報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「箱根湯本温泉」 2

2019-12-22 16:18:47 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月25日14:30.天候:晴 神奈川県足柄下郡箱根町 某日帰り浴場]

 魔女3人に見習魔道士1人の温泉日帰り旅。
 これは魔女の1人、ルーシーが新幹線に乗りたがったからこその旅である。
 が、帰りはもっと違う電車に乗るつもりの稲生。

 稲生:「ふぅ……。やっぱり温泉はいいよなぁ……」

 露天風呂で寛いでいると、内湯の方から稲生の知っている顔がやってきた。

 ケンショーグリーン:「先般の総幹部会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 稲生:「また出た……。ホント懲りないなぁ……」

 稲生はもはや呆れ顔。

 ケンショーグリーン:「クフフフフ……。稲生さん、よく会いますね?お隣、失礼します」
 稲生:「アンタに『よく会うね』って言われたくないよ。さっきの枕詞からして、今度は魔界共和党理事としてではなく、ケンショーレンジャーとして僕に会いに来たわけ?」
 ケンショーグリーン:「折伏は顕正会員としての使命です」
 稲生:「それは宗門も同じだよ。カントクはロクにやってないけど……」

 雲羽:ギクッΣ(゚Д゚)→φ(`д´)→『余計なこと言うな!』(←スケッチブックに書かれたカンペ)

 ケンショーグリーン:「以前にも申し上げましたが、ケンショーレンジャーは解散しました」
 稲生:「創設者のポテンヒットさんが来られなくなったからねぇ……」
 ケンショーグリーン:「ええ。いずれはカントクを顕正会に連れ戻してくれる役を期待していたのですが……」
 稲生:「それで?今日は僕に何の用?マリアさんの下着ならやらないよ?」
 ケンショーグリーン:「いえいえ。今日はたまたま街頭折伏に来ただけ。これは偶然です。御仏智ですね。稲生さん、引いてはカントクに顕正会に戻って頂く為の」
 稲生:「ヤだよ!」
 ケンショーグリーン:「それに、『戦利品』なら既に頂きましたので。クフフフフフ……」
 稲生:「お、おい、まさか?」
 ケンショーグリーン:「御覧になりますか?クフフフフフ……」
 稲生:「マリアさんの下着じゃないだろうな?」
 ケンショーグリーン:「それは分かりません」
 稲生:「なにっ?」
 ケンショーグリーン:「私の分析によれば、確かに魔女さん達のどなたかの物ではなかろうかと思うのですが、いやはやさすがは魔女さん達です。これ以上は魔法のプロテクトで、私の分析力が働かないのです」
 稲生:「歳を取って、ヤキが回っただけじゃないのか?」
 ケンショーグリーン:「これは手厳しい。クフフフフフ……」
 稲生:「とにかく見せろ。どこにある?」
 ケンショーグリーン:「それでは脱衣所にご案内致しましょう。クフフフフフフ……」

 稲生はケンショーグリーンに付いて、露天風呂から脱衣所に戻った。

 ケンショーグリーン:「私の秘蔵コレクションの中の最新品、とくとご覧あれ!」

 グリーンの服の中に隠されるようにして、一組のブラショーツが現れた。
 青色の少し高そうな下着である。
 シルクを基調とした素材だった。

 稲生:「……いや、マリアさんのじゃないな。マリアさんはあまり、こういう素材のは着ないんだ」
 ケンショーグリーン:「クフフフフフ……。私の分析通り。さすがの私も先約のいらっしゃる方は、御遠慮させて頂いておりますよ。ですから、どうかご安心を」
 稲生:「そういう問題じゃないって」
 ケンショーグリーン:「ついでにお伺い致しますが、では、この下着はどなたのでしょう?」
 稲生:「うーん……。多分、エレーナのじゃないかなぁ?」
 ケンショーグリーン:「あの跳ねっ返り魔女の!?……どうしてそう思われるのですか?」
 稲生:「ルーシーはボクサーショーツ派だし、エレーナの契約悪魔のシンボルカラーは青だし、確か鈴木君がエレーナに青いブラショーツをプレゼントしたとか言ってたけど……」
 ケンショーグリーン:「おおっ!どこかで見たことがあるかと思っていましたが、これは正しく私が鈴木君にアドバイスしたものですよ!」
 稲生:「ちょっと待ってくれ」

 稲生、自分の荷物の中からスマホを取り出す。

 稲生:「あー、もしもし、エレーナ?下着泥棒の犯人、ケンショーグリーンだったんだけど、どうする?」

 すると電話の向こうで怒号が聞こえた。

 エレーナ:「なにぃっ!?やっぱケンショーグリーンだとォ!?首根っこ掴んで引きたてーい!!」
 ケンショーグリーン:「嗚呼ッ、そんな!稲生さん、同じ男じゃないですか!御無体な!」
 稲生:「下着ドロは犯罪だからな!」

 稲生、グリーンの首根っこを掴んで脱衣所の外へ引き立てた。
 そこでは頭に怒筋をいくつも立てたエレーナが待ち構えており、ホウキにくくり付けられて、どこかへと連行されてしまった。

 ケンショーグリーン:「あ〜れ〜……」
 稲生:「あーあ……」

 恐らく、箱根山ロープウェイの支柱のてっぺんにでもくくり付けられる刑に処されるのだろう。
 こんな時、魔女がホウキに乗って行けば楽だ。

 稲生:「グリーンもバカだな。よりによってエレーナの貰い物をパクるんだから……」
 マリア:「何だかんだ言ってエレーナのヤツ、鈴木からのプレゼントを使ってるんだな」
 稲生:「そういうことです。まんざらでもないのかもしれませんね」
 マリア:「だな」
 ルーシー:「ていうか稲生さん……」

 ルーシーは水晶球を手に、眉間に皺を寄せた。

 稲生:「な、何だい?僕は下着ドロのことは知らないよ?」
 ルーシー:「何で私の下着がボクサーショーツだって知ってるの?」
 マリア:「えっ!?」

 マリアも怒筋を浮かべて稲生を睨みつけた。

 稲生:「お、怒るなよ。ほら、鬼怒川に泊まった時、皆で二次会して、そのまま寝ちゃっただろ?」
 ルーシー:「それがどうしたの?」
 稲生:「で、起きた時……」

 その時、同じく眉間に皺を寄せていたマリアが急に表情を変えた。

 マリア:「あっ、あー!そういうことか!」
 ルーシー:「なに?マリアンナ」
 マリア:「いや、皆して酔っ払って寝たもんだから、寝相とか変なことになってたんだよ。私も含めて」
 ルーシー:「それで?」
 マリア:「ルーシーは目が覚めた時、気づかなかったの?あんた、浴衣の下はだけてパンツ丸見えになってたよ?」
 ルーシー:「は!?」
 稲生:「ご、ゴメン。それ、僕見ちゃって……」
 ルーシー:「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 ルーシーは急に顔を真っ赤にした。

 稲生:「それで分かったんだ。はははは……」
 マリア:「いや、私は勇太に注意しといたからね?その後、すぐに勇太の部屋に向かったし……」
 ルーシー:「そういう問題じゃない!!」

 取りあえず、稲生はマリアの弁護とルーシー自身の不注意ということでパンモロ目撃の罪は不問となった。

 稲生:「ルーシーもマリアさんと同じ、綿100%のプリントショーツが似合うと思うよ?」
 マリア:「そういうことは言わなくていいから!」

 男は皆ヘンタイということで。
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本日の雑感20191221

2019-12-21 17:43:32 | 日記
 「嘘も方便」という言葉があるが、キリスト教ではウソは一切禁止されているらしい。
 だから仏教徒の私が「嘘も方便」とかやると、メチャクチャ怒るんだわ。
 かの石原慎太郎先生も、「小説家は嘘つきで、随筆家は正直者」と仰ったことがあった。
 そりゃそうだろう。
 ウソ話を作るのが仕事(趣味)なんだから。
 私も敬虔なキリスト教徒だったら、小説を書く趣味なんて持たなかっただろうな。
 このブログも日記より小説の方が多くなってしまったが、なるべく日記の方は正直に書いているつもりだ。

 小説の方だって、わざわざ挿絵代わりに写真を載せているのは、その部分だけは正直な描写という意味も含まれているんだけどね。
 表向きには、臨場感を読者の皆様に持って頂く為ということにしているんだけど。

 え?仏教徒は嘘つきが多いのかって?
 うん、多いと思うよ。
 日蓮宗に大聖人様の御生涯を監修させたら、萬屋錦之助の映画みたいになるしw
 創価学会の偉い人の随筆は【お察しください】。
 顕正会の偉い人の著書は【お察しください】。

 でもねぇ、ウソを付けるから物事をハッキリ言えるという部分はあるんだよ。
 ウソが付けないと、何事にも曖昧に答えてしまうというデメリットはあると思うな。
 だから御書はハッキリとした物言いになっているが、聖書は曖昧な表現が多いでしょう?
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“大魔道師の弟子” 「箱根湯本温泉」

2019-12-19 19:40:19 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月25日13:43.天候:晴 神奈川県足柄下郡箱根町 箱根湯本駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなくこの電車の終点、箱根湯本、箱根湯本でございます。2番ホームに到着致します。お出口は、左側です。箱根湯本から先、塔ノ沢、大平台、宮ノ下、小涌谷、彫刻の森、強羅へおいでのお客様、申し訳ございませんが、台風19号の影響により、運休致しております。代行バスを運転しておりますので、そちらをご利用ください。今度の代行バスの発車時刻は……」〕

 小田原〜箱根湯本間も線路は箱根登山鉄道のはずだが、今では小田急電車しか走行していない。
 特急ロマンスカーはもちろんのこと、各駅停車もである。
 小田急で運転されている通勤電車、4両編成の最後尾に乗り込んでいる稲生達はそれで箱根湯本に向かった。
 電車は小田急のそれだが、カラーリングはこの辺りの区間運転専用車両なのか、箱根登山電車の赤い塗装に合わせている。

 ルーシー:「台風の影響……」
 稲生:「ええ。それで、大師匠様の温泉接待は箱根じゃなく、鬼怒川にしたんだ」

 一応、箱根湯本駅までは電車で行けるようになっているので、箱根七湯の1つ、箱根湯本温泉に行く分には何ら支障は無い。
 但し……。

 稲生:「過去にも火山活動で箱根が影響を受けたことがあったからね」
 エレーナ:「ああ、魔界のスーパーグレート火山の影響か。やっぱこっちにも影響があったか」
 稲生:「え?」
 エレーナ:「スーパーグレート火山の周辺にも、この世界と繋がる穴がボコボコ開いてるんだ。どこに繋がってるのか調べて見たら、この山奥だったんだ」
 稲生:「……いざという時は、そこから魔界に行ける?」
 マリア:「いや、フツーに危ないでしょ」
 ルーシー:「そんな火山活動で開いたり閉じたりしているような穴、さすがにお断わりだわ」
 エレーナ:「稲生氏、東京中央学園とか、うちのホテルの地下みたいに管理されてる所だから安全なんだぜ?あんな自然現象で開くような穴は通らない方がいいぜ」
 稲生:「え、でもさっき調べてみたって……」
 エレーナ:「予め、重装備でもって調査することはあるぜ。何せカネがいいからな」
 ルーシー:「絶対後で痛い目見るよ……」
 マリア:「自己責任だから」
 稲生:「僕はやめておこう……」
 マリア:「当たり前だよ」

 電車がゆっくりとホームに進入し、そしてドアが開いた。

〔「ご乗車ありがとうございました。箱根湯本、箱根湯本、終点です。2番ホームに到着の電車は、折り返し13時56分発、各駅停車の小田原行きです。強羅方面へおいでのお客様は、代行バスにお乗り換えください。……」〕

 ルーシー:「地下鉄みたいな電車だったけど、地下は走らないのね」
 稲生:「山へ向かう電車だからね。でも、ルーシーのその感覚は当たってる」
 ルーシー:「えっ?」
 稲生:「この小田急1000系という電車は、昔、地下鉄千代田線に乗り入れていたんだ。午前中乗った緑の地下鉄ね」
 ルーシー:「そうだったの」
 エレーナ:「お?地下鉄と聞いて気持ち悪くなったか?」
 ルーシー:「いや、大丈夫よ」
 マリア:「それより、温泉はこの近く?」
 稲生:「そうです」

 改札口を出て駅の外に出る。

 稲生:「さすがは有名な温泉です。平日でも団体客で賑わってますよ」
 エレーナ:「駅前の商店街を歩くだけで完結しそうだなー」
 稲生:「登山電車が運行していたら、それに乗ってみるのも1つの手だったんだけど、まだ復旧してないしね。駅から1番近い温浴施設は、“かっぱ天国”という所なんだけど……」
 んっ?:「河童くん、こんにちはw」
 修羅河童:「怨嫉謗法はやめなさい!それより功徳を語りましょうね。私は今、恋女房とこれから温泉を楽しむところです」
 んっ?:「この旅行の費用はどこから捻出したのかな?w」
 修羅河童:「訴えます!名誉棄損で訴えます!」
 んっ?:「河童が“かっぱ天国”へ行くwww」
 稲生:「……別の所にしましょう」
 エレーナ:「何だかうるさそうだ」
 ルーシー:「楽しそうだけど、もうちょっと静かな所の方がいいかな」
 マリア:「いい意味で賑わうくらいならいいんだけどな」
 稲生:「シャトルバスは出たばかりなので、タクシーで行きましょう。そんなに料金は掛からないはず……」
 エレーナ:「お?稲生氏の奢り?」
 マリア:「1人数百円ずつ割り勘に決まってるだろうが」
 ルーシー:「何でもかんでもオトコにタカらないの」
 エレーナ:「ちっ、鈴木は出してくれるのにぃ〜」
 稲生:「あー、鈴木君はねぇ……」

 稲生達は駅前のタクシー乗り場からタクシーに乗った。
 稲生は他にも候補を立てていたらしく、そこへ向かうよう運転手に言った。
 彼は助手席に座り、魔女達はリアシートに座る。

 エレーナ:「前に行った、山奥の温泉街をもっと大きくした感じの町だな」
 マリア:「どこの温泉だ?」
 エレーナ:「魔界だぜ。アルカディア王国の外れの田舎町の温泉だ」
 ルーシー:「それこそ、スーパーグレート火山の麓の町とかじゃない?」
 エレーナ:「そうだぜ。フザけた旅館に泊まるハメになってよー……。見た目は日本風の旅館なんだが、女将が変なヤツだったり、料理長がパチンコに行ってたりと、そりゃもう……」
 稲生:(魔界にもパチンコがあるんだ……。作者の趣味かな?)

 駅前からものの5分くらいで、日帰り温浴施設に到着する。

 ルーシー:「はい、稲生さん。200円」

 ルーシーは小銭入れから稲生に200円を出した。

 稲生:「あ、ありがとう」

 稲生は魔女達から割り勘分を受け取ってから……。

 稲生:「バスに乗れたら1人100円で済んだんだけどね。まあ、しょうがない」

 タクシーで行けば、目の前に到着できる。

 稲生:「ここまで来れば、さすがに静かなものでしょう」
 マリア:「それなりに賑わっているみたいだけど……」
 ルーシー:「さっきみたいにやかましくないって意味よ」
 エレーナ:「それじゃ、早速入ろうぜ。何だか本当に効きそうだぜ」

 4人は早速、施設の中に足を踏み入れた。
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本日の雑感 20191219

2019-12-19 15:06:12 | 日記
 世界的には死刑制度撤廃の動きがある中、先進国としては珍しい絞首刑としての死刑が残る日本に対し、批判する者も少なからずいるようだ。
 しかし、そういう国や地域にあって、警察はいとも簡単に凶悪犯を射殺しているという現実を見るべきである。
 そこに過剰防衛の概念は無い。
 日本に死刑制度があるのは、いかに凶悪犯であったとしても、警察はよほどのことが無い限り、まず犯人を射殺することはないからだ。
 最近、凶悪犯の死刑が回避されている向きがあるが、もし今後このような傾向が続くのであれば、一般市民も武装して犯人に応戦し、場合によっては殺害してしまっても過剰防衛には問わないで頂きたいと思う。
 死刑を回避するということは、こういうことだ。

 警備員の護身術の中に警戒棒操法があるが、この中に「中段打ち」というのがある。
 これは犯人と格闘する際に、相手の肩をまず警戒棒(警察官の警棒に相当)で叩くというものだが、もちろん犯人だってわざわざ警備員に肩を思いっきり叩かれたいとは思うまい。
 応戦するか逃げるかのいずれかで有ろう。
 応戦してくる場合はともかくとして、逃げる場合に、逃げ方が悪いと頭に当たるんだ、あれ。
 私の警備会社ではダミー人形を犯人に見立てて、それに打ち込む訓練をしているのだが、動いていなくても手元が狂って違う所に当たるくらいだ。
 私も犯人役の肩を狙ったつもりが、よく頭に当たることがあった。
 その度に指導員から、

「おい、雲羽!オマエは犯人を殴り殺す気か!」

 と、注意を受けるのだが、指導員もそれ以上は何も言って来ない。
 しかも、わざわざ「殺す気か」と言ってくるのである。
 最近になって思うのだが、これはもしかしたら、あえて「過剰防衛」を狙ってるんじゃないのかと考えるようになった。
 もっともその指導教育者とは入社以来の付き合いで、毎年社員旅行も一緒に行くし、忘年会や新年会にも一緒に参加する仲なのだが(もちろん私は元隊長の現ヒラで、相手は課長である)。

 で、例のあの事件。
 ほら、新幹線で1人が殺され、2人がケガを負わされた事件ね。
 昨日、犯人が無期懲役になって“のぞみ”なだけに、望み通りの刑を受けたということで万歳三唱したそうだが、あれを機に全ての新幹線に警備員を乗せることになった。
 あの当時はまだ全列車に警備員を乗せることにはなっておらず、事件のあった列車は警備員の同乗対象外だった。
 ただでさえ、東京駅を在来線以上の本数で発車する新幹線だ。
 それに始発の“のぞみ”から最終の“こだま”まで、全列車に警備員を乗せようってんだ。
 その数は膨大なものになるだろう。
 そんな時、私も会社から声を掛けられて、その仕事をさせられそうになったことがある。
 もちろん、ただ辞令を出されて、その現場にホイホイ行くような所ではない。
 配置させる前に面談を受けるのだが、そこで私は事件の話と警戒棒の話を合わせて担当者に質問したことがある。
 ああいった事件がまた起これば、警備員として駆け付けざるを得ないだろう。
 そして、手持ちの警戒棒で犯人と対峙しなくてはならないだろう。
 そんな時、相手が銃や爆弾を抱えていたらもうお手上げだが、刃物くらいでは恐らく立ち向かわざるを得ないだろう。
 ただでさえ揺れている列車の中で、しかも犯人は興奮しているだろうし、こちらも相当緊張している。
 思わず力が入って犯人の頭に思いっ切り当たり、それで打ちどころが悪くて殺してしまいましたとなった場合、過剰防衛として逮捕されるのか?という質問をしたら、担当者は思いっ切り頭を抱えてしまった。
 で、私は対象外となってしまった。
 ので、今では平和にオフィスビルの警備員として勤務に当たっているわけだが。

 いやね、今のヘタれた日本の司法の考えからすれば、恐らく警察は警備員を過剰防衛として逮捕してくるだろう。
 そして裁判でも、過剰防衛が罷り通られたら後々「政治的に」困るから、有罪にしてくるものと思われる。
 なので私のような考えの人間は、むしろそういった現場には行かない方がいいだろう。
 大聖人様は常に御照覧あそばす。
 新幹線警備の現場の行かずに済んだことも、平和なオフィスビル勤務に配属されたのも、何かの御仏智であろうな。

 以上、泊まり勤務明けでヒマな警備員の戯言でした。
 次回は“大魔道師の弟子”の更新を致します。
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“大魔道師の弟子” 「無効印」

2019-12-17 21:09:57 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月25日12:26.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・東海道新幹線ホーム→東海道新幹線655A列車1号車内]

〔「レピーター点灯です」〕

 ホームに発車メロディが鳴り渡る。
 かつては“のぞみ”号の車内チャイムで使われていたものだ。
 JR東日本の新幹線ホームが未だに電子電鈴を流す中、そこはしっかり区別されている(はずだが14番線と15番線ホームは歴史上、北に向かう新幹線ホームと近接している為、そちら側で発車ベルが流れると混同しやすい)。
 車内チャイム時代と同様、1コーラスしか流さないのが基本だが、最終列車の場合は2コーラス、場合によっては3コーラス流すこともある。

〔15番線、“こだま”655号、名古屋行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕
〔「15番線から“こだま”655号、名古屋行きが発車致します。ITVよーし!乗降、終了!ドアが閉まります。ご注意ください。ドアが閉まります」〕

 ブー!という客扱い終了合図のブザーが鳴って、ドアが閉まる。
 JR東海では安全(可動)柵と呼ばれるホームドアも一緒に閉まるが、この時、安全柵側では“乙女の祈り”が流れる。
 基本的にはイントロ部分しか流れないが、稀れに再開閉する際にサビまで流れることもある(作者、勤務中に体験)。

〔「4号車のお客様、安全柵から離れてください!危険です!」〕

 マリア:「日本の新幹線のプラットホームは、イギリスの高速鉄道のホームよりやかましいな」
 稲生:「これも安全の為です」

 自動放送が事細かく流れ、発車メロディのオンパレードはもはや日本の鉄道文化とも言える。
 そして、ようやく列車が走り出した。

〔♪♪(車内チャイム。“いい日旅立ち・西へ”のイントロ)♪♪。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に止まります。次は、品川です〕
〔Ladies & Gentlemen.Welcome aboard the Shinkansen.This is the Kodama superexpress bound for Nagoya...〕

 エレーナ:「ほお。箱根に行って温泉入るって?」
 稲生:「体の傷痕を少しでも治してもらいたいからね」
 エレーナ:「おい、聞いたか、皆?これだけ気を使ってくれる男に普通の人間だった頃、出会えたか?」
 マリア:「……無かった」
 ルーシー:「あったと思うけど忘れた」
 稲生:「いや、別に大したことでは……」
 マリア:「そういうエレーナはどうなんだ?」
 エレーナ:「私か?………………………………………」
 マリア:「無いなら無いと素直に言え!」
 エレーナ:「“湯けむり旅情殺人事件 〜3人の非モテ魔女は見ていた〜”というタイトルに今から変えよう」
 ルーシー:「私を巻き込むな!」
 マリア:「勇太を仲間外れにすんなっ!」
 稲生:「僕は……どっちでもいいけど……」

 多摩:「……だってさ、雲羽?」
 雲羽:「サスペンスものは“私立探偵 愛原学”と被るからダメです」

[同日13:01.天候:晴 神奈川県小田原市城山 JR東海小田原駅→箱根登山鉄道小田原駅]

 稲生の言う通り、新横浜駅を出た“こだま”号は、次の小田原駅まで最高速度で走行した。
 東北新幹線などでは高架線の上を走り、防音壁があるせいで、なかなかスピード感を味わうことはできない。
 また、東北地方に入ればトンネル区間が多いのもスピード感に乏しい理由である。
 しかしながら東海道新幹線は地平を走り、近くに建物もあることで、スピード感は北へ向かう新幹線よりもあった。
 ルーシーに限らず、マリアもそのスピード感に車外へ目を取られた。

 稲生:「さすがのホウキ乗りも、こんなスピード出せないでしょ?」
 エレーナ:「無い無い。こんなに出すくらいなら、フツーに新幹線乗るぜ」
 稲生:「思いっ切り現実的だな」
 エレーナ:「悪魔と契約して魔力使い放題だからといって、調子に乗ってはダメなんだぜ」
 稲生:「ほお……」

〔♪♪(車内チャイム。“いい日旅立ち・西へ”のサビ)♪♪。まもなく、小田原です。東海道本線、小田急線、箱根登山鉄道線、伊豆箱根鉄道線はお乗り換えです。小田原の次は、熱海に止まります〕

 列車が速度を落とし始める。

 エレーナ:「あっという間だったな」
 稲生:「そりゃそうさ。新富士だって、あっという間なんだから」

 小田原駅には通過線が存在する。
 大抵の“こだま”号はここで後続の“のぞみ”や“ひかり”に追い抜かれるというわけだ。
 その為、大体の停車時間は5分くらいである。
 “こだま”の停車する副線ホームに入るのに、ポイントの通過がある。

〔おだわら、小田原です。おだわら、小田原です。ご乗車、ありがとうございました。……〕

 

 意外とここで降りる乗客は多い。
 もっとも、乗車客もそれなりに多いが。
 稲生達がホームに降りて数歩歩いた時、既に後続列車が轟音を立てて通過していった。
 新幹線定期の客も多く、“こだま”は通勤列車としての顔も持っているのだ。

 稲生:「えーと……ここから、箱根登山鉄道です」

 稲生は時刻表アプリを入れたタブレットを手に、まずは改札口に向かった。

 マリア:「……え?あ、欲しいの?」

 マリアが稲生に耳打ち。

 マリア:「ルーシーがね、新幹線のキップを記念に持ち帰りたいんだって」
 稲生:「ああ、そうですか。それは可能ですよ。有人改札口に行って、駅員さんに言えば……」
 ルーシー:「私はまだ日本語が喋れないの」
 稲生:「自動通訳魔法具は?」
 ルーシー:「調子が悪い。そろそろ交換しないとダメみたい」
 エレーナ:「何だ、私に言ってくれれば、予備用を融通したのに」
 マリア:「どうせ高く売りつける気でしょう?」
 エレーナ:「いや、お買い得だぜ!?」
 稲生:「というか、自動通訳魔法具って消耗品だったことに驚きですよ」
 エレーナ:「魔法具ってのは、基本的に消耗品だぜ?」
 稲生:「あ、そういえばそれは聞いたことがある」
 マリア:「私が日本語を勉強したのは、何も勇太の御両親に挨拶する為だけじゃないんだよ」
 稲生:「失礼しました。じゃあ、僕が通訳してあげるよ」
 ルーシー:「ありがとう」

 因みにダンテ門内における公用語は英語となっている。
 ラテン語でもなければ、ロシア語でもない。

 

 稲生:「すいません、この人がキップを記念に持ち帰りたいと……」
 駅員:「かしこまりました」

 小田原駅も外国人観光客の多い所なのか、駅員はそういう申し出には慣れているようで、1つ返事で乗車券と特急券に無効印を押した。
 その無効印というのが……。

 ルーシー:「Oh!」

 普通なら『無効 小田原駅』という黒い四角形の無機質なスタンプが押されることを想像するが、新幹線は違った。
 青いインクの丸いスタンプに、N700系の先頭車部分がデザインされたものだった。
 あとは『小田原駅 JR東海 使用済』と書かれている。

 
(写真は全てウィキペディアより)

 稲生:「へえ!こういう無効印なんだ!何だか意外だなー!」

 稲生も何だか欲しくなったので、ついでにお持ち帰りすることにした。
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