なんと、もうなくなっていました。ショック!
かつて、神保町、神田の古本屋街の裏通り、すずらん通りにあり、私はそこで働いていたことがあるのです。
「地方小出版流通センター」という会社があるのですが、書肆アクセスは、その会社の運営する本屋でした。そっちから説明すると、地方小出版流通センターというのは、その名の通り、地方にある小さな出版社あるいは東京でもたくさんある小さな出版社が出した本を取り扱う、取次店です。本の流通というのは、出版社と書店の間に取次というのがあり、東販、日版というのが最大手。そのほかにもいくつかあり、書店はそのいずれかと契約をするのです。
が、それらの取次は、小さな出版社の本など扱いません。
なので、北海道の出版社で出した本を九州の人が読みたいと思ったときには、送料を自己負担して直接買うしかなかったのです。といっても何十年も前のこと。地方小出版流通センター(略して、地方小)の社長さんは、東京経済大学の卒業論文でこの流通のことを書き、そのまま小さな出版社の本を全国に送るというシステムの会社を設立したのでした。
わかりにくいかな?
たとえば、東京に住んでいて、北海道の出版社が出している本を買いたいと思ったとき、その出版社が地方小と契約をしていれば、本屋で注文ができます。本屋は契約している取次にその注文を出し、取次は地方小に注文、地方小が出版社へ注文、となります。
その出店が書肆アクセスだったわけで、扱っている本はつまり他の本屋ではなかなか見かけない本ばかり。逆にふつうの本屋にある村上春樹などはおいていないという本屋でした。今ではメジャーになって、今年菊池寛賞を受賞した「本の雑誌」は、かつてはここを通してしか買えませんでした。(東京の本屋さんには、直接置いていたでしょうが)地方の本は、自費出版が多いのですが、地方に住んでいて地道に地方史や風習を研究している方のすぐれた本が埋もれてもいるのです。
でも、もうないんだなあ。
すずらん通りからどこかへ移転したというのは、聞いていたのですが、その後閉店になっていたとは! 地方小という会社自体はまだあるようですが。
私は午前中、当時九段下にあった地方小で伝票の計算など事務をやり、お昼をはさんで歩いて神田へ行き、アクセスで店番をしていたのです。
ずっと思い出すことはなかったのに、自分が本を出して、その本が本屋に並んだとたん、そうだった私は本屋で働いていたことがあったじゃない! と思い出した次第です。(秋田の本屋でも働いていた)
ネットで調べたら、関連書があったので、買ってしまいました。
というか、こうしてネットですぐに本を買える時代になったことが、アクセスが閉店になってしまった一番の要因かもと思ったり。
右側、暗くて見にくいですが、『書肆アクセスという本屋があった』は、アクセスの閉店を知った全国の取り扱い地方小出版の方たちを中心にした、『書肆アクセスの本を出す会』というのを作り募金をして出したもの。神田の裏通りに全国から集まった地方の出版人達の思いが詰まった本でした。
しかも中に、アクセスの歴史が書かれていて、何年から誰が働いていたというところに、私の名前も発見! 驚きました。
お世話になった谷口さん(旧姓福田さん)も寄稿されていて、懐かしい。他にも数人顔の思い浮かぶ方の名前があり、そんな小さなことが嬉しい。でも当時の店長だった鬼塚さんが何も書いていないのは、連絡が取れずにいたからなのかなあと思ったり。
本を読むと、神田の三省堂でコーナーを設け、意志を受け継いでいくとありました。どのフロアかわかりませんが、地方出版のコーナーとしてあるのかもしれません。(といっても本が出たのが何年も前。今これもあるかどうか? ですが)