救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ー United in the World for Us ー

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【注意】GO GO ハーブ 合法ハーブ 中毒

2011年06月22日 03時24分53秒 | 急性期管理技術
スパイスシルバー,スパイスゴールドスピリットなどの合法ハーブの乱用が,若年層に認められる。
安易に使用すると,薬物依存性が生じ,Gateway drugとして危険性がある。
こういうGo-Goハーブ中毒患者が,数多く救急搬入されるようになり,舌根沈下や頻脈などの致死的状態が観察されている。

このようなスパイスゴールド類,スパイスダイヤモンド類,スタッフインスパイアなどの幻覚剤ハーブ類の過量吸引は
症状出現に個人差があり,密室での殺人となる可能性もある。
実際の製造過程でどのように葉に薬液を振りかけているかが不明確であり,1本あたりのハーブ類の混入量は均質性がない。
極度の頻脈や高血圧や気道閉塞を起こす可能性があるので,十分に注意しなければならない。
さらに痛覚過敏状態により,暴力や殺人に発展する可能性がある。

これらのハーブ類は,マジックマッシュルームに類似する幻覚を伴う急性薬物中毒としても知られている。
合成ハーブの多くの主成分は,JWH-018やカンナビシクロヘキサノールなどの合成カンナビノイドであり,内因性麻薬であるカンナビノイドに構造を擬えて作られた合成化合物である。
その一部は,メチル基の修飾などにより脳内や脂肪への貯留時間が延長され,さらにカンナビノイド受容体との結合持続時間が延長され,カンナビノイド受容体作用が持続すると考えられる。
さらに,合成過程で副産物の産生比率が不明であり,また,それら生成物の血中濃度の中毒域が明らかでない。

医師は,これらの症状を知っておく必要がある。意識混濁,頻脈,知覚過敏,呼吸抑制,唾液増加,そしてTRIAGE DOAなどの尿中薬物検査キットでアンフェタミンなどの急性薬物中毒が否定された時に,合成カンナビノイド中毒を疑う。これまでも,これらを使用した死亡例が,ハーブ中毒として診断がつかずに隠れていると予測している。

※ カンナビノイド受容体
カンナビノイド受容体は,1980年代に脳内に存在することが同定されている(Proc Natl Acad Sci U S A. 1990;87:1932-6.)。現在,中枢神経系にはCB1受容体,末梢神経系にはCB2受容体が主に存在していることが確認されている。これらの受容体リガンドは1990年代に解析が進み,敗血症の分野でも10年遅れの一時期に,内因性カンナビノイドであるアナンダマイドや2-AGが話題にされた。カンナビノイドCB受容体は,グルタミン酸,GABA,アセチルコリンなどの介在ニューロンのシナプス前膜に主に存在し,これらの神経伝達物質の遊離を抑制する作用がある。記憶・学習に関与する海馬にも,CB1受容体が高密度に分布するため,カンナビノイド受容体作用によりNMDA受容体作用が遮断され,長期増強 LTP (Long Term Potentiation)が傷害される。このため,スパイスゴールド類,スパイスダイヤモンド類,スタッフインスパイアなどの大量吸入では,吸っていたという記憶が残りにくいという。また,残存する記憶障害にはアセチルコリン遊離抑制が関与するという。さらに,合成カンナビノイドは,末梢神経系のCB2受容体やバニロイドVR1受容体との結合により,疼痛緩和,皮膚感覚消失,末梢血管拡張作用を持つ。また,統合失調症などの精神疾患では,CB1受容体に対する内在性カンナビノイドの反応障害が関与するという報告もある。急性肺障害にも,カンナビノイドCB2受容体の活性化が関係することが知られている。


参考文献
Kogan NM, Mechoulam R. Cannabinoids in health and disease. Dialogues Clin Neurosci. 2007;9(4):413-30. Review.
Every-Palmer S. Synthetic cannabinoid JWH-018 and psychosis: An explorative study. Drug Alcohol Depend. 2011 Feb 10.
Mustata C, Torrens M, Pardo R, Pérez C; Psychonaut Web Mapping Group, Farré M. Spice drugs: cannabinoids as a new designer drugs. Adicciones. 2009;21(3):181-6.
Vardakou I, Pistos C, Spiliopoulou Ch. Spice drugs as a new trend: mode of action, identification and legislation. Toxicol Lett. 2010 Sep 1;197(3):157-62. Epub 2010 Jun 8. Review.
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