詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

言の葉つづり 小篇(21)

2017-06-18 | 言の葉つづり 小篇
17-85)
コトンと土の上に着地した
秋の実りの1粒が
夏を迎える夕方には
フサフサと大きな葉脈をうねらせ
野草や木々の葉に変わりました
ゆらゆらと風に揺れ
時間を染め上げていくのです
生きているということは
生命を運び繋いでいるということ
あなたから私へ
小さな実りの先へ



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言の葉つづり 小篇(20)

2017-06-18 | 言の葉つづり 小篇
17-78)
古代人が砕いた
木の実は苦く
海水は辛い
なまこや
トチの実ドングリの実
蒟蒻芋を食用にしたのは
命綱を手にしたからだね

蒟蒻芋の産地では
今も蒟蒻玉を
お土産に持たせてくれる
庭先に摘んである山の実
酸っぱい苦い実の毒性は
人類の夜更けに
発酵していった



17-79)
青空と雲を追いかけて
太陽が東の地平線から上り
西の水平線へ沈む日が
幾度となく過ぎていった

青と白の間を
行ったり来たりしながら
雨に打たれているが
肩に止まった透明な雨を
鏡に映せば
まだ1度も
手にしたことがない
白い色と青い色が
映っている



17-80)
雨が降るように
そろそろ君が戻ってくる
なぜ時間は巡るのか、誰も
答えを教えてくれなかった
サヨナラには訳があって
涙の国の門をくぐるのは
君にとっての
僕にとっての
たった一つのバラを忘れない為
棘は僕達の心に
楔のように刺さって
流れ星に
君の帰り待っている



17-81)
きみに会えた、ということは
そういうことだよと
話しかけてくる

1本だけの、あの星に咲く薔薇を
忘れてはいけないんだ…
星の王子さまが置いていった薔薇は
現実に咲くどの花よりも
心に
鮮やかに咲き出して
すると、
あの1本の薔薇に会うみたいに
あれから、1人のきみを見つけ
1匹の猫を見つけ
窓の外に来る1羽の鳥に
出会えて



17-82)
海辺を歩く
ザーザー漏れの袋を下げて
ボタンが取れたシャツ
綻びたジーンズ
紐の取れたスニーカー、

だから拾って行くのです
割れた貝殻を
鳥が落としていった羽を
陽に光るガラスの破片を
自分の欠けた場所にしまっていったら
もとの私よりも膨らんで
優しくなれそうで



17-81)
誰かが
そっと
言葉を手渡していった
意味がわからなくて
置き忘れていたが
ある時、急に色鮮やかな雨のように
降ってきて

今日、
電車の窓に拡がる夕焼けが
見たこともない程
美しくて
どんな言葉が隠れているのだろう、
それは、
貴方に届ける為の
言葉のように



17-82)
硝子は一日中、
光を待っていた
光の孕んでいる色を
知り尽くし
夜になれば
集めた色の全てを
月に返してあげた

太陽と月は
遠く離れて
姉と妹のようだった
寝息を気にしながら、
太陽は錦に輝く衣を
月に届けた
地球の硝子に
反射させて。
光の欠片が
地上に煌めき



17-83)
銀色の魚が
川をのぼっていく
時々 白い腹を翻し
黒い背びれが
川の流れの連続面を
切り離していく

満月の夜
川のなかに
虹色の魚が生まれるとしたら
私たちの心も
その時、
虹色の光で
いっぱいになっているに
違いない



17-84)
夜は物語を沢山知ってる
アダムとイヴが
楽園を去った日を
そっと見守っていたのは夜
夜は休息と誕生を繰返す
隣家にミキちゃんが生まれたのは
昨日の夜
疲れた母の体を
いつまでも
抱き抱えてた
眠れぬ人の横で
星を降らせては
深い森のように
夜は、私たちを包んでいた


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言の葉つづり 小篇(19)

2017-06-18 | 言の葉つづり 小篇

17-71)
夜間の点滅信号に
ゆっくり車を走らせる
寝静まった住宅街に
刻まれる無音のリズム
どこの街にも
秒針が時を打ち
花の開く時間を
教えてくれますように

無灯火の信号が
夜明けを待っている
暗がりに
置き去られて
点滅を忘れてもなお、
人間の夜明けを
待っているのだ



17-72)
今朝、今日は金曜日?と近所の小学生達に聞かれ、
そうだよ、よかったね、あと1日だよ、と答えたが、
子供は学校が楽しみの一つかもしれないとも思った。
今日の続きを明日できますように。
夜空の次は朝であるように。
幼子に白い綿毛を摘んでは、
一緒に蒲公英地図を拡げたくなるのです。



17-73)
葉に腰かけて行くのは
何千という風

風の止まり木に
鳥たちは留まることを
遠慮して

隣の木陰に降り立ち
草の小さな白い花を
啄みながら
風の美しい所作を
見つめている

葉の衣擦れの音は
流れゆく水の音にも似ている
時の流れていく音に



17-74)
水色の風が
細い枝に
止まっていた日
呼び止められ

ふっと寂しそうに
優しい歌を歌いだし
葉を揺らしていました

空が透明に近づく時間が
あるのですが
水色はまもなく
次の色に塗り替えられてしまう
そんな刹那に
時々会いにくるのです
今日見た夢を
貴方に話しに



17-75)
本当はね、
みんな手を繋ぎたい
小さな子供みたいに
手を繋ぎたい

ちょっとくらい怒っていたって
笑いだしたくなっちゃうものだから
本当はね
みんな怒るのをやめたいと思ってる
泣くのももういいかなと思ってる
だから
明日は手を繋ぎたい
あなたの不思議を感じたい



17-76)
時々、立ち止まる
仕事に行く途中で右折して山へ登ってしまうことがある
海への道を1日車を走らせることがある
失われていくものは何だろう、
足の向くままは、案外リアリティがあるのだと思うよ。
足は地面から離れたことがないから、
大事なことが聞こえているのかもしれないね。



17-77)
波打ち際を歩くように
良いことと
良くないことの
間を進んでいく

白い波頭が服の裾を
濡らしたら
最初からやり直し
五弁の花がないなら
新しい吉兆を見つけていく

白い貝殻、白い石、白い泡粒
白い花びら、白い風を
瓶に詰めて
貴方へ
世界に一つの
アミュレットに


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