インディオ通信

古代アメリカの共感した者の備忘録8年。

『呪術師カスタネダ』 世界を止めた人類学者の虚実

2011-05-04 06:16:20 | カスタネダ『呪術の実践』 !
  寝ぼけた頭で毎朝書いているが、特に書きたいという記事もない。いや、そういえば、アマゾンでカスタネダの残りの本をそろえたのだが(新品)、調べてみると面白い本があり(絶版の古本)、ついでに仕入れた(送料含めて850円)。『呪術師カスタネダ』リチャード・デミル+マーティン・マクマホーン(大陸書房)である(まだパラパラとしか読んでいない)。

  1983年初頭までに出版された『呪術師と私』などの内容やら「カルロス・カスタネダ」について吟味されているわけであるが、完全な事実に基づいて書かれてあるようではないようだ。本の中でも「カスタネダ」は大ウソつきとして登場しているわけで、ドン・ファンからもその点を指摘されている。しかし「登場人物」が本人の実際と違うからといって、「ドン・ファンの教えの内容」まで疑うことはないような気もする。「履歴を消せ」「自尊心を無くせ」「びったりと引っ付くな、謎を残せ」(だったか?)とかあるわけだから、わざと自分自身をぼかしたのかもしれない(?)。

 もし、カスタネダの本が全てフィクションだとしても、それでも我が輩は読むに十分値すると思う。資料と、観念の力だけで、あれだけの著作物が書けるとしたら奇跡であり(無理だ)、あれは絶対に何らかの「ドン・ファン」の弟子になっていたものと思われる。単なるフィクションにしては、あまりにも「実際に見てきたこと」が書かれてあるからであり、同じようにな小説を書いていた我が輩からして(全然日の目をみないが)、情景や心理の描写、細かい点など、体験しなければ書けないことが多すぎる。

 「作られた履歴」によると、1935年ブラジル生まれであるが、実際は1925年アンデスのカハマルカ生まれであるようだ。10歳違うわけで、つまり「ドン・ファン」に出会ったのは青年ではなく、中年の時ということになるが、これも弟子として教えを受け、感銘し、心理的葛藤するには若い方が好都合ということか。ただ「インディアンは嘘をつかない」から、「騙された!」と憤る読者も多いかもしれないが、変に力を置かれてカスタネダの経歴を読むよりも、純粋に「ドン・ファンの教え」を読んでくれ、ということなのかもしれない。それでも主人公は作者の分身であることには違いない。

 そもそも、インディアンで我々の知の体系とは違った知識に溢れている「ドン・ファン」が、UCLAの学生である弟子の「カスタネダ」に実に詳細に丁寧に説明できること自体、何かおかしいとは思っていた。JINのごとき、明治以前の日本人と現代日本人が交流するようなもので(『JIN~仁』の時代の人々 、恐ろしく高い障壁があるはずなのに、「よくもまあ、ドン・ファンは彼に概念を説明できるな」、とは思ってはいた。やはり作者が概念をかみ砕いていたわけである。

 とはいえ、古代メキシコの呪術的世界は、我が輩にとって実に興味深い世界であるのだわい(夢見を頑張り続けます)