗性を示す傾向があります。そのような敗血症病態において,転写段階で新たにされたG-CSFとIL-8が好中球や幼若球を炎症局所へ動員し,末梢血に好中球数を増加させます10)。末梢に出現した好中球は,血管内皮上などでローリングしている過程で活性酸素種などの産生を高めるため,結果的には細胞質内でカスパーゼの活性が高まり,アポトーシスやピロトーシス(pyroptosis)13)を起こす傾向があります。

 このように敗血症の初期段階では,好中球のアポトーシスは抑制されるが,生体末梢への浸潤局所においてはアポトーシスやピロトーシスにより細胞死が加速されるとともに,細胞性免疫としての貪食能が低下しています。

 

敗血症における免疫系細胞の変化

 敗血症においては,自然免疫系では単球,樹状細胞,natural killer(NK)細胞,γδ型T細胞,獲得免疫系細胞ではCD4+T細胞,CD8+T細胞,B細胞などがPAMPs/DAMPs反応およびDeath受容体作用などによるアポトーシスとして減少することが知られています。単球,マクロファージ,樹状細胞およびNK細胞の減少や機能不全は,生体内での微生物の消去を遅延させ,敗血症を進展させます。また,制御性T細胞(Treg)の増加,ペルパーT細胞のTh2優位などの変化が,敗血症における免疫麻痺に関与することが知られています。

 まず,敗血症患者の単球に関する臨床研究では,単球細胞膜上のHLA-DRの発現低下により院内死亡率が高まることが示されています14, 15)。敗血症の成人患者79名の単球HLA-DR発現を調べた臨床研究14)では,ICU入室後0,3,7日目において生存群では単球のHLA-DRが高まる傾向がありましたが,死亡群では低下傾向にあることが確認されています。敗血症性ショック3日目に,単球のMHCクラスII関連遺伝子(CD74,HLA-DRA,HLA-DMB,HLA-DMA,CIITA)のmRNA発現を評価した臨床研究15)では,CD74 mRNAレベルの低下が敗血症性ショックの死亡と関連していました。単球において,HLA-DRの発現低下により,ヘルパーT細胞との免疫連携が障害される可能性が示唆されています。

 樹状細胞においては,classical DC(cDC),ウイルス感染などで大量のⅠ型IFNを産生するplasmacytoid DC(pDC),炎症時の末梢血液中の単球から分化する単球系樹状細胞(moDC)において,敗血症の血中で減少することが知られています。DCの生体内での寿命は約4日とされているが, 敗血症ではDCの寿命がアポトーシスとして短縮し,DCの減少は敗血症の臨床転帰の悪化と関連していることが示唆されています16, 17)

 また,NK細胞においても,敗血症でアポトーシスを加速し,減少することが知られています。CD3-NKp46+CD56+細胞として組織中に発現するヒトNK細胞はIFN-γを産生する主要な細胞ですが,敗血症では細胞膜上のCD56が減少し,NK細胞の機能が低下していることも知られています18)。一方で,NK細胞にはPD-1が発現してNK細胞の機能を抑制していますが,NK細胞の機能維持のためにPD-1阻害が有効かどうかについては敗血症の時系列におけるNK細胞膜上のPD-1発現を評価する必要があります。敗血症におけるPD-1阻害薬の効果については,CD4+T細胞での発現を含めて,臨床試験としての詳細な検討が必要な状況です。

 γδT細胞は,IFN-γ,IL-17やケモカインを放出することが知られていますが ,敗血症で減少することも示唆されています19)。さらに,CD4+T細胞,CD8+T細胞,B細胞は敗血症で減少し,Treg細胞は敗血症で増加することが示唆されています20)。敗血症におけるTreg細胞の増加は自然免疫細胞と獲得免疫細胞の両方に免疫力低下として関与し,敗血症の増悪と死亡につながるのかもしれません。Treg細胞は,敗血症におけるアポトーシスに耐性があり,またエフェクターT細胞の減少によって増加する可能性がありますが,マウスを用いた基礎研究では抗CD25モノクローナル抗体によるTreg細胞の制御ではマウスの生存率を改善しておらず,リンパ球全体のアポトーシス制御が重要なのかもしれません20, 21)。敗血症におけるリンパ球のアポトーシスの進行には,Fas/FasL経路などのDeath受容体シグナルの活性化が関与する可能性があります。私たちの研究グループでは,盲腸結紮穿孔によるマウス敗血症モデルにおいて,脾臓のB細胞などのアポトーシスにFADDの活性化が関与することを確認しています22)

 このような敗血症における免疫担当細胞の機能低下と免疫麻痺は,がん,移植後などの免疫状態と異なるものであり23),臨床では敗血症罹患後のリンパ球の変化は基礎疾患により修飾される可能性があります。抗微生物薬および臓器不全を進行させないための全身管理に加えて,免疫の改善を目的としたアジュバント療法が期待されています。敗血症におけるリンパ球の減少と機能低下の分子メカニズムについても,細胞内情報伝達や転写因子活性などを含めて,一層に解明することが期待されています。

 

おわりに

 本稿では,敗血症に合併する免疫麻痺について概説しました。敗血症では,炎症期に好中球/リンパ球比が増加すること,NK細胞およびCD4+T細胞の機能低下の可能性,Treg細胞以外のリンパ球のアポトーシスによる減少について,臨床研究などの結果を紹介しました。また,これからも多くの関連研究が期待されます24-31)。敗血症に合併する免疫麻痺について,リンパ球のアポトーシスの抑制や機能正常化などとして,免疫システムを維持・増強をするための「アジュバント療法」が期待されます。

 

文 献

  1. Singer M, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA 315:801-810, 2016
  2. American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference: definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med 20: 864-874, 1992.
  3. Levy MM, et al. 2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definitions Conference. Crit Care Med 31:1250-1256, 2003
  4. Imaeda T, et al. Trends in the incidence and outcome of sepsis using data from a Japanese nationwide medical claims database-the Japan Sepsis Alliance (JaSA) study group. Crit Care 2021;25:338, 2021
  5. Rittirsch D, et al. Harmful molecular mechanisms in sepsis. Nat Rev Immunol 8:776-787, 2008
  6. Matsuda N. Alert cell strategy in SIRS-induced vasculitis: sepsis and endothelial cells. J Intensive Care 4:21, 2016
  7. Matsuda N, et al. Nuclear factor-kappaB decoy oligodeoxynucleotides prevent acute lung injury in mice with cecal ligation and puncture-induced sepsis. Mol Pharmacol 67:1018-1025, 2005 
  8. Imaizumi T, et al. Activator protein-1 decoy oligodeoxynucleotide transfection is beneficial in reducing organ injury and mortality in septic mice. Crit Care Med 46:e435-e442, 2018
  9. Imbaby S, et al. Beneficial effect of STAT3 decoy oligodeoxynucleotide transfection on organ injury and mortality in mice with cecal ligation and puncture-induced sepsis. Sci Rep 10:15316, 2020 
  10. Matsuda N, et al. Systemic inflammatory response syndrome (SIRS): molecular pathophysiology and gene therapy. J Pharmacol Sci 101:189-198, 2006
  11. Huang Z, et al. Prognostic value of neutrophil-to-lymphocyte ratio in sepsis: A meta-analysis. Am J Emerg Med 38:641-647, 2020
  12. Summers C, et al. Neutrophil kinetics in health and disease. Trends Immunol 31:318-324, 2010
  13. Liu L, et al. Neutrophil pyroptosis: new perspectives on sepsis. Cell Mol Life Sci 76:2031-2042, 2019
  14. Wu JF, et al. Changes of monocyte human leukocyte antigen-DR expression as a reliable predictor of mortality in severe sepsis. Crit Care 15:R220, 2011
  15. Cazalis MA, et al. Decreased HLA-DR antigen-associated invariant chain (CD74) mRNA expression predicts mortality after septic shock. Crit Care 17:R287, 2013
  16. Kumar V. Dendritic cells in sepsis: Potential immunoregulatory cells with therapeutic potential. Mol Immunol 101:615-626, 2018
  17. Grimaldi D, et al. Profound and persistent decrease of circulating dendritic cells is associated with ICU-acquired infection in patients with septic shock. Intensive Care Med 37:1438-1446, 2011
  18. Halstead ES, et al. Reduced frequency of CD56 dim CD16 pos natural killer cells in pediatric systemic inflammatory response syndrome/sepsis patients. Pediatr Res 74:427-432, 2013
  19. Liao XL, et al. Phenotypic Changes and Impaired Function of Peripheral γδ T Cells in Patients With Sepsis. Shock 48:321-328, 2017 
  20. Venet F, et al. Increased circulating regulatory T cells (CD4(+)CD25 (+)CD127 (-)) contribute to lymphocyte anergy in septic shock patients. Intensive Care Med 35:678-86, 2009
  21. Carrigan SO, et al. Depletion of natural CD4+CD25+ T regulatory cells with anti-CD25 antibody does not change the course of Pseudomonas aeruginosa-induced acute lung infection in mice. Immunobiology 214:211-22, 2009
  22. Matsuda N, et al. Silencing of fas-associated death domain protects mice from septic lung inflammation and apoptosis. Am J Respir Crit Care Med 179:806-815, 2009
  23. Boomer JS, et al. Immunosuppression in patients who die of sepsis and multiple organ failure. JAMA 306:2594-2605, 2011
  24. Nalos M, et al. Immune effects of interferon gamma in persistent staphylococcal sepsis. Am J Respir Crit Care Med 185:110-112, 2012
  25. Pellegrini M, et al. IL-7 engages multiple mechanisms to overcome chronic viral infection and limit organ pathology. Cell 144:601-613, 2011
  26. Venet F, et al. IL-7 Restores T Lymphocyte Immunometabolic Failure in Septic Shock Patients through mTOR Activation. J Immunol 199:1606-1615, 2017 
  27. Nascimento DC, et al. IL-33 contributes to sepsis-induced long-term immunosuppression by expanding the regulatory T cell population. Nat Commun 8:14919, 2017 
  28. Kimura A, et al. IL-6: regulator of Treg/Th17 balance. Eur J Immunol 40:1830-1835, 2010
  29. Hsu J, et al. Contribution of NK cells to immunotherapy mediated by PD-1/PD-L1 blockade. J Clin Invest 128:4654-4668, 2018
  30. Zhang Y, et al. PD-L1 blockade improves survival in experimental sepsis by inhibiting lymphocyte apoptosis and reversing monocyte dysfunction. Crit Care 14:R220, 2010
  31. Wan R, et al. Screening and antitumor effect of an anti‑CTLA‑4 nanobody. Oncol Rep 39:511-518, 2018

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Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 PART 3 〜45/93の推奨ポイント〜 スクリーニングと初期蘇生,感染,血行動態

2021年10月10日 11時11分35秒 | 論文紹介 敗血症性ショック・重症敗血症

敗血症という病態を知ろう

Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 PART3

推奨内容の整理:スクリーニングと初期蘇生,感染,血行動態における45項目

欧州集中治療医学会/米国集中治療医学会

〜 6グループ 93の推奨ポイント 〜

 

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野

教授 松田直之

 

はじめに

 Surviving Sepsis Campaign guidelines 2021(SSCG 2021)が, 2021年10月2日に欧州集中治療医学会と米国集中治療医学会より公表されました。SSCG 2021における「スクリーニングと初期蘇生」,「感染」,「血行動態」における45項目(93項目中の45内容)の推奨内容を整理し,記載しています。一部には,コメントを追記しています。敗血症および敗血症性ショック,敗血症診療の補助として,ご確認ください。

 

敗血症のスクリーニングと早期発見

1. 病院や医療システムでは,急性疾患の敗血症のスクリーニングを含む敗血症,高リスク患者,治療ための標準操作手順(standard operating procedures)などのために,敗血症のパフォーマンス改善プログラムを作成し,運用する。

 (スクリーニング:強い推奨,低い質のエビデンス)

 (標準操作手順:強い推奨,非常に低い質のエビデンス)

2. 敗血症や敗血症性ショックのスクリーニングツールとして,SIRS,NEWSやMEWSと比較して,qSOFAを単独で使用しない(強い推奨,中等度の質のエビデンス)。

3. 敗血症が疑われる成人では,血中乳酸を測定する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

 

初期蘇生

4.敗血症と敗血症性ショックは救急疾患としてすぐに治療と蘇生を開始する(ベストプラクティスステートメント:BPS)。

5.敗血症によって誘発された低灌流または敗血症性ショックでは,蘇生の最初の3時間以内に少なくとも30 mL/kgの晶質液輸液を開始する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

6.敗血症または敗血症性ショックの成人では,動的測定を使用して輸液蘇生のガイドとする。動的パラメータには,輸液ボーラス投与や脚上げにおける1回拍出量(SV),1回拍出量変動(SVV),脈圧変動(PPV)また心エコーの反応評価を含む(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)。

7.敗血症または敗血症性ショックの成人では,乳酸レベルが上昇している患者の血清乳酸値を減少させるように蘇生の指導とする(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

8.敗血症性ショックの成人では,組織灌流評価の補助として毛細血管補充時間(capillary refill time:CRT)を使用して蘇生補助とする(弱い推奨,低い質のエビデンス)。※ コメント:ベッドサイドCRTの併用が含まれています(松田直之)。

 

平均血圧の管理

9.昇圧剤に敗血症性ショックがある成人では,より高い血圧ではなく,平均血圧65 mmHgを初期のターゲットとする(強い推奨,中程度の質のエビデンス)。

 

ICU入室について

10. ICU入室が必要な敗血症または敗血症性ショックの成人では,6時間以内にICUに入室させる(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

 

感染症の診断

11. 敗血症または敗血症性ショックが疑われるが感染が確認されていない成人では,継続的に他の診断を再評価および検索し,他の病因が示されるか,強く疑われる場合は経験的抗菌薬を中止する(ベストプラクティスステートメント:BPS)。

 

抗菌薬投与のタミング

12. 敗血症性ショックの可能性がある,または敗血症の可能性が高い成人では,抗菌薬を直ちに,理想的には疑いから1時間以内に投与する。

 強力な推奨,低い質のエビデンス(敗血症性ショック)

 強力な推奨,非常に低い質のエビデンス(ショックのない敗血症)

13. ショックのない敗血症(疑)の成人では,急性疾患に感染症が併発しているか否かを迅速に評価する(ベストプラクティスステートメント:BPS)。

14. ショックのない敗血症(疑)の成人では,感染症の迅速調査の期間を区切り,感染の懸念が続く場合には敗血症が最初に認識された時から3時間以内に抗菌薬を投与する(非常に弱い推奨,低い質のエビデンス:BPS)。※ コメント:非ショック敗血症(疑)では,感染症かどうかの再評価を行い,直ちに抗菌薬を投与するのではなく,3時間までの時間に猶予をもたせる(松田直之)。

15. 感染の可能性が低く,ショックのない成人では,注意深く監視しながら,抗菌薬投与を延期する(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)

 

抗菌薬開始のためのバイオマーカー

16. 敗血症または敗血症性ショックが疑われる成人において,プロカルシトニン値を抗菌薬開始の評価として用いない(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)。

 

抗菌薬の選択

17. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のリスクが高い敗血症または敗血症性ショックの成人では,MRSAの対象外の抗菌薬を使用するよりも,MRSAの対象となる経験的抗菌薬を使用する(ベストプラクティスステートメント:BPS)。

18. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のリスクが低い敗血症または敗血症性ショックの成人では,MRSAの対象となる経験的抗菌薬を使用しない(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

19. 敗血症または敗血症性ショックがあり,抗菌薬の多剤耐性のリスクが高い成人では,経験的治療としてグラム陰性に対する2種類の抗菌薬を併用する(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)。

20. 敗血症または敗血症性ショックがあり,抗菌薬の多剤耐性(MDR)のリスクが低い成人では,経験的治療として1つのグラム陰性菌として,2つのグラム陰性菌用の抗菌薬を併用しない(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)。

21. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,原因となる細菌と薬剤感受性がわかったら,2つのグラム陰性菌用の抗菌薬を併用しない(弱い推奨,非常に低い質のエビデンス)。

 

抗真菌薬

22. 真菌感染のリスクが高い敗血症または敗血症性ショックの成人では,抗真菌療法なしではなく,抗真菌薬を経験的に使用する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

23. 真菌感染のリスクが低い敗血症または敗血症性ショックの成人では,抗真菌薬を経験的に使用しないこと(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

 

抗ウイルス薬

24. 抗ウイルス薬の使用については推奨を定めない。※ コメント:Rationale(理由)には,コメントが46行にわたってまとめられています。特記事項として,COVID-19の管理については以下のSSCG-COVID-19が紹介されています(松田直之)。

紹介文献:Alhazzani W, Moller MH, Arabi YM et al . Surviving Sepsis Campaign: guidelines on the management of critically ill adults with Coronavirus Disease 2019 (COVID‐19). Intensive Care Med 2020;46:854–887. 

 

抗菌薬の投与方法

25. 敗血症または敗血症性ショックの成人へのβラクタム系抗菌薬の投与では,従来のボーラス投与よりも,最初のボーラス後は長時間で投与する(弱い推奨,中程度の質のエビデンス)。※ コメント:30分程度での初期投与後に,投与間隔の半分程度,つまり6時間間隔であると3時間程度の時間をかけて長時間投与するという方法です(松田直之)。

 

PK/PD(薬物動態/薬力学)

26. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,薬物動態/薬力学(PK/PD)の薬物特性に基づいて抗菌薬の投与戦略を最適化する(ベストプラクティスステートメント:BPS)。

 

感染巣制御(ソースコントロール)

27. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,医学的およびロジスティック的に実用的であればすぐに,感染源管理を必要とする感染巣の解剖学的診断を行い,必要な感染源管理介入を実施する(ベストプラクティスステートメント:BPS)。

※ 松田コメント:ソースコントロールとして,膿瘍ドレナージ,感染壊死組織の創面切除,感染デバイスの除去,腹腔内膿瘍,胃腸穿孔,虚血性腸炎,胆管炎,胆嚢炎,閉塞または膿瘍に関連する腎盂腎炎,壊死性軟部組織感染症,敗血症性関節炎,デバイス感染などが解説に挙げられています。

28. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,原因の可能性のある血管内デバイスを,他の血管内デバイスの確保後に迅速に抜去する。(ベストプラクティスステートメント:BPS)

 

抗菌薬のディエスカレーション

29. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,抗菌薬のディエスカレーションを毎日行い,毎日の評価のない一定期間後のディエスカレーションとしない(弱い推奨,低い質のエビデンス)。※ コメント:敗血症におけるディエスカレーションは,良くなってきている患者さんに適応される傾向があるため,後ろ向きの解析などで短期死亡率を改善するという報告には注意します。一定の期間をおくのではなく,毎日,ディエスカレーションできるかどうかを検討してくださいませ(松田直之)。

 

抗菌薬中止のタイミング

30. 敗血症または敗血症性ショックにおいて,適切なソース管理が行われている成人では,抗菌薬治療の期間を短くする(弱い推奨,低い質のエビデンス)。※ コメント:管理できている感染症では,抗菌薬をできるだけ早く中止するように意識します(松田直之)。

 

抗菌薬中止のバイオマーカー

31. 敗血症または敗血症性ショックで適切なソースコントロールが行われている成人において,最適な抗菌薬投与期間が不明である場合は,抗菌薬を中止する時期を決定するために,プロカルシトニンと臨床評価を併用する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

 

血行動態管理

32. 敗血症または敗血症性ショックの成人には,蘇生の第一選択として晶質液を使用する(強力な推奨,中程度の質のエビデンス)。

33. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,蘇生には通常の生理食塩水の代わりにバランスの取れた晶質液(balanced crystalloid)を使用する(弱い推奨,低い質のエビデンス)※ コメント:救急外来やICUでは,薬剤のルート内での沈殿などの観点より生理食塩水を使用する傾向がありますが,大量の生理食塩水による腎血管収縮,急性腎障害誘発の危険性が示唆されていました。解説では,敗血症患者の14件のRCTのネットワークメタアナリシスとしてクリスタロイドが生理食塩水と比較して死亡率を低下させるとする以下の論文を紹介しています(松田直之)。

紹介文献:Rochwerg B, Alhazzani W, Sindi A, et al. Fluid resuscitation in sepsis: a systematic review and network meta‐analysis. Ann Intern Med. 2014;161:347–355.

34. 敗血症または敗血症性ショックの成人では,晶質液のみを使用するよりも大量の晶質液を投与された患者にはアルブミンを併用することを推奨する(弱い推奨,中程度の質のエビデンス)。※ コメント:エビデンスは不十分ですが,日本版敗血症診療ガイドライン2020と一致する内容ですし,欧州の先生の見解が取り入れられています。賛同できる内容です(松田直之)。

35. 敗血症または敗血症性ショックの成人には,蘇生にHES 130/0.38–0.45 などのスターチを用いない(強い推奨,高い質のエビデンス )。

36. 敗血症および敗血症性ショックの成人では,蘇生にゼラチンを用いない(弱い推奨,中程度の質のエビデンス)。

 

血管作動薬の選択

37. 敗血症性ショックの成人には,他の昇圧剤よりも第一選択薬としてノルエピネフリンを使用する(強い推奨)

比較対象

・ドパミンよりノルエピネフリン:高い質のエビデンス

・バソプレシンよりノルエピネフリン:中等度の質のエビデンス

・エピネフリンよりノルエピネフリン:低い質のエビデンス

38. ノルエピネフリン投与で血圧上昇が不十分である敗血症性ショックの成人では,ノルエピネフリン持続投与量の増量の代わりに,バソプレッシンを追加する(弱い推奨,中程度の質のエビデンス)。(リマークス:バソプレッシンは通常,ノルエピネフリン0. 25μg/kg/分の持続投与量以上であるときに併用する。)

39. ノルエピネフリンとバソプレシンにもかかわらず,敗血症性ショックと不十分なMAPレベルの成人には,エピネフリンを追加する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

40. 敗血症性ショックの成人では,テルリプレシンを使用しない(弱い推奨,低い質のエビデンス)。コメント:テルリプレシン(terlipressin)は,バソプレシンV1受容体選択性の高いバソプレシン類似体す。海外では,肝腎症候群 1 型(HRS-1)の治療に使用されています。欧州では,敗血症性ショックに用いる施設があるとのことです。敗血症性ショックでの治験では,生存率を改善する有意な結果が認められませんでした(松田直之)。

 

陽性変力作用/陽性変時作用

41. 十分な循環ボリュームと血圧にもかかわらず,低灌流と心原性ショックのある成人では,ノルエピネフリンにドブタミンを追加するか,エピネフリンのみを使用することを推奨する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。※ コメント:ドブタミンにより敗血症性ショックの生存率が改善したというエビデンスはありません。一方,両膝に網状皮斑(リベドー)の出現する症例に限り,NOMIの予防を含めてドブタミンを併用する臨床研究は必要です。その上で,ドブタミンの有害性については,引き続き,注意が必要です(松田直之)。

42. 十分な循環ボリュームと血圧にもかかわらず,敗血症性ショックと持続的な低灌流を伴う心機能障害のある成人には,レボシメンダンを使用しない(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

 

モニタリング

43. 敗血症性ショックの成人では,非侵襲的モニタリングではなく,利用可能であれば観血的動脈圧を使用する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

44. 敗血症性ショックの成人では,末梢静脈路より昇圧薬を開始し,中心静脈路が確保されるまで遅らせずに,血圧を回復させる(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

 

輸液バランスについて

45. 敗血症および敗血症性ショックの患者で,初期蘇生後も組織低灌流と循環血液量不足の兆候がある場合において,初期24時間の輸液制限が良いのか否か(restrictive vs liberal fluid strategy)についての推奨には,エビデンスが不十分である。

 

おわりに

 本稿は,SSCG2021における「93の推奨項目」のうち,「スクリーニングと初期蘇生」,「感染」,「血行動態」に関係する45項目を紹介しています。ご確認ください。2021年においても,診療エビデンスを満たしていく領域が散見されます。本稿においては,適時,修正,追記,また補足とさせていただきます。

初稿:2021年10月6日

続編:Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 PART4   推奨内容の整理:呼吸管理,追加治療,ケアの目標と長期転帰(48項目の推奨)

参照:

PART1 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021  概要 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021

PART2 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 「敗血症のスクリーニングと早期発見」について

PART3 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021  推奨内容の整理「スクリーニングと初期蘇生,感染,血行動態の45項目」


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Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 PART 2 〜93の推奨ポイント〜 第1セッション

2021年10月02日 23時35分35秒 | 論文紹介 敗血症性ショック・重症敗血症

敗血症という病態を知ろう

Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 PART2

1st グループ「スクリーニングと早期発見」の概要

欧州集中治療医学会/米国集中治療医学会の推奨する敗血症診療ガイドライン 〜 6グループ 93の推奨ポイント〜

Surviving Sepsis Campaign guidelines 2021(SSCG 2021)

 

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野

教授 松田直之

 

はじめに 

 敗血症のスクリーニングと早期発見におけるSSCG2021(文献1)のポイントは,2016年のSSCG2016(文献2)のために用意した「敗血症診断のためのqSOFA」の有効性を修正したことにあります。本稿は,本領域の専門家として,少し,マニアックな国際学会での討議レベルの内容となります。2016年のSSCG2016では集中治療室以外の診療の場での敗血症スクリーニングの診断ツールとしてqSOFA(GCS<15,呼吸数≧22/分,収縮期血圧≦100mmHgの3つのうち2つ以上を満たす)(文献3)に一本化された経緯がありましたが,結果的には早くもqSOFAの完全性を否定する記載となっています。私自身としては,qSOFAを早急に提出した以上は,2024年の改訂までに代替え案を策定し,否定的見解は見合わせるべきであると考えておりました。診療経験としては,SIRS定義を満たさず,qSOFAを満たす感染性臓器障害は重症度が高い傾向があり,このSIRS(-)/qSOFA(+)の病態認識と診療バンドル(診療管理)は重要と考えています。オンセット概念や時間軸を取り除いているという誤りがある内容ですが,感染症が疑われる状態での臓器障害の悪化予測の特異度は,評価時点で80%を超えて高いものです。

 qSOFAについては,感染症と院内死亡との関連として開発されたスコアですので,敗血症のスクリーニングツールとしての評価は,今回のSSCG 2021のように,後から付けられてくることになります。そして,国際的診断基準を作る際には,各国の年齢構成予測,基礎疾患の構成分布,医療状況および診療水準などの影響因子を考慮することも重要となります。

 qSOFAの概念は,「quick」に意義があります。最近は,救急外来や集中治療室において,血液・生化学検査結果が極めてスピーディに報告され,さらに人工知能(Artificial Intelligence:AI)により異常やアラートを自動報告してくれるTele-システムなどに発展していきます。しかし,血液・生化学検査所見を待たず,理学所見よりクイックに臓器障害の進行や院内死亡を予測するスコアリングシステムは有用です。

 以下の3つの推奨,欧州集中治療医学会/米国集中治療医学会からの「敗血症のスクリーニングと早期発見」の新しい推奨です。日本や世界における敗血症の初期診断と初期治療は良好に進化していますので,さらに評価し,考察し,再開発する2022年になると考えています。

 

SSCG2021の「推奨度」の理解

 SSCG2021は,前回のSSCG2016と同様に,Sepsis-3の敗血症の定義を用いています。その一方で,解析された臨床研究データは敗血症,重症敗血症,敗血症性ショックのSepsis-1の定義に基づくデータであることが方法に記載されています。

Definitions
These guidelines used the third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3) (1).  Sepsis is defined as a life-threatening organ dysfunction caused by a dysregulated host response to infection. Septic shock is a subset of sepsis with circulatory and cellular/metabolic dysfunction associated with a higher risk of mortality (5). While Sepsis-3 definitions also included clinical criteria for sepsis and septic shock, most studies comprising the evidence for these guidelines, including all those published prior to 2016, used earlier definitions of sepsis, severe sepsis, and septic shock (6).

文 献(文献番号はSSCG2021に記載されている番号のままとしています)

1.Singer M, Deutschman CS, Seymour CW et al (2016) The Third Inter‐ national Consensus definitions for sepsis and septic shock (Sepsis‐3). JAMA 315(8):801–810

5.Seymour CW, Liu VX, Iwashyna TJ et al (2016) Assessment of clinical criteria for sepsis: for the third international consensus definitions for sepsis and septic shock (Sepsis‐3). JAMA 315(8):762–774

6.Levy MM, Fink MP, Marshall JC et al (2003) 2001 SCCM/ESICM/ACCP/ ATS/SIS International Sepsis Definitions Conference. Crit Care Med 31(4):1250–1256

 

SSCG2021 患者さんへのガイドライン推奨の2つの区分

強い推奨:患者さんのほとんどが,推奨される指針を受け取る必要があります。

弱い推奨:患者さんによってさまざまな選択が可能であり,治療は患者さんの個々の状況に合わせて調整されます。

表の引用:SSIG2021(文献1)からの引用

 

SSCG2021 スクリーニングと早期発見 3つの推奨項目

1.病院や医療システムでは,急性疾患の敗血症のスクリーニングを含む敗血症,高リスク患者,治療ための標準操作手順(standard operating procedures)などのために,敗血症のパフォーマンス改善プログラム(performance improvement programme)を作成し,運用することを推奨する(programme:イギリス英語で記載されています)。

 スクリーニング:強い推奨,低い質のエビデンス

 標準操作手順:強い推奨,非常に低い質のエビデンス

 ※ 敗血症管理バンドル・敗血症安全管理手順など,performance improvement programmeの作成は,敗血症の管理の質の向上として重要です(文献4/5)。

コメント:ニューヨーク州などの5つ米国の州での敗血症のコフォート研究(509病院,1,012,410例など)(文献6)では,作成された診療バンドル達成への遵守率の高い病院では,死亡率が低いことがSSCG2021の本稿で紹介されています。Performance improvement program(PIP)や敗血症管理バンドル(SMB:sepsis management bundle)は,常識的には治療成績向上のための共通基盤として重要です。

 

2.敗血症や敗血症性ショックのスクリーニングツールとして,SIRS,NEWSやMEWSと比較して,qSOFAを単独で使用しないことを推奨する(強い推奨,中等度の質のエビデンス)。

 解説:敗血症スクリーニングにおけるqSOFAの単独使用を否定しています。この解説の記載のポイントを紹介します。

(1)スクリーニングツールとしての解析

 感染症が疑われる患者さんの転帰不良の予測因子としてqSOFAが同定されていますが,スクリーニングツールとしての使用をサポートする解析は行われていません。

 原文:Definitions of Sepsis identified qSOFA as a predictor of poor outcome in patients with known or suspected infection, but no analysis was performed to support its use as a screening tool.

 コメント:これははじめからわかっていたことなので,日本でも随分と討議をさせて頂きました。つまり,SSCG 2016でのqSOFAの推奨は,「これからqSOFAの敗血症スクリーニングツールとしての有効性を国際的に評価しようという提案なのだろうとと思います」と,私は説明してきました。感染症が疑われる患者さんの転帰不良の予測因子としてqSOFAが同定されていますが,スクリーニングツールとしての使用をサポートする解析は行われていません。これははじめから当たり前ですので,SSCG 2021における本稿の解説はSSCG2016との整合性を維持するために,より適切に記載すると良かったと思います。qSOFA反対派は,世界に多くいらっしゃいますので,今後も議論が継続されると思います。

内容の理解例:SSCG 2016において推奨したqSOFAは,本来,感染症が疑われる患者さんの転帰不良の予測因子としてラージデータベースを用いて同定されたものです。このため,Sepsis-3およびSSCG 2016の公表時において,このqSOFAが敗血症のスクリーニングツールとして有効かどうかについては検証されていませんでした。その上で,SSCG 2016の公表後も,敗血症のスクリーニングツールとしてのqSOFA単独の有効性は確認できていません。このため,本ガイドラインでは敗血症のスクリーニングとして,SIRS,NEWSおよびMEWSなどの他のスケールの併用についても考慮し,敗血症かどうかのスクリーニングにはqSOFA単独の使用には注意が必要であるとしました。この敗血症スクリーニングのためのツールについては,これからの4年間における新規開発や新規提案が期待されます。※ 以下の内容として,私は理解しています。

松田記載:The qSOFA recommended in SSCG 2016 was originally identified using a large database as a predictor of poor outcome in patients with suspected infection and infectious disease. Therefore, at the time of publication of Sepsis-3 and SSCG 2016, it was not verified whether this qSOFA is effective as a screening tool for sepsis and septic shock. Moreover, even after the publication of SSCG 2016, the effectiveness of qSOFA alone as a screening tool for sepsis and septic shock has not been confirmed. For this reason, the guideline SSCG 2021 considers the combined use of other scales such as SIRS, NEWS, and MEWS as a screening for sepsis, and states that caution should be exercised when using qSOFA alone for screening for sepsis and septic shock. New developments and proposals for sepsis screening are expected over the next four years in SSCG 2025. (Matsuda N)

(2)敗血症のスクリーニングとしてのqSOFAの感度の低さ

 qSOFAの敗血症のスクリーニングツールとしての感度の低さを問題としています(文献7-10)。SIRSスコアもqSOFAも敗血症の理想的なスクリーニングツールではなく,ベッドサイドの臨床医はそれぞれの限界を理解する必要があると記載しています。

 本文記載:Neither SIRS nor qSOFA are ideal screening tools for sepsis and the bedside clinician needs to understand the limitations of each. In the original derivation study, authors found that only 24% of infected patients had a qSOFA score 2 or 3, but these patients accounted for 70% of poor outcomes[5]. Similar findings have also been found when comparing against the National Early warning Score (NEWS) and the Modified Early warning Score (MEWS) [44]. Although the presence of a positive qSOFA should alert the clinician to the possibility of sepsis in all resource settings; given the poor sensitivity of the qSOFA, the panel issued a strong recommendation against its use as a single screening tool.

 和訳:SIRSもqSOFAも敗血症の理想的なスクリーニングツールではなく,ベッドサイドの臨床医はそれぞれの限界を理解する必要があります。qSOFSのオリジナル研究では,感染した患者の24%のみがqSOFAスコア2または3を満たし,これらの患者は悪い転帰の70%を占めました(文献3)。 同様の結果は,National Early Warning Score(NEWS)およびModified Early Warning Score(MEWS)との比較でも見つかりました(文献11)。qSOFA陽性では敗血症の可能性があることを臨床医に警告する必要があるけれども,qSOFAの感度が低いことを考慮して、パネルでは単一のスクリーニングツールとしてのqSOFAの使用に対して強い勧告を出しました。

 コメント:qSOFAが完全に否定されたわけではないことには,注意されると良いでしょう。感染症が疑われる状態において,qSOFA陽性では重症となる可能性があるという解釈がポイントと思います。直ちに血液培養検査2セット,抗菌薬の投与を開始すると良いでしょう。その上で,普段から敗血症をよく診療しているものであれば ,「これは従来は敗血症としていた病態なのだけどqSOFAの2項目を満たしてない」などとして,「qSOFAの感度が低い」ことは,はじめから自明でした。

 この討議で気をつけるとよいことは,まず敗血症の定義,つまりSIRS(全身性炎症)-sepsisとMOI(多臓器障害:maltiple organ injury)-sepsisを混同しないことです。確かに,SIRSからMOIに進展します。SIRS-sepsisを含めたスクリーニングを,qSOFAに期待しているのかもしれません。病態の進行という時間軸と時間幅を定めて,討議する必要があります。SIRS基準は臓器障害となる可能性の少し早い時点でのチェックスコア(しかし2025年までには改定が必要),qSOFAは臓器障害が具現化しはじめているチェックスコア(しかし2025年頃までには日本版としての修正の提案が必要)と言う解釈です。

 急性臓器障害というのは,プレショック(pre-shock)のように途中で介入して,障害の進行を阻止してしまうと臓器障害ではなくなります。これはあたり前のことなのですが,時間軸を逆走して「カルテや診療録から介入が適正だった因果関係を読み取る」には,強力な診療能力が必要とされます。「それ,本当にプレショックだったの」などと誤解される場合もあります。感染性SIRS,このSIRSスコアについてはSIRS診断をつけるべき時点で,1)気がつかない医師,2)SIRSと理解したけれども経過観察する医師,3)SIRSと評価して治療を開始する医師,この3パターンだけでも6時間から24時間後の臓器障害の合併率や進行度が変化する可能性があります。このように,後ろ向き解析では臓器障害までの評価時間を長く取れば,SIRSはqSOFAを含みやすくなる可能性があります。そして,SIRSの時点で治療介入しているとSIRSの臓器障害は低いとなります。このような時間軸バイアスは,後ろ向き評価などでは十分に注意しなければならない事項です。集中治療室の電子カルテ/電子記録では,上手に管理できているので,何もなかったかのように痕跡が残らない場合も多くあります。診断をつけて介入したのか否かの評価は,やはり前向き研究でなければ評価できないと考えます。その上で,SIRSの定義と診断については,私たちは「新SIRSスコアの開発」を急ぐ必要があります。現時点では,臓器障害が起こってしまっている時点でのスクリーニング感度(現状評価)なのか,臓器障害が起こる前の予測としてのスクリーニング感度(未来予測)なのか,現場では評価時点をより厳格として対応することが期待されます。

 

3.敗血症が疑われる成人では,血中乳酸を測定することを推奨する(弱い推奨,低い質のエビデンス)。

解説:感染症および敗血症が疑われる場合の,乳酸値レベルと死亡率との関連は十分に確立されています(文献12/13)。一方,多くのリソースが制限された設定ではすぐ乳酸値測定を利用できない場合があります(文献14-21)。以上から,補助検査として,乳酸値評価を弱い勧告としているようです。

 

おわりに

 本稿では,本邦や世界における私の重要な業務の一つである「敗血症の早期スクリーニング」について,2021年10月2日,欧州集中治療医学会34th Annual Congressに合わせて発表されたSSCG2021,この1st グループ「スクリーニングと早期発見」の概要を記載しました。大きく変わりのないところですが,「感染症が疑われる場合にqSOFAを満たす」,この場合は要注意,治療にスピードが要求されること,改めてご留意ください。SSCG2021を構成する93項目,引き続き,適時,UPさせていただきます。

初稿:2021年10月2日,適時修正・追記させていただきます(松田直之)

 

文 献   

1. Surviving Sepsis Campaign guidelines 2021. https://link.springer.com/content/pdf/10.1007/s00134-021-06506-y.pdf?fbclid=IwAR0L7026gO6NV93aEXCQ14jO4DNVcWemDhWR3aris4EdXMGO24jE7inG3w8

2. Rhodes A, Evans LE, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock: 2016. Intensive Care Med. 2017;43:304-377.

3. Seymour CW, Liu VX, Iwashyna TJ,et al . Assessment of clinical criteria for sepsis: for the Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis‐3). JAMA. 2016; 315:762–774.

4. Schorr C, Odden A, Evans L, et al. Implementation of a multi‐ center performance improvement program for early detection and treatment of severe sepsis in general medical–surgical wards. J Hosp Med. 2016;11:S32–S39.

5. Damiani E, Donati A, Serafini G, et al. Effect of performance improvement programs on compliance with sepsis bundles and mor‐ tality: a systematic review and meta‐analysis of observational studies. PLoS One. 2015;10:e0125827.

6. Kahn JM, Davis BS, Yabes JG, et al. Association between state‐ mandated protocolized sepsis care and in‐hospital mortality among adults with sepsis. JAMA. 2019;322:240–250.

7. Fernando SM, Tran A, Taljaard M, et al. Prognostic accuracy of the quick sequential organ failure assessment for mortality in patients with suspected infection: a systematic review and meta‐analysis. Ann Intern Med. 2018;168:266–275.

8. Herwanto V, Shetty A, Nalos M, et al. Accuracy of quick sequential organ failure assessment score to predict sepsis mortality in 121 studies including 1,716,017 individuals: a systematic review and meta‐analysis. Crit Care Explor. 2019;1:e0043.

9. Serafim R, Gomes JA, Salluh J, et al. A comparison of the Quick‐ SOFA and systemic inflammatory response syndrome criteria for the diagnosis of sepsis and prediction of mortality: a systematic review and meta‐analysis. Chest. 2018;153:646–655.

10. Cinel I, Kasapoglu US, Gul F, et al. The initial resuscitation of septic shock. J Crit Care. 2020;57:108–117.

11. Liu VX, Lu Y, Carey KA, et al. Comparison of early warning scoring systems for hospitalized patients with and without infection at risk for in‐hospital mortality and transfer to the intensive care unit. JAMA Netw Open. 2020;3:e205191.

12. Borthwick HA, Brunt LK, Mitchem KL, et al. Does lactate measure‐ ment performed on admission predict clinical outcome on the inten‐ sive care unit? A concise systematic review. Ann Clin Biochem. 2012;49(Pt 4):391–394.

13. Liu G, An Y, Yi X, et al. Early lactate levels for prediction of mortality in patients with sepsis or septic shock: a meta‐analysis. Int J Exp Med. 2017;10:37–47.

14. Abdu M, Wilson A, Mhango C, et al. Resource availability for the management of maternal sepsis in Malawi, other low‐income

countries, and lower‐middle‐income countries. Int J Gynaecol Obstet. 2018;140:175–183.

15. Baelani I, Jochberger S, Laimer T, et al. Availability of critical care resources to treat patients with severe sepsis or septic shock in Africa: a self‐reported, continent‐wide survey of anaesthesia providers. Crit Care. 2011;15:R10.

16. Baelani I, Jochberger S, Laimer T, et al. Identifying resource needs for sepsis care and guideline implementation in the Democratic Republic of the Congo: a cluster survey of 66 hospitals in four eastern provinces. Middle East J Anaesthesiol. 2012;21:559–575.

17. Bataar O, Lundeg G, Tsenddorj G, et al. Nationwide survey on resource availability for implementing current sepsis guidelines in Mongolia. Bull World Health Organ. 2010; 88:839–846.

18. Hernandez G, Ospina‐Tascon GA, Damiani LP, et al. Effect of a resuscitation strategy targeting peripheral perfusion status vs serum lactate levels on 28‐day mortality among patients with septic shock: the ANDROMEDA‐SHOCK Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;321:654–664.

19. Machado FR, Cavalcanti AB, Bozza FA, et al. The epidemiology of sepsis in Brazilian intensive care units (the Sepsis PREvalence Assess‐ ment Database, SPREAD): an observational study. Lancet Infect Dis. 2017;17:1180–1189.

20. Shrestha GS, Kwizera A, Lundeg G, et al. International Surviving Sepsis Campaign guidelines 2016: the perspective from low income and middle‐income countries. Lancet Infect Dis. 2017;17:893–895.

21. Taniguchi LU, Azevedo LCP, Bozza FA, et al. Availability of resources to treat sepsis in Brazil: a random sample of Brazilian institutions. Rev Bras Ter Intensiva. 2019;31:193–201.

参照:

PART1 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021  概要 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021

PART3 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021  推奨内容の整理「スクリーニングと初期蘇生,感染,血行動態の45項目」

PART4  Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021       推奨内容の整理「呼吸管理,追加治療,ケアの目標と長期転帰の48項目」


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Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 〜93の推奨ポイント〜〜

2021年10月01日 20時00分00秒 | 論文紹介 敗血症性ショック・重症敗血症

敗血症という病態を知ろう

概要 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021

欧州集中治療医学会/米国集中治療医学会の推奨する診療ガイドライン 〜 6グループ 93の推奨ポイント〜

 

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野 教授 松田直之

 

はじめに

 敗血症(Sepsis:セプシス)は,感染症に罹患した際に進行する多臓器不全の病態です。日本においても,世界においても,近年,「敗血症」という病名が医療従事者の皆さん,患者さん,行政の皆さんなど,広く知っていただけるようになり,世界レベルで治療成績が改善してきています。2011年9月より開始されたWorld Sepsis Day(WSD)活動も実ってきているように思います。

 このような背景には,古くは2002年9月30日〜10月2日にバルセロナで開催された欧州集中治療医学会(ESICM)における「バルセロナ宣言」(文献1)が,大きな役割を担っています。この2002年のESICMは,Jean-Louis Vincent 先生より敗血症疫学に関するSepsis Occurrence in the Acutely ill Patient (SOAP) studyの結果が公表されたり,Arthur Slutsky先生から血管透過型性肺水腫ARDSの人工呼吸管理(PEEP管理)に関するthe Assessment of Low Tidal Volume and Elevated End-Expiratory Volume to Obviate Lung Injury (ALVEOLI)study が公表された年となります。

 2002年欧州集中治療医学会の「バルセロナ宣言」(文献1)は,敗血症の死亡率を25%低下させることを目標とし,Surviving Sepsis Campaign(SSC)を開始するというものでした。この行動プランとなるSurviving Sepsis six-point action plan(Awareness,Diagnosis,Treatment,Education,Counselling,Referral)の1つ,Referral(専門医などへの照会)として「世界標準のガイドラインの作成」が盛り込まれていました。これが,2004年4月にSurviving Sepsis Campaign guidelines 2004(SSCG 2004)(文献2)が,世界初めての敗血症診療ガイドラインとして誕生した背景です。その後,2008年,2012年,2016年とSSCGは3回の改訂が行われています。

 一方,日本集中治療医学会は,日本の敗血症の診療状況に照らした独自の「日本版敗血症診療ガイドライン」を作成することを目標とし,平澤博之先生(理事長)の指揮の下で2007年4月に日本集中治療医学会内に「敗血症レジストリー委員会」を立ち上げました。その結果が,日本の敗血症レジストリー結果などを基にして2012年に発表した,日本初の日本版敗血症診療ガイドライン(文献3)です。その後,4年後ごとに改訂され,現在は前向き臨床研究データ解析に基づく診療エビデンスベースのガイドラインとして,日本版敗血症診療ガイドライン2020(文献4)を提供できるようになりました。これは,SSCGと並ぶ,国際的敗血症診療ガイドラインとも評価される充実した内容です。

 この度,SSCGガイドライン(SSCG2021)(文献5)が, 2021年10月に欧州集中治療医学会と米国集中治療医学会より公表されました。今回は22カ国からSSCのためのパネラーが招聘され,このSSCパネラーが6つのグループに分けられました。グループは,1)スクリーニングと初期蘇生,2)感染,3)血行動態,4)呼吸管理,5)追加治療,6)ケアの目標と長期転帰の6つです。各グループには,低所得国または中所得国から少なくとも1人の代表者を含めるものとされ,6)のケアにおいては市民代表者なども含まれています。国際ガイドラインとしての特徴があります。しかし,欧州集中治療医学会と米国集中治療医学会のガイドラインに反対する学術グループも存在することは,敗血症領域の学術発展においても重要なことです。

 SSCG2021は,93項目の評価の設定と推奨となっています。トピックと質問の優先順位付けは,1)パネラーの評価スコア,2)臨床診療の変動性,3)旧バージョンにおけるトピックまたは質問を含めるものとして,まず6つの各グループで評価され,最終的には2名の議長とグループ長により決定されています。ガイドラインの質問は,PICO形式(① Patient:どのような患者に,② Intervention:どのような治療をしたら,③ Comparison:何と比較して,④ Outcome:どのような結果になるか)で構成され,推奨はGRADEアプローチです。この方法は,日本版敗血症診療ガイドライン2020の作成と変わりありません。SSCG2021を構成する93項目は,近日,UPさせていただきます。

 

引用:文献5

内容:図の右最下にように,敗血症の可能性があるけれども,ショックでない場合には,抗菌薬投与のタイミングを3時間までに許容しています。ショックのない敗血症では,発症から最初の数時間以内の死亡率の評価において,抗菌薬投与までの時間と関連が低いとする2つの観察研究からのものであり,非常に弱いエビデンスとしています。2つの観察研究として取り上げているものは,文献6と文献7です。文献6: Seymour先生たちによる2014年4月1日から2016年6月30日までニューヨーク州保健局に報告された敗血症および敗血症性ショックのデータ解析。文献7: 2010年から2013年の間に北カリフォルニアの21の救急科で治療された敗血症35,000例の後ろ向き研究。

初稿:2021年10月1日,適時修正・追記させていただきます(松田直之)

文 献

1. バルセロナ宣言. Slade E, Tamber PS, Vincent JL. The Surviving Sepsis Campaign: raising awareness to reduce mortality. Crit Care. 2003;7:1-2.

2. Surviving Sepsis Campaign guidelines 2004. Dellinger RP, Carlet JM, Masur H, Gerlach H, Calandra T, Cohen J, Gea-Banacloche J, Keh D, Marshall JC, Parker MM, Ramsay G, Zimmerman JL, Vincent JL, Levy MM. Surviving Sepsis Campaign guidelines for management of severe sepsis and septic shock. Intensive Care Med. 2004;30:536-55.

3. 日本版敗血症診療ガイドライン(初版). https://www.jsicm.org/pdf/20_124.pdf

4. 日本版敗血症診療ガイドライン2021. https://www.jsicm.org/pdf/jjsicm28Suppl.pdf

5. Surviving Sepsis Campaign guidelines 2021. https://link.springer.com/content/pdf/10.1007/s00134-021-06506-y.pdf?fbclid=IwAR0L7026gO6NV93aEXCQ14jO4DNVcWemDhWR3aris4EdXMGO24jE7inG3w8

6. Seymour CW, Gesten F, Prescott HC, et al. Time to treatment and mortality during mandated emergency care for sepsis. N Engl J Med. 2017;376:2235–2244

7. Liu VX, Fielding‐Singh V, Greene JD, et al. The timing of early antibiotics and hospital mortality in sepsis. Am J Respir Crit Care Med. 2017;196:856–863

参照:

PART2 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 「敗血症のスクリーニングと早期発見」について

PART3 Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021  推奨内容の整理「スクリーニングと初期蘇生,感染,血行動態の45項目」

PART4  Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021       推奨内容の整理「呼吸管理,追加治療,ケアの目標と長期転帰の48項目」


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臨床研究 重症敗血症罹患後の1年後を考える

2015年04月08日 01時13分07秒 | 論文紹介 敗血症性ショック・重症敗血症
Increased 1-Year Healthcare Use in Survivors of Severe Sepsis
Hallie C. Prescott1, Kenneth M. Langa1,2,3, Vincent Liu4, Gabriel J. Escobar4, and Theodore J. Iwashyna1,2,3

1Department of Medicine, University of Michigan, Ann Arbor, Michigan
2VA Center for Clinical Management Research, HSR&D Center for Excellence, Ann Arbor, Michigan
3Institute for Social Research, Ann Arbor, Michigan; and
4Kaiser Permanente Division of Research, Oakland, California
Corresponding Author: Hallie C. Prescott



Rationale:
Hospitalizations for severe sepsis are common, and a growing number of patients survive to hospital discharge. Nonetheless, little is known about survivors’ post-discharge healthcare use.

Objectives:
To measure inpatient healthcare use of severe sepsis survivors compared with patients’ own presepsis resource use and the resource use of survivors of otherwise similar nonsepsis hospitalizations.

Methods:
This is an observational cohort study of survivors of severe sepsis and nonsepsis hospitalizations identified from participants in the Health and Retirement Study with linked Medicare claims, 1998–2005. We matched severe sepsis and nonsepsis hospitalizations by demographics, comorbidity burden, premorbid disability, hospitalization length, and intensive care use.

Measurements and Main Results:
Using Medicare claims, we measured patients’ use of inpatient facilities (hospitals, long-term acute care hospitals, and skilled nursing facilities) in the 2 years surrounding hospitalization. Severe sepsis survivors spent more days (median, 16 [interquartile range, 3–45] vs. 7 [0–29]; P < 0.001) and a higher proportion of days alive (median, 9.6% [interquartile range, 1.4&#8211;33.8%] vs. 1.9% [0.0&#8211;7.9%]; P < 0.001) admitted to facilities in the year after hospitalization, compared with the year prior. The increase in facility-days was similar for nonsepsis hospitalizations. However, the severe sepsis cohort experienced greater post-discharge mortality (44.2% [95% confidence interval, 41.3&#8211;47.2%] vs. 31.4% [95% confidence interval, 28.6&#8211;34.2%] at 1 year), a steeper decline in days spent at home (difference-in-differences, -38.6 d [95% confidence interval, -50.9 to 26.3]; P < 0.001), and a greater increase in the proportion of days alive spent in a facility (difference-in-differences, 5.4% [95% confidence interval, 2.8&#8211;8.1%]; P < 0.001).

<font size="4">Conclusions:
Healthcare use is markedly elevated after severe sepsis, and post-discharge management may be an opportunity to reduce resource use.

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