報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「浅草滞在」 3

2019-12-13 20:40:01 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
 ※ゆうちょ銀行に開設している口座の住所変更をしに近所の郵便局に向かったら、何だかアジア系の外国人女性が窓口でクレームを付けていた。どうやら、一定額以上のカネを外国に送金しようとしていたところ、必要な書類を持っていない為、窓口で断られたことにクレームを付けているらしい。さいたま市ではこんな光景を見ることは無かったが、これも偏にアジア系外国人の人口密度の多い町ならではの光景だろう。確か限度額は送金先の国によっても違ったと思うが(当然、北朝鮮に関しては送金厳禁)、アジア系は往々にして厳しく制限されていることに注意だ。
 恨むならマネーロンダリングしやがる不良外国人を恨みなよ。御愁傷様だぜ。
 因みにその女性、送金理由は「祖国に病気で入院している母親の医療費として、日本で稼いだカネを送りたい」だったらしいが……。
 さてさて……。

 じゃ、はじまるよー。
 5、4、3、2……カチン!

[11月24日21:30.天候:雨 東京都台東区花川戸 浅草ビューホテル]

 アナスタシア:「バカねぇ!アメリカ経由のインド経由からの〜中国と見せかけて〜ロシア行きなら無制限で送金できるのにぃ〜!あーっはっはっはっはっはー!」
 アンナ:「先生、飲み過ぎですよ。早くお部屋に戻りましょう」

 アナスタシアはアナスタシアで大儲けしたらしく、左団扇でほろ酔い気分だった。
 それを介抱する弟子のアンナとエブリン。

 エブリン:「ていうか、先生の手法も脱法ですから、バレたらカントクがタイーホされます」
 エレーナ:「ナスターシャ先生、それ日本じゃ『資金洗浄』って言いまっせ?」
 ルーシー:(不良外国人、ここにいたか……)
 稲生:「マリアさん!イリーナ先生はこんな違法行為してる人じゃないですよね?!」
 マリア:「師匠は直接現地で稼いでいるし、最近はキャッシュレスで報酬もらってるから大丈夫だと思うけど……」

 イリーナの場合、既に顧客が何人もいて、報酬としてゴールドカードやプラチナカードを更新してもらうことで報酬としている場合が多い。
 つまりクレカそのものが報酬なのである。
 で、その利用限度額そのものが報酬。
 アメリカンエキスプレスのゴールドカードやプラチナカードの利用限度額、しかも更新付き。
 アナスタシアはその依頼人が裏社会の者達ばかりである為、クレカと言うわけには行かず、闇送金とかインゴッドとか宝石とか、そういうものが報酬らしい。
 雰囲気がロシアンマフィアの女ボスみたいな感じであるが、やはり黒幕的な所があるようだ。
 そして、ダンテ門内の極悪人とも言えるアナスタシアにはエレーナも頭が上がらない。
 ツッコミは入れられても、それだけで終わってしまう。
 アナスタシアの裏社会の人脈のおかげで、エレーナを狙う“魔の者”の眷属たるニューヨークマフィアのボスに辿り着けたからである。

 エレーナ:「私達はこのフロアだぜ。それじゃ先生、おやすなさー」

 マリア達は自分達が宿泊している部屋のフロアでエレベーターを降りた。
 アナスタシア達とはたまたまエレベーターで一緒になったのである。

 エレーナ:「危ねぇ、危ねぇ。危うくマネーロンダリングに付き合わされるところだった」
 ルーシー:「送金経由先としてイギリスかウクライナを追加させて頂戴って?冗談じゃないよ」
 エレーナ:「さすがの私も、汚い金は勘弁だぜ。いや、あの先生のおかげで今ここにいられるってのはあるんだけどさ」

 日本ではエレーナ1人で戦ったことになっているが、もちろんそんなことはない。
 師匠のポーリンも一緒だったし、縄張りを拡大させたい敵対マフィア組織の後押しもあった。
 もちろん、そんなマフィアに口利きをしたのはアナスタシアであるが。

 エレーナ:「疲れたし、今夜はさっさと風呂入って寝ようぜ」
 ルーシー:「そうしましょ。誰が先にお風呂入る?」
 エレーナ:「マリアンナ、先に入れ」
 マリア:「私が?いいの?」
 エレーナ:「その方が、後で稲生氏の部屋に忍び込んで行けるだろ?」
 マリア:「忍び込んでって、あのなぁ……」

 しかし……。

 マリア:「お言葉に甘えさせてもらうね」
 エレーナ:「おうよ。後で感想聞かせろな」
 ルーシー:「これで悪い感想だったらどうすんの……」
 マリア:「いや、そんなことはないから」

 ルーシーのエレーナへのツッコミに対し、マリアが真顔で返して来た。

 ルーシー:「あ……、ご、ゴメン」
 エレーナ:「ルーシー。愛溢れるセックスに、上手いもヘタも無いもんだぜ。覚えときな」
 ルーシー:「エレーナは『その体が処女』なんだよね?」
 エレーナ:「『この体』はな。名実共に処女のルーシーにも、是非体験してもらいたいもんだ」
 ルーシー:「この一門、魔女が多過ぎるのよ」
 エレーナ:「その方が魔力が高まるってのも皮肉なもんだけどな」

 エレーナは窓際の椅子に座った。

 エレーナ:「雨が降ってても、何とかスカイツリーは見えるな」
 ルーシー:「ほんと。明日は晴れるみたいだから、明日はてっぺんまで見えるといいね」

 ルーシーは自分の荷物の中から東京の観光ガイドブックを取り出した。
 もちろん英語版である。

 エレーナ:「観光する気満々だな」
 ルーシー:「先生が一日くらい観光できるかもと言ってたからね。どうやら明日できそうね」
 エレーナ:「東京ディズニーランドかシーにでも行くか?」

 エレーナは中折れ帽子をとんがり帽子に変えて被った。

 ルーシー:「キャストと間違われるからやめとくわ」

 因みにルーシーがUSJに行くと『ハリーポッター』の関係者と間違われるらしい。
 イリーナもまたそのままTDRに行くとキャストとしての魔女と間違われ、髪を三つ編みにしてジブリ美術館に行くと今度はジブリ映画に出て来る魔女と間違われそうだという。

 ルーシー:「個人的には、もう一度鉄道博物館に行ってみたいところだけど……」
 エレーナ:「ルーシーは新幹線好きだからな。……ん?」
 ルーシー:「なに?」
 エレーナ:「稲生氏に頼んで乗せてもらったらどうだぜ?稲生氏も鉄ヲタだから、何かいい案あると思うんだ」
 ルーシー:「Good idea!」

 しばらくしてマリアがバスルームから出て来た。

 マリア:「お気遣い頂き、ありがとう。お言葉に甘えて、私はこれから勇太の部屋に……」
 エレーナ:「ちょっと待った!」
 マリア:「Huh?」
 エレーナ:「今夜はルーシーが先約だぜ!」
 マリア:「What’s!?」

 何だか楽しそうに稲生の部屋に電話しているルーシーをマリアは睨みつけたが、もちろんわざと誤解させる言い方をするエレーナが元凶であった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「浅草滞在」 2

2019-12-13 15:17:40 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月24日20:00.天候:雨 東京都台東区浅草 雷門]

 

 夕食を終えた魔道士達は、ホテルへの帰路に就いた。
 止んでいた雨が再び降り出し、4人はローブを羽織ってフードを被った。
 魔道士のローブはただのローブではなく、防寒にも防暑にもなるし、防雨にもなる。

 稲生:「夜だから雷門がライトアップされてますよ」
 エレーナ:「安全地帯だな」

 エレーナは通りと雷門を見比べて言った。

 稲生:「僕にとっては謗法なんだけど……」

 しかしガチガチの信仰者であればあるほど、ホイホイと他宗教の敷地に入ることは憚れるだろう。
 魔女狩りを容認し、且つ積極的にそれを行おうとする者達は大抵それに分類され、例え観光地化された所であっても、こういう他宗の寺院に立ち入ることは憚れるのだという。
 逆を言えば『神(キリスト)に見放され』、『悪魔と契約し』、『他宗教の敷地内にホイホイと入る』から、『神に抗う魔女』ということなのである。

 稲生:「はい、並んで並んでー」

 稲生はしっかりと浅草寺の三門たる雷門の外にいて(境内には入らず)、魔女達を並ばせて記念写真を撮った。
 他の外国人旅行客が同じようなことをしている為、黒いローブという異質な服装をしていること以外はただの外国人観光客と変わらない。

 稲生:「後で画像は送るからね」
 エレーナ:「私はうちのホテルのパソコンに送ってくれればいいぜ」
 ルーシー:「私は写真としてもらいたいかも……」
 稲生:「了解」

 本来は仲見世も見たい魔女達だろうが、日蓮正宗の信仰をしている稲生に配慮してか、それは誰も言わなかった。
 上下関係がそれなりにあり、ここでは稲生が1番下となる(稲生だけがこの4人の中で唯一の見習。あとは一応、一人前扱いされている)。

[同日21:00.天候:曇 台東区花川戸 浅草ビューホテル]

 浅草の街を歩き回りながらホテルに戻った為、夕食が終わってから1時間後にようやくホテルに戻って来た。

 稲生:「ん!?」

 浅草ビューホテルも高級ホテルの1つである。
 だからそこから高級車が出て行くことは、けして不自然なことではない。
 今、エントランスから1台のセンチュリーが出て行った。

 マリア:「どうしたの?」
 稲生:「今出て行った車、もしかしてどこかの政治家の車かなぁ?」

 リアシートの窓ガラスにレースのカーテンがしてある黒塗りのセンチュリーというと、どうしてもそういうイメージがあるのだ。

 マリア:「どうだろうね」

 マリアも首を傾げる。

 エレーナ:「覗いてみるか?」

 エレーナはローブの中から水晶球を取り出した。

 エレーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ」

 エレーナが呪文を唱えると、水晶球に先ほどのセンチュリーの車内が映し出される。
 映像の角度からして、車内カメラの映像をジャックしたらしい。

 エレーナ:「安倍総理だぜ!?」
 稲生:「ええっ!?わざわざ魔界から!?」
 エレーナ:「安倍春明首相じゃなく、日本の安倍晋三首相だ!」
 ルーシー:「やっぱり噂は本当だったのね」

 ルーシーが腕組みをして言った。

 稲生:「え、なに?どういうこと?」
 ルーシー:「今夜、先生方が忙しい理由。そしてそれは明日もなんだけど……」
 マリア:「そういうことか」
 エレーナ:「日本に荒稼ぎに来たようなもんだな。さすが先生達だぜ」
 稲生:「え?なになに?どういうこと?」
 マリア:「日本の総理大臣も、大師匠様の『占い』を受けに来たってことさ」

 マリアは笑みを浮かべて言った。

 エレーナ:「他にも政府高官だけでなく、大企業家とかも会いに来るだろうな」
 稲生:「ひえー……」
 ルーシー:「ローマ教皇が来日して日本国内がお祈りモードなのに、それと敵対する魔女の大師匠に占ってもらうなんて、後でバレたら大変だからね」
 稲生:「なるほど……」

 ホテルの中に入る。

 エレーナ:「大師匠様の占いを受けられるなんて、世界中でもごく一部だけなんだぜ?あのイルミナティやフリーメイソンが挨拶に来るくらいだからな」
 稲生:「このホテルにも来るかなぁ?」
 ルーシー:「政府高官とか大企業家の中にはフリーメイソンのメンバーも含まれているって話だから、そうなるね」
 稲生:「改めて凄い所に入門したなぁ……」
 マリア:「某鈴木のように、志願しても断られる人間が殆どだ。あのモノグサな師匠が、自ら勇太を勧誘しに行ったことが凄いくらいだ」
 エレーナ:「東日本大震災が起こるわけだぜ」
 稲生:「えっ!?僕のせい!?」
 ルーシー:「ウソに決まってるでしょ。あれは“魔の者”の揺さぶり……ってことになってるけど」
 稲生:「その“魔の者”って、もしかして、日蓮正宗でも挙げられている第六天魔王と関係あるかなぁ?」
 エレーナ:「多分関係大ありだと思うぜ」
 稲生:「えっ!?……それもウソ?」
 エレーナ:「いやいや、こればっかりはガチだぜ。大師匠様が仏教だけは禁止しないのは、もしかしたらその“魔の者”の正体は……」

 その時、エントランスからドカドカと黒服の男達が乱入してきた。
 どう見ても政治家のSPには見えなかった。
 外に止まったのは黒塗りのアルファード。
 やはりというべきか、そこから明らかにヤの付く自由業の人達のボスらしき男が降りて来た。
 今、『ヤの付く自由業の人達が乗る車と言えば黒塗りのベンツ』というイメージはもう古い。
 黒塗りのアルファードやベルファイヤー、エルグランド、そしてプリウスが多いそうだ。
 5ナンバーではヴォクシーとかノアとかセレナとか。
 あおり運転の代名詞ばっかりだな。

 稲生:「こあいよぉ〜……」
 エレーナ:「いや、まだ日本のヤクザマフィアは優しい方だぜ。私が戦ったニューヨークマフィアは平気でトンプソンとかぶっ放して来たから」
 若頭:「失礼、ちょっとそこの……」
 稲生:「は、はいっ!?」
 若頭:「このホテルに、アナスタシア先生がお泊りになっていると伺って参ったのですが……」

 暴力団も幹部クラスになると、却って言葉遣いなどは丁寧である。

 若頭:「その出で立ちからして、アナスタシア先生のお弟子さん方ではないかとお見受けしますが?」
 稲生:「えっ、えっとぉ……ですね……」(゚Д゚;)
 エレーナ:「確かに私達はダンテ一門の魔道士だが、あいにとくアナスタシア先生の直弟子ではないぜ。用があるなら、直接アナスタシア先生に連絡することだぜ」
 若衆:「テメェ、カシラに向かってその口の聞き方は何だゴラァッ!!」
 稲生:「ひぃっ、すいません!!」
 若頭:「黙ってろ」

 若頭、恫喝してきた若衆を一睨みする。

 若衆:「は、はい!」
 若頭:「うちの若い者が失礼致しました。後で言っておきますので、どうか1つ……」
 エレーナ:「流れは分かってるから心配ねーよ。そちらさんは、まだニューヨークのマフィアより優しいくらいだ」
 若頭:「ニューヨークマフィア……?」

 若頭、エレーナの顔をよく見てみる。
 そして、ハッと気づく。

 若頭:「も、もしやあなた様は……!?『ニューヨークのアダムスファミリー』を潰したミズ・マーロンでは?!」
 エレーナ:「そうだ。……と、言ったら?」
 若頭:「ふ、ふふふ……ふふふふふ……!こ、このような所でお会いできて、光栄です。どうやらちょっと今日は……その……筋の通し方を間違えてしまったようです。また日を改めて、出直させて頂きます」
 若衆:「か、カシラ!?親分からの……」
 若頭:「うるせぇ!とっとと帰るぞ!車回して来い!」

 若頭は汗を拭きながらエレーナに向き直った。

 若頭:「それでは、またお会いできることを楽しみにしております」

 若頭は恭しくエレーナに御辞儀すると、そのままホテルから出て行った。

 エレーナ:「ニューヨークのマフィア潰したくらいで大げさだぜ。日本のヤクザマフィアは……」
 ルーシー:「いや、それ凄いことだから」
 マリア:「背中の銃痕見せずに、よく信じたものだな」
 エレーナ:「私の顔写真がマフィア業界に出回っているらしいんだ。ということはあのヤクザマフィアも、ニューヨークマフィアと何かしら取引をしてるってことだな」
 稲生:「なるほど。そういう見方が……」

 政治家や大企業家だけでなく、暴力団も占いに来るダンテ一門。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする