白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(219)長崎浜町(はまんまち)

2017-03-13 15:50:16 | うた物語
    長崎浜町(はまんまち)

 日本香堂のツアーで必ず行く県の一つに長崎県がある 最近は会館である長崎公会堂の近所とホテルしか行動範囲はないが 昔は必ず先輩のスタッフTさんに連れられて着いたその晩は必ず盛り場をウロウロしたものだ そしてどこへいっても昔はもっと良かったとの話ばかりであった

バブルの頃のある会社員さんの思い出(当時は造船業が盛んで賑わっていた)
「バブル全盛期のの長崎の会社接待は一次会は「花月」か「青柳」「一力」などの一流料亭で卓袱料理を食べ日本酒を飲んだあと一流と言われたキャバレーの「十二番館」か「銀馬車」に行き演奏と歌を聞きながらホステス(といってもババアばかりだった)をはべらせ ウイスキーを飲み優雅な時間を過ごした 一時間8000円はしたが接待で出すと経理は簡単に通った そんないい時代だった」

「十二番館」(現在の東映ホテルの所)銅座川の川べりにあったキャバレー 
昭和43年専属バンド高橋勝とコロラティ―ノが「思案橋ブルース」でメジャーデビュー 

泣いているような 長崎の夜
雨に打たれて ながれた
二つの心は
かえらない かえらない 無情の雨よ
ああ 長崎 思案橋ブルース

この曲のヒットは歌謡界に長崎ブームのきっかけとなった 
たとえば 青江三奈「長崎ブルース」

遭えば別れが こんなにつらい
逢わなきゃ 夜がやるせない
どうすりゃいいのさ 思案橋
丸山せつない 恋灯り
ああ せつない長崎ブルースよ

そして 瀬川瑛子「長崎の夜はむらさき」(昭和45年十二番館にて新曲発表会)

雨にしめった 讃美歌の
うたが流れる 浦上川よ
忘れたいのに 忘れたいのに
思い出させることばかり
ああ 長崎 長崎の夜はむらさき

「銀馬車」(ホリディ・イン長崎)さてライバルの十二番館の専属であったコロラティ―ノが出した「思案橋ブルース」がヒットしたため 銀馬車にたびたび来演していた大木英夫に相談して作ったのが「長崎の別れ星」であった 作詞は営業次長の吉田某 作曲は大木英夫の本名で佐藤正明 大木が歌った
長崎の別れ星(昭和43年

ネオン流れる 春雨通り
二人の肩に 雨が降る
添えぬお方と 知りながら
つのる未練の
長崎の 長崎の 別れ星

続いて専属バンドの内山田洋とクールファイブが佐世保のキャバレーで歌っていた前川清を入れてメジャーデビュー 
(「ロッテ歌のアルバム」の公開収録で長崎を訪れた東京パンチョスのチャーリー石黒が長崎放送の接待で「銀馬車」にきてクールファイブの生歌にふれ ビクターレコードに推薦してメジャーデビューすることになった)
自主制作盤「涙こがした恋」に続いてメジャーデビュー予定曲は前川のバンド仲間尾形義康の作った「西海ブルース」であったがその尾形が翻意したため破断 急遽吉田某が作詞した詞(名義は永田貴子)に彩木雅夫が作曲した「長崎は今日も雨だった」を発表

「涙こがした恋」

パッと咲くのよ 恋なんて
甘い言葉に 心をひかれ
夜に隠れて 泣くのは女
涙こがした 流れ星

そしてこの曲だ

あなた一人に かけた恋
愛の言葉を 信じたの
さがし さがし求めて
ひとり ひとりさ迷えば
行けどせつない 石畳
ああ 長崎の夜は雨だった

この曲は結局累計150万枚に達するミリオンセラーとなった
前川いわく大きなプロダクション(渡辺プロ)に入ったおかげです と言っている
なおお蔵入りした「西海ブルース」はクールファイブが大御所になった1977年レコーディングされている

港の雨に 濡れてる夜は
思い出すんだ 白い顔
二人で歩いた あの坂道も
霧にかすんで 哭いている
浮いて流れる あの歌は
君と歌った 西海ブルース

そして上の二軒には及ばないが「オランダ」(思案橋横丁)というキャバレーもあった
このキャバレーの専属バンドは五人編成の「ジ・アース」といい 同じく負けじと曲を出した

「長崎ごころ」
むなしい恋と泣きました
思い出しては泣きました
二人で歩いた あの坂道は
私の心に 雨が降る
思い出します 無情の雨が
ああ しぐれの街よ

この紹介した曲の殆どは雨が降っている 
僕が修学旅行の時も雨だった 諫早なんて完全に水没していてその中を電車で渡った
また橋もないのに「思案橋」が歌われている
昔の思案橋の欄干を観光用に急遽作った

前にも書いたが長崎キャバレーの繁栄は造船ブームの影響が大きかった キャバレーの席1000のうち一番いい200席は三菱造船が貸し切り船主の招待に使った
(当時2万人もいた三菱造船だが 現在は正社員が5000人足らず 大きなキャバレーもなくなり料亭も次々と廃業 飲み屋街は客待ちのタクシーの行列ばかり)

そういう良き時代の話である

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