白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(14) 花紀 京さんのこと

2016-03-29 22:11:31 | 人物
花紀 京さんのこと
 
 花紀京さんがなくなった。 
12年間もの間植物人間として生きてこられて それをささえるご家族のご苦労を思うと「長い間ご苦労様でした」と声をかけずにはいられない。
 
花紀さんと初めて仕事をしたのは 昭和55年年末の芦屋雁之助主演の「むちゃくちゃでござります物語」、
雁ちゃんのアチャコで彼が父親であるエンタツ役を演った時である。
それ以前は岡八郎とのコンビを吉本新喜劇で見ていた だがそんなところでくすぶっている役者じゃなかった

その後何本かの作品で御一緒したが 中でも良く喋ったのが北島公演の時である。
淀川曠平さんと共に北島三郎公演のなくてはならない脇役となり 公演中は舞台事務所に入りびたりでショウ担当の僕に「吉村、ひどい芝居や なんとかしてくれ」といい「昔のアチャコの芝居 あれお前が書いたんやて あれはええ芝居やった」と何故かボクがゴーストで書いた幕内の秘密まで知っていて 一緒に芝居の北島を愛するが故の悪口大会で盛り上がったものだ。

2002年 脳腫瘍の摘出手術を無事終了して 年末の「紅白」にも元気な姿を見せて若手漫才師たちと「明日があるさ」を歌っていた.
 
2003年名鉄ホールでボクが演出した芦屋雁之助の舞台を主役の鴈之助が残りあと三日で病気休演した時 代役を快く引き受けてくれて
一緒に新幹線で名古屋に向かった。 
同じ車両に代役候補だったが皆が猛反対した大村崑が乗っており
「雁ちゃんが頑張っていると聞いて 応援にいくねん」と言われ返事に困った。

無事千秋楽を迎えて お礼を述べると
「実は舞台に上がる自信がなかったんや、これで演っていける自信がついたわ こっちゃこそおおきに」と礼を言われた。
だが次の5月「低酸素脳症」を患い自宅風呂場で倒れそのまま 意識が回復することなく「寝たきり」となっていた。
そして2015年8月 肺炎により大阪市内の病院で死亡 享年79歳

そう、花紀お最後の舞台は名鉄ホールの「とんてんかん、とんちんかん」のイジワル婆さんの役だった。

決してうまい役者ではなかったが「味で魅せる」役者ではあった。 

なんばのうどん屋「千とせ」に二日酔いの花紀が入って来て「肉ウドン、ウドン抜き」と注文した。
店主がそれに答えて出した. この店の名物「肉吹」の始まりである。



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