白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(75) 楽屋の女優たち(1)

2016-05-27 11:49:37 | 人物
楽屋の女優たち

平成17年の明治座 「日本橋物語 恋しぐれ」
三田佳子の長谷川時雨 榎本孝明の三上於兎吉 水谷八重子の林芙美子

八重子さんの楽屋で喋っていたら脚本家の大藪郁子が興奮して入って来て
「キチンと肉(肉じゅばん)つけてらっしゃるのね 林芙美子はそうでなくっちゃ 
森光子の芙美子はイメージが違うわ 私はあんな芙美子は嫌いよ、それに比べて八重子さんは・・」
と誉めまくって出て行った。
見送った八重子さんは「何が肉入れてるのよ これ全部本物」とその頃から福よかになり始めた身体をゆすって笑った。


日本橋三越劇場の楽屋で京唄子さんと喋っていたらうつみみどりさんが楽屋見舞いにやってきた 
京さん曰く「ちょっと着替えてます お待ちください」と着替えてドアを開けた。
「どうぞ」
入ってきたうつみさんはそこにボクがいたので驚いたが 知らん顔して入ってきた。
でも心の仲では「この男…何者?」と思ったに違いない
京さんはいつも人前で早変わりばかりやってきたので
昔からボクに見えられてるのも平気だったのだ。

京さんの話をもう一つ 高田美和との会話
まだ「劇団なでしこ」の売れない劇団員だった頃 
当時人気絶頂だった お父さん高田浩吉の下賀茂の家を探し当て 
その庭におむつの翻るのを見た 
「あれ あんたのおむつだったのね」


平成7年新橋演舞場 
松竹新喜劇公演「秋の扇」にゲストで出た淡島千景さんの楽屋でダメ出しをしていたら岩谷時子が入って来て 
辛抱役のお妾さんの芝居を絶賛した。
岩谷さんがお帰りになった後一言
「わたし、こんな女大嫌い!」

 
昭和54年名鉄ホールの「お天道さん みててや」という芝居に出ていた女優の江夏夕子さんは丁度恋人と別れた時でふっきれたのか
主役の野川由美子と四つに組んだいい演技をしていた。
こんな素晴らしい女優がいるのか、と驚いた。 
ある日その恋人である目黒祐樹がやってきてから極端に芝居がおかしくなった。
いわゆる骨抜きになったのである。
それからすぐ二人は婚約した。江夏は女優を辞め 家庭に入ってしまった。
こうしていい女優江夏夕子は消え、幸せな妻 目黒夕子が誕生した


昭和52年 中村玉緒主役の「あかんたれ」という芝居中 客席で野次る客がいたので 場内の子に連絡して注意をするように言うと 
勝新太郎さんですけどいいですか、と言う返事、
俺が行くからと会ったら藤岡重慶と二人で野次っていた。
沢本忠雄の芝居に文句を言いたいという。
終わったらダメだしを・・という案を受け入れ 沢本に掛け合うとそのころの劇団喜劇がやっていた送り出しに参加するという・・
それを聞いた勝新さんはまた怒った・・役者が送り出しとは何じゃ・・間に入った玉緒さんが気の毒で・・

玉緒さんは変な女優さんだ。
そのころ旦那の借金で大変な時であったがとにかくよく喋った、
出番ぎりぎりまで舞台袖で我々と喋り大笑いをして 
舞台に出たら「秀太郎・・」すぐ泣くことが出来た。
ある時楽屋の公衆電話で10円玉を一杯持って競馬のノミ屋に電話していたので聞いているとびっくりするくらいの金額で大勝負していた。
旅に行ってもパチンコ屋が近くにあるホテルをご所望だった。
そういえばお父さんの鴈治郎さんも人間国宝になったら競馬、パチンコができなくなると本気で考えたくらい博打好きであった。
林与一さんはおやじさんの馬券を買いに行かされて競馬を覚えたと言っていた。



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