今日の日記は、今自宅で読んでいるウンベルト・エーコ編著『異世界の書 幻想領国地誌集成』(三谷武司訳・2015年11月東洋書林刊)で書かれた「ダ・ヴィンチ・コード」を創作?したベストセラー作家ダン・ブラウン氏へのエーコ氏のコメントです。添付した写真は、その著書の表紙です。
この著者は、私がとても夢中になって読んだ『薔薇の名前』(東京創元社)の作者で、著名なイタリアのボローニャ大学教授です。これを原作にしたショーン・コネリー主演映画『薔薇の名前』も、とても良い出来栄え作品で、私がヨーロッパの中世宗教に興味を持ち始めたきっかけとなった人です。
その彼が、この著書で私の2009年9月23日付日記『小説「天使と悪魔」著者ダン・ブラウンはガリレオ・ガリレイを正しく表現していない駄作者』で批判したダン・ブラウン氏へ痛烈な批判をしています。「ダビンチ・コード」のアメリカの書評の一つでは、「ウンベルト・エーコ+トム・クライシー+マイクル・クライトン」と言及されたエーコ氏が、第14章「レンヌ・ル・シャトーの捏造」で、関係者としてとても興味深い考察をしていました。以下に、その一部を引用・掲載します。
『2003年に至って、ダン・ブラウンの大ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」が世に出てしまう。ブラウンは明らかにジェラール・ド・セード(フランスのジャーナリストで1967年「レンヌの黄金」出版)やマイケル・ベイジュント、リチャード・リー、ヘンリー・リンカーン(皆ジャーナリスト)その他多数のこの分野の専門書を参照して、この小説を書いているのだが、にもかかわらず彼は、自分が提供する情報は何もかも史実だと明言している。・・もし彼の作品が本当に史実を再構成したものなのだとしたら、作中に散見される明らかなな事実誤認についてはどう説明すればいいだろう。(私注:その具体例は、専門的な記述の為割愛・詳細に5例ほど列挙)・・最も興味深かったのは、リンカーン、ベイジュント、リーが、剽窃の廉でブラウンを告訴したことである。つまり、自分たちの著書が排他的な知的財産権の対象だと主張したわけだ。つまり、彼らが今まで史実と称して売りさばいてきたものが、本当は【全部空想の産物】だったと公的に認めたということなのである。しかし、いっそう興味深いのは、公判に際して、ブラウンがリンカーンらの本を読んだことがないと主張したことである。これは、信頼できる情報源に依拠して書いたとする自らの主張と矛盾する抗弁ではないか。』
エーコ氏は、自らの作風と比較されたダン・ブラウン氏に、その創作技法を強く批判しています。私も、その指摘に大いに共感しています。そして、そのベストセラー作家の評価は、棺桶の蓋が閉じられる前でも、はっきりと分かるいい一つの実例だと痛感しています。
さらに、今私は、尊敬するウンベルト・エーコ氏に、正しい創作技法を問う新たな歴史小説(『薔薇の名前』を超える作品)を、是非執筆してほしいと思っています。
この著者は、私がとても夢中になって読んだ『薔薇の名前』(東京創元社)の作者で、著名なイタリアのボローニャ大学教授です。これを原作にしたショーン・コネリー主演映画『薔薇の名前』も、とても良い出来栄え作品で、私がヨーロッパの中世宗教に興味を持ち始めたきっかけとなった人です。
その彼が、この著書で私の2009年9月23日付日記『小説「天使と悪魔」著者ダン・ブラウンはガリレオ・ガリレイを正しく表現していない駄作者』で批判したダン・ブラウン氏へ痛烈な批判をしています。「ダビンチ・コード」のアメリカの書評の一つでは、「ウンベルト・エーコ+トム・クライシー+マイクル・クライトン」と言及されたエーコ氏が、第14章「レンヌ・ル・シャトーの捏造」で、関係者としてとても興味深い考察をしていました。以下に、その一部を引用・掲載します。
『2003年に至って、ダン・ブラウンの大ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」が世に出てしまう。ブラウンは明らかにジェラール・ド・セード(フランスのジャーナリストで1967年「レンヌの黄金」出版)やマイケル・ベイジュント、リチャード・リー、ヘンリー・リンカーン(皆ジャーナリスト)その他多数のこの分野の専門書を参照して、この小説を書いているのだが、にもかかわらず彼は、自分が提供する情報は何もかも史実だと明言している。・・もし彼の作品が本当に史実を再構成したものなのだとしたら、作中に散見される明らかなな事実誤認についてはどう説明すればいいだろう。(私注:その具体例は、専門的な記述の為割愛・詳細に5例ほど列挙)・・最も興味深かったのは、リンカーン、ベイジュント、リーが、剽窃の廉でブラウンを告訴したことである。つまり、自分たちの著書が排他的な知的財産権の対象だと主張したわけだ。つまり、彼らが今まで史実と称して売りさばいてきたものが、本当は【全部空想の産物】だったと公的に認めたということなのである。しかし、いっそう興味深いのは、公判に際して、ブラウンがリンカーンらの本を読んだことがないと主張したことである。これは、信頼できる情報源に依拠して書いたとする自らの主張と矛盾する抗弁ではないか。』
エーコ氏は、自らの作風と比較されたダン・ブラウン氏に、その創作技法を強く批判しています。私も、その指摘に大いに共感しています。そして、そのベストセラー作家の評価は、棺桶の蓋が閉じられる前でも、はっきりと分かるいい一つの実例だと痛感しています。
さらに、今私は、尊敬するウンベルト・エーコ氏に、正しい創作技法を問う新たな歴史小説(『薔薇の名前』を超える作品)を、是非執筆してほしいと思っています。